ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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今日も帰宅途中にイカれ野郎に会っちゃった♡

流石は東京だあ……。


65話 陰謀開始

「で?俺をわざわざ呼び出したのは、説教の為か?」

 

俺はそう言って、机を指で叩いた。

 

無論、そんな訳がないだろうと分かってのことだ。

 

「へえ、分かるかい?」

 

自由党副総裁、麻布次郎は薄く微笑む。

 

政治家の顔だ。

 

そして前に出たのは、先ほどからずっと黙り込んでいた時城政史郎……。

 

白い長髪で、政治家とは思えぬ鋭利過ぎる風貌の男。

 

歳の頃は三十程に差し掛かろうというところではあるが、腰が恐ろしく真っ直ぐで、背も高く、筋肉もある。

 

それだけじゃない……、この男……。

 

「お前……、ダンジョンに潜ったな?」

 

凄まじい武威……、それも、先日に相手をした冒険者の卵達など歯牙にも掛けないほどの戦士である証拠たる、激烈な心身の壮健さ。

 

血肉には力が溢れ魔力が迸り、ぎらついた瞳には絶大な意思力が宿る……。

 

「クハハ……、分かるかね、婿殿?」

 

なよなよとした最近の若者らしい声ではない、低く響く声。

 

「ああ……、曾孫の紗夜をくれてやったのは正解だった。これほどの武人の血、我が家系に組み込まなくてはならんという儂の直感に感謝せねばな」

 

そう笑う政史郎だが……。

 

「……待て、曾孫だと?」

 

十七歳の曾孫がいる三十代の男?

 

計算が合わんだろう。

 

いや……、そうか。

 

そう言うことか。

 

「若返りのポーションか」

 

「ご名答……。儂は本来、百八歳よ」

 

若返って健康な肉体を手にしたということだな。

 

まあ、別にやっちゃならんことでもないし、良いんじゃないか?

 

生命倫理?どうでもいいだろう。

 

「それで?曾孫の旦那のツラでも拝みたかったのか?」

 

「それもある。だが、それだけではない」

 

ふむ?

 

「婿殿は知らんだろうが、儂は今でも日本の裏で暗躍している……、言わば『フィクサー』という立場にあった」

 

「ほう、そりゃ面白い話だ」

 

フィクサーだぁ?

 

つまりは、民主主義国家の日本において、民主的に議決された内容を無視して自分の意思の通りに社会を変えられる偉い人……、ってことだろうが……。

 

そんなものが現代日本にいるのか?

 

「信じられんのも無理はない。だが、儂のような存在はどんな国にも居るのだ。ただ、儂ほどに露骨な者は他におらんがな」

 

確かに、旧華族侯爵家の家系にあり、総理大臣等の政治家を輩出し、複数の企業を持つ実業家でもある時城家は、何かしらの力があってもおかしくはない、か?

 

その辺のことは分からないな。

 

御影流の俺はあくまでも、国を崩す為のウィークポイントはどこか?という観点で国を見るから、詳しい政治話はできないんだよ。

 

ただ、この時城政史郎という男を目にすると、「この男を殺せば日本を壊せる」と俺の御影流伝承者としての勘が訴えかけてくる辺り、フィクサーとやらであるという言も強ち間違いではないのだろうとは思えるな。

 

「で?俺に何を言いたい?」

 

「まず、報告を一つ。今年、儂が総理大臣となる」

 

「なれるのか?」

 

「クハハ……、これは面白いことを言うな?なれるのか、ではない。もう、そう決まっておるのだ」

 

あっ、ふーん?

 

なるほどな。

 

選挙する前からもう決まっている、と。

 

「そうか、で?」

 

「何人か消したい政治家が居てな。御影流に暗殺を依頼したい」

 

「まあ、別に良いんじゃないか?門下生に個人的に交渉しろ、それで、門下生がやりたいならやれば良い」

 

俺は政治家の暗殺なんて、まともな殺し合いにならずに面白くないだろうからやらんが。

 

「クハハ……!素晴らしいな、色々と『理解ある』婿殿は助かるぞ。それともう一つ、婿殿には表向き、組織を一つ受け持ってもらいたい」

 

「あぁ?組織?」

 

何の話だ?

