高い肉は、久しぶりに人間の食事の味がした。
飯時。
今の地点は神奈川から静岡に入った辺りだ。
そこで、ブッシュマスターを停車し、パンチを数体実体化させ、周辺警備に当たらせる。
そして俺は、鉄板を出した。
うんまあ、直接完成品の料理を出すこともできるんだけど、そうすると味が落ちるんだよね。
多分それは、料理が趣味の俺が、心のどこかで、念じただけでできる料理が美味いはずがない!って思い込んでしまっているから、だと思う。
俺は、高校と専門学校に通っていた六年間は、ほぼ毎日、飲食店でバイトしていたし、それ以前に、実家でも小学生の頃から家族と自分の分の食事を三食欠かさずに作っていた。
だから、多少、料理ができるというプライドみたいなものがある。
それに邪魔されて、完成品の料理は上手く創造できないのだ。
もちろん、インスタント食品や、食材そのものは例外的に上手く創造できる。一部の菓子類やチーズなど、独力では作れないものも、ちゃんと創造できる。
さあ、今日はお好み焼きだ。
まずは、出汁を作る。ふふふ、ガキの頃は、近所にある叔父さんの経営している居酒屋に足を運び、大将をやっている叔父さんから、出汁の取り方からビシッと習ったっけなあ……。だってうちの両親、どっちも三食外食かカップ麺なんだもの。あれ?虐待じゃねそれ?
「何それ?木?」
「これは鰹節だよ。魚の干物を削ったもの」
「ほへー」
キャベツを千切りにして……。そう、包丁の扱いも、叔父さんからバッチリ仕込まれたんだよな。小学生の頃は、専ら、家で親父に整体のやり方を習うか、叔父さんに料理を習うかの二択って感じで。叔父さんからは小学生の頃から、店の仕込みと調理を手伝わされて……。あれ?虐待じゃねそれ?
「おお……」「素早いですぅ」「や、野菜!変異してない本物の!」
そして、出汁と薄力粉、卵、揚げ玉、キャベツを混ぜて、焼く、と。ああ、豚玉には豚バラ、海鮮にはイカとエビ、それと明太餅チーズ。中学生にもなると、叔父さんの味をほぼマスターしてなあ。叔父さんの料理学校の同級生達にたらい回しにされて、そこでバイトしまくったっけ。中学生の頃から。あれ?虐待じゃねそれ?
「ふわー!」「す、すごい!」「何これ!」
ま、まあ、結果的に役に立ってんだから、感謝することにしよう。
さ、ひっくり返してソース塗り塗り。マヨ、青のり、鰹節っと。
「「「「………………」」」」
「できたぞ……、ってうわ!よだれよだれ!」
全員がよだれを垂らしてこっちを見ていた。
「ほら、並べ並べ!皿出してホラ!」
「「「「!!!!」」」」
その一言で、全員がパッと並び、平皿を持ってきた。
全員に端末を与えて、椅子やテーブル、食器に服、アメニティ的なものは全て与えた。
毎日のシャワーと歯磨き、自分の食器と服を洗うことは義務とした。
にしても全くゥ!欠食児童かな?
「「「「んぉおいひぃ……!!!!」」」」
「いくらでもあるから、好きなだけ食べなよー」
俺も食おう。うん、美味しい!出汁が違いますよー出汁がー。
因みに俺は、コンソメやフォーを一から作ることもできるぞ!死ぬほどめんどくせーから滅多にやらんけど!
そして、食後は皿洗い。
「水をわざわざ洗い物に……」「贅沢過ぎる……」「しかも洗剤まで……」
そして歯磨き。
「汚染されてない水を吐き出すなんて!」「この水、コップ一本で一万円はするのに!」「歯磨きくらいなら汚染水を使えば良いのに……」
さあ、そろそろ移動するか!
