ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

999 / 1724
高価な食事やら酒やら芸術を、「こんなのこんな金出すだけの価値ないわwどれも同じw」とか言う、心と学識が貧しい主人公ってダサくないですか?って話。


83話 新出島グルメチェック

結弦は、迷宮端末に思考入力する。

 

「えっとお……、十階層までのモンスターは、コボルト、パペット、クリーピングコイン、ダンシングジュエル、リビングストーンにロックリザードってところかいな」

 

「レアモンスターとしてゴールデンスライムも出るっぽい?」

 

『キュイイッ?!!』

 

鈴華は、襲いかかってきたゴールデンスライムを摘み上げながらそう言った。

 

「ドロップ率は六人で三割ほどとかなり高めだね。然し、Dマテリアルは出なひようだ」

 

「それに、物質系のモンスターが多いので、ドロップアイテム無しでも死骸に価値があるかと。ポーションは低階層域のものが低確率でドロップするみたいです」

 

青峯夫妻がそう言った。

 

「……総合して、私達一般冒険者には割に合わないダンジョンみたいっすね」

 

杜和がそう言った……。

 

「よし、今日の調査はこんなもんでいいだろう。一旦帰って休むぞ」

 

そして、藤吾の号令の下、調査一日目を切り上げ、パーティは街へと帰っていった……。

 

 

 

メガフロート新出島。

 

青い海の真ん中に浮かぶその人工島は、遠目で見れば小笠原諸島が視界に入る。

 

コンクリートではない、Dマテリアル製の白亜の石材でできた美しいその人工島は、観光地としても一級で。

 

まるでギリシアの海岸のような美しい街並みながらも、日本的な情緒とSF的な造詣がミキシングされた、えも言われぬ美観だ……。これを一眼見るためなら、セレブだの何だのと言う連中はこぞって大枚を叩くだろう。

 

そんな新出島の小ダンジョン三つの調査を行っていた冒険者達は、日暮れ頃にダンジョンを出て、ホテルへと向かっていた。

 

「わあ……!夕焼けが綺麗っす!」

 

「まあ、本当に……!」

 

「わー!映える!写真撮ろ、写真!」

 

女性陣は無邪気に喜ぶ。

 

それもそうだ、夕焼けの朱色が白亜の街にすうっと、優しく色をつけている。

 

その様は、この世の楽園のように美しい。

 

天の国のような幽玄な壮大さと、どこか郷愁を感じさせる柔らかさが同居する、不思議な風情がそこにあった。

 

「ほーん、まあ綺麗やね。それより飯にせぇへん?ボクもう、お腹ペコペコや!」

 

「情緒的だね。詩のひとつでも書きたくなるよ」

 

「そうだな。で、飯は……、ホテルで出るそうだぞ」

 

男性陣はこんな調子だが。

 

 

 

「朝からエナドリしか飲んどらんから、腹減ったわ〜」

 

「エナドリ?」

 

「何や藤吾クン?知らへんの?今エナドリ言うたら、シントリーの『サムライブレード』やろ!」

 

「知らねえな」

 

「『サムライブレード』は凄いんやで?数%とはいえポーションを配合したエナドリで、栄養補給から体力回復、覚醒効果までこれ一本や!」

 

「ほーん、今はそんなのがあるんだな」

 

「……と言うか、藤吾クンがこの前にタイアップ企画で宣伝しとったやろがい!このサムライブレードの名前も、藤吾クンがモデルなんよ?!!」

 

「あー……?やったかもしれん。でも普段はエナドリとか飲まないからな……」

 

「まあ、藤吾クンは緑茶派やしなあ……」

 

そんな話をしつつ、ホテルに到着した一行。

 

最上級のスイートルームで夫婦ごとに休んだ後、ホテル一階のレストランにてフルコースを楽しむ。

 

「こちら、先付けの、新潟ダンジョン産の斬り裂き鮑と槍筍の桜なますです。ダンジョンには季節による差異はありませんが、当ホテルでは日本らしい四季感覚を大事にしておりまして……、本来でしたら、今は冬なのですが、ホテルの始業時は春ということもありまして、こちらの春メニューをお持ちしました」

