サイカ衆と別れた。
この街では、もう高額の取引もないだろうし、何より、周りの人間がしつこく売り込みをしてくるのが鬱陶しい。
あからさまな金目当てで信用云々じゃないぞこれは。
信用できる人なら、男女問わずいくらでも居て良いんだけどね。まあ女以外雇わないけど。すまない!美女以外は帰ってくれないか?!
俺は切った張ったの殺し合いもしたくないし、自作PCを組む以上の機械弄りもしたくないし、金勘定もしたくないのだ。めんどくさい。
最終的には、能力を使わずとも、周りのみんなに助けてもらいながら穀潰しライフを送れたら良いなとは思う。整体と散髪と、それと煮炊きと気晴らしの楽器演奏くらいの労働ならしても良いよ。
実際、過去の日本でも、カリスマ美容師(笑)とか言って持て囃されてたし。あれは気持ちよかったなー、仕事もぶっちゃけ労働時間は殆どなくて、商売相手もアイドルキャバ嬢ホストのあんちゃんくらいのもんで。
世の中には、荷運びやら死体処理やら、キツくて辛いクソみたいな仕事があるらしいけど、この俺様とは縁のない世界だな。
そういや、死体処理のバイトから売れっ子俳優に成り上がったライダー俳優のあんちゃん、うちに通ってたのに最近急に来なくなったんだよな。どうしたんだろうな?あんちゃんも異世界に転移したとか?んな訳ねーか!ははははは!
まあ、何にせよ、高額取引は人目につかないところでやった方が良いな。今の時代の日本人はまともな道徳なんて持ってないようだし、金があることを悟られちゃ面倒だ。
だが、俺としてはとにかく、大きな商いがしたいとしか言えない。
もしかしたら、能力が使えなくなるかもしれないし、稼げるうちに稼いでおきたいのだ。
……まあ、アイテムボックスには食料、娯楽、服など資材が「建国でもするんですか?」ってほどに入っているから、生きていくこと自体は可能なんだが。
首都高5号通って、環状線を通って、大きく東京を避けて、回り込むように羽田空港を目指そうか。
周りの人間に威嚇して道を空けさせて、エノク軽装甲車に乗り込み、五人で街を出た。
「そんな馬鹿な……。確かに、PSY能力者は人知を超えた力を持つとは言うが、『欲しいものが何でも手に入る能力』なんて、反則じゃないか……」
「あ、頭おかしいで……。そりゃあ、軍用エクステンダーも、車両も、端金で売ろうとするわな。元手がゼロ円なんやから」
「ふざけてる。欲しいものが何でも手に入るなんて、まるで神様」
俺のスキルについても話しておいた。
その上で、バラしたらただじゃおかないぞと警告もしておく。
「もちろんだ、誰にも言わない。と言うか、言ったところで誰も信じないだろうな」
と、そんなこんなで首都高を移動。
首都高には、道を阻むミュータントがいるが、RWSのラインメタルMG3機関銃をぶっ放して抹殺する。
俺、軍事オタクじゃないからいまいち鉄砲とかよく分からないんだけど、ドイツの機関銃だから多分強いでしょ。
ドイツだぜ?工業国じゃん?詳しくはないが、世界大戦の折、ドイツの銃は品質がいいから、敵対国がトロフィー感覚で持って行ったりしたらしいからな。
そんなこんなで、ミュータントやら野盗やらを蹴散らしながら、羽田空港まで移動する……、途中で、飯にする。
普通にハンバーグ定食だ。
もちろん俺の手作り。
まあ、ハンバーグはそんなに難しい料理でもないからな。奥は深いが。
「「「おおぉ……!」」」
「腹一杯食え」
「こ、これは……、変異してない牛肉か!それに米も!」
「ま、また、変異してない生野菜やんけ!」
「味噌汁なんて初めて……!」
食わせる。
「お箸の使い方は覚えたかい、クイナ?」
「ばっちりだよ」
クイナの面倒を見つつ、昼食。
「「「う、美味いっ!!!」」」
「おいしい!」
お腹いっぱい食べた後は、デザートにプリンを食べて、更に移動。
一時間ほどで羽田空港に到着。
橋を通ると、学校の正門にあるようなキャスター付きのスライド門の向こう側から、AB3 Hunter……、狩猟用ライフルを持つ男が四人、銃口をこちらに向けてきた。
「おいおい、勘弁してくれよ」
とは言え、パンチがいる限り、ただの銃弾では俺は死なない。
「何者だ!」
「行商人だ、怪しいモンじゃねえ」
「武器を床に置き、車両から降りろ!」
はあ?なんで?
「そこまでしなきゃならないのか?」
「……この街の周辺に賊徒の根城がある!こちらも警戒しているんだ、理解してくれ」
あー?
そういう感じか。
近くに野盗の巣があるのね。
そうなると、この警戒っぷりも納得できるな。
この世界の野盗、普通の人間と見た目は変わらないからな。
野盗だからって、モヒカンに肩パッドって訳じゃない。普通の人間だ。見た目は。
「良いだろう」
武器を床に置いて、トランクを開けて車両から離れる。言われた通りにしよう。下手に逆らっても意味はないからな。
いかに俺が偏屈であろうとも、道理が通るならそれに従うさ。
門番の一人が、門から出てきて、俺の車のトランクを点検した。
「危険物……、銃弾と爆薬!!!」
門番の一人が声を上げて、警告した。それを聞いた他の門番が叫ぶ。
「何だと?!おい、貴様!これは何だ!」
「売り物だ。賊徒に使えるんじゃないのか?安くしとくよ?」
「それはそうだが……、街中でこの量の爆薬を使われたら、大変なことになる。監視はつけさせてもらうぞ。おい、あいつらを呼んでこい!」
「おう!」
そうして、十分ほど待たされた……。
「この子達ね!」「ふわー、イケメンさんですぅ……」
現れたのは女二人。
癖のある、赤みがかった黒髪を白布で乱雑に結んだ大女。
烏のような黒髪をジェンダーレスなショートカットにした小女。
「お名前は?」
「グレンだ」
「私は監視員のムサシ!こっちはオオシオ!よろしくね、グレン君!」
「よろしくですぅ」
ムサシは、俺と並ぶくらいの高身長な女で、体格もがっしりしている。
カーキーの半袖シャツに黒革のズボンとブーツ、そして藍色の着物の上着を着たチグハグな格好。
腰には太刀と小太刀、自動拳銃のSFP9を帯びている。
オオシオは、145cmあるかないかの小さ過ぎる身長の女。しかし、身体はしっかりと鍛えられていて、華奢と言うほどではない。
薄汚れた白いワイシャツにカーキーのロングコート、ハットを被った怪しい女で、腰にはコンバットマグナムが二丁ぶら下がっている。
二人とも、顔はとても良い。
ムサシは所謂サバサバ系女子、オオシオはサブカル系って顔だ。
「えっとね、怪しいことしたらぶった斬るから、変なことはしないでね?」
「私も、イケメンさんに風穴をぶち抜くのは嫌ですねぇ」
しかし、怖いこと言うなあ。
「そうならないように努力するよ。よろしく、ムサシ、オオシオ」
「よろしくね!」
「よろしくですぅ」
さーて、顔が最高に良いな。
この子達もどうにかして引き抜いちゃお。
今は新作書きたい欲を押さえつけながら、クズ社長の続き書いてます。
アメリカの石油採掘・加工プラントであるヒューストンを、ハロルド・チェス合衆国大統領の命令の下、世界中の冒険者やグリーンベレーの力を借りて奪還する大作戦の話になってます。