彼女ができた。
が、まあ、白崎……、いや、杜和は、相変わらず後輩として接してくる。
例え恋人になったとしても、この距離感が心地いいんだとか。
当然だが、やることはやった。
さて、春休みだ。
「自分もダンジョンに行きたいっす!」
「死ぬぞ」
「なら鍛えるっす!」
「じゃあ、ジジイに言っておくから道場に行け」
「え……?う、噂のキチガイ道場っすか?!」
「キチガイ?別に普通だろ」
「トラックを引っ張ったり」
「足腰は武術の基本だ」
「鉄骨で素振りしたり」
「剣技はパワーだ」
「今時山籠りしたり」
「キャンプみたいなもんよ」
「……キチガイじゃないっすかー!」
うーん?そうなのか?
そういや、俺の常識はおかしいらしいな。
うん、なるほど。
「まあ、キチガイだとしても、必要なことだぞ?」
「うー……、分かったっす。でも、子供は欲しいんで、子供を産める身体は残してくださいっすよ?!」
「OKだ、ジジイには丁寧にやれって言ってやるよ」
さあ、道場に行くか。
御影流道場。
実家の寺である六光寺に併設された武術道場だ。
門下生は三十人ほど、やってる内容は軽いトレーニングだ。
あ、いや、俺からすりゃ軽いってだけで、常人からすりゃ辛いのかもな。
さて、と。
「おいジジイ!可愛いお孫様が来てやったぞ!ツラ貸せや!!!」
「なんじゃ?もう免許皆伝じゃろがい、往ねやクソ坊主!!!」
なーんだこの老いぼれ?
俺より弱えくせに態度デケェなぁおい?
「え、えと、仲悪いんすか?」
居心地が悪そうに杜和が訊ねてくる。
「いや?いつもこんなもんだ」
いやいや、フツーに親戚のやりとりだろ?
まあ良いや。
「ジジイ、暇か?いや、暇だろ。頼みがある」
「言うてみろやクソガキ」
「こいつ、俺の嫁になる予定の女だ。丁寧に鍛えてやってくれ」
「お、お爺様!よろしくお願いします!自分、白崎杜和って言います!」
杜和は頭を下げた。
「ふむ……、尻のでかい良い女を選んだな。丈夫な子を産めるじゃろう。御影流は安泰じゃ」
ジジイはニヤリと笑う。
やめろよなー、今時の子にそう言うの。
セクハラって言うんだぜそれ。
「こいつには俺のガキを孕ませる予定だから、壊さない程度にしろよ?」
「おうよ、ええじゃろう。……ところで、お前、最近だんじょん?なるところで大分愉快な稽古をしとるそうじゃが?」
「ああ、最高だぜ?人型のバケモンをぶった斬れるんだからよ。あの気持ち良さっつったら勃起もんだぜ」
「ほう……!ええのお!儂にもやらせんか!」
「うちの蔵にあるんだよ、勝手に行け。死んだら一週間は笑うからな」
「ボケナスが!儂は死なんぞ!」
「それよか先に杜和を鍛えろや。良いか、くれぐれもやり過ぎるなよ」
「バカタレ、儂が何人壊してきたと思っとる?加減は大得意じゃ」
ジジイに杜和を引き渡す。
それじゃ、俺は仕事だ。
杜和を養ってやらなきゃなるめえよ。
となると、やっぱり金が欲しい。
ポーションの大量納品だ。
ポーションを納品してから、ついでにお袋に実験の経過を聞く。
「で?どうなんだ?」
「実験結果ね。一階域のポーションなら、ちょっとした風邪や軽度の裂傷打撲なんかに効くことが判明したわ。また、連続して服用すると、更に治癒力が増加することも」
なるほど。
「十階域ポーションなら、五類感染症や骨折くらいまでなら一本で治せるわね」
「五類感染症ってのは?」
「インフルエンザとか……、性病とか?」
ふむ。
「二十階域ポーションなら、二類感染症、軽度の生活習慣病、内臓破裂、四肢の切断まで治しちゃうの!あ、二類感染症って言うのは、結核とか鳥インフルエンザとかね」
そうかそうか。
「そして、三十階域ポーションなら、末期癌、白血病、骨粗鬆症、アルツハイマー、麻薬によって破壊された脳を治療できて、更に、切断された肉体を再生して、失った臓器の類も再生するの!これは革命よ!」
「それって……、つまりは、三十階域ポーションは、現代医学でも難しいことができるってことか?」
「難しいって言うより、不可能なレベルのことでもできるわね」
なるほど。
「例えば、現代人がなりやすい糖尿病だとか、アルコール中毒だとか、タバコでやられた肺癌だとか、そういうのも全部完治するのよ?なんで治るか原理は分からなくても、そんな薬ってみんな欲しいわよね?」
まあ、俺はクッソ健康だからその辺は分からんが、やっぱり、老人はそういうの欲しがるだろうな。
「若返りの秘薬も、治験で効果が実証されてるわ。まあ、治験に協力してくれたのは、善意の協力者の偉い方々だけどね!」
なるほど?