そして、移動中……。
「うお、なんだありゃ」
鬼みたいな、龍みたいな……。
人型のようで、恐竜のような逆関節の大きな脚、鋭い爪のゴリラのような腕、前傾した猫背な胴体からは尻尾が伸びていて、頭は角の生えたインドミナスレックスみたいな。
大きさは、身長3m超えるくらいだ。
やべー、バケモンだ。こえー。
「このっ!死んじゃえ!」「はあ、はあ……」
それに追われている女が二人。
一人は、赤毛のセミロング。恐らくはこいつもPSY能力者なんだろう、人差し指からレーザービームを出している。
もう一人は、薄汚れた白衣の、栗毛のウェーブかかったロングヘアの女。旅行鞄を抱えている。
能力者女が必死に白衣女を庇いつつ、恐竜のバケモンに応戦し、逃げている。
しかし、恐竜にはあんまり効いてないみたいだ。
「あれは……!いかん!龍鬼だ!」
イロハが叫んだ。
へえ、龍鬼。怖そうな名前だ。
「龍鬼はライフル弾もろくに効かない化け物だよ!逃げよう!!!」
ムサシが言った。
「追われてる人はどうするんだ?」
「申し訳ないけど、見捨てた方が……」
うーん……。
でもなあ。
女の子だし。
結構可愛かったし。
うん。
よし。
「ちょっと行ってくる」
「ちょ、ちょっと!」
ブッシュマスターから降りる。
すると、全員降りてきた。
「え?危ないから中入ってなよ」
「主君が死地に赴くというのに、部下が命をかけないのはおかしいだろう!」
「そうだよ!」
「ん、できるだけのことはする」
え?
なんかやる気みたいだけど……。
「いや、パンチに任せるし……。パンチ、『エクセキューショナー』よろしく」
『エクセキューショナー、了解だ』
パンチの身体は膨れ上がり、3.5mほどの人型になった。
その姿は、片手に大斧、片手に大刀、太っちょで全身黒色で正に処刑人。
顔はピエロのような隈取りに、口紅を塗った裂けた口という、恐ろしげな出で立ち。
この状態はまさに処刑人で、グリフォンなどの中型のモンスターを相手にするときに使っている。
「行け」
『了解』
その太っちょな体型からはとても想像できないような素早さで地を駆けるパンチ。
『ヨホホー!!!』
『ガァッ?!!』
体重1トン近くの巨体による体当たり。流石の龍鬼なるミュータントもそれにはこたえたらしく、ピンボールのようにすっ飛ばされた!
『ガガギ!』
しかし、龍鬼は、空中で回転し体勢を整え、両手足の爪で地面を掴んで、パンチの体当たりの勢いを殺した。
そして、そのまま、パンチに襲い掛かる!
そのゴリラのようなムッキムキの豪腕を勢いよく叩きつけた!
だが、まあ、ナノマシンの集合体であり、流体金属のような形で存在しているパンチには、物理攻撃はほぼ効かない。
『ヨホホーーーッ!!!』
『ガペッ』
龍鬼は、エクセキューショナーパンチの大斧で脳天をカチ割られ、全身を大きく一度痙攣させると、そのまま動かなくなった。
パンチは、役目が終わったのでそのまま空気に溶けるように消えて、再び気体となって俺にまとわりついた。
「どう?どんなもん?」
『オーガくらいさね』
「ふーん、そんなもんか」
オーガと言えば、異世界では、下級、中級、上級、特級とある格付けの中で上級とされたモンスターだ。
上級で、一匹いればちょっとした街が滅ぼせるくらいだと人は言う。
退治するには、ベテランの冒険者が十人は必要とされている、とのこと。
まあ俺、あんまり戦ったりなんだりしたことないからよく分からんのよね。
でも、ベテランの冒険者って言うのは、魔法をある程度使いこなし、武器技術も持つ。
これは根拠に乏しい予想になるが、俺が見た限りでは、ベテランの冒険者の強さはこの時代の地球で例えると、民生用警備型エクステンダーと上等な武器を持った人間に等しい、と思える。
つまりは、龍鬼は、エクステンダー持ちが十人集まらなきゃ倒せないくらいの強さだと言うこと。
『でも、そんなに丈夫でもないから、12.7mmをぶちかませばなんとかなるかもだな』
なるほど、重機関銃などでも対応可能、と。
そりゃそうか、物理障壁とか、その手の魔法を使ってくる訳じゃないもんな。
異世界のモンスターは、物理攻撃を軽減する障壁を張ったりしてくるケースもあった。魔法障壁とか、属性障壁とかもあった。
この世界のミュータントがそんな魔法を使う訳はない。だから単純に、物理的な火力で殺せるのか。
余談だが、パンチは、物理軽減と魔法軽減、属性軽減スキルを持っている。
まあ、何にせよ、俺にとっては、現地人にとって化け物として扱われるミュータントも怖くないってことだ。
さて……、逃亡中の女の子二人はどうかな?
「おおい、君達」
その時、俺の足元に光線が突き刺ささり、土が爆ぜる。
「ち、近寄らないでっ!!!」
仮面ライダーが辛い展開で辛い。