ベルセルクの続きが読めないとか、世界はクソですわね。
和歌山へ向かう道中。
愛知県を抜けて、三重県に入った。
三重は、道が悪く、瓦礫撤去をしながらの移動となった。
瓦礫撤去など、騒音を立てると……。
『シャア!』『フシャー!』『シュララ!』
クリーチャーが襲いかかってくることが多々ある。
「歩き蜥蜴だ!」
イロハが声を上げる。
それに反応した俺がイロハの指差す方を見ると、太ったエリマキトカゲのようなやつらが、割と結構な速さで走ってくるのを見つけた。
「何アレ、ヤバいの?」
俺の目から見ると、デブトカゲがベタ足でペタペタ歩ってくるようにしか見えない。
その姿は、ちょっぴり愛嬌すら感じられる。
だがまあ、イロハが警戒態勢に入るってことは、やばい奴なんだろうな。
「噛まれると、噛まれたところが腐ります!近づかないように!」
「マジ?コモドドラゴンじゃん」
怖……。
恐らくは、口内にバクテリア的なのがいるんだろうな。
噛まれても治す自信はあるが、好き好んで噛まれたくはない。
俺は、非戦闘員であるコヨミとナジムを後ろに庇った。そして、お偉いさんであるアオイと、ロリハーレムも後ろへ。
因みに、フミナとミヨコもハンドガンくらいは撃てるし、そこそこに筋がいいぞ。
コヨミとナジムは全くダメだ。運動音痴。
商人のフミナと技師のミヨコは、小型で扱いやすい拳銃を護身用に持たせている。
『SIG P365』という銃だ。もちろん、この時代からすれば非常に古いモデルだ。
だが実は、銃というのは、大分前からデザインの進化が止まっているらしい。
つまり、弾頭の材質や炸薬、砲身の丈夫さと言ったものはどんどん進化したが、銃のデザインは殆ど変わらなかったのである。
なので、彼女達に持たせたSIG P365も、リファインモデルと言って、外見は二十一世紀初頭のものだが材質や弾薬などは最新素材のものとなっているらしい。
学者のコヨミと医者のナジムにも持たせているのだが、コヨミは非力過ぎて、ナジムは驚くほどのノーコンで使えない。
一方で、フミナとミヨコはそこそこに当てられる。まあ、人並み程度だが、動かない的になら、10m圏内なら十中八九当てられる。
そんな訳なので、フミナとミヨコは、銃を腰のホルスターから抜いて構えた。
俺とクイナもついでに、腰からグロック17を引き抜いて構える。
俺はまあ、異世界でそこそこに戦ったから、そこそこには戦えるつもりだ。
クイナは、旧日本軍の人造人間兵器『鬼人兵』であるからして、銃の取り扱いや爆薬の扱い、車の運転までもができるそうだ。
しかし、全て軍用のVRシミュレーターでの訓練だったため、本物を扱ったことはないらしい。
なので、最近は日頃から実銃で訓練している。
やはり人型生物兵器と言うだけあって、素晴らしい戦闘能力を持っているようだ。
その腕前はガンマンのオオシオが褒めるくらいだから、相当なんだろう。
今も、俺が銃を構えた方向とは逆方向を警戒してくれていて、かなり助かる。
ついでに言えば、アオイ姫もかなり戦えるそうだ。
やはりその辺は武門ってことだろう、かなりの剣技と、銃の取り扱いができるとか。
そして、俺の隣にはハクレイが来た。
ハクレイは、クイナと違って、天然もののPSY能力者だ。
その能力は『光操作』と言うもので、普段は自分に当たる光を屈折させて姿を隠したり、光を収束させてレーザー攻撃をしたりするのに使っている。
そんな訳で、『MIZ L88』というレーザーガンを持たせておいた。
どうやら、レーザーガンの弾丸はフォトンらしく、フォトンなら自在に操れるとのこと。
つまり、曲がるレーザー!浪漫だなあ。
MIZという銃は、俺が知らない『ミズノインダストリー』とかいう日本企業で作られた、レーザー兵器の重工業メーカーの製品なんだとか。
ハクレイは、レーザーガンを抜いて構える。
俺の前に出たのは、イロハ、ムサシ、オオシオだ。
武芸者のイロハ、兵法家のムサシ、ガンマンのオオシオ。
イロハは、実戦経験ならこの中の誰よりも多く、特に、用心棒や狩人などをやった経験から、対クリーチャー戦では無類の強さを誇る。
また、クリーチャーに詳しく、今襲いかかってきたクリーチャーについても詳しく知っていた。
逆にムサシは対人戦の経験が豊富で、軍略を理解している。
オオシオは、銃器のスペシャリストだ。
そんな訳で、彼女達にも様々な武器を持たせてある。
近接戦闘の方が得意なイロハは、高周波ブレード二本と、フルオートショットガンの『AA-12』のドラムマガジンで武装している。サイドアームに『デザートイーグル』まで持っている。
一方でバランス型のムサシは、高周波ブレード、ナイフ、そしてアサルトライフルの『HK433』のショートバレル、サイドアームに『UZI』を持つ。
そして遠距離型のオオシオは対物狙撃銃の『M82』を抱え、サイドアームに『SIG SAUER P320』を装備。
この三人は、コンビネーション抜群だ。
「カバー!」
「了解!」
ハンドサインや符丁なども教え合っていて、軍隊並の練度を誇る。
そして……。
「お、オオオオオオオッ!!!!」
あの、目算で100kgはあるかという鉄の塊のような剣をぶん回しているゴリラが、カラスのシオリだ。
シオリは、妖人と言って、放射能で変異した超人。
その狐の耳と尻尾から、妖狐のシオリの通り名で知られたカラス……、スカベンジャーだ。
拳銃弾以下のダメージなら傷ひとつ付かない強靭な肉体に、100kg以上の鉄の塊を片手で振り回す怪力、更に五感も獣並に鋭敏という、かなり強力な存在。
「はああああっ!!!!」
『ギョエ』
歩き蜥蜴は、恐るべき勢いで駆逐されていく。
特に、シオリが洒落になってない。
何アレ?
世界観が違うんだけど。アメコミキャラかな?
そりゃまあ、遊び半分で漫画キャラの大剣を渡した俺にも非はあると思うよ?
けど、こりゃダメだろ。
俺も一瞬、「あれ?異世界に戻ってきちゃったのかな?」って思ったわ。
……でも、ベッドの上では俺の方が遥かに強いのでセーフ。
こうして、突発的な襲撃に対処しながらも、俺達はどんどん先へと進んだ。
そして……。
『アザイ』の領地……、滋賀県に辿り着く……。
才能欲しい。