ざまあ展開とか見たい?
俺は、異世界転移に巻き込まれた、何の能力もない無能なおじさんとして喚き散らし、騎士に脅しつけられてビビり、腰を抜かして見せた。
高校生諸君は、唯一の大人である俺が、情けない、何の力もないただのおっさんであると見て、哀れに思いつつも見下してくれたようだ。
そうだ、それでいい。
俺に頼るな。
迷惑だ。
さて。
スキルなしの無能と発覚した俺は、高校生諸君が上等な晩餐にありつくのを余所に、城の外にある狭く汚い物置小屋に放り込まれた。
「な、こ、ここは?」
「お前の部屋だ」
「そ、そんな!」
俺を案内した騎士は、俺の言葉を聞き入れず、飯だ、と一言言ってガチガチの黒パンを一つ投げつけてから、戸を閉めた。
がしゃ、がしゃ、がしゃ。
足音が遠ざかる。
『察知』スキルにも、周囲半径五十メートル範囲内に人は居ない。
「よっしゃ!」
俺は早速、ネットスーパーを発動!
レストランモチヅキに入店して、カツカレーメガ盛りを食った。
「おほ、うっめ!」
かなりレベル高いぞこれ。
俺もグルメ系バラエティ番組には何度か出演したが、これは地方の人気の名店って感じだ!
実は俺、かなりの大食いで、雁吉ゼミの大食いコーナーのレギュラーもやっていた。ギャル曽良さんと一緒に。
「ごちそうさまでーす!」
マネキン店員に声をかける。
「ありがとうございました」
じゃ、帰ろうか。
さて、部屋は埃が酷い。
既に役者には戻れないのだろうが、喉や身体を壊したいとは思わないな。
明日掃除しよう。
今日は快晴だし、夏の終わり頃で天気もいい。
あったかいんで、外で寝ようか。
ハンモックで寝ることにする。
おっと、忘れちゃいけない蚊取り線香。
とは言え、夜にはまだ早いかな?
ネットスーパーの書店で今週のジャプンを買っておいたので、それを読む。
そして、読み終わった頃に察知スキルに反応が。
四人、女だ。
やべやべ、ハンモック収納!ジャプンも収納!
物置小屋の前で、「クビになった中年のサラリーマン」みたいな雰囲気を出さなきゃ!
よし、役に入り込め……、よし、よし!
「おじさーん!」
「あ、ああ、陽ちゃんか……、どうしたんだい?」
くたびれた、強がりな笑顔!
「えっと、その……、様子を見にきたんですけど……」
「そうなんだ、私は……、この通りだよ。よく分からないけど、スキルなしの使えない奴、らしいからね……」
「食事とかは……?」
「黒いパンがひとつだけ……」
「そんな……。おじさん!私、お城の人にお願いして、パンと毛布をもらってきたんです!使ってください!」
な、何が狙いだこの平らな胸族ゥッ……?!!!
よ、読めない!
こんな良い子がリアルに存在するのか?!!
否!
女なんてみんなクズばっかりだ!
顔が良くて稼いでるからー、とか言って近づいてきた女は、大抵ロクでもないクソ女だった!
俺が、「生活するお金はお互い自分で稼いで、家事は分担、子供が生まれたら養育費は折半ね」と伝えると、どんな女もキーキーがなりたてて逃げていくのにッ!!!
こ、怖い!
この子、何を考えているんだ?!!
「困ったときは助け合いじゃないですか!」
「い、いや、しかし……」
ここで恩を受けると、見捨て辛くなると言うか……。
まあ、見捨てる予定ではあるんだけど、多少は罪悪感ってものがあるでしょ。
うーむ……。
しかし、断るのも変だし、もらうしかないか。
「ありがとう……。でも……、うう、女の子に物乞いをするようで、惨めだよ……」
「おじさん……」
ちょっとしんみりか?
まあ、なるべくきて欲しくないってのは本音だ。
ほっといてくれ。
「ヘイ、ミスター!泣かないで!」
おっと、アンジェラちゃん。
「そ、そうですよ!物乞いだなんて!本当に、助け合いですから!」
明良ちゃん。
「同じ地球人同士、仲間なんですから、お気になさらないでくださいね!」
風香ちゃん。
ええ子や……。
「で、でも、私は本当に無能なんだよ?図体は大きいが、気は小さいし、見た目ほど力も強くない。中年で太っているし、高卒で頭も悪いしね……」
嘘だ。
高卒なのはマジだが、腹筋バキバキで体脂肪率は12%ほどをキープし、ベンチプレスはノーギアで150kg行ける。体力もバッチリ、格闘技もやっていて、スタントもばっちりだ。
「そんなことないですよ!それに……」
「それに?」
「異世界転移ものでは、巻き込まれて召喚されたおじさんは最強チートなんですよ!おじさんがチートになったら、私達を助けてくださいねっ!」
えっ、そうなんですか?
そんなこんなで、もらったパンとチーズとワイン一瓶を収納。
察知スキル範囲内まで四人娘が出たのを確認したら……。
「よっしゃ、マガズン読も!」
そして……。
「ん、夜だな、寝るか」
マガズンを収納して、ハンモックで蚊取り線香を焚きながら寝る!
次の日の朝。
ネットスーパーの訓練所でランニングと筋トレを済ませた後、軽い朝食を食べてから……。
「訓練開始だ」
そう言って、ネットスーパー訓練所のマネキン店員に話しかける。
「俺はアンソニー訓練所のアンソニー軍曹だ。口からクソを垂れる前にサーと言え」
「サーイエッサー」
「はい。訓練コースはいかがなさいますか?」
・一週間初級コース(Lv5UP)
・一ヶ月中級コース(Lv20UP)
・三ヶ月上級コース(Lv50UP)
と提示された。
「質問いいですか?」
「はい、何ですか?」
「金取りますかこれ」
「初級が百万、中級が千万、上級が五千万になります」
「レベルの目安って?」
「世界最強の人間がレベル50です」
「死んだりしますか?」
「死にません」
「そういや、この世界で三ヶ月過ごしたら、三ヶ月分、現実世界は三ヶ月止まったままなんですか?」
「はい」
よし、OKだ。
さあ、やろうか。
全てを終わらせた後、休息をとってから、小屋の前で体育座り。
そこに騎士が来て、俺を無理やり訓練場に連れてきた。
「や、やめてくれ!何するんだ?!」
「良いから来い、クズ!」
そして、城に隣接された騎士団の訓練場に連れてこられた。
ここで俺は、全身全霊で醜態を晒すこととする……。
主人公を無能として見下していた高校生と後で会って、豊かな生活をしている主人公が高校生グループを見下すところとか、見たいですか?
俺としてはまあ、どっちでも良いかなー?って感じですね。