十月頭の日曜日、正午。
迷宮端末が鳴る。
「どうしたソラ?」
『今から、ダンジョンを一般公開するよ!』
「おー、やったれやったれ」
ツブヤイターを開いておく。
東京、スカイツリー前のベーシックダンジョン。
大阪、通天閣前の水場ダンジョン。
名古屋、名古屋城前の城ダンジョン。
札幌、羊ヶ丘展望台前の凍土ダンジョン。
仙台、仙台城跡前の不死者ダンジョン。
広島、原爆ドーム前の火山ダンジョン。
福岡、太宰府天満宮前の森林ダンジョン。
俺はそんなことをソラから聞いている。
さあ、どうなるか……。
『なんかある
#スカイツリー前』
『なんぞこれwww
#太宰府天満宮』
『扉を開けたら、そこはダンジョンでした……。
#仙台城跡』
ぽつり、ぽつりとネット上で呟きが広がる。
『スライムに殴られた!めっちゃ痛い!
#名古屋城』
『《ダンジョン門の写真》《困り顔の絵文字》
#札幌』
中に入った奴もいるようだ。
『人が集まってきた。警察も来るっぽい。
#通天閣』
『中に入った人が何かに襲われて怪我したらしい
《血を流す人の写真》
#原爆ドーム』
早速、アホが怪我して騒ぎになっている。
そして十分後……。
「ツブヤイター落ちたわ」
アクセス過多でSNSが落ちた。
テレビをつけておこうか。
それから一時間後……。
『番組の途中ですが、緊急速報が入りました』
緊急速報が流れた。
『東京、スカイツリー前。大阪、通天閣前。名古屋、名古屋城前。札幌、羊ヶ丘展望台前。仙台、仙台城跡前。広島、原爆ドーム前。福岡、太宰府天満宮前。これらの場所に、西洋風の彫刻が施された石の門が現れました』
各地の映像が映る。
『門の中には……、な、謎の、生命体が……、います。非常に危険ですので、国民の皆様は、門に近づかないようにしてください』
ニュースキャスターが口籠る。
そりゃそうだ、モンスターがいるんだぞ?
あー、おもしれー!
一般市民の皆様が右往左往する様を眺めるのは楽しいなあ!!!!
次の日、学校に登校した。
「先輩!見たっすか?!」
白崎だ。
思いっきり乳を見てやる。
「見た」
「ちょっ?!ど、どこ見てるんすかぁ!そうじゃなくって、ダンジョンっすよ、ダンジョン!!!」
お!こいつも踊らされてるのか!たーのしー!
「あー?なんかあるらしいな」
「ヤバいっすよね!きっと、モンスターが門から溢れて、日本は破滅するんすよーっ!!!」
「おっ、そうだな!」
「先輩ー!私、死にたくないっすー!守ってくださいー!」
「おっ、そうだな!」
「空手部潰したり暴走族潰したりする力があるなら、私を守るために使ってくれても良いじゃないっすかー!!!」
「おっ、そうだな!」
教室でも、ダンジョンの話題で持ちきりだ。
「おっ!赤堀クン!ニュース見た?!」
「見たぞ」
「ダンジョンやで?!ってことはもう、金になるもんがたんまりあるんや!」
「そうだなー、そうだといいなー」
「ダンジョンで億万長者やーっ!!!」
「うんうん、そうだなー」
キチレンジャーの面々もダンジョンに興味津々と言った様子。
曰く、「ダンジョンのおぞましい魔物達が、人間の臓腑を啄み、血を啜るんだよ。死ぬ時の人間はどんな顔かな?男なら、硬直して勃起してしまふかも知れないね。魔物の死に様はどうかな?はらわたが破けて鳴くのかな?魔物の性器は(以下略)」
曰く、「インキュバスとかいませんかね?ゴブリンやオークでも良いです。ビンビンに怒張したオチン(以下略)」
曰く、「銭(以下略)」
曰く、「パパ活より楽しそー!って言うか、モンスター的なの拾ってきて、レイプして来ようとする馬鹿なおっさんをぶっ殺し(以下略)」
全員、ダンジョンについて語らっている。
ああ、高校生だなー!