 

笑顔を浮かべたエルフの店員が、メニューの説明を始める。

 

何かしらのスキル持ちか、スラスラと綺麗に複雑な言葉を口にした。

 

「お、おぉう……」

 

怯む結弦を除く全員は、平然と膳に手をつける。

 

「何やこれ……?」

 

「こちらは会席料理になります。世界最強の剣士、赤堀藤吾様のおすすめである、栃木のお酒を楽しんでいただく事をメインに、ダンジョン産食材をふんだんに使ったコース料理を考案しました」

 

「懐石……?京都とかのやつ?」

 

「そりゃ懐石だ。これは会席」

 

そう言って酒を見せつけるように飲む藤吾。

 

「これを楽しむ料理だな。まあ、出てくるものは大体酒のあてになるから、気軽に楽しめ」

 

「うへぇ……、ボクはこういう感じの、堅っ苦しい食事は苦手なんよ!」

 

底辺家庭に生まれた結弦と違い……。

 

「そっすか?別に普通だと思いますけど……?」

 

金持ち開業医の娘、杜和。

 

「いつもパパに奢ってもらったのもこういうのだし……?」

 

一般家庭の生まれだが、パパ活により金持ちとの交流が深い鈴華。

 

「知識としては知ってひるよ」

 

勉強でカバーする弥太郎。

 

「地方へ飛ばされているとは言え、うちも官僚の家系ですし……」

 

家柄はそこそこな由乃。

 

「食事中は弱点だからな、その隙を突くための訓練の一環として、テーブルマナーくらいは覚えさせられたわ」

 

テロリスト兼暗殺者の藤吾……。

 

「待って最後おかしない????あ、でもうっま……」

 

「こちら、お凌ぎになります。こちらは、ダンジョン海階層からとれる飛翔海老と爆裂鮪のお寿司です」

 

お凌ぎに、寿司が二貫。

 

「おおー!でも、ここに来る客層は外国人が主になると思うんすけど、生魚で大丈夫なんすか?」

 

「はい、ですので……」

 

エルフの店員は、目の前に火属性魔法で火を灯し……。

 

「このようにして、ネタを目の前で炙りにして提供させていただきます」

 

「なるほど!これなら見た目も面白くて、宣伝効果抜群っすね!」

 

「それに、生臭さも軽減されるし……、ガスバーナーのようなガス臭さも食材につかなくて、繊細な味が楽しめる訳か」

 

評論をしながらも食事は続く……。

 

「椀物、こちらは虎鰹の出汁を贅沢に使った吸い物となっております。ダンジョンの新成分である『D-擬似アミノ酸625』という旨味成分があり、これが地球上には存在しない味の深みをもたらします」

 

「へえ、Dマテリアルの観測はできたのかひ?」

 

「はい、去年にやっと、マシン系モンスター素材を使って、Dマテリアル原子の観測器が開発されました。それにより、今回、Dマテリアル食品に含まれる旨味成分を発見したのです。その旨味成分を100%引き出す調理法が現在模索されており、現時点で最高の技術で作られたものがこちらになります」

 

「へー、美味しいねこれ!鰹出汁がベースっぽいのは分かるんだけど、ちょっとコンソメっぽい動物感があるって言うか……」

 

「虎鰹は、虎と鰹が融合した、獣でも魚でもないモンスターとなっております」

 

感想を言うだけでなく、質問や提案も何度も重ねる。

 

「向付です。こちらは、大阪オリジンダンジョンの百階層ボス、怪魚アルバコアのトロ刺身になります。アルバコアは全長30mを超える巨大な魚で、そして味は鮪に近いのですが、鮪とは格が違うと評判ですよ」

 

「ほう、これは美味いな」

 

「もちろん、こちらの方は炙りに切り替えも可能となっております。アルバコアは鮪とは違い、炙りにしても繊維質にならずにジューシーなままで……」

 

 

 

こうして六人は、酒と食事をしっかり楽しみ、床についた……。

 

 




書け……ない!

全然書けないぞ!どうしよどうしよ!

田舎剣士は書ける。

もうちょい田舎剣士の更新が続きます……。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。