ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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創作意欲ヤバい。


30話 文明力の差は如実

「……言いたいことは分かりますけど、目立って良いんです?」

 

陽がそう言う。

 

そう、俺の案とは、「馬車に乗っても不自然じゃないくらいの商人になること」だった。

 

「んんー?別に目立ちたくないとは言ってないぞ?」

 

ただ、俺の身バレや能力バレを防ぎたいだけで。

 

「えぇ……」

 

陽は顔を顰めるが……、隣の明良が声を上げた。

 

「いや……、その方がかえって良いんじゃないかしら?」

 

と。

 

「どう言うことデス?」

 

アンジェラが首を傾げる。

 

すると明良は、人差し指をピンと立てて説明を始めた。

 

「まず、私達って、人種レベルでこの世界の人達とは違う異邦人な訳よね?」

 

「イエス、ストレンジャー、デスね」

 

「今のままだと、法の加護の下にすらない、流民みたいなものよね」

 

「ハイ、アメリカでも、難民の人達は悪い立場でした。現代の地球でもそうなのに、この中世のような世界では……、ってコトデスね?」

 

「そうよ。だから、どの道カースト外扱いされるなら、お金持ちな外国人商人ってことにしておいた方が過ごしやすそう……、ってことよ」

 

「オー!なるほどデース!」

 

そう、俺が言いたいことはまさにそれだった。

 

どの道、ユダヤ人商人のような扱いなら、金持ちの方が得だと言うことだな。

 

この世界では、金銭は『不浄なるもの』で、商人というのも本質的には賎業とされている。

 

商人は積極的な喜捨や、王侯貴族や教会への金貸しで社会貢献をしないと差別されてしまうのだ。

 

我々、現代日本人は、相当なキチガイ……、例えば、「オスプレイは鉄十五トンでできているから原価は十五万円!」レベルの人でもない限り、経済の重要性は理解できるはず。

 

鉄十五トンでも、それを運ぶ『輸送費』、航空機の形に加工する『技術費』、加工する人々を雇う『人件費』など、諸々込みで何十億円になるのは想像に難くないだろ?

 

でも、この中世ナーロッパ世界の人々は、それが考えられない。

 

りんごの原価が百円だとして、りんごを収穫する人の人件費が十円、輸送費が十円、お店の利益が十円で、合計百三十円で売りますよー、と言ったとしよう。

 

この世界の人々は、それが理解できないのだ。

 

百円のりんごは百円で売るべき!間に入って無駄に金を請求する商人は悪者!って言われてる訳だな。

 

だったらテメーが危険な森の中に入ってりんごをもいで街まで持ってきて食えば?と言うと難色を示すが。

 

でも安心してくださいよ、商人もカスなんで。

 

下流層の人間は文字も読めないし数字も分からないからぼったくり放題なんですよ。

 

うーん、世界全てがクソだなあ。惚れ惚れとしちゃうぜ。

 

 

 

さて、そんな訳なので、謎の金持ち外国商人として振る舞うことを決めた俺達。

 

とりあえず俺は、偽名として『ティガー・コルレオーネ』を名乗る。

 

英語にイタリア語のクッソふざけた名前だが、この世界では特に問題ないようだ。

 

服装はノーベントのフォーマルなブラックスーツにハット、ステッキを持った紳士に変装する。

 

俺の顔つきや体格もあり、どう見てもマフィアなのだが、この世界の商人もマフィアみたいなもんなので良いんじゃないかな。

 

バラオン教国まであと七日……、と言うところで、バラオン教国とこの国……、ドゥムヤ王国の境界にある街に着いた。

 

マトリヨという街だ。

 

ドゥムヤ王国とバラオン教国は、宗教的な対立も特になく、友好国という枠組みに収まっている。

 

故に、この街は、交通の要所にして貿易の要所である。

 

先日まで俺達が経済的に荒し回っていたテディの街よりも、質も規模も倍はあるだろう。

 

ここでしばらく活動したい。

 

 

 

はい、普通に入門できました、と。

 

なんかよく、ゲームとかでは犯罪者プレイヤーの名前が赤くなるみたいな機能があるけど、この世界はそういうんじゃないんかね?

 

ステータスは出るのにな、おかしいな。

 

と、そんな話をしたら、風香が、「身体能力や知力などは、スポーツテストや学力テストなどで測れて数値にできますし、ステータスが出るのはおかしくないのでは?」とか言われて納得。

 

確かに、筋力が強くなれば、持ち上げられるダンベルのkg数が大きくなり、それが目に見える。

 

しかし、殺しや盗みをしたとして、その人間の何かが変わるとは思えないもんな。少なくとも、いくら犯罪をしたところで、数値で表せるような変化はないだろう。

 

なるほどね、そういうことか。

 

そんな感じで、普通に街に入れた俺達は、早速商人ギルドへ向かう。

 

商人ギルドは、冒険者ギルドよりも上等な石材でできた小綺麗な建物だった。

 

赤いレンガの中世風……、風香が言うには、バルト海沿岸でよく見られる形式のゴシック建築に近しい建物。

 

ここは内陸なのに、何故こんな建物が並ぶのだろうか?

 

後で調べて分かったことだが、どうやら、火の魔法でレンガを焼いて、重力の魔法でレンガを軽くして運ぶそうだ。

 

魔法のせいで建築技術が発展しているんだな。

 

その代わりに、本来ここまで建物が堅牢になれば発達するはずの大砲などは殆ど未発達で、代わりに攻城兵器は魔法使いなんだとか。

 

で……、街の衛生環境などは、日本と比べれば最悪の一言だが、俺達が召喚された国よりはマシか。

 

道端に生ゴミや汚物を捨てていて、それを街中の豚やネズミが貪っている。

 

「……あの豚、もしかして、食べるの?」

 

と陽が呟く。

 

無理もない。

 

使用人らしき女が、道端におまるをひっくり返し、そこに豚が群がっているのだから。

 

「食べるらしいぞ」

 

つまり、クソを食って育った豚を人間が食う訳だ。

 

「……ティガーさん、私、この街で絶対に食事しないから」

 

顔を青くした陽が、俺の袖を引っ張ってそう言った。

 

「そ、そう言えば、人も汚いわね……」

 

明良も、俺の腕に引っ付いてきた。

 

あれは奴隷だろうか、垢まみれで肌がマーブル模様になっている男が荷運びをしている。

 

中世後期では、水に浸かると病気になると信じられていた、なんて言うのは有名な話だが……。

 

「前の街での情報収集によると、昔はお風呂に入る習慣もあったみたいです。ただ……」

 

風香の説明によると、非衛生な風呂屋の乱立により、性病などの感染症が蔓延したらしい。

 

それにより、風呂屋は規制されたのだとか……。

 

我々、現代日本人は、三日もシャワーを浴びられなかったら、自他共に相当に嫌な気分になるだろう。

 

だが、この世界では、入浴しないのが当たり前、たまに水浴びや身体を拭く程度が普通なのだ。

 

どんなに美男美女でも、数ヶ月間入浴していない異性とか、手を出せるだろうか?入浴しないでも平気な価値観の人々と分かり合えるだろうか?

 

俺は無理だ。

 

女達もそう思っているらしく、明らかにドン引きの表情。

 

こうして、俺に拾われて、なまじ現代人並みの生活を取り戻して心が落ち着いた今では、この女達は周りの人間が汚物にしか見えなくなっているようだった。

 

そんな女達をよそに、俺はズカズカと商人ギルドへと踏み込む……。

 




あー現代ダンジョンもの。

あー書きたい。

それはそれとして武装JKとイチャイチャする話も30話くらい書けてるよー。


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