以降は、ソラに聞いた話だが……。
まず、門を発見した時点で、無謀にもダンジョンに侵入して怪我したアホを回収して病院に運んだのち、ダンジョン前に警察官が現れて閉鎖。
ダンジョンの奥まで進んだ人がいるかもしれないと仮定して、救助しに自衛隊がダンジョンに侵入。
そして、チュートリアルダンジョンをクリアして無事に迷宮端末とポーションを手に入れたらしい。
その時点で、あまり奥まで行くのは危険ってことと、ポーションと端末の調査ってことで、自衛隊は帰還したそうだ。
さあ、盛り上がってまいりました!
その後の自衛隊は、持ち帰ったポーションと迷宮端末を国に提出したようだ。
しかし、ポーションは、帝都大学の薬学部を以ってしても、全く完全に意味不明なもので、薬品かどうかすらも分からなかったそうだ。
そして、端末は、手に入れた本人じゃない限り、ロックされて使えないことが判明。
なので、攻略に参加した自衛隊員を呼んで、目の前で端末を操作してもらうことになった。
まず、お知らせの欄を開くと、日本の七ヶ所にダンジョンを一般公開したことと、ソラによる激励の言葉が書かれていることを発見。
それにより、政府は人為的な事件であると認識を新たにした。
更に、端末の電話機能の、電話帳に最初からある『GMコール』と言うところに電話したところ、ソラが応答した。
それによって、政府は、ソラとコンタクトを取ることに成功した。
以下は、総理大臣の菅原義宏とソラの電話会談の様子である。
え?なんで知ってるか?ああ、後からソラに聞いたんだよ。
「えー、こちら、内閣総理大臣、菅原義宏でございます。そちらはどなたでしょうか?」
『やあ、こんにちは。君は今の人間の王だったね?私は明空命、ソラと呼んでくれて構わないよ』
「察するところ、ソラさんは、この『門』について関係があると、私共は考えているのですが」
『そうだね。ダンジョンは、私が作ったよ』
「なるほど……。では、ソラさんは何者で、どうしてダンジョンをお作りになったか?お聞かせ願えますか?」
『良いよ。まず……』
ソラは、伊邪那岐大神に恩を受けたこと、力を失った伊邪那岐大神の代わりに日本を救いにきたこと、そのためにダンジョンを作ったことを告げる。
「そ、それは……、なんとも……」
あまりにも突飛な話にたじろぐ総理大臣。
「と、とりあえず、その、モンスターというものが門から外に出てきて、無差別に人を襲うことなどは、ないのですか?」
『モンスターを捕まえて外に出せばそうなるかも知れないけれど、基本的に、モンスターは自分から門を出ることはできないと言っておくよ』
「分かりました……。では、明空命様は、単純な善意から、資源採掘場たるダンジョンを提供してくださった。こう言った認識でよろしいのでしょうか?」
『もちろんだとも。ダンジョンにあるものは何でも持ち帰ってくれで良いからね。私はまだ、この時代のことが勉強不足でよくわかっていないんだけれど、有用な動植物や、モンスターがたくさんいるんだ。是非、研究して、有効に活用してね』
「は、はあ……。ですが、ダンジョンは危険で、モンスターに襲われれば、死んでしまうのでは?」
『それは当然のことだよ。私の友人に俵藤太という戦士がいたんだ。彼は、常に命をかけて妖魔と戦い、巨万の富を勝ち取ってきた。命がけで努力する人間が富めるものになるのは理想的だよね?』
「は、はあ……」
『ああ、もちろん、商人や農作人の努力を否定する訳ではないんだ。戦士の持ち帰った成果を、民に分け与えたりしても、私はおかしいとは思わないよ。税を集め、弱者の救済に充てる。それは当然のことだね』
「なるほど……」
『それで……、どうかな?この話を聞いて君は、麾下の兵士達を動かしてくれるかな?』
「それは……、検討させていただきます」
政治家らしい、玉虫色の回答であった。
『一般市民にも是非公開してもらいたいんだ。数は多い方が良いからね』
「それについてはまだ、時期尚早かと存じますが……?!」
『けれども、そうでもしない限り、君達人間の欲しいものは中々手に入らないんじゃないかな?』
「は、はあ……」
『まあ……、ダンジョンはこれからどんどん増やす予定だから、とりあえずは国の戦士に挑ませた方が良いと思うよ』
「は、はい、分かりました……」
とまあ、こんな感じらしい。
いやー、楽しいなあ!
大魔導師グラブルは2話くらいあります。
超能力サバイバルものが20話くらい。
しばらくは超能力サバイバルものを書き溜めたいんですが、久しぶりにDDSnetも書きたい。