ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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ウクライナの件を見ていると、「やっぱり弱い国はこうなるんだな」と思った。



53話 揺れ動く国際社会 後編

ダンジョンショック、ブランチダンジョン、日本鎖国……。

 

激動の一年から、飛躍の時へと移った日本。

 

それを目の当たりにして、ある国は怒り、またある国は後悔した。

 

他の国はどうだろうか?

 

 

 

欧州は?

 

欧州と言えば、EUが有名だ。

 

諸国が一つのグループに加盟して、一つのヨーロッパという国になっている。

 

口さがない外国人は、「あの辺りは王室やら貴族やらが嫁ぎ合って、ほぼ親戚みたいなものだから」と言うが、当たらずとも遠からずだろう。

 

共通の通貨、共通の政治機構を使って、ヨーロッパと言う一つの国となり、アメリカや中国のような大国に対抗していこうと、つまりそう言うことだ。

 

……まあ、加盟国内で格差がないとも、確執がないとも言えないのだが。

 

そんなEUの理事会だが……。

 

「ふざけるな!貴様の提案だっただろうが!」

 

「私だけのせいにしないでいただきたい!貴方だって賛同していた!」

 

「そもそも!責任の大本は、理事会議長にあるのではないか?!」

 

「なっ?!普段は私の助言などまるで聞かないくせに、よくも抜け抜けと!」

 

「何であれ、責任者は貴方だ!」

 

「日本排斥案を承認しなければ、私の暗殺をも視野に入れるとまで言われれば、こうもなろう?!」

 

「そ、そんなことは言っていない!」

 

「いや、言った!」

 

理事会は、荒れに荒れていた。

 

別々の国の連合体という、一枚岩の組織でないということ。

 

それが今や、大きな弱みになっていた。

 

アメリカ合衆国と同じだ。

 

アメリカも、『合衆国』と言うだけあって、州の連合国のようなもの。かつて南北に分かれて戦争したことすらある国。

 

それと同じように、EUも、別々の国の寄り合い所帯……。

 

「お前のせいだ!」

 

「いや、貴様が悪い!」

 

「お前だ!」

 

故に、争う。

 

欧州も他の殆どの国と同じだ。

 

ダンジョンが発生した日本から、多くの人員と資本を引き上げて、知らんぷりをした。

 

他の国と同じように。

 

ただそれだけなのに、日本が怒った。

 

欧州からすれば訳のわからない話だ。

 

危険な国から国民や資本を引き上げて、無事になったからまた市場に入れてやろうと、ただそれだけの話なのに。

 

かつては日本も同じようなことをやっていたはずだ。

 

当事者ではない欧州の戦争に手出しして「戦争特需」だのとやってきたこともあるし……。

 

安価で信頼性の高い日本車を欧州で売るのも、欧州からしたら国内自動車産業の保護という面から考えれば迷惑だと言えなくもない。

 

とにかく、国際関係とはそういうものなのだ。

 

殴ったり殴られたりする、それが当然。

 

なのに日本は、大人気なく怒った。

 

外国許すべからず!と。

 

ダンジョン発生後の日本は、どう考えても、外国の助けがなければ、第一次世界大戦後のドイツのように零落することが目に見えていた。

 

事実、輸入品の物価が倍に跳ね上がり、株価が乱降下し、自殺者失業者が数倍に増えていた。

 

そんな日本が、意地を張って、外国の助け……という名の貸し付けを断り、剰え鎖国までしでかしたのだ。

 

欧州欧米の資本主義的理論では、貸し付けを受け入れて、それで復興して借金を返していくのが当然だと見られていたのに、だ。

 

何故こうなったかというと、日本の『反外国』の世論や風潮も当然あるが、『日本に齎されたダンジョンがあまりにも素晴らしいものだったから』ということは海外の人々が気付いていない。

 

そもそも、国家の上層部が、『無限に資源の湧く異世界』というのを、未だに理解しきれていないというところがある。

 

日本が今、ダンジョンさえあれば外国と一切やりとりせずとも自活できる国になっているということを、理解できていないのだ。

 

それはまあ、当然だろう。

 

流石に、『ダンジョンには無限の資源がある!』と言われて信じられるような政治家がそうそういる訳がない。

 

海外の人々の認識では、ダンジョンは、『資源が豊富な異空間』止まり。

 

『全く新しい物質』『魔法の道具』『食べるだけで頭が良くなる食べ物』『無限のエネルギーを秘めた炉心』『万病を治す薬』……。

 

そんなものを本気で信じる奴が政治家をやっていれば、それの方が怖いというもの。

 

問題は、その『信じられない奇跡』が現在進行形で起きているということだが。

 

 

 

他の国はどうだろうか?

