「そうですね…….何をどこまで用意できますか?」
「大抵のものをそこそこに用意できるな」
「例えば、そう、酒ならばどうでしょう?」
「では、これなんてどうだ?」
四千万円はする高級なワインだ。
ラリーは、一口、口に含んだ。
「……これ、は」
ラリーは、驚愕のあまり、声が出なくなっていた。
「どうだ?」
「……美味いなんて言葉で片付けて良いものじゃない。まさしく至高、神の酒だ……!!!」
「いくらくらいで売れそうだ?」
「いくらでも。価値の分かる人になら、それこそ、全財産を放り投げてでも欲しがるでしょうね……!」
「そうなのか?まあ、普通に買うと金貨四百枚はするからな、この酒は」
「となると、金貨五百枚で売って……」
「いや、俺は特別な仕入れ先から特別なルートで仕入れてるんで、一本につき銅貨一枚で手に入る」
「そんな馬鹿な……」
「後はまあ、薬なんてどうだ?」
適当な薬品を出す。
睡眠薬やビタミン剤、虫下しに、胃薬、カフェイン剤などだ。
「これは……!ポーションでは治らない病気を治す薬ですか!」
「そうなの?」
俺が隣のレクノアに聞く。
「えっとね、肉体治療ポーションは、物理的な怪我を治して、病気治療ポーションは、体内の悪いウイルスや細菌を消すの」
「つまり、栄養失調や脚気、ヨード欠乏症なんかの、特定の栄養素が足りなくてなる病気や、蟯虫、アニサキスなどの寄生虫、そして精神疾患なんかは、ポーションでは治せないのか」
「えーと、そうだね。でも、例外的に、エリクサーなら全部治せるみたいだね」
なるほど、よく分かった。
「病気治療ポーションでは治らない難病を治療するポーションとは!」
難病……?
「じゃあこれはどうだ?」
適当に武具の類を見せる。
「武具ですか。武具の目利きについては妻の方が詳しいので、妻に見せてよろしいでしょうか」
「よきにはからえ」
「では……。どうだ?」
ラリーが妻のベルに目の前の武器を渡した。
ベルは、神妙そうな顔をして、武器を検分する。
「これは……!剣聖ノブツナの『ニホントウ』ですか!」
日本刀を手に取り、刃紋を見る。
「武器としては元より、芸術品としての価値も充分にありますし……、金貨十枚はとれますよ!」
なるほど、日本刀は金貨十枚。
「こちらのロングソードも素晴らしい品質です!これは、鉄ではなく鋼ですね?これくらいの鋼を鍛えられるなんて、さぞかし腕のいいドワーフと知り合いなんでしょうね」
ロングソードは金貨五枚くらいか。
「まあまあ!こちらのフルプレートアーマーも良い出来ですね!華美さはあまりありませんが、質実剛健で実用的で、前線に出る騎士の方は欲しがるでしょう!」
フルプレートアーマーは金貨二十枚くらい。
「じゃあこれは?」
うちの傭兵団の一般兵用の魔剣だ。
単に、丈夫でよく斬れるだけ。
「こ、これは……っ!魔剣?!エンチャントは……、『鋭刃』と『硬化』じゃないですか!『ダブル・エンチャント』の魔剣ともなれば、金貨百枚はしますよ!」
へー、一般兵の標準装備で一千万円か。
とんだブルジョワ兵団だな。
「エンチャントは数が多い方が売れるのか?」
「それはもちろんです。一般的に、単一の機能を持つ魔具で金貨数十枚、ダブルならその倍の値段で、トリプルなら更にその倍……、と倍々に増えていきます。それに、有用なエンチャントであれば、正直、値段は青天井です」
なるほどな。
「この時代では、最も腕が良い技師でもトリプルが限界ですから、ダブルでも相当な値段になるかと。それも、『ハズレ魔具』ではなく、当たりのものですから、最低でも金貨百枚は……」
「ハズレ魔具ってのは?」
「え?ええと、ご存知ないのですか?」
「ないな」
「そ、そうですか。ええと、まず、魔具は、世界中に沢山ある遺跡から見つかるのはご存知ですか?」
「そうなのか?」
「はい、ですが、遺跡から見つかる魔具は、当たり外れがあるんです」
「と言うと?」
「例えば、剣の魔具なのに、『発光』のエンチャントが付いていたり……、とかですね」
「なるほどな。じゃあ、魔剣に、魔剣として使える機能が二つも付いてれば上等ってことか」
「はい、その通りです」
そうなのか。
因みに、ガチャでは、ノーマルでは地球の品などの魔法を使わない製品が出るが、レアではシングル〜トリプルの魔具、スーパーレアではクアドロ〜シックスの魔具、レジェンドではセブン〜ナインの魔具が出る。
俺の持つ『魔剣リジェネレイター』は、『鋭刃』『硬化』『剣再生』のトリプルだ。
現存する世界最高の魔具はシックスらしい。
「さて、こんなもんか。今日のところはもう寝ろ」
宿に戻った俺達。
「わ、分かりました。その、我々はもちろん外でしょうけれど、もし、もしよろしければ、一番下の子供だけでも、厩で寝てはもらえないでしょうかっ……!!」
「はぁ?何でそんなことしなきゃならねーんだよ」
「っ……!申し訳、ありません……!」
「おい、何やってんだ?いきなり土下座とか頭おかしいぞお前……。早く立てよ」
「は、はい、すみません」
「とりあえず二部屋で良いだろ、早く寝ろ」
俺は、宿屋の親父から鍵を受け取って、ラリーに鍵を投げ渡す。
「あ……!!はいっ!ありがとうございますっ!!!」
活動報告に、この前後書きでちょろっと書いた、巻き込まれ転移者おっさんの話のプロットを書きました。
アドバイスちょーだいね。