ダンジョンで魔法のスクロールを手に入れた。
それを使うと、俺に火魔法のスキルが!
「……これ、どうやって使うんだ?」
試してみるか。
手を翳して叫ぶ。
「ファイア!」
掌から一メートルくらいの距離に短時間火炎放射。
同じく、手を翳して。
「ファイアボール!」
二十メートル先くらいまで、握り拳ほどの火球が飛んでいった。
ふむ。
手を翳さずに、口だけでファイアボール!と叫ぶ。
「ファイアボール!」
結果、目の前の中空から火球が発生し、狙った標的からいくらか逸れてしまった。
詠唱を変えてみよう。
「火球!」
ファイアボールとほぼ同じものが出力された。
なるほど、大体分かった。
『イメージを固めて』『そのイメージに沿う魔法名を叫べば』、魔法は発動する。
「炎剣!……無理だ」
しかし、複雑な魔法はまだ無理。
それに、魔法を使うと疲れる。MP的なものを消費しているらしい。
つまりは、レベルを上げろってこったな。自分のレベルと、魔法の習熟度レベル、両方を上げる必要があるようだ。
八階層。
『チチチッ!』
角が生えたデカいウサギだ。
50cmを超えるくらいデカい。
まあ、そんなに強そうな見た目ではないが……?
『チッ!!!』
「ぬおお!スゲェ跳んだ!!!」
ジャンプで二メートルくらい跳んだぞこいつ?!物理法則って言葉を知らんのか?!
多分、『跳躍』とかのスキルを持ってるんだろうな。
まあ、跳んだからなんだって言うね。
『ヂッ!』
はい、両断。
あ、死体残るのか。
食えるのかもな。
角も何かしらに使えそう。
そして、数十匹の角ウサギを倒すと……。
「あ、出た」
『跳躍』のスキルスクロールだ。
これは早太郎に使わせよう。
にしても、スクロールは出にくいんだな。
ゴブリンメイジも百体近く倒したからなあ。
さて。
「どうだ、ハヤ?」
「ワオン!」
おお、四メートルくらい跳んだぞ。竜騎士かな?リューサンインザスカイだ。
ん?てか、それより……。
「ハヤ、お前、真っ黒じゃね?」
「ワフ?」
早太郎は甲斐犬だから、黒のマダラ模様だったんだが、マダラが消えて真っ黒になっちゃった。
「身体に変なところはないか?」
俺がそう訊ねると、早太郎は、自分の身体を嗅いだり、舐めたりしてる。
「……ワフ?」
うーん、異常はないみたいだ。
一応、GM(ソラ)に聞いてみるか。
「もしもし、ソラ?」
『どうしたんだい?』
「なんか、早太郎の色が変わったんだけど、心当たりない?」
『あー……、それは多分、早太郎君は君のテイムモンスター扱いになっているからだと思うよ』
「テイムモンスター?」
『そうだね。テイムモンスターはレベルが上がれば進化するから、色や模様が変わったり、大きくなったりするんだ。申し訳ないんだけれども、これは仕様だから変えられないよ。ごめんね』
「まあ、それは良いんだが……。うん、分かった、ありがとな」
さて……。
「ハヤ、このまま行くと、お前は甲斐犬じゃなくなるかもしれねーぞ?それでも行くか?」
「ワン!」
うん、大丈夫っぽいな。
なら、次に行こう。
あ、余談だが、角ウサギのポイントは四十だった。
九階層。
先日の赤犬とゴブリンナイト。
うーん、たまにはやってみるか?
ゴブリンナイトは鎧を着ている。
「御影流……、『鎧通掌』」
『ガ……、プゲッ?!!!』
「おー、効いた効いた」
この技は、相手の鎧に手を触れた状態で筋肉を硬直させ、衝撃を内部に与える技だ。
ゴブリンナイトは、どうやら内臓が全部潰れたらしく、夥しい量の血を吐いて死んだ。
「なるほど、威力上がってんなこれ」
普段なら、相手の心臓を一時的に止めたり、内臓にダメージを与えて気分を悪くさせるくらいしかできないんだが、まさか内臓を潰せるほどに強くなっているとは。
レベルアップの力ってスゲーや。
あ、ゴブリンナイトから『騎乗』のスキルスクロールが出た。いらねーや、後でポイントショップに売ろう。
ゴブリンナイトは四十、赤犬は三十ポイント。
十階層。
錆ロングソード持ちのホブゴブリンの群れだ。
まあ、レベルも上がったし……。
お?
へー、ホブゴブリンってポーションを落とすのか。
ドロップ率は十匹につき一つくらいかな?
で、十階層のボスは……。
『ガアッ!』
先日のゴブリンチャンピオンか。
鉄のロングソードと木のヒーターシールド、革製の鎧を装備している。
ふーん……。
やってみるか。
「御影流……、『断刃閃』」
『ガアッ?!!』
これは、相手の剣の平を打ち、剣を破壊する技だ。
これ、めっちゃコツがあるし、こっちの刀も痛むんだけど、俺の刀はレベルが上がってるから何ともない。
そして、丸腰になったゴブリンチャンピオンの首を刎ねた。
ゴブリンチャンピオンは、何と百ポイントだ。流石はボス。
うん、今日はこんなもんかね?
あ、ソラから電話だ。
「もしもし?どうした?」
『十階層攻略おめでとう!十.五階層の休憩ルームには、ワープゲートがあるから、それで戻ってね』
「おう、助かるわ。それとさ、返り血を浴びるから、Dポイントで使える……、なんかこう、浄化の魔法陣?みたいなの、用意できないか?」
『なるほど!それも良いアイデアだね、明日までに用意しておくよ』
よし、と。
さあ、帰って飯だ!腹減ったー!
天体魔導士のやらない夫が学園で頑張る話、めっちゃ面白えな。