今作は分岐とかないみたいだけど、俺はついつい人格者的な選択肢を選んでしまう。
それは俺が人格者だからなのではなく、俺が主人公は人格者だと思っているからです。
私、犬神明良は、あの時。
陽が、自分は飼われるだけの犬じゃないと、景虎さんに言った時。
私は、私、は……。
『犬でもいい』と。
そう思ってしまった。
確かに、対等な立場でいることは嬉しいし、そうでありたいと思う。
けど……、私はそんなに強い人間じゃない。
犬でも良いから、ずっとそばにいて欲しいと、そう思ってしまった。
それだけじゃなく、事実上、私達は景虎さんに飼われていると言っても過言じゃないわ。
景虎さんが気を遣って、対等な仲間ということにしておいてくれた、だけだと。
私は気付いてしまった。
それに……、景虎さんなら、犬になった私でも、きっと大切にしてくれるはず。
いっそのこと、景虎さんを心から愛して、人権も貞操も、全てを捧げてしまえば……!
いや……、駄目ね。
そんなことをしたら、陽がなんて言うか……。
こんなことになっても、友達の目が怖いなんて、とことん臆病な女なのね、私……。
結局、強がっているだけで、何もできやしない無能ね……。
初めて人を殺した、その次の日。
私達は、ネットスーパー病院のカウンセリングを受けて、何とか軽い食事までならできるようになっていた。
あの精神安定剤、めちゃくちゃ効くわね……。なんかやばいもんでも入ってるんじゃないかしら?
まあ、どうにか、コーンフレークだけを少し食べられたわ。食べないと身体が保たないものね。
アニメの類も今日はもう見る気がしない。
とにかく、次の街を目指して歩くことだけを考えよう。
暗い顔、重い足取りで私達は歩く。
「あ……!」
風香が声を上げる。
「また、盗賊です……」
「またなの?!」
私は思わず怒鳴ってしまった。
「は、はい……」
「あ……、ごめん……」
また、戦わなきゃならないの……?
今度こそ、心が折れてしまうかも……。
そう思っていたんだけど……。
「その調子じゃ駄目そうだな。お前らは、自分の身を守ることだけ考えろ。俺が前に出て始末する」
「か、景虎さん……」
すると、景虎さんは、バスタードソードとハンドガンを片手に前に出た。
「おおっと!ここは行き止まりだ!命ごと置いていくか、命以外の全部を置いてくか選びな!ぎゃははははぺぎゃ」
銃声。
盗賊の頭が爆ぜる。
全くの躊躇なしに引かれた引鉄。
大きな音。
ボスの突然の死。
一秒か、もう少し長いか、というくらいの時間、盗賊は硬直した。
その隙を見逃さず、駆ける景虎さん。
あれは、あの動きは……!
「ダークライダー、『ベルフェス』……ッ?!!」
ダークライダー『ベルフェス』……。
平成覆面ライダー、第二十代目、『覆面ライダーゼノン』に登場する、最強にして最悪のラスボス……。
設定では、世界の守護者たる覆面ライダー組織の『セフィロト』に所属する、序列第零番の最強のライダーだったが、セフィロトの組織の秘密技術を手に入れると裏切り、複数のダークライダーと共にセフィロトを殲滅し出奔。
そして、悪の組織『クリフォト』を創立し、仲間のダークライダー達と共に世界の滅亡と、全人類の悪魔化を画策し、結果として世界の八割を崩壊させた。覆面ライダーシリーズでも最大最強のラスボスと名高い。
この物語では、主人公のゼノンが、ヒロインを失った悲しみを乗り越えて、奇跡を数回起こしてやっと倒せた最悪の存在で、しかも、倒された後もダークライダーの残党がいて、根本的な解決に至らなかったという、覆面ライダーシリーズでもかなりの後味が悪い話だった。
組織をまとめるカリスマ、圧倒的な力、そして、血も涙もない残酷さを併せ持つベルフェスは、悪役として魅了的で、今なお根強いファンが多く、本編完結後にVシネ版で十二話くらいキャラストーリーができたくらいだ。二次創作小説サイトなどでも、主役として引っ張りだこ。それくらいカッコよかったのよ。
その戦闘スタイルは、左手にバスタードソード、右手にマグナムリボルバーを持ち、変幻自在かつ、強烈でド派手な連続攻撃を放つ、というスタイルね。
具体的に言えば、ドイツ剣術とガンカタを組み合わせたような動き……、とインタビューで景虎さんが言っていたわ。
因みに、デザインは、黒い鎧のようなスーツに、赤色のバイザーとエングレーヴで装飾された鋭角な見た目。
そして……。
今、景虎さんは、まさにベルフェスそのものの動きを見せている。
大きく回転しながら首を斬り飛ばし、ジャンプしながら銃を撃つ。
すごい……、一切の躊躇いがない!
そうして、一分もしない内に、盗賊団は全滅した。
景虎さんは、武器をしまうと、行くぞと短く声をかけてきた。
「は、はいっ!」
すごい、すごいよ景虎さん。
カッコいい、強い!
景虎さんなら、私を守ってくれる!
弱くて惨めな私の飼い主になってくれる!
本当の本当に、どうしようもなくなっちゃったら、泣きながら土下座して、景虎さんに「お情け」をもらって、犬として生きよう。
だから、景虎さん。
何にもできない無能な私を、どうか守ってね……。
明良は上っ面は非常に強気の女の子。
でも、内面はナイーブでか弱い女。
うーん、愛され系主人公……。最近、溺愛もの?ってのがあるのを知った。書くか……?
こう……、万物に精霊が宿り、精霊魔法が基本な世界で、精霊に愛されまくった男の話……、とか?