ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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エルデンリング、バグっぽいなこれ。



29話 馬車のお話

田舎の村で追い剥ぎ殺人の標的にされた俺達。

 

どうにか逃げられたが、これ以降、俺達はこの世界の人々を信じることをやめた。

 

え?ただおめおめと逃げ帰ってきたのかって?

 

そんな訳ないだろ。

 

はい、ここにスイッチがあります。

 

これを押すと〜?

 

どーん、と遠くで大きな爆発音が聞こえた。

 

つまり、そういうことだ。

 

「……何やったんですか?」

 

「ボンバーマンって名作だよな」

 

「爆弾ですね?!爆弾仕掛けてきたんですね?!」

 

そんな風に話しながら、俺達は野宿することにした。

 

暗闇をライトで照らし、テントを設営して、その中で寝る……、のだが、交代で見張りをすることとした。

 

あんなことがあった後で、全員で寝るほどアホじゃない。

 

まあ、五人もいればなんとかなるだろう。

 

一応、俺が一番辛い深夜帯の見張りを引き受けた。

 

それは親切心ではなく、単純に一番危険な時間帯を他人に任せたくないからだ。

 

四人娘が仲間なのは確かだが、身体能力も精神力も俺より遥かに低いのもまた確か。

 

弱い奴に夜中の見張りなんて重要なことを任せられないってことだ。

 

俺一人、二人、二人の三交代制で見張りをしつつ、夜を過ごした。

 

 

 

次の日、ネットスーパー内のテナントのレストランで朝食を摂り、移動を再開した。

 

「ところで、昨日の爆弾っていつ仕掛けたんですか?」

 

「最初からだ」

 

「最初から?」

 

「ああ、最初に、村長に塩の入った壺を渡しただろ?」

 

「……え?!あれ、爆弾だったんですか?!!」

 

「ああ、壺の底に小型の高性能爆弾を仕込んでいた」

 

「もし、あの村がまともな人の村ならどうするつもりだったんですか?!」

 

「近頃の新型爆弾はそう簡単に爆発しないらしいし、次の日の朝になんだかんだ理由をつけて壺だけ回収してただろうな」

 

「うへぇ……。なんでそんなことしたんです?村の人達、別に怪しくなかったじゃないですか?」

 

「怪しくないのはおかしいだろう。普通、こんな封建国家の端の方の村落が、あんなに余所者に優しいなんてあり得ない」

 

俺も、テレビのロケなんかで海外に何度も行ったが、田舎の方の外国人はかなり酷いぞ。

 

排他的で、余所者に対しては冷たいもんだ。

 

それがあの村では、かなり田舎のはずなのに、不自然に優しかったからな。

 

「なるほど、最初から疑ってたんですね……」

 

「風香……、因みにだが、爆発の被害はどれくらいだった?」

 

「そ、その……、村人が八割方死んでいます。何故こんなに強力な爆弾を……?」

 

「いや、ネットスーパースキルに任せたから威力は知らなかったな……。八割の村人が死んだら、村は立ち行かなくなるだろうに。いやあ、可哀想なことをしたナァ!」

 

そんな話をしつつ、パカパカと馬を歩かせ移動する。

 

 

 

バラオン教国まで、あと十日くらい。

 

……馬ってのは意外と遅いもんなんだな。

 

馬の運用法なんざ知らないんで、定期的にネットスーパー内のテナントであるペットショップに、馬の扱い方について聞きに行っているのだが、馬ってのは繊細だった。

 

日本の車なら、ドブに浸して一晩置いてからでもエンジンがかかるくらいに丈夫、なんて話を聞くが……、馬はそうじゃない。

 

食べるものや、睡眠や休憩の時間も勘定に入れなきゃならないし、怖がらせるようなことはしちゃいけないんだとか。

 

車なら、運転手さえ起きていれば何時間も動かせるが、馬車はそうじゃないのだ。

 

馬は、二時間くらい歩かせたら、三十分くらい休ませなきゃならないみたいで、一日に進めるのはたったの五十キロ前後。

 

五十キロだぞ?車なら一時間もあれば休みなしで移動できる距離だ。

 

そりゃあ、単なる移動に十日もかかるってもんだ。

 

幸い、今は四月ごろなもんで、移動は楽だが。

 

「しかし……、馬車になど乗って良かったのでしょうか……?」

 

ネットスーパーの人材派遣サービスで呼び出した御者(時給1000ポイント)に馬車の操縦を任せて、俺は馬車の中で読書に励んでいたのだが……。

 

風香が、そんな言葉を漏らした。

 

「ああ、この世界の文化レベルだと、馬車に乗るのは貴人か富裕層だからーってことか?」

 

俺は、憂いを帯びた表情の風香にそう言う。

 

「はい……、無位無冠の私達が馬車を乗り回すなんて……」

 

この世界をしばらく見て回った結果から分かったことだが、この世界はバキバキに階級社会だ。

 

一番上が王侯貴族と教会関係なのは言わざるとも分かるだろう。

 

その下に上級役人や職人がいて、更にその下に下流階層……、例えば見習い職人や奉公人なんかがいて。

 

最底辺にいるのが、娼婦に傭兵、乞食に流民……、そして冒険者だ。

 

え?奴隷?奴隷に階級なんてないぞ?アレは道具だからな。人間に似た別の動物みたいな扱い。

 

そんな中で俺達……、外国人冒険者は?

 

聞いて驚け、カースト外だ。

 

ユダヤ人商人のようなカースト外階級ってことだな。

 

具体的にこれが何を意味するか?

 

うーんそうね、白人金持ち層が住む高級住宅街で、我が物でベンツを乗り回す黒人……、みたいな?

 

いや、それよりもっと酷い。

 

言ってしまえば、法の加護の下にないから、ぶっ殺されても文句は言えないくらい……、だな。

 

法律ってのはあくまでも国民を守るためのものだからね。外国人は国民じゃないってことだ。

 

そもそも、俺達はこの世界の人々とは人種も違うからな。

 

俺達はアジア人と白人な訳で。

 

この世界の人々は、地中海系のコーカソイドに近い顔つきながらも、やたらとカラフルな体毛を持っている。ブラウンと金色が多く、赤色や青色なんてのもいる。

 

そんな中で、俺のような黒髪のモンゴロイドは目立つわ目立つわで。

 

我々日本人も、国内でベンツやらランボルギーニやらを乗り回す中国人を見つけたら「何だあいつ?」と思うだろ?

 

それと一緒。

 

俺達日本人が馬車を乗り回すってのは、この世界ではそう言うことなんだ。

 

では、どうするべきか?

 

「発想を逆転してみろ、馬車に乗ってもおかしくない立場になればいい」

 




盲目の巫女に腐った人の目玉を食わせるとか、普段どんな生活してたらそんな外道行為を思いつけるのだろうか?と感心したわ。


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