1話 召喚
俺の名は、如月龍斗。
どこにでもいる普通のチンピラ、喧嘩師である。
言っちまえば、定職に就かずにフラフラしつつも……。
「死ねや如月ィッ!!!」
「テメーが死ねやザコスケがよぉ!!!」
「ゴハァッ?!!!」
こんな感じ。
「日本一強い男、如月龍斗……。最強の名をかけて拙者と勝負するでござる!!!」
「かかって来いやゴミムシが!三分でクッキングしてやんよ!!!」
「「おりゃぁぁぁ!!!」」
こんな感じ。
「へへへ、五百人集めたぜェ!これでテメーもおしまいだぁ!!俺達、死天使愚連隊には誰も敵わねえんだよ……!!」
「ウジ虫はいくら集まってもウジ虫なんだよォ!プチっと潰してやるぜおらァ!!!」
「殺せぇーーー!!!」
こんな感じ。
最強の名に釣られた女を抱いて、ムカつく奴を片っ端からぶっ飛ばして……。
いやあ、人生ってのは良いもんだなぁオイ!
そんな楽しい毎日を過ごしていた俺に、ある日。
異変が起こった。
「うーっし、今日はナンパでもすっか」
と、ノリノリで外出した日のことである。
「今日は女子高生の気分だなー、っと。ん?」
あれ?なんか光ってね?と思い足元を見たところ……。
「魔法陣?うおっ」
その瞬間、目の前の景色は、一瞬で、変わった。
「勇者様、私達の世界をお救いくださうぃ?!えっ、あっ、お、男の人ぉ?!!」
「は?何だ?」
気付いたら俺は、石造りの部屋の中。高価そうなレッドカーペットの上にいた。おいおい、これ、俺みたいなチンピラが上に乗って良いもんなの?後で請求書とか来ない?大丈夫?
それに、何故かあわあわしてる金髪の美女。なんかお姫様って感じだ。ティアラとかしてるし。
赤いドレス……、これまた高価そうなの、に身を包む、綺麗にセットされたパツキンのチャンネー。マブイぜ!!
辺りを見回すが、全員女。騎士らしき鎧を着た連中も女。魔法使いっぽいの、僧侶っぽいの、格闘家っぽいのもいるが、女だ。
「お、男だと?!」
「なんと……」
「ま、まさか」
と騎士が騒めく。
んんー?
何だこりゃあ。
ちょーっと状況が掴めねえんだわ。ドッキリ?若しくは油断させた俺を潰そうって算段?
いや、ちょっと待て?
俺の目の前にいるお姫様っぽいのはなんて言った?勇者様?ユウシャサマ?
その時俺に電流走る。
脳内に駆け巡る、知り合いとの会話!
そう、あれは、御宅沢が言っていた……。
『最近異世界モノが流行ってるんでござるよー!ある日突然、可愛いお姫様に召喚されて、勇者様世界を救ってくださいって!そしてハーレムパーティを築いちゃう訳ですな!』
成る程、これが、異世界モノか!!!
「よし分かった!魔王を倒すんだろ?」
良いじゃねえか……!!
魔王、良い!!
命を賭けた殴り合いは大好きだぜェ……!!
さあ、楽しませてもらおうじゃねえか!!!
「魔王討伐は中止ですぅ!勇者様にはぁ、私のお婿さんになってもらいますぅ!!!」
あるぅえー?!
「待てや、これってアレだろ、世界征服を目論む魔王を潰して来いって話だろ?!」
「そうでしたがそんなことはもうどうでも良いんですよ!男の人ですよ?!そんな危ないことさせられません!!」
は?男に危ないことさせらんない?どういうことだ?
「いやむしろこういう時に男が出ないでどうすんだよ」
「魔族達によって世界中が危機に陥っているのは確かです!しかしだからこそ、男性は保護するべきなのです!!」
男性を、保護?
「って言うか勇者様の格好、胸板が、胸板がっ、ぶふっ?!!」
う、うおっ、鼻血出てんぞ姐ちゃん。
俺の格好?シャツを第二ボタンまで開けてて、ジーパンにロングコート、革靴にネックレスくらいだけども?
