どう言うことだ。
私、茨木陽は、三人の親友と、巻き込まれチート転移者である景虎さんと一緒に行動している。
さっき、覚悟を問われた。
仲間のために他人を殺す覚悟を。
私は、ククラ王国での修行の時に、覚悟を決めたはずなんだけど……。
それは、覚悟を決めた「つもり」になっていただけみたいだ。
事実、今、こうして……。
「あ、ああぁ……!」
「怯えてんのか、ガキィッ!!!」
私は震えていた。
伯爵の使いを街のど真ん中に吊るして、街を脱出した時の話だ。
アル・カポネに変身した景虎さんについて行き、テディの街を離れた私。
今回は急な移動だったので、護衛の冒険者はなし。
歩き移動で、ふーかのマップの示す通りの道を行く。
「次はテッドの街に移動するんだね?」
「ああ」
「また、スパイスとかを高値で売りつけるの?」
「もちろんだ」
「……もし、テディの街みたいに、貴族とかに絡まれたら?」
「聞かなくても分かるはずだが?」
「……うん、分かってる」
「じゃあ何故聞いたんだ?」
「もしかしたら、って思って」
そんな風な話をしながら、道を進むと……。
「か、景虎さん!盗賊がいます!」
ふーかが叫んだ。
盗賊……!!!
やっぱり、その手の人達が出るんだ!
女なら、犯されて殺される!
「そうか」
「そうか、って……!このまま進めば、盗賊が!」
「他に道は?」
「ありません、けど……」
そう、この世界は、道がない。
まず、道路じゃないのは当然。街の大通りでも土の道。
そして、街の外は、私の首まで伸びた雑草がぼーぼーに生えている。
雑草だけじゃなく、底無し沼や毒虫、毒蛇にモンスター、その他未知のウイルスなんかが山盛り。
だから、土の道以外の場所を歩くのはめっちゃ危ないんだそうだよ。
「盗賊より、毒虫や病原菌の方が怖い」
だからと言って、毒虫や病原菌より、殺し合いを選ぶのはどうかしてるよ……。
「で、でも……!」
ふーかが食い下がる。
けど……。
「覚悟は嘘だったのか?」
そう、問われてしまうと、私達は何も言い返せなかった。
そして、私達は、下卑た笑い声を上げる盗賊達の前に立たされた。
「危なそうなら助ける。好きなようにやってみろ」
血の気が引く。
何で助けてくれないの?
「女だ!犯せ!」「男は殺せ!」「あの乳のでけえのは俺が一番最初に使うぜ!」
怖い、怖い、怖い!
殺すのも、殺されるのも怖い!
「行け。俺の仲間であると言うならば、証明して見せろ」
「あ、ああ……!」
「なんだぁ、こいつら?ビビってんのか?ぎゃはははは!!!」
私が怯えている時に、なんとか動けたのはあきらだ。
あきらは、とっても勇気がある人だから。
「ち、近寄るなっ!!!魔法を撃つわよっ!!!」
あきらは、手元の杖を盗賊の方に向けた。
「遅えんだよ!」
盗賊が弓を放つ。
咄嗟のことだったけど、私は反応できた。
腕を伸ばしてあきらを庇った。
私の肩に矢が突き刺さる。
「が、ああっ……!!!」
あまりの痛みに声も出ない。
けど……、城でのレベル上げ訓練の時に、狼のモンスターに噛まれたこともあるし、骨折したこともある。
痛みにはある程度慣れている。
私は、肩に刺さった矢を抜いた。
「ぎぃ……、っ、がああっ!!!」
「ひなた!ごめん!ごめんね、私のせいでっ!」
「大丈夫……、白魔法発動、『ヒール』!」
私は、自分の怪我を治した。
「よくも……、よくもヒナタをっ!殺すデスっ!!!」
刀を抜いたアンが、怒りながら駆けていく。アンは、友達のためなら本当に命をかけられる、優しい人だ。
アンは、酷く興奮していて、二、三人、バッサリと斬り捨てた。即死だろう。
「か、囲め!囲め!」
まずい、盗賊は、アンを囲んで、四方から攻撃するつもりだ!
