俺達、傭兵団『神秘の力』は、パリス辺境伯領、トルニス帝国最南端のリードルフと言う街から、南のネブリナ王国を経由せずに、大陸の南西部にある砂漠の小国、『アイトリア』に向かう。
ここはワインの名産地らしく、『ワインは砂とともにある』という格言がこの世界にはあるくらいだそうだ。
一流の貴族は皆、アイトリアワインを飲む。
まあぶっちゃけ、この世界最高のワインよりも、日本のスーパーの二千円くらいするワインの方が美味いんだがな。
カーステレオから適当なクラシックメドレーが流れる。
俺は、気怠げに高機動車のハンドルを握り、アクセルを軽く踏みしめている。
車内には、俺、レクノア、トライ、そしてラリーの娘のプリム。
プリムは、何をどう勘違いしたのか、俺に気があるらしく、秘書として甲斐甲斐しく尽くしてきている。
男女関係の機微は詳しいとまでは言えないが多少は知り得ている。相手側が自分に気があるかどうかくらいは分かる。
いや、そもそも、名を呼ばれるだけで頬を染め、アヒルの子のように後ろからついてきて、仔犬のように擦り寄ってくる女を前に、自分に惚れているかどうかが分からないような男はいないだろう。少なくとも俺は、それが分からないくらいに腑抜けてはいない。
親のラリーも、プリムの背を後押ししている。
こんな男のどこが良いんだか?などという台詞は言わない。
俺は顔も良いし、上背も高く、安定安心の公務員であったが故、女には困っていなかったからだ。
すなわち、俺は俺自身が魅力的な男性であることを自覚している。
どうやら、この世界でも俺の魅力は変わらないらしく、精悍ながらも整った顔、男らしいがっしりとした体格に、熊獣人よりも大きな上背……、それらの特徴は魅力的らしい。
この世界は割とローマ的な思考回路なのか、肉体美は重要視されるみたいだ。まあ、流石に裸マントはいないのだが。
つまりは、線の細い美青年も当然良いが、ヘラクレスのように剛気な大男はもっと歓迎される。
その上に俺は、強く、金持ちで、傭兵団長なので偉くもある。
更に、毎日シャワーを浴びているので、清潔である。
こうなると、道を歩くだけで女達が振り返る。
だが……、プリムが俺を好いているのは、俺の男性的な魅力だけを見ている訳じゃないみたいだ。
病気を治してくれた恩義を、生涯をかけて返していきたい……、と言った気概を感じる訳だな。
プリムからすれば、死の淵から救ってくれた恩人で、加えてその上、最高の美丈夫だった。
もちろん、奴隷という身分に身をやつしたプリムに、俺との婚姻などという大それた考えは……、まあ、多分、理性では無理だと理解しているはずだ。
だからせめて、俺のお手つきとなり、奇跡的にガキでも孕めば、更に奇跡が起きてガキを認知してもらえれば……。
なんてことを考えているんだろう。
まあ、プリムはまだ十五であるからして、理性ではそんな奇跡は起きえないと分かっているのだが、心根では、奇跡が起きて欲しいと祈っている。そんなところだ。
俺としては、薄幸そうだが間違いなく美人であるプリムを抱くことは構わない。
だが、プリムも含めてラリー一家を末永く使っていきたいと思っている。
いきなりここで身重になられても困る。もう少し安定した生活基盤ができてからなら、いくらでも孕ませてやるし、無限に認知するんだが。
まあ、とりあえず、次の街で抱くだけ抱いてやろう。
「でねー!カインがね、裏切ったんだよ!!」
「知ってるわ、全クリしたもんよ、4は」
そして……、ぐいぐいと距離を縮めてくるプリムを見たレクノアも、何故か距離を詰めてくる。
レクノアは、知り合った直後は、弱った小動物のようにこちらを警戒していたが、最近は……、そうだな、歳の離れた兄貴か、それとも父親か。
そんな風な甘え方をしてくるようになった。
最初の頃は、それはそれは警戒していたんだが、段々と……、割と早い時期から、ちょこちょこと甘え始めて、今では、男女の性愛的な目を向けるようにもなってきた。
察するところこうだ。
初めのうちは、前の飼い主の馬鹿貴族に虐められたトラウマで怯えていた。
だが……、恐らくは、毎日俺の心を読んでいるうちに、敵意の無さと言うか、自分を害さないどころか、守ってくれる存在だと理解し始めた、のだろう。
故に、顔も見たこともない父親を幻影を俺の背中に見た……、のかもしれない。
そして、そうやって甘えているうちに、思春期の性欲で頭があったかくなり、性的なことも考えるようになってきた……、ってところだろうか?
結構に頭が茹っているらしく、この前はこっそりと俺のベッドに潜り込んで、勝手に俺の手指を使って自慰行為をしていた。
まあ、その時は見て見ぬふりをしてやったのだが、次の日に、俺がそれを知っていたと言うことを魔眼で知り、顔を真っ赤にしていたな。
因みに、下の毛は剃っているみたいだ。
まあほら……、俺も十五くらいの頃はやりたい盛りだったし……。
俺は自身の性格が悪いことは理解しているが、生理的欲求があることを馬鹿にしたりはしない。
それくらい可愛いもんだ。
そういう訳で最近のレクノアは、俺の心を読んで、俺が好きそうな仕草をしようとしてくる。
俺はまあ、普段は友達のように付き合える女がふとした瞬間に見せる女らしい部分が好きなんだが、レクノアも、普段は友達のように接してきて、たまに女らしさを見せてくる。
やりたいならやってやろうか。
次の街に着いたら抱いてやろう。
「旦那旦那、アレなんだい?」
「あー?お、モンスターの群れだ。でも、車にビビって逃げてったわ」
トライとは既にやった。
数日前、トライが、発情期が来たから抱いてほしいと縋ってきたのだ。
よく分からないが、据え膳を食わない理由はない。
ガッツリ一晩抱いてやった。
だが、それでも、女としてどうこうって言うよりも、医療行為的な面が強かったためか、トライはこちらをそんなに意識してはいない。
もちろん、多少はその気持ちもあるらしく、どうせ孕むなら旦那の強い子が良いよと言ってはいる。
それでも、立場や態度は俺の手下の三下女ってところは変わらないのだが。
完全に余談だが、うちの傭兵団の団員は大体は結婚している。
今回の傭兵団の大移動にも、傭兵団員の配偶者や子供がついて来たので、人数は二千人を超えてるんじゃねーかなこれ。
eraはな……。
口上がないキャラと話しても楽しくねーんだわ。