「ありがとうございます……、ありがとうございます……!」
「えぇ……」
俺ちゃん、とってもビビったですわ。
どうやらこの世界は、俺が思っている以上に酷いらしい。
まあ……、確かに、トイレはおまるで上下水道なし。
食い物は、品種改良されていないゴミみたいな野菜ばかり。
しかも、芋とかトマトみたいな、新大陸の便利な野菜は総じて未発見。
あるのは、玉ねぎやポロネギ(太い長ネギだ)、コールラビ(キャベツ味のカブみたいなの。地球にもあるぞ)とかパースニップ(白にんじん)とか、その程度しかない。野菜のレパートリーが少ない、すなわち、食べられるものが少ないのだ。
更に、モンスターとか言う危ない生き物がたくさん出るし。
もちろん、医療も未発達で、理容師が医者を兼ねている。そして、治療は大抵、瀉血だとか、怪我した部分の切断だとかそんなんばっかり。
しかし、魔法によって発展している部分も多く、魔法薬なら怪我が治り、マジックアイテムなら銃よりも強い攻撃ができるなど、現代日本にもない凄いものは存在するっちゃする。
また、鉱物資源が豊富で、ミスリルやアダマンタイトなど、地球にも存在しないような超高性能な金属が存在する。
けど結局、クソみたいな貴族が全てを台無しにする。
司法も腐敗し、決闘制度やら、復讐やらが合法。
何にせよ、ロクでもない世界ってことだな。
「あ、洗い物やっておきますねー」
「デース」
「お、ありがと。これ、洗剤とスポンジね」
明良ちゃんが魔法で水の玉を作り出し、アンジェラちゃんがゴシゴシと皿洗いをしてくれた。
その後、皿を回収して、更に移動。
冒険者達と話すことも、もう特にないので、適当にアンジェラちゃんと世間話しておく。
「でさあ、インドの収録はマジでキツくて。俺は身体強いから平気だったんだけど、スタッフの半数がなんか変なウイルスにやられてぶっ倒れてさ」
「オー、それは大変デスねえ。この国もベリーダーティーなので、クラスメイトも何人か病気になっていマシたよー」
「やっぱり、清水に棲むジャップ族は、汚いとこに行くとすーぐ病気になるな」
「私達も気をつけなきゃダメデースねー」
そんな話をしつつ、道を行く。
やがて、冒険者から情報を吸い上げ終わった風香ちゃんと、陽ちゃん、明良ちゃんも近寄ってくる。
周辺の警戒については、俺が察知スキルを使っているし、風香ちゃんが、察知スキルよりももっと便利で強力な『地図作成』スキルを使ってくれているので、ほぼ確実に奇襲は防げる。
察知スキルや、風香ちゃんの地図作成スキルは、意識しなくても一日中使えるような消耗の少ないスキルなので、こうして会話していても周辺の警戒はバッチリできている。
「にしても、ギルドとか……。いかにもファンタジーって感じですよね〜」
陽ちゃんが言った。
「いや、現代日本にもギルドあるじゃん」
と、俺は一言。
「え?」
「えーと……、ああ、農業組合や漁業組合のことですね」
と風香ちゃん。
「言ってしまえば、『座』や『株仲間』のようなものですからね、ギルドって」
「……『座』って何だっけ?」
と陽ちゃん。おいおい、それはヤベーだろ。ちゃんと覚えてなきゃダメだぞー?
「平安時代頃に生まれた同業者同士が集まってできた組合のことですね。貴族や寺院に金銭を納める代わりに、その場所での独占販売権や営業権などを得ていた組織です」
そうだな。まあ、俺もそこまで詳しくは覚えてないが。
「冒険者さん達に聞きましたが、この世界でも『貴族』や『教会』の権力がとても強いので、業種別にギルドがあるそうですよ。そんな中でも、冒険者ギルドは独自戦力を持ち、規模も大きいので、そうそう軽んじられたりはしない、とのことです」
「なるへそー。要するに、貴族や教会ってヤクザみたいなもんなのね」
「そう言うことを言うのはいけませんよ?」
「大丈夫だってば〜、ここには誰もいないしねー」
そんな話を小声でする四人娘。
そんな感じで歩いて行く。
「あ、モンスターです」
ある時、風香ちゃんが言った。
その通り、何匹かのモンスターが近寄ってきたのだ。
モンスターは……、ゴブリンだ。
この世界、作画がダークファンタジー寄りなので、ゴブリンとかオークとかは、ガチで醜くて邪悪なバケモノだね。
何かこう、「ゴブゴブ〜!」みたいな感じのデフォルメされた奴じゃなくって、「ゲギャガアア!!!!」って感じの怖いやつ。
男は容赦なくぶち殺して女は攫ってレイプしてくる系だ。
交渉は完全に不可能、好きな食べ物は赤子って感じの系統。
キャラクターデザインが新天堂なら、絵面はオープンワールドゲームだったんだがなあ。
「任せてください!」
そんなことを思っているうちに、ここに二人の男女を残して、四人の冒険者が前に出た。
「はああっ!」
「やあっー!」
「くらえ!」
「とりゃー!」
俺の目から見ると、「お粗末」そのものだが……。
「どう思う?」
とこっそり陽ちゃんに訊ねる。
「私達より弱い……、ですね」
そうなる、か。
ファンタジー学園ものが書きたい気分はあるが……、それよりもまずファンタジーロボットものだな。
ファンタジーロボットものの主人公は結構に外道なので、学園編初日で四人を半殺しにしました。
主人公のハーレムメンバーに手を出そうとした王子様をボコったり、不良グループを半身不随にしたり、お姫様を全裸にひん剥いて散歩させたりと悪行の限りを尽くして、学生なのに最前線に飛ばされます。
何かこう、特務部隊とかって名目で、最前線の死地に向かわされるんですが、その度にどんなピンチの盤面もひっくり返して勝ちまくっちゃうんですよ。そして、報酬に大金を要求するんです。
そして、金が貯まって、軍学校を卒業。貯めた金で傭兵団を結成。
全世界で暴れ回る!みたいな。