チュートリアルダンジョン。
と、その前に、若返りの秘薬をD(ダンジョン)ポイントで購入して、試しに早太郎にぶっかけてみた。
すまん、早太郎。
人で試すのはまずいからなぁ……。
「ワウ?!」
すると、早太郎は一瞬、ピカッと光って……。
「うお、若返ってる」
毛艶が一歳前後くらいの頃に戻ってる。
この秘薬、本物なのか……。
十万ポイントもぶち込んじまった。犬に。
もったいない気がするが、まあ、早太郎は嬉しそうだし良いか。
さあ、気を取り直してチュートリアルダンジョンを攻略していこう。
まず、第一階層から。
一階層は……、石畳の建物の中で、側面に松明がずらりと並んでいる。つまりは、結構明るい。
モンスターは……。
あ。
『キー!ピキー!』
お、スライム。
わざとらしいブルーの、サッカーボールの二倍くらいの大きさのスライムだ。
『ピキー!』
おっ、体当たりしてきた。
ボヨン!
んー、まあ、一般成人女性の本気ビンタくらい?
その後、2、3分ポヨポヨ体当たりを受け続けたが、溶解液プシャー!とか、コアを破壊しない限り物理無効!とか、そんなことは一切なく、蹴り一発で弾けた。
すると、スライムのコアらしき、青い塊が転がった。
「なんだこれ?」
スライムの中心核……、だろうか?
今回倒したスライムは、薄い水色で、この中心核は濃い藍色だ。
とりあえず貰っとこうか。
あ、そうだ。
ダンジョン電話、と。
「もしもし、ソラか?」
『うん?どうかしたのかな?』
「ダンジョンでドロップしたアイテムを撮影して、どんなアイテムか鑑定できる機能とか付けられないか?」
『それは良いね!考えておくよ!』
あ、それとポイント確認しとこ。
えー、スライムは……、一ポイント。
まあ、妥当だな。
あ、因みに、十年若返りのポーションが十万ポイント、最低級のポーションが三十ポイントだ。
次、二階層。
『ヂュチュ!チュゥウ!!!』
「ネズミか」
でかい。
50cmくらいある。
PUIPUI鳴きそうなやつじゃなくって、もっとこう、灰色のハツカネズミっぽいのだ。
攻撃は噛みつきのみ。
「よっと」
『ヂギィ?!』
頭を踏み潰したら死んだ。
すると死体が残った。ひょっとして肉が食えるとか?まあ、今は火もないし、別にスルーで良いかね。
ネズミは複数の群れで現れるので、集団戦の練習になるな。
とはいえ、一度に現れるのは3、4匹くらいだが。
ポイントは……、一匹につき三。
三階層。
『チチチッ!!!』
「コウモリかあ」
でかい。
こちらも50cmくらい。
攻撃は噛みつきのみ。
「シャアッ!」
『ヂッ?!』
刀を抜くまでもない。孤拳で受ける要領で打ち払う。
死体が残る。こいつもやっぱり食えんのかな?昔、親父が南米で、コウモリのスープを飲んだとか言ってたし、食えるんじゃねえかな。
コウモリでは、飛行する相手との戦いの練習になる。
コウモリは一匹五ポイント。
四階層で……。
『ゲギャ!』
「棍棒ゴブリンね」
ふむ、良いんじゃない?
段階を踏んでいる。
ゴブリンも死体が残り、手持ちの武器も残った。
ゴブリンは一匹十ポイント。
五階層は……。
『『『ギャギガァ!!』』』
ゴブリンの群れか。
そして、ボスに錆ロングソード持ちのホブゴブリン。
ホブを倒すと……。
「おっ」
五.五階層、休憩ルームってことか。
ここに、アンティークな机と椅子が置いてあり、机の上に火の灯った蝋燭。
その隣にポーションと端末が置いてある。
なるほど、このポーションと端末を持ち帰れってことだな。
あ、ちなみに、ホブは一匹五十ポイントだった。
「うん、どうだったかな?」
お、ソラが出てきた。
「良いんじゃね?これ、回復ポーション?」
「そうだよ」
ふーん。
「どのくらいの怪我が治るんだ?」
「まあ、ホブゴブリンにやられた傷くらいなら治るよ」
「なるほど、階層に対して相応しいポーションが得られるのか」
実際、今まで戦っていたが、死ぬとポーションを落とすケースもあった。
ポーションを落とす……、こう、肉体を砕くと、死体の隣が光って、そこにポーションが落ちてるという形式だった。
そんなことをするくらいなら、死体が消えたのちに、ポーションやらドロップアイテムを落とす感じでいいんじゃないかな、とは思うんだが……。
だが、それはなんか違うかね。
剥ぎ取りもやるべきってことか。
とにかく、階層にふさわしいポーションがたまにドロップする感じだな。
「うーん……、そうではないね。普通の人間の怪我や病気なら、大体二十階層から取れるポーションで完治すると思うな。けど、ダンジョンに潜る人間の怪我はそうはいかないんだ」
「え?治りづらいのか?」
「そうではなくて、うーん、そうだね、最大HPがレベルと共に上がる、と言えば分かるかな?」
「ああ、なるほど」
つまり、レベルが上がれば怪我しにくくなる。
しかし、回復するには、強い回復力が必要ってことか。
「でも、もちろん、レベルを上げたから怪我が治りにくくなる訳ではないんだ。レベルを上げて損することはないと明言するよ」
一番正しい表現では、レベルを上げると、ランクの低いポーションは効きにくくなる、って感じかな?いや、それも若干語弊があるのだろうが。
よし、じゃあ、チュートリアルもクリアしたことだし、先に進むか。
六階層。
景色は依然として、石畳に松明が並ぶ古典ダンジョンだ。
と、そこに。
『ガオッ!』
犬の頭の矮躯の人型。
察するところ……。
「コボルトか」
『ガオッ!』『ガアッ!』『グオッ!』
しかも群れで出る。
手元には鉄のナイフ、口は鋭い歯。
身のこなしは……。
『ガガアッ!』
割とすばしっこい!
一体目を斬り捨てたら、二体目が間髪入れずに飛びかかってきた!連携もするのか!
だが……。
「ハヤ!」
「ガオッ!」
『ギャッ?!』
ハヤのぶちかまし!
早太郎は最早、犬としては最強だろうな。
物凄い速さで二体目コボルトに体当たりした。
身長120cm程のコボルトに、体高55cm程の早太郎が体当たりして勝てる道理がないのだが、かなりのスピードでの突撃により、自分よりデカいコボルトを転倒させた。
「ガウガウガウ!!!!」
『ガハッ!!!』
そのまま、倒したコボルトの喉笛を喰いちぎる早太郎。素晴らしいな。
俺は、一体目を斬り伏せて伸ばした腕を即座に引き戻し、三体目を両断した。
チームプレイの勝利だ。
コボルトは一匹二十五ポイント。
七階層。
『ゲギャ!』
ゴブリンファイターとゴブリンメイジ。
まあ、一度勝った組み合わせだ。どうとでもなる。
あ、ゴブリンファイター、メイジ共に、一体三十ポイントな。
「お?」
ゴブリンメイジの死体の隣に、一枚の羊皮紙がドロップしたぞ?
これは?
羊皮紙を手に取って見る。
よくわからん文字で魔法陣が描かれているが……?
あ、迷宮端末が鳴ってる。画面を見ると……。
《スキル『火魔法』を修得しますか?》
《はい/いいえ》
じゃあ、はい、で。
すると……!
かかとが痛え。なんだこれ。