「大丈夫ですよ、元気出してください!」
「ああ、ありがとう、陽ちゃん……」
後で聞いた話だけど、ひなたは怪しいおじさんの演技に付き合うことにしたそうね。
藪を突くと蛇が出そうだからねー、とは本人の談。
その後も、おじさんとあれこれ話して親睦を深める。
私の家が経営してる喫茶店にも、変なクレーマーとかが出たことあるし、接客はバッチリできるわよ!
まあ、変なクレーマーと違って、おじさんはイケメンだけどね。
「おじさん、結婚してるんですか?」
私は質問をした。
「ああ、そうだよ。えーと、君は?」
「あ、私は、犬神明良(いぬがみあきら)です!」
「明良ちゃんか、よろしくね」
うわー……、カッコいい……!
しかもなんかいい匂いするし!
私のお父さん、最近ちょっと臭いんだよね。加齢臭かな?
このおじさんは顔もイケメンだし、すっごくいい香り!
私、年上の方が好きだからちょっと役得かも!
こういうおじさんに強気で攻めてほしいなあ……。
あ、でも、結婚してるんだよねー、残念。
「奥さんってどんな人なんですか?」
「えっ、あ、あー、その、一言で言うと難しいけれど、とても優れた人間って感じじゃなくて、優しくて正直でいい人だよ」
「へえー、いいなあ、幸せな家庭って感じですね!お子さんは?」
「えーと……、そう、娘がいてね。妻に似て可愛らしい良い子だよ」
うーん?話す前にちょっと迷ってる、のかな?私には演技かどうか分からないけど……。
でも、ひなたは疑ってるらしいし……?
とにかく、そうやって話しているうちに、玉座の間へと通されたわ。
「朕はフィリップ八世であ〜る!平伏せ〜!」
アッ、これ、ダメなやつ!
あからさまに無能!!!
豚のように太ったチビのおっさんが、ビロードの赤マントに成金趣味のような品のない黄金細工でじゃらじゃら。
「ふほほほほ、貴様らは、この朕が異世界から召喚した勇者である!偉大なる女神マーシュリー様の啓示を受け、異世界なる国から、朕の娘たるフランソワーズが召喚したのだ!ふほほほほほほ!」
「な、何だそれ?!ふざけんな!!」
「そうよ!家に帰して!」
「意味わかんねーよ!!」
クラスメイトのみんなはそう叫んだ。
けれど……。
「頭が高いであるぞ!朕を誰だと心得る!偉大なるフィリップ八世であるぞ!!!」
豚王が喚き散らすと、側に控える騎士が、騒いでる生徒の前に立った。
全身鎧に鋼の剣を佩びた騎士相手に、さらに喚き散らそうとするほどの馬鹿は、どうやらいないみたいね。
「貴様ら勇者は、我が国の第三騎士団の元で一年間訓練した後に、シャッハ帝国の討滅任務についてもらう予定である!」
「で、でも、俺達、戦ったりなんか……」
「貴様らには、勇者としてのエクストラジョブとエクストラスキルがあるだろう?さあ、まずは、ステータスを測るのである!」
そして、ステータスを測定……。
「俺は『ブレイヴマン』で『聖剣召喚』だった!」
「私は『ルーンキャスター』で『ルーン付与』!」
「私は『ラピュセル』で『神聖魔法』だったよ!」
「私は『アルテマソード』で『究極剣』だったわ!」
クラスの中心である、ひなたに言わせるならば「陽キャ」のチームが盛り上がっている。
「俺は『バーサーカー』で『狂化』だったぜ」
「俺は『デストロイヤー』で『破壊攻撃』だった」
「こっちは『ナイトレイダー』で『夜間適応』と『夜間強化』だ」
「俺は『バサラ』で『吸血強化』だとよ」
不良チームも盛り上がっている。
「ぼ、僕は『ネクロマンサー』で『死霊魔法』だ……、力さえあれば不良にも負けない……」
「『ボマー』で『爆破魔法』か……、この力があれば……」
いじめられっ子チームも盛り上がっている。
私と、ひなた、ふーか、アンは、四人とも記録にないエクストラジョブだったらしい。
ただ、陽キャチームの筆頭である、『峰岸勇太』の『ブレイヴマン』というジョブは、記録に残っている中でも最強のジョブだったとのことで、もてはやされている。
調子に乗った峰岸は、「悪の帝国を倒して、日本に帰ろう!」とか言い始めてる。
あちゃー、もうダメね、これは。
あからさまにダメなやつよねえ。
私も多少はネット小説を嗜むけれど、これって最悪のパターンよね。
そして、おじさんの番。
「タカシ・ハナガタ……、ジョブは『マーチャント』で『エクストラスキル』はなし!」
スキルをチェックする水晶玉を見た、大臣的な人が言った。
「何?!エクストラスキルなしだと?!」
「はい、何の能力もないクズです!」
それを大声で言うもんだから、周りの生徒達もそれに気付いて、差別っぽい目線を向けてくる。
「そ、そんな!私はっ!家に帰してください!妻と子供がいるんですっ!!!」
惨めっぽい雰囲気で言ったおじさん。
可哀想だな……。
おじさんみたいな人は、守ってあげたくなる。
王様が退がった後は、さっきのフランソワーズ姫様が来て、さっきの豚王の物言いを取り繕うが如く、いかにこのククラ王国が魔族に酷い目に遭わされているのかを大袈裟に伝え、そして、元の世界に帰る方法は魔王なら知っているかもしれないと言ってきた。
まあ、これ、信じるアホっているのかしら?どう考えてもこれ、帰る方法がないパターンよね?