「はぁはぁはぁはぁ……!!ゆ、勇者様、いえ、私のお婿さん!よく来てくださいました!実は、魔王討伐、ではなくぅ、私のフィアンセとなっていただくため、異世界から召喚したんですぅ!だから結婚しましょう?結婚してたくさん子作りしましょう?王国を繁栄させちゃいましょ?ね?ね?」
「お、おう?」
な、何だってんだ?
「姫ェ!嘘ついてんじゃないですよォ!!!彼は僕と結ばれる運命にあるんです!!!」
騎士の中で一番豪華な鎧……、動きやすさと防御力を両立させたような形で、白銀に黄金の縁飾りや紋章が刻まれたカッコいい鎧を着た、金髪のショートカットの女。中性的っつうの?これはこれで可愛いんじゃね?見たところそこそこ腕は立つみたいだな。
「ハッ、笑わせる。勇者様は私と合体する。性的な意味で」
一目見て分かるくらいの魔法使い。ちびっ子がデカい帽子とローブ、杖を持ってる。青髪のショートで大人しい印象を感じる。
「なーに言ってるアルカ?勇者様はワタシとウーロンで暮らすアルネ!!!」
赤いチャイナ服の女。身体つきから分かる。こいつ格闘家だ。糸目で黒髪にシニョンを二つ付けて、巨乳。
「今神託が下りました!彼は私とレイニア教国で挙式すべきだと!!さあ勇者様こちらへ!!」
長耳の女。僧侶っぽいローブに金のロザリオ、っつーの?を身につけている。銀髪のロングヘアでめちゃくちゃ美人。
「ん、お、おお?」
何だこいつら。
意味分かんねえ。
分かんねえ、が、全員頬を染めてこっちをガン見してきていやがる。
んんんー?
シャツのボタンを一つ開ける。
「「「「ぶふぉ?!!!」」」」
全員が鼻血を出して卒倒する。
つまり、何だ?
この世界は女の性欲が強いってことか?
それとも俺が特別イケメンなのか?
できれば後者であってくれ、なんて思いつつ、質問タイム。
「男はいねえのか?」
この部屋には一人も男がいない。
これはおかしいよなあ?
「男性ですか?男性なんてそうそういませんよ」
「どれくらい?」
「ええと、十数人に一人くらいですかね」
なんだそりゃ。
「男女比ぶっ壊れてんな。工業高校の逆バージョンみてえだ」
この世界の男は生きづらいんだろうなー。
肩身狭いだろうな。
世の中全てが女性専用車輌みたいな感じだろ?
「ですから、勇者様におかれましては、魔王討伐などとてもじゃないけどお願いできません!!国賓待遇で我が国で迎え入れますねっ!!」
「嫌だね」
「へっ?」
男女比が狂ってる?
男は貴重だから保護する?
知らねえよ。
「俺ァ三度の飯より切った張ったの大勝負が好きでね。やりたいようにやらせてもらうぜ」
「えっ、えっ、ちょっ、駄目ですよ!男性に冒険だなんて野蛮なこと……!」
そこで、騎士、魔法使い、格闘家、僧侶の女達が何かに気付いたような顔をする。
「「「「旅をすれば、その間、勇者様と一緒にいられる……?!」」」」
「姫様、僕が思うに、勇者様にはやはり旅に出てもらうべきです!!そして旅の最中でらぶらぶちゅっちゅでうへへへへへへ」
「私も旅に出すべきだと提言。モチベーション二倍。戦力三倍」
「ワタシも賛成アル!旅の最中、小さな宿屋、同室にお泊り……、くー、うほう!」
「魔王を倒すのが我々の使命です!その為に勇者様のお力を貸していただくべきかと!ついでにお身体も貸していただくべきかと!!!」
姫、と呼ばれた女に詰め寄る四人。
「ええい黙れェ!!!勇者様は私と結ばれるんだぁぁぁ!!!城の中から出さないんだぁぁぁ!!!」
そりゃあ、姫様みたいな美人といい仲になれるんなら面白そうだが、城の中から出さねぇとか言われると嫌だね。
俺は命を賭けた殴り合いが大好きなんだよ。
よく分からねえが、この世界はファンタジーなんだろ?
ドラゴンだとか何だとか、そう言うバケモン相手にも俺の喧嘩が通用するか、試すんだよ。
ああ、楽しみだ。
主人公は貞操逆転ものであるまじきガツガツいくタイプです。
据え膳を食い散らかしていきます。