朝、起床。
作り出した水で顔を洗う。そして、シャワールームで汗を流して、ジーパンとシャツに着替える。
朝食はベーコンエッグとパンで良いだろう。
それから髪を整えて歯を磨き……。
さあさあ、どうしようか?
家なき子、俺。
ああ、可哀想な俺!
家もない!世界も滅んでる!親兄弟も友人ももういない!
「でも俺には親友のパンチがいるから!」
『オッ、そうだな』
さて、冗談はここまでにして、と。いや、冗談ではないのだが。いろんな意味で。
俺は、近くの交番から地図を引っ張り出す。
パチ屋の隣に交番があったんでな。
ええと、何々?
「自衛隊駐屯地か」
そういや、北区には自衛隊駐屯地があったな。
そこになら、誰かいるかもしれない!
「よーし!目的地は自衛隊駐屯地!イクゾー!」
『デッデッデデデデ!』
カーン!
俺は、愛車のフォーティーエイトに跨がり、自衛隊駐屯地を目指して移動している。
その最中に……、いや、もう外を出た瞬間に。
「行き倒れだ」
行き倒れの男女を見つけた。
「へい!生きてるかい?」
当然、気さくなハンサムボーイの俺は、社交的なので話しかける。
「き、君は……?」
死にかけのジジイが濁った瞳でこちらを見てきた。
「俺は神楽坂紅蓮だ。なんか大変そうだな?薬とか欲しいか?」
俺はそう返す。すると……。
「いや……、儂はもう、いい……。いいんだ」
「良いってなんだよ」
「疲れたんじゃ……。日本軍に追われながら生活するのに……。実験体917号も、もう、限界じゃ……」
「何言ってんだお前?笑うツボどこ?」
「無理だったんじゃ……、散々にあんな非人道的な実験を繰り返した儂が、たまたま一人を助けたからって……。はは、善人になったつもりだったのかのう……?」
「あ、これ、もう目も見えてねえな?死にかけだ」
「すまない……、917号……。結局、儂は、君に何もしてあげられなかった……」
あ、死んだ。
うーん、死にたがってたな。こう言う人を無理やり蘇生するのは駄目だろう。
よく分からんが……、こっちの白髪の女を実験体917号って呼んでたし、日本軍から逃げたみたいな話もしてた。
「おい、あー、えーと、917号さん?」
「あ……」
「あんたも、この男と一緒に死にたいか?」
「い……」
「ん?」
「生きたい……!」
「そうか」
なら、生きれば良いじゃん。
俺は、『万能薬エリクサー』を創り出す。
「あ……、ここ、は?」
「お、起きたか?」
「……ユウジ博士は?」
「ん?ああ、連れの爺さんか?死にたいって言って死んじまったよ」
「そう、なんだ……」
「この家には庭があったから、そこに埋めてやった」
「え?何で?」
何でとは?
「何でって……、火葬とかやり方が分からねーからな。土葬にしたんだよ」
「どそー?何それ?」
んんー?
実験体……、ってそう言うアレかな?
ひょっとして人造人間とかそう言う系のアレですか……?
「そのー、あー、土葬ってのは、死んだ人を土の中に埋めて弔うことだ」
「とむらうって?」
「弔うってのは……、えーと、死んだ人を忘れないでいるために、死体を土に埋めて、埋めたところに印をつくっておくことだ」
「じゃあ、私も、ユウジ博士にとむらうをする」
「そうか、なら来い」
俺は、917号さんをユウジ博士の墓まで案内する。
「ほら、ここでユウジ博士は眠ってるんだ。ユウジ博士の冥福を祈ってやれ」
「めーふくを祈るって?」
「あー……、魂は分かるか?」
「魂……、わかる」
「魂はな、人が死ぬと、良いことをした人の魂は天国へ、悪いことをした人の魂は地獄へ行くんだ。天国に行った魂は穏やかに過ごせるが、地獄に行った魂は酷い目に遭うんだよ」
「じゃあ、ユウジ博士の魂が、てんごくに行けるようにお祈りする?」
「まあ、そんな感じだ」
「ユウジ博士、てんごくに行ってね。助けてくれてありがとう……」
「で、917号さんはこれからどうするんだ?」
「もう、お薬がないから、死んじゃうと思う」
「ん?そうなのか?」
「うん……、一週間に一回、『調整薬』を飲まないと、身体が崩れて死んじゃうんだって」
「前飲んだのは?」
「えーと、私はどれくらい眠ってた?倒れた時点で六日目だったんだけど」
「三日だな」
「……え?あれ?私、死んでない?」
「まあ、エリクサーをかけてやったからなあ」
「えりくさー?」
「どんな病気でも、生まれつきの障害でも、怪我でも何でも、完璧に治す薬だよ。それをたまたま持ってたから、使ったんだ」
「助けてくれたの?」
「美人はほっとけないんだ。それに、君は生きたいって言っただろ?なら、生かしてやるよ」
「ありがとう……!あなたは、私の恩人。私にできることなら何でもするね」
ふーん?
「じゃあ、俺の恋人になってくれ」
「恋人?」
「そう、恋人だ。意味は分かるか?」
「大好きな異性の人のことだよね」
「そうだ」
「うーん……、私はまだ、あなたが大好きなのか分からないよ」
「じゃあ、これから大好きになれば良いさ」
そうして、美少女を一人ゲットした。
何も知らない人造人間ちゃんにセクハラ、しよう!