ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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はい、投稿ミス。

ほんまにクソ。


63話 狂人戦隊!

「んー、ちょっとキツめにやったが、生きてるか?」

 

「ごはぁっ……」

 

おお、海千君が口から臓物混じりの血の塊を吐いたな。

 

吐くってことは生きてるってことだ。

 

良かった良かった。

 

ボロ雑巾となった新米冒険者達は、鴉天狗の日和と樹木子の桐枝が回収して、ポーションをかけている。

 

いい薬だ。二重の意味でな。

 

「さて」

 

残りはキチレンジャーか。

 

俺がそちらに顔を向けると……。

 

「いやいやいやいや!冗談キッツイでホンマに!赤堀クンとボクらじゃ勝負にならへんやろがい!」

 

緑門がそう言って大袈裟に両手を挙げる。

 

「降参やって!降参!勘弁してくれやホンマにもー……」

 

と、土下座をしようと頭を下げた、その背後に。

 

「『山茶花(ウォーターレーザー)』」

 

青峯が隠れており、不意打ちで魔法攻撃をしてきた。

 

「はは、流石はキチレンジャーだな。狡っからいことをやらせりゃ天下一だ」

 

俺はそう言って、魔力を固めて作った盾で青峯の魔法を防ぐ。

 

「ふえっ?!」「………………」

 

黄場は、全くの無音で俺の嫁である杜和の背後まで移動しており、杜和を盾にしながら弓矢を放ってきた。

 

「いやぁ、感心したぞ。お前らがこの中じゃ一番マシじゃないか?もう御影流に入門しろよ、才能あるよお前ら」

 

人の嫁を盾にするとか、まともな人間じゃできない戦法だもんな。

 

躊躇いなく残虐行為ができるのはある種の才能だ。

 

皮肉抜きで素晴らしいと評価できる。

 

「ハアッ!」

 

そんな俺の軽口にも全く取り合わず、横合いから巨大なメイスが飛んでくる。

 

桃瀬だな。

 

俺はメイスを腕で受けた。

 

が、これは……。

 

「おお」

 

重い一撃で、重さを俺にではなく地面にかけるように調整して放っていたようだ。

 

それにより、俺は足首まで地面に埋まる。

 

これで一手、ロスしたな。

 

「シェええァッ!!!!」

 

そこに、土下座をするフリをして身体を縮め腰を落とし、力を溜めていた緑門が突っ込んできた。

 

刀には短く、短刀には長い、中途半端なサイズの片刃剣。

 

それを二本持ち、交差するように……、いや違うなこれ。

 

……『腕が四本ある』

 

緑色の魔力で作られた義肢が、更に一組二本の剣を持ち、連撃。

 

「面白い!」

 

問い、四本の腕を持つ奴が同時に四回攻撃してきたらどうするか?

 

答え、極限まで素早く刀を振るい四本の剣全て弾く。

 

「ッかあァッ!!!」

 

……が、剣から手を離さない!

 

やるねぇ、本当に。

 

それだけじゃない。

 

腕の数は『更に一組』あった。

 

腕四本による一斉攻撃の後、ほんの一拍、瞬きするほどのタイミングだけ遅れて、更に二本の剣で胴を斬りつけてきていた!

 

こりゃあ受け切れないな、順当に考えて一歩引くか。

 

で、引くと……。

 

「ハァアッ!!!!」

 

更に桃瀬の一撃が飛んできて、また地面に埋められる訳だ。

 

桃瀬に蹴りを放つが……。

 

「ッああっ!!!」

 

おお、大盾で受けきったぞ。

 

桃瀬の実力も確かだが……。

 

「………………」

 

黄場だ。

 

黄場が、俺が蹴りを放とうとした瞬間、軸足に矢を放ってきていた。

 

極めて的確なサポート。

 

これにより、蹴りがブレて芯が捉えられなかった訳だな。

 

そうして、桃瀬に意識を割くと緑門が即座に飛んでくるし……。

 

「『木槿(ポイズンクラウド)』」

 

青峯は前衛ごと魔法攻撃を飛ばしてくる。

 

毒なんてばら撒いたら……、ああいや、桃瀬は『毒無効』的なスキルを持ってるなこれは。

 

緑門は、自分の体表に薄く風の膜を纏っていて、それで毒を逸らしているようだ。

 

うーん……、参ったな。

 

こいつら、そこそこ強いぞ?

 

しゃあないな、少しだけ本気を出すか。

 

俺は、赤黒い魔力の波動を放ち、緑門と桃瀬を弾き飛ばす。

 

「ほら、行くぞ!」

 

そう言って、俺は、踏み込む。

 

フリをして、一拍外す。

 

先ほどの設楽とかいう剣士のように、一拍『抜く』のではなく『外す』のだ。

 

抜くと言うのは謂わば、工程の省略。

 

足を振り上げて下ろして踏み込むのではなく、身体ごと倒れ込むようにして踏み込むことを指す。

 

とするならば、一拍を外すと言うのはその真逆。

 

工程の増加。

 

本来なら踏み込んで前に出ているはずの呼吸、テンポで、ひとつ遅れさせて踏み込む。

 

最近の格闘技で言う、『フェイント』と言うものだ。

 

口では「行くぞ」と意味深に叫んでおきながらのフェイント。

 

これは、相手に知恵があるなら効くぞ。

 

「ッ?!!」

 

はい、アウト。

 

桃瀬め、半呼吸遅れたな?

 

俺は魔力を固めて作った木刀的なもので、桃瀬に面打ち振り下ろしを放った。

 

が、その一撃は、桃瀬が首を一寸引けば躱せる一撃。

 

桃瀬はそれを理解しているので、軽く身を引くが……。

 

それも駄目なんだよな。

 

ツーアウトだ。

 

俺の魔力で作った得物だぞ?

 

俺が魔力を注げば……。

 

「伸びっ……?!」

 

伸ばすことも訳はない。

 

面打ちの軌道から突きへと変換、顎先に掠らせて脳を揺らす。

 

立てなくなった桃瀬にトドメをさす……、振りをして、魔力木刀の柄頭を思い切り伸ばす!

 

「ぐ、おおおあっ?!!!」

 

背後から忍び寄っていた緑門に柄頭を当て吹き飛ばし、更にそのまま……。

 

薙ぐ。

 

「ぐあっ!」

 

青峯を片付ける。

 

「くっ!」

 

黄場が素早く弓を番えるが……。

 

「残念、もう詰みだ」

 

俺は、黄場が盾にしている杜和に、魔力棒を押し付けた。

 

そして、気通し。

 

中国拳法でいう発勁の要領で放たれたそれは、気の衝撃を杜和ではなく、杜和と密着している黄場にのみ届ける。

 

「ぐ、は……!」

 

崩れ落ちる黄場を見届けて……。

 

「ほら、お前は何をやってるんだ?早くかかってこい」

 

と、杜和に呼びかけた。

 

「うえぇ……、子供産める身体は残してくださいっすよ?」

 

そう言いながらも躊躇いなく旦那に刀を向ける辺り、こいつも御影流向きなんだよな……。

 




すみませんでした。

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