冒険者ギルドに到着。
俺が護衛を依頼した冒険者パーティはまだ来ていないとのことなので、俺達の冒険者登録を先に済ませる。
俺が昨日、色々聞き込みした結果、冒険者が一番、身分として楽だと言うことが分かったからだ。
他の街に行く時、冒険者ですと言って冒険者のドッグタグを見せれば、それだけで信用される。
この世界の大抵の人は、家から半径数キロの範囲で一生を過ごすのが普通だそうだ。観光なんて文化はないからな。
冒険者になるには、冒険者ギルドに届け出をする必要があるのだが、その際に犯罪者かどうか、ジョブを検査される。
盗賊だとジョブがシーフになるそうだ。
また、ドッグタグは何気に高性能で、本人以外の所有者が持ち歩くと数分で錆びてしまう魔法がかけられているので、本人認証が簡単にできるのだ。
そして、定期的にドッグタグの更新をする必要があり、更新の際にはジョブを検査される。定期更新を怠ると、ドッグタグは錆びる。
つまり、錆びていないドッグタグを持っている奴は、ちゃんとした冒険者だと見て良いってことだ。
むしろ、冒険者ギルドか商人ギルドか……、ギルドに入る以外で、他の国に入るとなると、国の特使にでもならない限り無理だ。
もしくは、教会に所属して巡礼者になるのか。
そんな訳でこの世界の人は、あまり移動しないらしい。まあ、中世っぽい世界だしな。
さて、登録料は銀貨三枚か。つまり三千円。
俺は、自分の分と四人娘の分の登録料を支払って、ドッグタグをもらう。
「あの……、商人であれば、商人ギルドをお勧めしますが?」
「いえその、今は売るものがないので……」
適当にごまかしておく。
そして、少し待っていると、俺と契約したパーティが来た。
「チャールズ・ルチアーノさん!『紅蓮の矢』パーティの皆さんが来ましたよ!」
「はい、どうも!」
え?偽名だけど?隠蔽スキル使って検査を誤魔化しましたけど?
なんか問題ある?
犯罪?バレなきゃ何やったっていいんだよ。
四人娘は本名で登録したっぽいね。
紅蓮の矢、なるパーティは、男女三人ずつの、これといって特徴のない人間六人のパーティであった。
「では、『紅蓮の矢』パーティは、ドゥムヤ王国の街『テディ』まで、こちらのチャールズさんとその仲間を護衛する。チャールズさんは、道中の食事を提供する。よろしいですか?」
「はい」「ええ」
そして、簡単な契約書を、俺と、紅蓮の矢のリーダーが持つ。
依頼が達成されればこれにサインして行先であるテディという街の冒険者ギルドに二人で提出すれば、依頼達成だ。
もしも、規約違反があれば、この契約書は違反の印ともなる。
例えば、紅蓮の矢が逃げ出した場合、俺だけが契約書を何処かの冒険者ギルドに持っていけば、紅蓮の矢の依頼不達成の印になる。
また、俺が契約を違反した場合、紅蓮の矢は契約書を何処かの冒険者ギルドに持っていけば、俺が契約違反をしたと告げ口できる。
つまり、契約したという証であり、片方だけなら相手の違反の印である。
とは言え……、護衛依頼を任せてもらえるほどの冒険者は、自らのランクを下げないように、必死で仕事をするそうだから安心していい、とのことだ。
そう、ランクだ。
「どうも、Cランク冒険者パーティ、『紅蓮の矢』のリーダー、ジャン・ルコックです」
冒険者『ギルド』だからな、事業な訳だ。
そして、事業となると、格差……、上下関係ができる。人ってのはそういうもんだ。
この、冒険者ランクってのは、強さだけじゃなく、信用度も加味してのものらしい。
その格付けはこうだ。
S:伝説。歴史に名を残す。
A:プロ中のプロ。爵位をもらえてもおかしくない。
B:プロ。貴族に騎士や指南役としてスカウトされることが多い。
C:ベテラン。腕っ節の強さだけではなく、信用もないとCランクまで上がれない。
D:一般。冒険者として充分に稼いで、蓄えを持つこともできるランク。一生をDランクで終える冒険者も少なくない。
E:駆け出し。冒険者として何とかやっていける最低限のレベル。
F:見習い。下働き、丁稚レベル。
こんな感じだ。
Cランクのパーティとなると、まあ、信用しても大丈夫だろう。
「よろしくお願いします、チャールズ・ルチアーノです」
軽く握手してから、早速、移動を始める。
「え?荷運びの馬とかは……?」
と聞かれたので、腰にある袋から、その袋にどう考えても入らないくらいの長さの剣を取り出して見せた。
「アイテムボックスですよ」
ネットスーパーの魔法雑貨屋テナントにて、五百キロ入れられるアイテムボックスが三百万ポイントで売っていたので買った。卸値価格なんなのか何なのか、めちゃくちゃ安い。
同じものを四つ買って、四人娘にも与える。四人娘のアイテムボックスには、服や石鹸、ちり紙にタオル、歯ブラシや櫛などを入れさせておいた。
「アイテムボックス!よくもまあ、そんな貴重なものを!」
アイテムボックス、しかも五百キロも入れられるようなものは、こっちの世界だと金貨五千枚はするだろう。
とにかく、アイテムボックスがあると言っておけば、道中の食料は契約通り出せると言う証拠になる訳だ。
安心した紅蓮の矢は、早速街から出た。
「にしても、何故ククラから出国するので?」
おっと、俺は知ってるぞ。
こう言う質問に迂闊なことを答えると、後々めんどくさいことになるんだ。下手にごまかさず、ちゃんと答えよう。
「魔族との戦争とかで、最近はきな臭いですからね……」
そう、魔族との戦争。これについて、他の商人達もよく色々と口にしている。
戦争だから稼ぎ時だとか、いや危ないから逃げようだとか。
「ああ、やっぱり分かりますか……。我々も同じ理由です。ちょうど良い時期ですよ、今は。噂によると、異世界から来た勇者達の訓練が終われば、国境を閉鎖して、本格的な戦争の準備に入るとか……」
よし、正解だったな。
「今は、冒険者も、どんどんこの国を出ています。戦争なんて、みんなごめんですからね」
なるほど、冒険者も逃げてるのか。
「冒険者は参戦しないので?」
「割りに合わないんですよ。命の危険の割に、もらえる報酬も少なくて、顔も売れませんしね」
ふーん、やっぱり、戦争なんてするもんじゃねえな。
「それに、相手は魔族ですからね……。魔族ってめちゃくちゃ強いんですよ」
「戦ったことがお有りで?」
「いえ、そうじゃなくって、他国で魔族の冒険者に会ったことがあって……」
なるほど、魔族の力を間近で見たのか。
「あんな強い魔族と戦うなんて、その時点で最悪なのに、冒険者なら最前線に雑兵として放り込まれますよ……。死ぬと分かっててなんでそんなことをやるのかって話です」
「なるほど、世知辛いもんですなあ」
「まあ、ドゥムヤ王国はそこそこ稼げそうなのが救いですね」
そんな世間話をしながら歩く……。
痩せてえよお……。
いやー、にしても、まだこの辺りじゃ、このおっさんが単なるイケメンで終わってますね。
ですが、じきに、「ああ、やっぱりこいつもこの作者が書く主人公なんだな」と理解できるようなサイコパス風味を出して行きますよー。サイコパスならまかせろー(バリバリ)。
それと、ロボットもの、反応が良さげなんで、今のうちに書き溜めを作っておきますね。