ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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カツ丼を食って太った。


59話 冒険者学校の始まり

俺は、家に届いた通知書をめくる。

 

「……なるほど」

 

引越し、か。

 

 

 

ダンジョン発生から一年と五ヶ月。

 

現在では、日本の専業冒険者人口は一千万人を超え、兼業冒険者ともなれば三千万人を超えていた。

 

それは最早、日本人口の四分の一にも達する。

 

日本の労働人口(働ける人の数)が六千八百万人程なので、実に、働ける人間の半分は冒険者であることになる。

 

ブラック企業などと言うのもなくなって久しい。

 

何故なら、ブラック企業とやらで低賃金の残業代なしの長時間労働を休みなくするよりも、どう考えても、冒険者の方が楽で儲かるからだ。

 

前も言ったかもしれないが、スライム潰しでも時給三千円強である冒険者という職業をやらない奴はアホだ。不安定な自営業であることを加味しても、だ。

 

いやまあ、確かに、今では冒険者が多くなり過ぎて、スライムコアの値段も値崩れしつつはある。スライム潰し「だけ」では、段々と食っていけなくはなりつつあるのも確か。

 

だが、一〜十階層ほどの、「まあなんとかそうそう死にはしないライン」で、バイト感覚で雑魚モンスターをプチプチ潰せば、時給三千円のラインは今でも維持できる。

 

十八のダンジョンの一〜十階層には、それぞれ別のモンスターが出現し、別の資源が得られるのだから、最低でも百八十種類の素材が得られる。

 

そして、最低百八十種類もあれば、素材は中々に値崩れしない。

 

ほんの、一日三、四時間程度の活動で、中坊のガキでも新卒並みに稼げてしまう冒険者……。

 

当然、多くの人々が群がった。

 

更に言えば、時給三千円は最低額。

 

努力によって賃金は青天井であることも、冒険者人口の増加を後押しする。

 

事実、今や日本一の富豪となった俺は、一度のダンジョンアタックで数百億円以上を稼ぐということは、国中どころか世界中の人間に知られている話だ。

 

ついでに言えば、俺は純資産では世界一……。

 

経済学については詳しくないが、普通、金を稼ぐには金を使わなくてはならないらしい。

 

九十億円を元手にして百億円を稼ぐ、と言った感じに。

 

ところが俺は、俺の命一つをかけるだけで、一円も使わずに数百億円を稼げるのだ。

 

俺の純資産は既に、小国の国家予算並みに膨れ上がっている。

 

こんな夢のある職業は他にないと大評判。

 

普通の社会人達も、休日のみ冒険者として活動する『休日冒険者』などを始めている場合が極めて多い。

 

まあ、当たり前だな。

 

モンスター、それもスライム辺りを思い切り殴りつけるストレス発散をするだけで、勤めている会社より儲けられてしまうのだから。

 

流石に、ゴブリンなどの流血したりする生物系モンスターとは戦えないと言う人もそれなりにはいるが、やはり人間は金の力には敵わない。

 

大抵の人は慣れて、血を噴き出しながら断末魔の叫びを残して死んでいくゴブリンやオークを、刃物や鈍器でぐちゃぐちゃにして殺せるようになっていた。

 

更に最近では、資源産出系のダンジョンでの資源採取員のバイトも始まる。

 

それらのバイトは時給にして五千円と、頭のおかしい額だった。

 

何故か?

