仕事が終わって羽田に帰還。
雇い主である代官に報告。こういう仕事って、報告までちゃんとするのが礼儀ってもんだよね。
そして、報酬の五百万円を貰って、街の宿へ。
今日はもう寝る。
次の日、宿のドアを開くと、ムサシとオオシオが土下座していた。
「……何事?」
こっちの方向に神でもいるのか?詳しくはないが、あっちの方の宗教では、毎日決まった時間に五体投地しなきゃならんのだったか。
「グレン様っ!どうか、我々を、神楽坂御一門衆の末席に加えていただきたい!」「ですぅ!」
「あ、うん、分かったから頭を上げて。敬語も良いから」
「え、あ、うん」「はいです」
「最初から誘うつもりだったから。とりあえず、西を目指すよ、ついてきて。そして、道中の俺を守ってね」
「「はい!」」
予想外だった。
仲間にするつもりではいたが、こうもあっさりとは。
なんでか聞いてみると、国一つよりも力を持った個人に憧れるのは当然、とのことだ。
ああ、国ってのは、ダイミョウが支配する領域のことね。日本全体は最早一つの国じゃない。街一つ、都道府県一つが別の国って感じ。東京圏一帯はホウジョウの支配下にあるらしい。
でも何故か、京都は日本の首都を謳っている。謎だ。
さて、予定通りに信頼できる護衛を二人仲間にした。
この街での仕事は終わったことだし、早速西を目指そうと思う。
西では、和歌山県南の『サイカ衆』の本部に、売れる限りの軍事的物資を売り捌き、次は商業都市の大阪で、一門の一生分の金を稼ぐつもりだ。
それが終わったら京都に行くのも良いなー。
戦国時代じみているこの時代だが、戦国時代とは逆に、一番栄えている都市が京都らしいよ。一度は行ってみたいね。
あとオダがどんなのかなのは結構興味あるな。やっぱりうつけなんだろうか?気になる。と言う訳で名古屋にも寄ることとする。
さあ、早速移動だー。
乗り物はブッシュマスターで。NATO AEP-55 STANAG 4569という防弾に関する規格ではレベル1ということになっているが、NATO AEP-55 STANAG 4569自体も、新しい炸薬の開発や新素材による装甲板の登場で規定が俺の時代とはちょっと違うから何とも言えない。
但し、この日本で主に使われている9mm弾から.30-06スプリングフィールド弾くらいなら充分に防げると言っておこう。
そして、街を出ようとしたときに……。
「ちょっと待ったーっ!!!」
と、代官が飛び出してきた。
「んだよ……」
「ホウジョウケイマ様が会いたいと仰せだ。使いの者が明後日に来るから、二日待機しろ」
うーん?
まあ、別にどうでも良いけど……。
権力者の機嫌を悪くしても意味ないし、顔を合わせるくらいならいいかな?
俺も、異世界に召喚された当初は、王様とか、珍しいもの好きの貴族の子供とかに会わされたし、それ系の話なんだろうな。
無条件で奴隷になれ、みたいな訳わからん命令をされないなら、会うくらい構わんわ。
それに、この辺の統治者の姿とかにも興味あるしな。
「分かった、二日後だな」
はい、二日後。
この二日間は特に何もやってないよ。
みんなで打ち上げしたくらい。
ムサシとオオシオにも、俺が能力者であることを話しておいた。
二人はそれを聞いて、立ったまま失神していたが、それはまあ、どうでもいい話だ。
で、だ。
ホウジョウ家からの使いを名乗る男が、高機動車に乗って現れた。
「俺は『ダイドウジ バジン』だ。今回は、ケイマ様が、黄巾賊討伐の礼をしたいと仰せだ」
「で?」
「『オダワラ』の街までついて来い」
「まあ、良いだろう」
という訳で、神奈川県小田原市まで移動。
道中?特に何もねーわ。
高機動車に六人のライフルを持った兵士が乗っていて、その後ろにブッシュマスターだぞ。
賊徒でも警戒して襲って来ねえよ。
それこそ、羽田付近の黄巾賊の大規模な群れでもない限り、この数の兵士に喧嘩は売らない。
……ってイロハとムサシが言ってた。
という訳で小田原に到着ー。
小田原は、まあかなり栄えている。
付近の山には、かなり放射能で変異しているが、多少の緑は残っている。
野原のような、背の低い草花が生えているようだが、変異のせいで若草色と言うよりかは不自然過ぎるほどに黄緑の色をした草が、まだらに生えている山。やはり、この世界は滅んでいるんだな。
街。
街は、羽田の街と同じか、それよりも栄えているか、ってところだ。
核ミサイルにより、建物が灰塵と帰したせいで、新たに建物が建てられているようだ。
小田原は、核ミサイルの被害が少なかったのか、かなり街が綺麗に残っている。
まあ、経年劣化などにより、多くの建物は、継ぎ接ぎのフランケンシュタインのような有様で。
トタンで塞がれた屋根や、どこから持ってきたのか分からないミュータントの革、変異した黒い木材で補修された建物。それらは、ぶっちゃけた話、見窄らしいのだが……。
それでも、俺がこの時代で最初に足を運んだ街である十条台と比べると、雲泥の差と言えるほどに上等だった。
あれは何だろうか、大きなトカゲか。人間の子供ほどもあるトカゲのミュータントを解体して、肉を売る人がいる。
肉を食えるのは文明的な社会の印だ。
家畜の野の獣の肉を民に食わせる場合、穀物と野菜を食わせる場合の半分の人口しか養えない、なんて話を聞いたことがある。
この小田原では、トカゲのミュータントという謎の生物の肉ではあるが、肉を国民に食わせるほど豊かってことが窺える。
あっちは何だ?
歌手が道端で、ハーモニカの演奏に合わせて歌っている。
文化に力が入れられる余裕があると言うのは、やはり、豊かな印だ。
となると、ホウジョウケイマは、まともな施政者なのだろうか。
結論から言うと、俺のこの期待は即座に裏切られた。
BTが……、BTが……。
やめろよお前……。
自己犠牲とかやめろよ……。
お前っ、お前ぇ〜!!!!
敵の傭兵もキャラが立っててよろしかったね。自作、最凶傭兵が若い頃は、あんな傭兵団を率いていたと思っていいです。
いやにしてもBTお前なあ……。
二万五千パーツ満足すこ。
お前……。