「魔王さえ倒せば……!」
「ま、魔人ってのは人間じゃないんだろ?な、なら……」
「ま、魔王を倒せば日本に帰れるんだなっ?!」
うわー……。
みんな、冷静な判断力を失っちゃってる……。
これは察するところ、帰る手段なしで、しかも、戦争の尖兵にされるやつよね。
魔族を倒して欲しい!とか言って、なんの罪もない魔族という民族と戦わされるやつ。
そもそも、本当に困窮してるなら、あの王様の、ファーがついた真っ赤なビロードのマントとか、黄金の指輪とか、あり得ないのよねえ……。
でも、クラスカースト中間層の私達がこれは罠だ!と騒ぎ立てても相手にしてもらえないだろうし……。
逆に、立場が悪くなるかもしれないし……。
悪いけど、そこまで面倒を見きれないわ。
もう高校生なんだから、自分のやることに責任を持ちなさいよね。
その後は、歓待って事で食事をすることになったんだけど……。
まあ、不味いわねー……。
ナーロッパクオリティってか、ブリテンクオリティ。
この国の人は、名前はみんなフランス風なのに、料理は本当に不味いわ……。
新作を書いている途中でネタが思い浮かび、更なる新作を書いてしまった。節操なしだ。
片方は、貞操逆転魔法少女世界もの。もう片方はゾンビアポカリプスマッドサイエンティスト主人公ものだ。
どちらも色んな意味で酷い出来ですね。
貞操逆転魔法少女ものは……、まあ、こう……、マブラヴ的な異次元から現れたクリーチャーが世界を食い尽くさんとしているところを、ストパン的な魔法少女が阻止する!みたいな話。そこに、BLEACHみたいな世界線から現れた侍の一人が転移してきて、雑にハーレムやる話になります。
謎の神秘パワー『霊力』を扱い、魔法とは違う謎技術の『鬼道』を扱う、妖怪と混血の主人公。魔法少女とクリーチャーがわちゃわちゃしてるのを見て鼻で笑えるくらい強い主人公が、政治劇とか立場の問題とか全部ぶっちぎりながら、女食いまくって、更に美少年にも手を出して大変なことになる感じですかね。
戦力比?そうだなあ、魔法少女が現代の戦闘ヘリくらいだとしたら、主人公はスピリットオブマザーウィルくらいかなあ……。
貞操逆転世界だから、「女なのに男の人に良いようにされちゃってるぅ……!」みたいになる予定。主人公にいじめられて大喜びする魔法少女……。
ゾンビアポカリプスは……、まあほら……、ポストアポカリプス大好きだからね、ちかたないね。
何かこう……、表の世界の学会で異端認定されて追放されたマッドサイエンティストが主人公なのね?それで、アンブレラ的な秘密結社に拾われて、生物兵器をガンガン作って、支部の一つを任されるくらいの幹部になるのよ。
趣味は自らの作品である生物兵器の世話で、人間の女性を素体に使ったクリーチャー達を『お姫様』とか呼んで可愛がってるキチガイなのね。
で、ある日、組織内での内ゲバで、研究中のゾンビウイルスがテロに使われて全世界で流されんの。当然、主人公のいる研究所も壊滅して、主人公も一度は死ぬんだよね。
でも、『思考能力は皆無で本能しか持たない、ありとあらゆる生物を吸収してその体組織をコピーできる』って感じのスライムが研究所から逃亡して、死んだ主人公の死骸を食べるのよ。そして、スライムは本能的に『頭脳』を求めていたから、主人公の頭脳を吸収して肉体の中枢に据えるんだよね。
そして再生されたクリーチャー人間の主人公(?)が主人公になります。
そしてまあ、ほら、こう……、主人公は死んだもんはしゃーないと割り切って、崩壊した世界で新しい人生をスタートするのよ。
それで、研究所から脱走した、主人公の愛するクリーチャー達を回収して、クリーチャー少女達とラブラブ生活!って感じの話になると思うよ。