ホウジョウケイマの居城は、なんと、小田原城だった。
いよいよもって戦国大名だな。
さてさて、俺は何で呼び出されたのか、聞いてみようか。
俺達、神楽坂御一門衆は、全員が天守閣に呼び出された。
「殿のおなりである!平伏せよ!」
へーへー、へーふくへーふく。
「面をあげよ!」
さて、ホウジョウケイマ。
垂れ目の、嫌味そうな顔をした、ショートカットの男だ。
服は革ズボンに着物を羽織った姿で、腰に刀とミネベアP9、そして腕には端末という出で立ち。
「ええと、誰だったか?まあ、名前なんてどうでもいいか。おい、お前!」
おーっと?
名乗りもせずに俺に指を指すとは何たる無礼か。
「報告によると、車両やロボットを持っているらしいな?それをこの俺様に献上しろ!」
おーっと?
金も払わず物だけ寄越せとは何様だ?
「もちろん、タダでとは言わん」
お?
「俺様の世界最強の軍隊の足軽にしてやる!」
おーっと?
駄目みたいですねぇ!!!
「とりあえず、窓の外を見ない方が良い。強烈な光で目が潰れるからな」
俺は言った。
「はぁ?何を言ってるんだお前?」
ホウジョウケイマは、怪訝そうな顔をした。
「さーん、にー、いーち」
俺がカウントダウン、すると……。
「ぜーろ」
小田原の街のすぐ近くにある山が、爆ぜた。
そう、小田原付近の山の上に、核爆弾を落としたのだ。
パンチに「やってくれ」と頼めば、パンチは何でもやってくれるからな。
具体的にどうやったのか、と言うと、俺の脳内で、「小田原付近の人がいない山に、ここから見えるが被害は出ない程度の威力の核爆弾を投下しろ」と命令すれば、パンチはそれだけで良きに計らう。
普段は、ナノマシンの粒子として、俺の周囲を漂うパンチは、俺の脳内の命令を読み取り、オートで動いてくれるのだ。
俺が脳内でやれと命じれば、大抵のことはやってくれる。
今回、パンチは、身体の一部を切り離して近くの山に飛ばし、一部を核爆弾に変化させてそれを投下した。それだけだ。
「な、な、何が起こった?!!!」
ホウジョウケイマとその部下は、たまらず窓の外を見る。
そこでは、山が抉れ、キノコ雲がもうもうと揺れていた。
「ま、まさか!あれは、世界を滅ぼした核の炎!!!」
俺は、手元に、核爆弾のイミテーションを作る。
それと、作り出したトンカチで軽く叩く。
「そーれ、こんこーん、こんこーん」
「げええっ?!!そ、そのマークは、核爆弾!!!」
ハザードシンボルがデカデカと描かれたイミテーションを見て、悲鳴を上げたホウジョウケイマ。
「えーと、それで、何の話でしたっけ?こんこーん」
「ば、ばかやろおおお!!!やめろおおお!!!」
「用事がないなら出て行きますが?こんこーん」
「で、出て行けえっ!すぐに俺様の目の前から消えろおおおおおっ!!!!」
「なるほど、では、失礼します。こんこーん」
そう言って、俺は、御一門衆を引き連れて城から出た。
車の中で、俺は仲間達に詫びた。
「あー、すまないね。折角仕官できそうだったのに、フイにしちゃって」
「まさか!あのような態度の主君はこちらからお断りだ!」
イロハが言った。
「そうだよ!あんな要求、賊徒と同じだもん!断って正解だよ!」
ムサシが言った。
「そうなのか?イロハは、サムライになりたいって言ってただろ?」
「ははは、そんなことか。良いんだ、私は既に、グレン殿に仕えるサムライだからな」
そうなの?
「にしても、ホウジョウのあの驚き様!まるでお笑いだな!」
「確かになー」
「核爆弾など、日本にはありはしないんだが……、いや……、もしかして、つ、作れるのか?」
「あ、落とした核爆弾は本物だよ」
「ウゲェーーーッ!!!!本気で言ってるのか?!脅しで核を落としたのか?!!!」
「そうだよ」
「こ、怖過ぎる……!!!」
そうなのかね?
広島長崎クラスよりももっと小さい、精々、破壊範囲は百メートルくらいの小型弾頭だったんだけど。
「核爆弾と言えば、世界を終わらせた『死』そのものだぞ?!」
「ちっちゃいやつだしヘーキじゃない?」
まあ、専門家じゃないからよく分かんないけど、大丈夫でしょ。
「ヘーキじゃない!核の炎は、海や川の多くを蒸発させ、雨の一滴も降らなくなった!死の灰は大地を病ませ、植物はうまく育たなくなった!」
「え?そうなの?羽田の街から海も見えたし、荒川もあったじゃん」
「海面は数メートル下がり、川も水嵩が大きく減ったんだぞ!それに、水は汚染されていて、半分に煮詰めないと飲めないんだよ!」
「小台の街で魚とったり水売ったりしてるって言ったじゃん?」
「魚は変異しているし、川に住むミュータントと戦って初めて手に入る高級品だ!水も、オダイで煮詰めたものを売っている!」
「地下水とかは?」
「無理だ、汚染されている」
ふーん。
「作物、十条台で育ってなかった?」
「あれは、変異したミュータント野菜だ」
「ミュータント野菜?何だか、不味そうな響きだけど?」
「ミュータント野菜というのは、根を張ったものの養分を吸い尽くして育つ、植物型のミュータントだ」
怖っ。
そっちの方が核爆弾よりこえーよ。
「十条台では、狩ってきたミュータントの死骸や、家畜の糞尿などで育てている」
えっ怖。
「それ、食って平気なんすかね」
「知らん。しかし、それでも、かなりの高級品だ。ジュージョーダイでは、オダイからミュータントの死骸を買い取って、その対価としてミュータント野菜を売り渡している。味が良いからとんでもなく高価だがな」
なるほどねえ。
「俺も食ったけど、美味くなかったよアレ」
「それはグレン殿がおかしいのだ!戦前の食品や道具が好きなだけ手に入るなんて!」
まあ、そんな訳で。
「それはそれとして、飯にするか」
「「「「わあい」」」」
スカイリムを始めた。
えっこれ、成長システムってえぉなと同じく使えば使うほど強くなる形式?