スコップはやめられない!
「新潟食料ダンジョンで食い倒れの旅ィー!!!」
「わー!」
『『わー!』』
「ワン」
俺、杜和、日和、桐枝、早太郎の五人(?)で、新潟ダンジョンで食べ歩きをすることとした。
いやぁ……、まあ、ね?
龍心人(ドラグナー)になった俺と杜和は、日光ダンジョン百階層のボスであるドラゴンですら圧倒できる存在になったからな。
だから、今更、百階層以下の難易度しかないブランチダンジョンで苦戦することはないんだよ。
「にしても……、政府の人達が手配してくれた旅館、凄かったっすね!」
と杜和。
「ああ、そうだな」
そう……、超VIPの俺達は、普通の宿には泊まれないと言うことで、新潟でも最高クラスの温泉旅館を貸切にしてもらっていた。
個人的に、温泉がすごく良かったな。
この辺は寒いし、雪も結構降っている。
雪降る中での露天風呂は最高だったぞ。
雪化粧をした新潟の山々を見つめつつ、寒い中に熱い風呂に入るのは最高の贅沢だ。
おまけに、飯も美味かったしな。
とりあえず、宴会用の刺身舟盛りと、黒毛和牛のしゃぶしゃぶを頼んだのだが、どちらも美味かった。
気持ちの問題かもしれんが、刺身が新鮮で特に良かったと感じたな。
地元の山梨は内陸だから、海の魚はあまり美味くない気がする。あと高い。
米も美味いな、思わず二升も食べてしまった。
噂によると、ダンジョンの食料は、俺が旅館で食べた日本最高級の食材より遥かに美味いらしいな……。
楽しみだ。
はい、ダンジョン入場。
「うわー……」
まず、新潟ダンジョンの第一層は、無限に広がる黄金の稲穂……、米のとれるところのようだ。
燦々と照りつける太陽は、表の世界が真冬であることを忘れさせる。
その辺で、冒険者……、なのだが完全に農家な人達が、稲刈りをしている。
普通、冒険者とは、ツナギのような服にプロテクター、それと武器を持つのがよくある服装なのだが、この新潟食料ダンジョンではそうじゃないらしい。
麦わら帽子に手拭い、それとハルパーという鎌剣を持ち、薄着で稲刈りをしているおっさんが多い。
それと、槍と刺股を構えた一般冒険者がずらりと並ぶ。
「おう、爺さん!」
俺は、その辺の稲刈り爺さんに話しかけてみた。
「んお?どうした?」
「俺ぁ、ここに来るのが初めてでな。ここにはモンスターは出ないのか?」
「出るぞい。たまに、猪みたいなのが、背の高い稲に隠れながら体当たりしてくるんじゃ。危ないぞい」
ほー、なるほどね。
槍を持った冒険者は、そのたまに現れる猪モンスターを仕留める為の人員な訳か。
「爺さんは農家なのか?」
「そうじゃよ。表の畑は農閑期じゃからのう、ここで稲刈りをすれば臨時収入がガッポガッポじゃて!」
ふむふむ。
「ところで、猪が出るのに、この田んぼの米は食っていいのか?」
普通、猪が入った田んぼの米は破棄されるはずだ。
猪の身体に寄生虫とかが付いてるからな。獣は汚いんだ。
「それがのぅ、猪の化けもんを捕まえて学者さんに見てもらったら、寄生虫やらダニやらはなかったみたいでのう。このだんじょん?は、純粋に食べられるものしか出んのかもしれんっちゅう話じゃ」
ほーん?
「そうか、ありがとう。参考になったよ」
「おう、頑張れよ坊主!」
爺さんに話を聞き終えたので、米を集めることにした。
勝手に刈って良いそうだ。
なんでも、放っておくとその内また生えるらしいからな。
とりあえず、周囲の土ごとサンプルを採取。
これを、最高級の容量無限アイテムボックス鞄に入れる。
そして、米を……。
「そぉい!」
俺が刈り取り。
『トルネード!』
日和が風の魔法で脱穀する。
精米?
どうやら都会の人は知らないらしいが、田舎にはその辺にコイン精米機というものがあってだな……。
この米を、およそ1トンほど集めて、鞄にしまう。
1トンの米を貰ったが、まだまだ稲穂はいくらでもあるし……。
「おおっ」
なんなら、俺が根こそぎ刈り取ったところから、新しい芽がぴょこんと出てきたくらいだ。
ついでに、範囲内に潜んでいた猪モンスターも仕留めていく。
そして実食タイム!
と思ったのだが……。
「どうせなら、旅館に戻った時に、旅館の人達に調理してもらった方が良くないすか?」
と杜和が言ってきた。
「そう言うことやって良いのか?」
「ちゃんと確認したっすよ。旅館側も、今高騰していて手に入りにくいダンジョン食品を使って料理できるのは助かるって言ってたっす」
「なるほどね」
そんな訳で、試食はお預けだ。
二階層へ。
「……何すかこれ?」
「こりゃ大豆だな。こっちが枝豆の状態で、こっちが大豆」
「はえー」
収穫。
ここもアクティブモンスターは猪だった。
五階層まで来た。
今までに、にんじんじゃがいも玉ねぎ……、長ネギやニンニク、キャベツに白菜、麦、トマト、ナス、ピーマンと色々出たな。
で、ボスは黄金の猪だ。
普通に仕留める。
六階層からは、水辺が追加された。
水辺には魚介類や海藻などがあるようなので、根こそぎ貰っていく。
また、陸地でのモンスターに羊が追加された。
十階層のボスは黄金の羊。
そうやって、どんどんモンスターの種類は増えていき……。
八十階層に到達するあたりでは、ユニークなデザインのモンスターが色々出てきていた。
例えば、フォアグラです!と言わんばかりに太ったガチョウのモンスターや、歩く巨大松茸、マッハで突進してくるマグロに、黄金の牛……。
超巨大伊勢海老、30mウナギ、針を飛ばしてくるウニ、ヒレと卵巣がクソでかいサメ、回転しながら刃を飛ばしてくるデカいアワビ……。
黄金の鮭、ウォーターカッター蠣、毒ブレスフグ、巨大カニ、トリュフマタンゴ、ガトリングメロン……。
最早、何の生き物だかよくわからないがとにかくうまそうな獣や、謎の超巨大果実などなど。
地形も頭が悪く、チョコレートや酒の川、蜂蜜や出汁の湖、肉の実る木々、ミルクが湧く泉……。
………………。
「もしもし、ソラ?」
『何だい?』
「お前、ジャプンで昔連載してたグルメバトル漫画読んだだろ?」
『名作だったね』
「アッハイ」
神がよーっ!
人間の漫画に影響されてよーっ!
……まあ良いや、実際楽しいし。
そして、百階層のボスは食材が実る300mほどの大きさのトレントで、透明な果実を頂戴した。
さあ、帰ろう。
ポストアポカリプスもの、題してゲーム化地球もの、書けてます。
ジェイソン・モモア似のガチマッチョ農家イケオジが、かわいい武装JKにモテモテになる話です。
農業全然わかんないので、なんかあったらアドバイスくだち。