偉い人に若返りの秘薬をばら撒いて、支持を集めるって寸法か。
「ひょっとして、前言ってた秘策ってそれか?」
「ふふ、そうよ。おバカな政治家先生やら、毎年多額の政治献金をする資本家やらに、若返りの秘薬をばら撒くの!そして、『この秘薬はお試しですが、ダンジョンに人が出入りするようになれば、更なる秘薬が市場に出回りますよ!』って唆すのよ!」
なるほどな、そりゃ効果絶大だ。
「いいかしら、藤吾ちゃん?私達みたいなのは、より面白い方の味方をするけれど、世の中の殆どの人は、より利益がある方の味方をするのよ」
「だろうな」
「与党に多額の献金をしている資本家達だって、若返りの秘薬の魅力には逆らえないの!」
ふーん。
「ところで、お袋は秘薬を使ったのか?」
「ええ!研究者特権ってことで二本使ったわ!その分のボーナスは振り込んでるから確認してね!」
なるほど、享楽主義だが利益も掻っ攫う。
「それと、スクロールね!スクロールは、使えばスキルが身につく……、けど、チュートリアルまでダンジョンをクリアして、端末を手に入れないと使えなかったわ」
「ほう」
「多分、チュートリアルダンジョンをクリアすると、人体がダンジョン向きにフォーマットされるんだろうなー、みたいな予想はしてるけど、本当のところは不明ね」
「ソラに聞けばどうだ?」
「そう思って聞いてみたんだけど、『チュートリアルダンジョンをクリアした時点で、魔力が肉体から生成されるようになる』って言われたわ。でも、魔力なるエネルギーの観測方法がないからよく分かんないの」
「ふーん」
「まとめると、ダンジョン産の道具は、非ダンジョン攻略者でも使えるけど、スクロールは、ダンジョン攻略者にしか使えないの」
「なるほどな。で、それを調べてどうすんだ?」
「それはあんまり調べてないわ。研究者として心苦しいんだけど、手がかりの一端すら掴めない今、実験の試行回数を増やすしかできないのよね」
なるほど。
「まあ……、そろそろ話が漏れる頃よ。楽しみに待ってなさい」
「おう」
要塞はアレだから召喚ということにしようか。
舞台は未来で良いや。
主人公の固有魔法は『召喚』で、なんでも欲しいものが呼び出せる。
で、魔力電池的なのを使って、十二年分の魔力を貯蓄した倹約家主人公(えらい!)まあでも、普段使いする消耗品くらいならいくらでも手に入る。
一応の制限として、大きいもの、高機能なもの、遠い世界のものは、召喚コストが高いこととしよう。毎月、漫画単行本を数十冊召喚しているが、それだけで一割消費する。なんでも無制限に手に入る訳ではないとする。
んでまあ……、高い魔力を払って、異世界とつながるようにしたパソコンで、VIPでスレ立てして異世界人でーす!うぇーい!してるところから物語はスタート。
ダンジョン攻略なんて、命がけで働くのは底辺のカス!ブルジョワの俺は昼間から遊ぶ!とか言いながら遊んでたら、外出時に国家直属のダンジョン攻略組織に捕まる。
「うおおおお!離せショッカー!!!」
捕まった主人公は、魔力測定装置にぶち込まれて、『魔力量:EX』の評価を下される。
んでまあ……、この世界の街は、最初の『ダンジョン適合者』の固有魔法である『結界』をデチューンした術式による疑似結界で守られてて、「その魔力量を結界の維持に使ってもらおう!」とか言われんのよ。
もちろん、主人公からすれば、貯金にも等しい魔力を奪われるのはブチ切れ案件なのね?案の定、ブチ切れて大暴れするのよ。
それを見て、国家のダンジョン攻略組織は、「こんな大立ち回りできるほど強えなら戦わせろや」となる訳だ。なお、主人公に固有魔法について訊ねても「言えぬ……(セキロ)」ってなるのでみんな頭を抱える。
適合者はみんなダンジョン攻略組織に入るって法律やし……、って事で、年齢も鑑みて、探索者学校的なサムシングにぶち込まれる主人公君。
周りの生徒達はこう、「ボクタチ、選ばれしものです!」みたいな奴とか、お目目キラッキラで本気で世界を救うと信じちゃってる真性か、みたいな感じで、野心溢れる奴と、正義の味方しかいなくて、やる気ゼロマンの主人公君はバリバリ浮くんですわね。
「私の力で、少しでも多くの日を守りたい!」みたいなぐう聖ヒロインと出会ったりなんだり。モンスターに両親を殺されて、モンスターを恨んでる復讐系少女ヒロインと出会ったり。なんかヒロイン案とか有れば言ってください、実装したりしなかったりします。
あ、因みに、主人公の両親も適合者なのね。両方とも、最後まで戦って死んだ故人。でも主人公はそれを、「他人の為に命張って野垂れ死とかウケるー!」みたいに思ってるガチクズです。
探索者学校だからまあほら、いきなり、街の結界の外に出てモンスターを倒す実習とかするんですよ。
この世界のモンスター、殺すと死体が残るタイプなんで、周りの一般生徒はビビるんだよね。でも主人公は、病的なレベルで他人の痛みが理解できないので、笑って殺すよ!
普通の勉強も当然するけど、モンスターとの戦闘や、戦闘訓練、魔術の訓練とかをする。大変だね。
そして遂に、ダンジョン攻略体験!
まあこんな感じで。
なんか探索者学校っぽいイベントとか思い浮かばんので、案があったら教えてくだちを