たまに「おっ?」くらいの目に止まるやつはあるけど、「すげー!めっちゃおもしれー!」みたいなのはあんまりない。
「でも、俺は怪しくなんかないぞ?」
「見るからに怪しいぞ!銀色の髪に、最高級の端末、綺麗な服装!」
あ、そうなんだ。
怪しく見えるのか。
「この髪は染めてんだよ」
実際は、ゲームに出てきた遺伝子改変薬を創造して、地毛そのものを銀色にしたんだがな。染めるのってやっぱり大変だからねー。戦場とかでは中々、髪をいじったりできないし。
なので俺は、髪型と髪色を固定する薬品を服用してある。なので、龍の球みたいな感じで髪型は変わらないのだ。いや、戦闘民族ではないが。
「髪を……、染める?『キョート』の方にはそんな技術が残っているという噂も聞くが……」
と、サムライ女。
へー、そうなんだ。
首都キョートでは、まだこの辺よりマシな生活をしてるっぽい?
何にせよ、キョートでは髪染めが普通だってんなら、キョートから来たってことにしておけば良いか。
「そうだな、俺は西の方から来たんだ」
「そうなのか……?」
嘘だが。
「西の方で結構裕福に暮らしていた商人なんだが、販路を新規開拓しようと思って東に来たんだ」
「ふむ……、おかしくはない、が……。しかし、それでも違和感は大きいな。西で裕福な暮らしをしていたのなら、何故わざわざ東に来たのだ?」
おっ、鋭いな。脳筋馬鹿サムライじゃねえ、考える頭はあるようだ。
「詳しくは話したくないんだが、実家から飛び出してきたのさ。この車や端末も実家からガメてきたんだ」
「いかんぞ、ご両親に迷惑をかけるのは。見たところ、私より歳上だろう?」
んあ?
「おいくつで?」
「私は今年で二十一歳だ」
七歳歳下なのか、行けるな。
「で、そっちの女は?」
「これは……、愛人?」
「愛人なんだな?私にも可能性はあるんだな?!」
なんの話だよ。
「ゴホン、いや、失礼。私はローニンで、仕えるべき主人を探しているとは言ったな?だが、それだけではなく、夫も、その、探していてだな?」
あー?
「いやいや、若くて綺麗だよ。まだまだ全然行けるって。夫もすぐに見つかるよ」
「えっ、こ、こんな年増をもらってくれる人がいるのか?!!」
「……年増?」
「な、なんだ?やはり、二十を超えた未婚の女はおかしいのか?!」
えっ二十で年増カウントなの?
いや、まあ、そうか。
平均寿命とかが短くなり、早婚化が進んでいるんだろう。
一応聞いてみるか。
「結婚適齢期っていくつくらいなんだ?」
「まあ、十五歳くらいだな。二十歳を超えて独り身の女なんて、地雷物件扱いだ!男なら年齢なんて気にされないのに!」
十五歳!そりゃ戦国時代だな。
……まあ、高校とかもやってないだろうし、義務教育とかもないはずだ。
となると、十五で嫁に行くのもおかしくないのかもな。
実際、日本でも、二十世紀半ばくらいまでは、小学校を卒業したら嫁に行け!みたいな感じだったらしいじゃん。
晩婚化ってのは、貧困とババアの僻みによるものだってことよなー。
っと、だが、こんな美人が結婚できねえのはおかしいやろがい。聞いてみるか。
「えっと、何で行き遅れたんだ?」
「サムライを目指してがむしゃらにやってきたんだが、ふと人生を振り返れば、刀を振り回していた記憶しかなくて……」
あー?
「あー、仕事が恋人的な?いるよねー、そういう人。やっぱり適度に遊んでおかないとねえ」
「そうだな……、やはり、もっと男と仲良くしておくべきだった。硬派を気取ってお高くとまっていれば、もう二十一のおばさんだ!」
「いやいや、全然おばさんじゃないから。戦前ではみんな、三十頃に結婚してたんだし普通だよ」
「慰めてくれるのか……、お前はいい奴だな……。よし!礼と言っては何だが、何か買って行ってやろう!」
「おっ、ありがたいね」
という訳で整体をやってやることにした。料金は五千円だ。
「うーん?あー、肩がね、右肩ばかりよく使ってるでしょ。歪んじゃってるよこれ。はいっ、こうして、こう!」
ぼきっ!
「ぎゃーーーっ!!!痛いぃーーーっ!!!」
「後骨盤も歪んでるねえ、右足の方で踏み込んでるから、右に寄っちゃってるよこれ。はいっ、こう!」
ばきばきっ!
「うぎゃーーーっ!!!」
と、軽く整えてやる。
俺もまあ、若い頃は実家の整体院を継ごうと思って、整体の勉強やら何やらをしていたから、半分素人だがこれくらいはできる。
「な、何で虐めるんだぁ……、優しくしてくれたのは嘘だったのか……?」
「いやいや、ほら、立ってごらんよ」
「ん……、んん?あれ?か、身体が軽い!肩がグリグリ動く!腰も、脚も素早く動くぞ!」
「そりゃ整体だからなあ」
「す、凄いなお前!こんなに身体の調子がいいのは久しぶりだ!五歳は若返ったぞ!これで、たったの五千円で良いのか?」
「ああ、ついでに飯も買って行ったらどうだ?昼だしな」
「だが、戦前の食料を買えるほど裕福じゃないぞ、私は」
「弁当ひとつで千円で良いぞ」
「や、安いな?!本当に良いのか?」
「構わんよ。それと、紙パック焼酎はどうだ?一つ千円で良いぞ」
「安い!」
「それとチョコバーはどうだ?これも千円でいい」
「安い!全部一つずつ買うぞ!」
「はい、八千円のお買い上げ」
「あ……、フミナとミヨコの分も買って行ってやろう。更に二セット頼めるか?」
「はい、追加で六千円のお買い上げ」
「ありがとう!まだ街にいるなら、今度は知り合いを連れてくるぞ!」
「それはありがたいな、しばらく滞在するつもりだから、よろしくな」
「ああ!っと、申し遅れた。私はイロハだ!」
「俺はグレン、こっちはクイナ」
「では、またな、グレン殿!」
俺はハーレムが好きなの。
女の人格を否定して、お人形さんのようにコレクションする話が好きなのよ。
特に理由もなく女をコレクションする話なのに、その人間性を覆い隠して大物ぶる話はきらい。
いや、良いんだよ?幼稚な子供みたいに眉目麗しい女を集めて飼い殺しにしても。
でも、それを、なんだかんだと言葉を飾って、主人公が惚れられたから仕方なくーみたいなのは許せんのだ。
正直に、「顔が良かったんで拾いました、一緒奴隷として飼います」と言えよ。