そうして、光陰矢の如し。
あっという間に一週間が過ぎた。
羽田の街に立ち寄る行商人を狙う賊徒共は、国道沿いの中学校を根城にしているらしい。
そこに突撃だ。
俺は、神楽坂御一門衆を96式装輪装甲車に乗せ、羽田の街の正規兵三十一人と浪人二十二人と共に、中学校に突撃した。
96式なら、学校の敷地を覆う柵も体当たりでぶち破れる!
あ、あと、あらかじめ言っておきますけど、俺は異世界で散々、政争だとかハニトラだとかなんだかんだあって、人をぶっ殺した経験もかなりあるんで、今更、他人をぶっ殺したくらいで「俺は……、人を殺したッ!」みたいなつまらんシリアスシーンぶち込んだりはしないんで安心してね。
はい、学校の正面門をぶち破って突撃ー!
「パンツァーフォー!戦車じゃねーけどな!ワハハ!」
「何言ってるんだグレン殿?」
「サブカルクソ女さんチームはそのまま崖に突っ込んで下さい!」
「本当に何言ってるんだ?!」
イロハに心配されながらも突撃。俺にだって暴れたい時くらいある。
「だ、誰だ?!!」「ありゃ何だ?!!」「く、車か?!」
そもそも、装甲車なんて知らない賊徒共は、一時混乱するが……。
「車なら高く売れるぜ!」「傷つけるなよ!」「おらー!降りろ!」
馬鹿なので無警戒に近寄ってくる。
おいおい、大丈夫かこいつら?
まああれだろうな、装備の強さに浮かれて、戦闘の勘を失ってるんだろうな。
ちょっといい銃を持っているからって、自分達が無敵だと勘違いしていらっしゃる。
それを引き付けて……、今だ!
「車載機関銃ー!」
「「「「ぎゃああああっ!!!!」」」」
お、死んだ死んだ。
大抵の賊徒は、ライフルくらいは知っていても、車載の機関銃なんて見たこともない。
だから、この軽装甲車みたいな戦闘車両を見ても、怖いと思えないんだな。
さあさあ、銃声を聞きつけて何人か出てきたが、それらはあらかじめ位置についていた正規兵達に始末される。
奇襲で二、三十人は始末できたが、流石にこうなると賊徒共も警戒して、校舎に隠れて散発的に射撃をしてくるようになった。
で、す、の、で。
「ロボット、前に出せ!」
『『『『排除開始』』』』
そうなったら、『照柿』のエントリーだ。
六体の照柿は、賊徒の持つ9mm弾をものともせずに校舎に入り込み、賊徒に体当たりし、マニピュレーターで首をへし折り、大暴れする。
本来、警備型の照柿には、殺人をするようなプログラムは入力されていない。保安のために、『戦闘用』のプログラムはインストールされていないのだ。
しかし、そんなんじゃ戦力として使い物にならないから、俺が気を利かせて戦闘用のプログラムを創造してインストールして差し上げた。
つまり、照柿は、無慈悲な殺戮マシーンと見ていい。
「う、うわあああ!」「化け物だあああ!」「に、逃げろーーーっ!!!」
そう言って、我慢できずに校舎から飛び出した賊徒を鶴瓶撃ちにしていく。
更に二、三十人減ったか?もう、こちら側と人数は五分だな。
にしても化け物、か。
学のない賊徒にとっては、ロボットなんて見たことがない存在は一律化け物扱いなんだろうな。
さて、あと残り人数は五十四人。しまっていこう。
ああ、なぜ分かるのかと言うと、俺は索敵とか鑑定とか、その手のスキルを持ってるんだよな。いやまあ、普通にスキルスクロール作れば能力なんていくらでも増やせるってことだ。
まあ、スキルスクロールは一つ作るのにも消耗が激しくて、半日行動不能レベルなんだが。
それでも、異世界で、『索敵』『鑑定』は作ったとだけ。他のスキルは持ってない。改造人間になったらやだし。
下手に全知全能とかになったら、某エロゲの流体金属みたいな名前の神様になりそうでやだよね。
ストーカーとかにはなりたくない。未知だからこそ楽しい。
まあ、『理』に反するものを作るのは疲れるってことだな。
逆に、単なる食物や武器弾薬は、理に反していないからいくらでも簡単に作れちゃうぞ!
そもそもその『理』ってのが俺のさじ加減ではあるのだが。
ん?
「クソ共があああっ!!!ぶっ殺してやらあああっ!!!」
あっ!野生のエクステンダー持ち賊徒が飛び出してきたぞ!
あれは、工事建設用の、油圧ピストンによってパワーを高めるエクステンダー、『枯草』だそうだ。隣のムサシが教えてくれた。
あ、ここに来ているのはイロハ、ムサシ、オオシオと、ハネダの街の愉快な住人達だけだ。フミナとミヨコ、クイナは、危ないのでお留守番。
「エクステンダーだ!退がれ!」
ムサシが叫んだ。
よし。
「任せろ!」
俺は、車から飛び降りて、ロケットランチャーをぶっ放す。
もちろん、俺は礼儀正しい大人の男なので、由緒正しいデスペラード撃ちだ。
ロケットランチャーも当然、ギターケース型。
「ぎゃあああああっ!!!」
即死だ。
エクステンダーとは言え、廃材の鉄板を申し訳程度に装甲として纏っていただけだからな。
ロケランぶっぱすれば死ぬわそりゃ。
「な、なんだあれはっ?!!」
爆発物をろくに見たことのない賊徒や羽田の街の兵員は、ぶったまげている。
「今だ!一気に攻め立てろ!」
「お、おおーーーっ!!!」
混乱している時に、俺はそう叫んでやった。
すると、羽田の兵員達は勢いづいた。一気呵成に攻め立てる。
「う、うわあああっ!」「兄貴がやられた!」「お、終わりだあ!」
逆に、賊徒共は、頼みの綱のエクステンダー持ちの大将が一瞬でミンチにされたことにより、大混乱。潰走ってやつだ。
ムサシが、捕まえた賊徒を拷問している最中に、俺は賊徒のボスの部屋を家探しする。
お、金。いただき。
お、銃と弾丸。一応いただき。
お……?タッチパッド?
起動してみる。
ロックはかかってない。
入ってるアプリは……、この辺の地図を示す地図アプリと……、音声データ?
再生、と。
『ナナシノゴンベエだ。今回、君達に指示したいのは、国道を通る行商人の襲撃。このポイントでは、ハネダから程よく遠く、また、学校を根城にすれば攻められにくい。行商人は三人見逃して一人襲うくらいなら、本格的に攻められることはないだろう。月に一回の定期連絡の時、追加の物資と武器を渡そう』
んんー?
なんか……、これ……、陰謀とかそう言うやつですか????
参ったな、そういうのはかったるい。他所でやってくれ。
まあ、このタッチパッドは代官に提出しよう。
今日の仕事はおーしまい!
クリスマスなのでチキンを食べた。
ちきーん!