ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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久々にステーキ肉を買った。

やはり肉は良い。


45話 もらえるものは病気以外ならもらっておけ

「ふざけてんのかお前?」

 

「私の最も大切な宝物である娘を救ってくれた人に、娘を託す。美談じゃあないか?何かおかしいかな?」

 

ふむ。

 

「おっと……、殺すのはやめてもらえるかな?流石に、私が死ぬと色々とまずいんだ」

 

ふむふむ。

 

こいつ、なんか厄介なスキル持っていやがるなこれ?予知とかそう言う系統のだ。

 

俺は、革張りのソファにドスッと腰を下ろして、脚を組む。

 

「ふざけてねーとすんなら、何でだ?」

 

「その方がプラスだからさ」

 

プラスときたか。

 

「ライン君、私にはね、『測定A』というスキルがあるのさ」

 

測定……?

 

「測定は、鑑定のように詳細な情報は見えないけれど、事物に関しての詳細な数字が見えるのさ」

 

数字、ねえ。

 

「となると、確率的に俺に娘を渡した方がプラスだと知った、と?」

 

「まあ、そんなところかな」

 

なるほど……。

 

「じゃあ、貴族の女であるフィアがこの歳で婚約の一つもしていないのは、お前が俺に嫁がせるためにキープしてたってことか」

 

「いやいや、それは違うよ」

 

「何が?」

 

「フィアには、ちゃんと婚約者がいたよ?もういなくなったけどね。まあそれは、私があらかじめ、死ぬ確率が高い人間を許嫁にしただけなんだけどね」

 

「酷い親だ」

 

「それと、キープだって?とんでもない!私はフィアを世界一大切に思っているよ。だから、フィアには好きにさせていただけさ。好きな人を見つけたら、連れ帰ってきなさいと命じてね……」

 

「なるほど?娘は、優秀な婿を探すための釣り針だったと」

 

「いやいや……、娘を大切に思っているのは本当の事さ。それは絶対に嘘じゃない。だけど、娘は好きにさせた方がいい結果になると私は分かっていた。だからそうした。何かおかしいかな?」

 

「いや……、実際に、俺を釣り上げたんだから大したもんだ。称賛に値する」

 

「それはどうも」

 

「だが、一つだけ穴があるな」

 

「何かな?」

 

「俺が断ったらどうするつもりだ?」

 

「そこなんだよねぇ」

 

さて、何をふんだくろうか。

 

「金なんてどうだい?金貨五千枚までならすぐに用意できるよ?」

 

「金は欲しいが娘はいらんな」

 

「まあまあ、そう言わずもらってくれないか?君には見えないかもしれないが、ほんの数日間、君と一緒にいただけで、娘の好感度は七十八パーセントだよ?ああ、好感度とはどれくらいその人が好きなのかを表す指数さ」

 

「役に立たん女を侍らせてもな」

 

「いやいや、旅慣れもしてるし、最低限身を守るくらいの武芸はある。それに、こんなこともあろうかと幼い頃から礼法やら算術やらを仕込んでおいたよ」

 

「その癖、砂漠の真ん中で死にかけていたが?」

 

「ああ……、全く、フィアは本当に礼節を重んじる良い子だよ。下賤なものでも信用してしまうんだ。だが、今回の件を教訓にして、人を疑うことを覚えたフィアは、まさに向かうところ敵なしさ」

 

「ああ言えばこう言うな。具体的にどんな役に立つ?」

 

「領地の運営ができるよ。この私が仕込んだんだ。領地の運営ができると言うことは、法務、財務、交渉などに長けていると言うことだよ。察するところ、そちらには、代表者たる君の代行者がいないようだね?」

 

「フィアを俺の宰相にしろと?」

 

「最終的にそうなってくれれば嬉しいね。フィアは真面目だし、生まれが大きな貴族家であるからして、欲をかいて汚職だとか、そう言ったつまらないことはやらないさ。まあ、初めは、君の秘書にでも使ってくれたまえよ」

 

ふむ……。

 

「まあ、そこまで言うならもらってやっても良いが……、例え血縁ができたとしても、俺は邪魔な奴は殺すぞ?」

 

「ああ、もしも砂漠の国と敵対するなら言ってくれ。私、国を裏切っちゃうから」

 

は?

 

「は?……ははは!侯爵様とあろうものが裏切りをすると仰せられる!」

 

「いやいや、うちの王様より、君の方が数値が大きいからねえ」

 

「数値?」

 

「例えば、人間的価値なんかも『測定』できるんだがね、王はまあ、うちの全財産で買えるくらいなんだが、君の価値は世界中の富を集めたって買えないくらいさ」

 

なるほど、なるほど。

 

「よし、良いだろう。金貨五千枚寄越せ。娘ももらってやる。そして、俺の仲間になったからには、そちら側が敵対しない限り、俺も手出しはしない。それで良いか?」

 

「良いだろう。さあ、娘を持っていってくれ」

 

「あ、あの、ライン?」

 

フィアが頬を赤らめている。

 

「よろしくな、フィア」

 

「え、ええ!よろしくっ!」

 

まあ、見た目は悪くないしな、もらえるものは病気以外もらっておけば良い。

 

 

 

金貨五千枚を巻き上げて、フィアをもらってから早速移動。

 

まずは両替。

 

国によって貨幣は違うからな。

 

そしたら……、しばらくは休むか。

 

うちの傭兵団も、砂漠の移動で疲れているだろう。

 

一週間くらい休もう。

 

中隊長は全員、指示通りに一箇所に固まっているので、中隊長達に一週間休暇だと伝えて、その辺で待機させておく。

 

「宿にでも泊まったらどうだ?」

 

「へあ?へへへ、冗談キツいぜ旦那!手持ちの家があるのに、何で薄汚い宿になんか泊まるんです?」

 

と、モス。

 

「そうか?」

 

「そうですよ、もらったあの家は本当に住みやすくて良い」

 

団員一人一人に渡したものは、アイテムボックス、一日500Lの水を生む水差しの魔具、汚物を食べるスライム状の魔具、ワンルーム十六畳くらいの家、ベッドや棚、椅子やテーブルなどの家具だ。

 

これなら、最低限生活できるだろうと思ってのこと。

 

福祉を削り過ぎると兵士は命をかけてくれなくなるからな。

 

しかし、とにかく住めればOKって感じで、特別なものは一切ないんだが……?

 

「ふかふかの大きなベッドに毛布なんて、お貴族様の使うようなもんですぜ?」

 

そうなのか……?

 

まあ、その辺はいいや。

 

「では、今日から一週間、休暇を取らせる。移動の疲れをゆっくり取るようにしてくれ。そしたら、一週間後に新しい装備を整えさせるから、それを使った訓練だ」

 

「アノ、良いか?」

 

ん?

 

跳ねる雷隊の隊長、ダンバだな。

 

どうしたんだろうか?

 

「良ければ、更に人数を増やしても良いカ?」

 

「団員を増やすのか?そりゃあ、願ったり叶ったりだが、当てはあるのか?」

 

「俺の部族、『ゼラナ族』と言うのだが、弟のビルバとサーバもこの国で傭兵をやっていルんだ」

 

「そうなのか」

 

「叩きのめせば言うことを聞くはずダ!」

 

「よし、分かった。案内しろ」

 

「じゃあ、それなら、クーリエ様を召喚してここに置いていってくれるか?そしたら、この国の獣人傭兵は大抵勧誘できやすぜ!」

 

と、モスが言った。

 

「やっておけ」

 

そう言う事になった。




空から金が降ってこねえかなあ……。


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