「あ……、あああああっ!!!『大地の神秘』ッ!!!」
ふーかが、突風を起こして、囲もうとした盗賊を数十メートル吹き飛ばす。こちらも即死だ。
「陽さん!明良さん!アンジェラさんの援護を!」
ふーかはそう叫んだ。悲鳴のような声だった。ふーかは、とても冷静で頭がいいから、この場でも、冷静な判断をしてくれた。
「う、うわあああああっ!!!」
私は、がむしゃらに剣を振り回して、何人かの盗賊を斬った。手加減なんて、している余裕はない。何人か殺した。
「あああああっ!『マジックミサイル』!!!」
あきらも、無茶苦茶に魔法を乱射した。あきらもまた、しっかり狙う余裕なんてない。盗賊の胴体や頭に突き刺さった。即死だ。
そして……。
盗賊を皆殺しにした。
吐き気がする。
頭が痛い。
全身、返り血でぐちゃぐちゃ。
「良くやった、とりあえず風呂に入ってこい」
景虎さんに言われて、ふらふらな足取りでお風呂に入った。
髪から、真っ赤な水が流れる。
「やだ、やだやだ、やだ」
気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い!
何度も何度も髪を洗い、身体を洗う。
そして、お風呂から上がったら。
「食事は摂れそうか?」
と聞かれた。
「……いらない」
私達は断った。
とてもそんな気分じゃない。
「じゃあ構わない。精神安定剤と睡眠薬を病院から買ってきた。これを飲んで今日はもう寝ろ」
言われた通りにした。
次の日。
「朝食は摂れそうか?」
景虎さんは、いつもと全く変わらない様子で、私達に問いかけてきた。
「………………なんで?」
なんで、私達を人殺しにしたの?
なんで守ってくれないの?
「何でとは?」
「何でとは、じゃない!どうして!なんで!なんで守ってくれなかった!!!どうして!!!」
景虎さんは、驚きもせずに、タバコに火をつけて、言った。
「守って欲しいのか?」
「当たり前じゃん!人殺しなんてやりたくない!!!」
「ずっと守られて、餌を与えられ、おもちゃを与えられ……、飼って欲しいのか?」
「あ……?飼う……?」
そ、れは……。
「俺だったら、そんなのは絶対に嫌だ。友人とは、仲間とは、対等な関係でありたい。お前らはそう思わないのか?」
「それは……っ!」
「他人の飼い犬として、一生飼われて、その代わり自由など一切合財存在しない。そんな存在になりたいのか?俺は嫌だがね」
「そんなの……、そんなのは分かってるよ!!!あそこでアンタに守ってもらったら、私達は一生アンタのペット扱いだ!そんなのは嫌だっ!!!!だけどっ……!そんな簡単に割り切れるもんじゃないんだよっ!!」
すると、景虎さんは……。
「来い」
「……え?」
「来い」
「う、うん」
ぎゅっと、抱きしめてくれた。
「よく頑張ったな。確かに、無理をさせたのは認める。すまなかった。だが、お前達は、しっかりできた。役目を果たした。土壇場で行動できた。偉いぞ」
「……!」
「これで、お前達は、本当の意味で自立した。俺の犬じゃない、仲間だ。対等な関係だ。今日は俺を守ってくれてありがとう。俺もお前達を守るからな」
「うん……!私も、ありがとう……!」
景虎さんは、自分の流儀に従っている。
プライドを持って生きている。
私達みたいな普通の人には眩し過ぎるプライドを。
ついて行けないかもしれない。
でも……。
私達も、この人と同じ位置に立っていたい。
陽は、対等な立場になりたいと思っています。
腑抜けている訳でもなく、女子高生の平均か、それよりもメンタルは丈夫です。
先日のアンケート、めちゃくちゃ均衡してて草生えますよ〜。
手直ししなければ、最凶傭兵はエログロ描写が多過ぎてなろうでは連載できないと思うのでカクヨム辺りで。
手直ししてR18版にすれば、ノクターンでの転載があり得ますねぇ!!!エロ描写追加、詳細なオレツエー描写の追加などで、文章量はどーんと増えると思います。俺がエロ描写を書くとどうなるかは、旅人提督R18を見れば分かると思うよ。
R18版にすれば、ヒロインとの絡みがグッと増えて、読み応えは増す……、かもしれない。
ここまで均衡するとどうしたら良いか分かんないっすね。とにかく、続き書こう……。