 

例えば、ダンジョンの原油を汲み上げる仕事。

 

これは、危険手当も当然含むが、それ以上に……。

 

輸送費がほぼゼロだからだ。

 

今までは、原油と言えば、中東くんだりから関税をかけられて、更に輸送タンカーで輸送費を大量にかけて運んでくるものだった。

 

それが今や、国内に、しかも精製済みの原油やらガソリンやらが湧くダンジョンがあるのだ。

 

そこの、原油汲み取りバイトの時給を五千円にしようが五万円にしようが、どうやっても海外から購入しタンカーで輸送するよりは安くつく。

 

逆に言えば、それくらいの時給にしなければ人が集まらなくなったとも言えるが。

 

今の日本企業は、相当大きなところでもない限り潰れてしまう。

 

確かな技術力か、バブル並みの高待遇か……、そう言った見所がない企業は、あの時の大不況で軒並み倒産した。

 

技師になりたいだとか、家業を継ぎたいだとか、そう言った夢や将来のビジョンがある人々も当然いるが、世の中の大抵の人は「楽に稼げりゃなんでも良い」と考えているのだから、楽に稼げる冒険者以外の仕事をやってもらおうとするならば、相応のメリットを提示しなければ無理ということだ。

 

それにそもそも、俺にはよくわからんが、採算性?とやらがとれなくなり、破綻した会社が多いのもあるそうだ。

 

つまりは、素材の値上がりなどで、材料費の方が商品の値段より高くなってしまったと言う訳だな。

 

そもそも、社員に過重労働をさせまくらなくては採算性がとれないような会社は、最初から歪な存在だったということだろう。

 

そうして、人手がダンジョンに取られるのと同時に、人手を受け入れる企業側も弱体化あるいは消滅していった訳だな。

 

幸い、清掃、介護、農業、接客など、やりたがる人の多くない仕事は、テイムモンスターを使えるようになってきたが故に、人手不足にはならないそうだが。

 

さて、そうなってくると、どうだ?

 

冒険者が増えた。

 

増えるとどうなる?

 

色々な問題が考えられるはずだ。

 

治安の悪化、冒険者の犯罪、刑務所の強化について、日常での魔法の取り扱い、テイムモンスターについて、それらの法整備……。

 

そこから導き出された答えはこれだ。

 

『国立冒険者専門学校』……。

 

その名の通り、冒険者の専門学校だ。

 

ダンジョンのあるスカイツリーの前、墨田区の企業テナントやらなにやらを政府の強権で買い上げて、無理矢理学校を作った。

 

普段なら、政府がここまでやれば騒ぐはずの野党やマスコミだが、いつもの反対派の先鋒となるはずの出羽守が海外に高飛びしたので、与党の、世論の声に逆らえる者は誰もいない。

 

そんな訳で、今年の三月に、墨田区には特大の冒険者専門学校ができたのだ。

 

そして俺は、そこに講師として招かれたのであった……。

 

講師でありながらも、望むなら講義も受けられる。

 

立場的には『名誉教授』と言ったところ。

 

ついでに、学位も得られるそうだ。流石に高校中退は拙いからな。

 

それと、だ。

 

例の、見合いした女共。

 

こいつらとも同棲することになった。

 

何でも、全員、都内の学校に通っているらしいからな。

 

そんな訳で、都内近く……、箱根に別荘を買った。

 

ここから通学する予定だ。

 

愛人らも、ここから通学。

 

お手伝いさんとやらが大量に雇われていたり、メイドさんやらがいたりするが、まあ、些事だな。

 

 

 

ああ、それと、愛人らにも、あらかじめにある程度ダンジョンを攻略しておけと命じておいたぞ。

 

ステータス差的に、俺と比べれば普通の女なんて中身が空洞の氷像くらいのもの。

 

強めに抱かれても壊れないように鍛えておけと命じておいた。

 

すると、愛人三人組は、しっかりと鍛えておいたらしく、レベルにして六十程までになっていた。

 

これなら、そうそう壊れないだろう。

 

気合が入っていて大変よろしい。

 




まーぁじでこのままの生活習慣だと親より早死にするわ……。

遺言とか残してないんで、急死したらネットの皆さんに何にも伝えらんないんですよね。ネット社会ってそれが怖い。

俺も好きだった絵師がいきなり失踪して、実は死んでた……、みたいなケースが最近ちょっとあって、かなりつらいです。

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