ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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僕のママンが、仕事を引退したらパン屋やりたい!とか言ってるんだけど、脱サラして変な名前の生食パン屋立てるアホっぽくて止めたい。絶対に失敗するやんそんなん。




60話 淘汰の末の……

四月。

 

墨田区に新設された『国立第一冒険者専門学校』に、俺は特別待遇で入校していた。

 

専門学校、という名前にはなっているが、十三歳から入学できて五年間通えるという形式。

 

義務教育?冒険者学校への入学者は特例措置だとよ。

 

ついこの間、成人の年齢を十八歳に引き下げたのは記憶に新しいな。

 

つまりこの専門学校では、成人になるまでに、一流の冒険者を子供の頃から育成するというシステムのテストケースとしたい……、と、愛人の一人である紗夜が言っていた。

 

愛人の伝手で、政府の思惑やら何やらが聞けるのは良いな。

 

俺に断りもなく、利用してやろう!みたいな考えなら、遺憾の意(火尖槍)を議事堂にぶち込んでいた。

 

……因みに、そんなジョークを言ったら、紗夜に本気の土下座をされてしまった。

 

いやいや、冗談に決まっているだろうがよ。

 

気に入らんことがあったら大量殺戮じゃなくて、気に入らんやつをピンポイントで斬るぞとちゃんと言っておいた。

 

二回目の土下座をかまされた。

 

 

 

で、入学式。

 

なんと、総理大臣の岸原文喜がスピーチをしに来た。

 

「何で総理大臣が来たんだ?」

 

俺が、隣に座る杜和(一緒に入学することになった)に訊ねると。

 

「そりゃまあ、国を挙げての一大プロジェクトみたいなもんすからね。一番偉い人が来るのは当然っすよ」

 

と返される。

 

なるほど、冒険者学校は、国家の一大プロジェクト、と。

 

そして、何故か知らんが、俺からも一言何か言ってくれと言われた。

 

言うことは特にないんだが……。

 

「そもそも聞きたいんだが、この学校は何の為にあるんだ?一流の冒険者を育成して、良い納税者?とやらを作りたいってのは理解したんだが……、『一流の冒険者』ってのは何なんだ?」

 

と、取り敢えず、言いたいことを言ってみた。

 

「俺のように趣味で殺し合いをやっている奴なら天職なんだろうが、単純に金が欲しいだけならやめておいた方が良いぞ。何せ、金はあの世に持っていけないからな。溜め込むだけ無駄だろうよ」

 

ん?なんか、雰囲気が悪くなったな。

 

「俺のように趣味で殺し合いをしたい奴は、そもそも金になど興味はないだろう。金が欲しい奴は、安全を重視して、結局は途中の階層に留まることになるんじゃないか?より先を目指そうとは思わないはずだ」

 

しかし気にせず続ける。

 

「まあ、一流の冒険者という言葉の意味が分からんから何とも言えんが、無能でも五年間も努力すれば、百階層くらいまでは行けるだろうよ。卒業試験を百階層のソロ攻略とかにすれば良いんじゃないか?」

 

俺は一年と少しで百階層に行けたんだから、凡人でも五年ありゃ何とかなるだろ。

 

「種族進化すれば、ステータスは三倍くらいになるんだし、種族進化を卒業条件とすれば……」

 

そう言った瞬間。

 

……「な、何だってーーー?!!!」

 

……「さ、三倍?!」

 

……「そんな報告、受けていないぞ?!」

 

と、大騒ぎになった。

 

ありゃ?

 

親父、言ってねえのか?

 

「もしかして、人間のレベル上限が100で、ステータス値の上限が300前後って、俺しか知らない話だったりするのか?」

 

「「「「そうだよ!!!」」」」

 

あー、そうなんだ。

 

「種族進化すると、全ステータスがプラス1000ポイントくらい追加されるのも知らんのか……。あー、そうかそうか、いや、すまん。親父がとっくに報告しているもんだとばかり……。まあ、そういう訳だから、種族進化を目指したら良いんじゃないか?適当に頑張ってくれ。以上」

 

 

 

大騒ぎになって、大臣やら何やらみたいな偉そうな人達が帰ってしまった。

 

何しに来たんだかよくわからんな。

 

まあ、偉い人の激励ってのは、中身はなくとも意味はある、か。

 

俺もガキじゃねえもんよ、その辺は何となく分かる。

 

考える気はないが、お偉いさんにはお偉いさんの事情やら何やらがあるんだろう。

 

で、こちらでは生徒がガイダンスとやらを聞いている。

 

奨学金やら、学校の制度やらについて。

 

話半分に聞いていたのだが、色々と分かったことがある。

 

まず第一に、この学校の生徒は、冒険者として去年から既にある程度活動できていた奴を半分。

 

もう半分は、体育系の厳しい試験を潜り抜けてきた奴となっている。

 

生徒数は驚きの十万人。

 

日本一の生徒数を誇る大和大学よりも、更に四万人も多い。

 

故に、墨田区は、ほぼ丸々が冒険者特区というか、冒険者学校のシマと化したそうだ。

 

冒険者の育成は国策なので、超法規的措置?というやつが適応される!とは紗夜の談。

 

刑事ドラマの知識くらいしかないが、法律よりも何よりも優先されるという認識でいいらしい。

 

そうしないと滅ぶかどうかの瀬戸際である訳だから、そこに文句は言わないが。

 

とにかく、午前中には全ての説明が終わったな。

 

なので、昼飯を食いに街へと繰り出す。

 

蕎麦が良いな、蕎麦屋に行くか。

 

再開発レベルで都市構造が変わりつつある墨田区を、杜和と共に練り歩く。

 

そして、下町の方で見つけた店に入った。

 

藪蕎麦みどり屋とある、小さな店だ。

 

「らっしゃい」

 

厳しいツラの爺さんが一人。

 

「かき揚げ蕎麦、十人前を頼む」

 

俺がそう言うと、爺さんはそのぎょろりとした瞳でこちらを睨みつけた。

 

「残すんじゃあねえぞ?」

 

「寧ろ、足りないとこっちが怒るぞ。山口多聞が来店したと思え」

 

「はっ……、言うじゃねえか!なら、ありったけ出してやる!」

 

「あっ、私は海老天蕎麦でお願いするっす!」

 

さて、藪蕎麦。

 

藪蕎麦とは、三大江戸前蕎麦の一派で、香り高い麺と辛口の濃いつゆが特徴だな。

 

俺は、京料理のような薄味はあまり好きじゃない。

 

何故なら、殺し合いをしている戦士だからだ。

 

スポーツ選手と同じで、大量の塩分が必要なのだ。

 

食い物は、塩辛いくらいがちょうどいい。

 

「はいよ、お待ち」

 

「いただきます」

 

そして、この店の蕎麦は……。

 

「うん、美味いな」

 

とても美味かった。

 

それもそのはず。

 

このご時世、飲食店も実力がないところは殆ど潰れたのだ。

 

ブラック企業なるものと同じように、脱サラした元リーマンが退職金で建てたような、変な名前のパン屋などは、信じられないような勢いで潰れていった。

 

残った飲食店は、この店のような確かな歴史と腕があるところだけだ。もしくは、経済的な基盤が強いチェーン店など。

 

まあ、要するに……。

 

冒険者特区と化したこの地域で生き残っている飯屋は、一定以上の水準があることは確定してるって訳だ。

 




うえーい。

ここで打ち止め。

次からはTRPGもので良いっすか?

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