ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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アサクリ、あぁー、良いっすね〜。

今作は分岐とかないみたいだけど、俺はついつい人格者的な選択肢を選んでしまう。

それは俺が人格者だからなのではなく、俺が主人公は人格者だと思っているからです。


23話 籠の中の鳥は幸せなのか

私、犬神明良は、あの時。

 

陽が、自分は飼われるだけの犬じゃないと、景虎さんに言った時。

 

私は、私、は……。

 

『犬でもいい』と。

 

そう思ってしまった。

 

確かに、対等な立場でいることは嬉しいし、そうでありたいと思う。

 

けど……、私はそんなに強い人間じゃない。

 

犬でも良いから、ずっとそばにいて欲しいと、そう思ってしまった。

 

それだけじゃなく、事実上、私達は景虎さんに飼われていると言っても過言じゃないわ。

 

景虎さんが気を遣って、対等な仲間ということにしておいてくれた、だけだと。

 

私は気付いてしまった。

 

それに……、景虎さんなら、犬になった私でも、きっと大切にしてくれるはず。

 

いっそのこと、景虎さんを心から愛して、人権も貞操も、全てを捧げてしまえば……!

 

いや……、駄目ね。

 

そんなことをしたら、陽がなんて言うか……。

 

こんなことになっても、友達の目が怖いなんて、とことん臆病な女なのね、私……。

 

結局、強がっているだけで、何もできやしない無能ね……。

 

 

 

初めて人を殺した、その次の日。

 

私達は、ネットスーパー病院のカウンセリングを受けて、何とか軽い食事までならできるようになっていた。

 

あの精神安定剤、めちゃくちゃ効くわね……。なんかやばいもんでも入ってるんじゃないかしら?

 

まあ、どうにか、コーンフレークだけを少し食べられたわ。食べないと身体が保たないものね。

 

アニメの類も今日はもう見る気がしない。

 

とにかく、次の街を目指して歩くことだけを考えよう。

 

暗い顔、重い足取りで私達は歩く。

 

「あ……!」

 

風香が声を上げる。

 

「また、盗賊です……」

 

「またなの?!」

 

私は思わず怒鳴ってしまった。

 

「は、はい……」

 

「あ……、ごめん……」

 

また、戦わなきゃならないの……?

 

今度こそ、心が折れてしまうかも……。

 

そう思っていたんだけど……。

 

「その調子じゃ駄目そうだな。お前らは、自分の身を守ることだけ考えろ。俺が前に出て始末する」

 

「か、景虎さん……」

 

すると、景虎さんは、バスタードソードとハンドガンを片手に前に出た。

 

「おおっと!ここは行き止まりだ!命ごと置いていくか、命以外の全部を置いてくか選びな!ぎゃははははぺぎゃ」

 

銃声。

 

盗賊の頭が爆ぜる。

 

全くの躊躇なしに引かれた引鉄。

 

大きな音。

 

ボスの突然の死。

 

一秒か、もう少し長いか、というくらいの時間、盗賊は硬直した。

 

その隙を見逃さず、駆ける景虎さん。

 

あれは、あの動きは……!

 

「ダークライダー、『ベルフェス』……ッ?!!」

 

ダークライダー『ベルフェス』……。

 

平成覆面ライダー、第二十代目、『覆面ライダーゼノン』に登場する、最強にして最悪のラスボス……。

 

設定では、世界の守護者たる覆面ライダー組織の『セフィロト』に所属する、序列第零番の最強のライダーだったが、セフィロトの組織の秘密技術を手に入れると裏切り、複数のダークライダーと共にセフィロトを殲滅し出奔。

 

そして、悪の組織『クリフォト』を創立し、仲間のダークライダー達と共に世界の滅亡と、全人類の悪魔化を画策し、結果として世界の八割を崩壊させた。覆面ライダーシリーズでも最大最強のラスボスと名高い。

 

この物語では、主人公のゼノンが、ヒロインを失った悲しみを乗り越えて、奇跡を数回起こしてやっと倒せた最悪の存在で、しかも、倒された後もダークライダーの残党がいて、根本的な解決に至らなかったという、覆面ライダーシリーズでもかなりの後味が悪い話だった。

 

組織をまとめるカリスマ、圧倒的な力、そして、血も涙もない残酷さを併せ持つベルフェスは、悪役として魅了的で、今なお根強いファンが多く、本編完結後にVシネ版で十二話くらいキャラストーリーができたくらいだ。二次創作小説サイトなどでも、主役として引っ張りだこ。それくらいカッコよかったのよ。

 

その戦闘スタイルは、左手にバスタードソード、右手にマグナムリボルバーを持ち、変幻自在かつ、強烈でド派手な連続攻撃を放つ、というスタイルね。

 

具体的に言えば、ドイツ剣術とガンカタを組み合わせたような動き……、とインタビューで景虎さんが言っていたわ。

 

因みに、デザインは、黒い鎧のようなスーツに、赤色のバイザーとエングレーヴで装飾された鋭角な見た目。

 

そして……。

 

今、景虎さんは、まさにベルフェスそのものの動きを見せている。

 

大きく回転しながら首を斬り飛ばし、ジャンプしながら銃を撃つ。

 

すごい……、一切の躊躇いがない!

 

そうして、一分もしない内に、盗賊団は全滅した。

 

景虎さんは、武器をしまうと、行くぞと短く声をかけてきた。

 

「は、はいっ!」

 

すごい、すごいよ景虎さん。

 

カッコいい、強い!

 

景虎さんなら、私を守ってくれる!

 

弱くて惨めな私の飼い主になってくれる!

 

本当の本当に、どうしようもなくなっちゃったら、泣きながら土下座して、景虎さんに「お情け」をもらって、犬として生きよう。

 

だから、景虎さん。

 

何にもできない無能な私を、どうか守ってね……。

 




明良は上っ面は非常に強気の女の子。

でも、内面はナイーブでか弱い女。



うーん、愛され系主人公……。最近、溺愛もの?ってのがあるのを知った。書くか……?

こう……、万物に精霊が宿り、精霊魔法が基本な世界で、精霊に愛されまくった男の話……、とか?

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