「うめえ?!!!」
ポーションを飲んだ女が叫んだ。
どうやら、俺の生成したポーションは美味いらしい。
俺も試しに一本飲んでみる。
……ハッカ風味が薄く香るハーブティーって感じだ。まあ、美味いかと言われれば美味いんじゃない?スースーするから、身体にかけても良いんじゃないかね?
あ、身体にかけても傷は治るらしいよ。
試しにセシルにも一本飲ませる。
「これは……!美味いな!」
あー、美味いんだ。
「普通のポーションはどんな感じなんだ?」
「苦いぞ、青臭くて苦い。このような露店で手に入るポーションは、舌が痺れるほどに苦いのが定番だ」
ふーん。
すると、あまりの美味さに放心していた冒険者女が再起動した。
「な、なあ!あんた!このポーションと同じ品質のハイポーションはあるか?!」
ハイポーション……。
今売っているのがロウポーションだ。
市販のポーションでは、ロウ、ミドル、ハイの三階級が流通している。
ロウでも、結構深い切り傷を治したりできるが、ミドルでは骨のヒビくらいは治す。
ハイに至っては、骨折や内臓破裂くらいなら治してしまう。地球では全治2、3ヶ月くらいの怪我を数十秒で治すんだから、ファンタジー世界も侮れないな。
なお、身体欠損は、ダンジョンなるところでのみ得られる秘薬であるリジェネレーションポーションか、それこそ、伝説の秘薬エリクサーでもない限り治せないそうだ。
さて、ハイポーションか。
売って良いんだから悪いんだか、判断がつかないな。
ハイポーションってのは店売りの最高品なんだろ?それをこんな、場末のバザーで捌いて良いのだろうか?
セシルをチラ見。
「良いぞ。但し、ハイポーションは一本、百万フリンだ」
とセシル。
百万円!
いや、保険なしで2、3ヶ月入院すればそれくらい行くのかもな。入院したことねぇからわかんねーんだけども。でも、そう考えると妥当か?
俺はまあ、高いんじゃねえのかなーって思ってたんだが……。
冒険者女は、腰のポーチから金板を取り出して叫ぶ。
「とりあえず十本くれ!」
と……。
「おーおー!大盤振る舞いじゃねえか!おねーさんカッコいー!」
俺はそう言って、後ろのクーラーボックスから取り出したように見せかけてポーションを生成。
ハイポーションを十一本取り出した。
「ほら、一本おまけだ。持って行きな」
「おお!ありがてぇな!助かるぜ!」
女は、腰のマジックポーチにハイポーションを詰めて帰って行った。
さて、一瞬にして一千万円儲かってしまったな。
とりあえず、両替した一千万フリンをセシルと山分けする。
「こんなに貰えない」
「良いから取っとけよ」
「労働の対価は正当に分配されるべきだ。一万フリンでももらえればそれで良い」
「いいのか?楽して金が手に入るのって素敵じゃね?」
「こう言えば良いか?私は貴様の愛人ではない。養われるのはごめんだ」
「なーるほど、男のプライドってやつか。それなら理解できるぜ」
とのことで、俺は一万フリンだけセシルに渡す。
今日の宿代くらいにはなるとのこと。
そもそも、セシルはそこそこに金を持っているらしい。
「金持ちなの?」
「いや、私は冒険者をやっていて、それで稼いでいる」
上から、オリハルコン、アダマンタイト、ミスリル、白金、金、銀、銅、鉄、青銅、錫という等級で分類される冒険者のうち、セシルは白金の等級にあるらしい。
白金等級と言うのは、一流の冒険者と言うことらしいが、詳しくはよく分からん。
っと……、もう良い時間だし、メシでも食うか。
屋台が色々あるんで覗いてみる。
ついでに屋台の食いもんに鑑定!
……なるほど、サルモネラ菌。
ついでにセシルにも鑑定!
《セシル・プルート
五百六十歳 男性
Lv55
HP:1250
MP:3050
筋力:120
魔力:356
耐久:105
敏捷:241
器用:189
知能:381
運勢:50
スキル
《生活魔法》《風魔法》《弓術》《剣術》《フリーラン》《軽業》《千里眼》《聞き耳》《製薬》《罠作成》《罠解除》
エクストラスキル
《精霊魔法》》
なるほど。
まあそんなことはどうでも良い。
せめて食える飯を探さねば。
お、これは食えるな。
「おう、こいつはいくらだい?」
浅い鍋で煮られた豚肉だ。赤ワインで煮てるみたいだな。玉ねぎのみじん切りと……、マッシュルームっぽいキノコの薄切り、それとシナモンが入ってるみたいだ。
それを、ライ麦のパンに挟んでいただくみたいだ。
へえ、悪くないな。
店主のおっさんに訊ねると……。
「おう!こいつは一つで五百フリンだぜ!」
と言われる。
「じゃあ、一つくれよ」
「あいよ!……ほら、熱いから気を付けろよ!」
おっと、紙で包んでくれるとかないのか。手渡しか。
少々面食らったが、俺は銅貨を五枚、テーブルに置いてから、パンにかじりつく。
「んー?んー」
味は薄め、酸味が強め?
ロッゲンブロートのガンガン主張してくるライ麦味を、酸味が強いソースでぶん殴って中和するような感じ。
不味くない、決して不味くはないぞ。
とろ火で煮込んでいるから、玉ねぎが殆ど液状になっていて、そのとろみが舌にまとわりつく。
普通、ライ麦パンは酸っぱくて麦の味が強くて、日本人は苦手な味をしているんだが、これは、濃厚なソースがそのライ麦パンの強い主張を打ち消しているから、非常に食べやすい。
「うめぇじゃねぇか!」
「ははは!だろ?うちの『豚肉のトロトロソースサンド』は世界一だ!」
世界一は流石に盛り過ぎだが、かなり美味い。
俺は好き嫌いがないが、これは本当に、普通の日本人でも食べられる味だ。
「美味いな……、もう一個、いや、二個くれ!」
「おう!」
新作、田舎剣士の現代ダンジョン。
主人公は戦闘狂です。
普通、現代主人公とか、転生主人公とかって、戦う意味だとか何だとかゴチャゴチャ言うじゃないですか。こいつはそんなこと一切ないんで。「戦いたいから戦い、殺したいから殺す!友情、愛、正義、すべては無意味!今この瞬間は、力こそ全てだ!!!!」みたいなタイプ。