 

アジア、南米、アフリカ、中東は?

 

……この辺りの国はそもそも、他国に注意をさける程の余裕がないというオチだ。

 

中には、日本からの寄付金で保っているような国もあったので、寄付金がなくなりピンチだ!とは言うが、そんな国は元からピンチなので……。

 

では、ロシアは?

 

旧日本陸軍最大の敵とされていた、ロシアはどうだろうか?

 

「……報告を」

 

「は、ははっ!」

 

ロシア連邦の大統領であるヴラドレン・プチロフは、中国の書記長のように声を荒げるタイプではない。

 

今回の事件でも、叫び声を上げ怒り狂うようなことはなかった。

 

しかし会議室は、プチロフの静かな怒気に満ちており、それを感じ取った部下達が冷や汗を流している……。

 

「ほ、報告です。日本に派遣したスパイによりますと、正規手段によって日本国籍を得ていれば、人種を問わずにダンジョンに侵入できるようです」

 

「つまり?」

 

「つ、つまり、我が国のスパイのような、非正規手段による不正入国者は、ダンジョンに入れないのです」

 

「それはいかなる意味でだ?守衛に止められるのか?」

 

「もちろん、ダンジョンの守衛は二十四時間体制で見張っていますが……。そもそも、不正入国者は、ダンジョンの扉が開けられないようです」

 

「開けられないとは?正確に報告しろ」

 

「は、ははっ……!開けられないとは、鍵がかかっているかのように扉が動かなくなるとのことです!そして、他の者が扉を開いている隙に潜り込もうとしても、見えない力場に弾き飛ばされると報告がありました!」

 

「ふむ……」

 

プチロフは、鋭い目つきを更にきつくして、机を指で叩いた。

 

これは、苛ついている時の癖のようなもので、この時のプチロフに話しかけたものは皆、遠く寒いところに『左遷』される。

 

「……日本国籍を正規手段で得ているスパイも用意しておいたはずだ。それはどうしたかね?」

 

「はっ……!そ、それらのスパイは、ダンジョン内部の調査をさせました!で、ですが、日系人スパイは貴重なので、死なないことを優先させており……!」

 

「それは構わん。で、何か情報は得られたのかね?」

 

「そ、それが……、『ダンジョンには無限の資源がある』と……」

 

「報告は正確にと言ったはずだぞ」

 

「ひ、ひいっ!も、申し訳ございません!し、資源とは、ダンジョンの位置によって異なり、例えば『ニイガタ』と呼ばれる土地のダンジョンには、地平線の彼方まで無限に広がるコメや麦の畑が広がっていたそうです!」

 

「馬鹿な、今は真冬だぞ」

 

「で、ですが報告によると、常に収穫適齢期の作物が実っているとか……」

 

「そんな訳が……!もう一度、徹底的に調べさせろ!そして、農務に関係する大臣を集め、協議しろ!」

 

ここに来て、プチロフ大統領も声を荒げた。

 

流石に信じられないと思ったのだろう。

 

そんなに都合がいいものがあってたまるか、と。

 

今でこそ、科学農法によりどうとでもなるようになったが、かつてのロシアの先祖達は、作物の育ちにくいこの極寒の地で助け合って暮らしていたと言うのに。

 

無限に食料の湧き出る土地など、祖先への侮辱に等しい。

 

「イポーシカめ……!今に見ていろ……!」

 

大統領はそう吐き捨てると、様々な計画を練り始めた……。

 

 

 

こうして、世界は踊り始める。

 




うー書き溜めが……。

アンケでもとるかな……?

いや、俺が今書きたいものを書くのが一番だな。

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