 

「新たに冒険者関係の法を整備するつもりなのだが……、冒険者管理庁の長官になってもらいたい」

 

……はあ?

 

「俺に官僚をやれと?」

 

「名前だけだ。無論、権利も渡すが」

 

「なれるもんなのか?」

 

「行政機関の長官は、職業国家公務員でなくてはならないなどという規定はないぞ?もちろん、現役学生を長官にするのは異例だが……」

 

「だが?」

 

「だが、不思議なことに、近いうちに複数の政治家が『居なくなる』予定でなァ……?」

 

なるほど、暗殺で空いたポストのうち一つを俺に寄越すと。

 

「冒険者管理庁の仕事は、冒険者の管理という名目で、冒険者を格付けして組織化することにある」

 

「ふむ」

 

「そして婿殿には、冒険者の頂点として、冒険者の管理をしてもらいたいのだ」

 

「回りくどいぞ。別に暗殺の話だろうが何だろうが聞くし、気に入らなけりゃ拒否するんだ、はっきり言え」

 

「クハハ、失礼した。でははっきりと言おう。儂が目指すのは、冒険者による特殊部隊の結成と、国家に歯向かう冒険者の始末よ!」

 

ああ、なるほど。

 

つまり、都合の悪い冒険者を殺してくれって話か。

 

「暴れる冒険者を始末しろと言うのは分かる。だが、特殊部隊ってのは何だ?」

 

「その名の通り、冒険者による軍隊だ」

 

うーむ……、それはどうなんだ?

 

「実は近頃、ロシアや中国の方できな臭い動きがあってな……」

 

説明を聞いた。

 

つまりは、ロシアや中国が、ダンジョンを奪うために侵略してくるかもしれないとのことだ。

 

「無論、儂とて人の親。可能ならば子供を戦場になど出したくはないわ。だがな、露西亜も支那も強国よ。米国が安全保障の条約を一方的に破棄して、尻尾を巻いて逃げ出した以上、いざとなれば我が国は独力で戦わなければならない」

 

確かにそれはそうだな。

 

政治のことはあまりよく分からないが、御影流として軍事の話はそこそこに理解できる。

 

ロシアや中国が大国で、アメリカの助けも期待できない今、攻め込まれたら自衛隊のみではまず勝てない。

 

それどころか、国を守ることすらできないだろう。

 

「故にこそ、特殊部隊よ!」

 

「うーん……」

 

「……気が進まんか?」

 

「いや、おかしいんだよな」

 

「む?何がだ?」

 

「俺がその気になれば、外国が何をするしない以前に、大陸ごと国を消せるんだぞ?何故、わざわざ部隊を作る?」

 

「……真か?」

 

「嘘を言って何になる?人間すら辞めた俺は、最早別領域だぞ」

 

「クハハ……!面白い話だ!だが、それでは困る」

 

ふむ?

 

「何が困るんだ?」

 

「儂が欲しいのは、婿殿一人の力に拠らない『抑止力』だ」

 

抑止力、ねえ。

 

「日本には、核兵器はなくとも、それよりももっと強力な冒険者部隊ぞあり!と、そう喧伝したいのだよ」

 

まあ、理解はできるな。

 

「今、我が国がここまで落ち目なのは何故か?やはりその一要素として、武威がない故に嘗められているからだ!」

 

うーん、そうかもなあ。

 

「無論だが、儂も、無意味に軍拡すべしと言っている訳ではない。今時、覇権主義などアホらしいからな。だが結局、最終的にものを言うのは武力なのだ!」

 

「それには同意するがな……」

 

「と言うよりも、なんだ。もう、国際社会での日本は既に村八分も良いところだからな。最早、自衛の為に力をつける他ないぞ」

 

そりゃそうだ。

 




グエーッ!

TRPGものの続きを書いているのだが書けない!!!


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