ウルトラマンオーブ ─Another world─   作:シロウ【特撮愛好者】

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どうも。
投稿に間が空いてしまい、申し訳ありません。

UA数1万回突破…!ありがとうございます!
この作品を読んで下さる皆さんのためにも、より精進していこうと思います!

それでは、どうぞ…。


第11話 大変!ママが来た! ━前編━

 ある日の夜。

 僕らSSPは、行き付けの銭湯である鶴の湯にやって来ていた。

 僕とガイさんは一足先に湯船に浸かっていて、ジェッタさん達はまだ身体を洗っている。

 そんな中、壁を挟んだ向こう側──女湯の方から、ナオミさんの声が聞こえた。

 

「……ねぇ、ガイさん」

「んん?」

「……私の恋人になってよ」

 

 ナオミさんの衝撃発言を聞いたジェッタさん達は、派手に床を滑って、ピラミッド状に積み重なった洗面器に追突する。

 

「「えぇぇぇぇぇぇ!?」」

「ジェッタさん!?シンさん!?」

 

 これに驚いた僕は湯船を飛び出し、足元に気を付けながら2人に歩み寄る。

 この発言には流石のガイさんでも絶句していて、しばらく放心状態になっていた。

 一方、壁の向こう側のナオミさんもまた照れているのか、少し言いづらそうに頼み込んでくる。

 

「お願い……。やっぱり、ガイさんしかいないの……!」

 

 

 

 後日。

 ガイとナオミは、都内の高層ビルに店を構える高級レストランを訪れていた。

 ガイはグレーのスーツに眼鏡と、いかにも真面目な青年風の格好だったが、あまり着慣れない服装のため窮屈そうにしていた。

 ナオミもまた、お洒落な白いドレスを身に纏い、ガイと並んで腰かけていた。

 

──ガイ達は気付いていなかったが、実はこのレストランに、シンヤがアルバイトで訪れていた。

 シンヤとしても、これは全くの偶然だった。2人が出かけることは知っていたが、まさかこの店だったとは思ってもなかったのだ。

 今はウェイターとして働いてはいるものの、どうしてもガイ達が気になってしまい、時々2人のテーブルを遠目に見ていた。

 

 どうして彼らがこの場所にいるのか……。

 すると、ナオミの元に1人の女性が駆け寄ってきた。

 

「ナオミ!」

 

 その声を聞いたナオミは振り向いて、相手に手を振った。ナオミに親しげに話しかけたその女性は、ナオミと同時に振り向いたガイの顔を見て驚いた。

 

「きゃあ……!カッコいい~!ナオミ~!やだぁもぉ、こんな素敵な彼がいたなんて~!お名前は?」

 

 静かなレストランに、女性のやけにハイテンションな声が響く。

 ガイは立ち上がり、会釈と共に自己紹介をする。

 

「あ、ガイです」

「ガイ君!まぁ、どんな字書くの?名字は?ねぇ、お婿さんに来て下さるんでしょ~?」

「もうママ……!いきなり止めてよ……!」

 

 グイグイとガイに迫る女性を何とか引き剥がしたナオミは、彼女を必死に宥めた。

 そう、この饒舌でテンションの高い女性こそナオミの母、夢野圭子(けいこ)だ。

 今回彼女が、わざわざ地元から足を運んだのには理由(わけ)があった。

 圭子は、以前からナオミに縁談を持ちかけていたのだが、その悉くをナオミは断っていた。

 そして今回、「恋人が出来た」と娘から連絡を受け、遠路遥々都会へとやって来た……と言う訳だ。

……しかし、これはナオミの虚偽。

 先日の銭湯でのガイへの告白は、この日だけ偽の恋人を演じてもらうため、急場凌ぎのための告白だったのだ。

 

「ゴメンゴメン……。で?いくつなの?今お仕事は?お酒造りに興味ある?」

 

 圭子が座れるよう支配人が椅子を少し引き、ガイ達が腰かけようとする前に、圭子はまたガイを問い詰める。

 それを止めようとナオミが制するが、嬉しそうにしながら圭子は、ガイに夢野家の事情を話し出す。

 

 夢野家は、酒造を家業としているのだが、圭子の高祖母の代から女系一家で、「好きなことをしたければ、跡取りを確保してから」と言う仕来りが存在していた。

 圭子は、両親に若い頃からずっとそう言われて育ち、やりたいことを諦めてきたそうだ。

 つまり、圭子が好きに生きるには、愛娘のナオミが婿を確保するしかない……と言う訳らしい。

 だからこそ圭子は、ようやく自由に生きることが出来ると舞い上がっているのだ。

 これからの人生を想像していた圭子は、突然我に返り、ナオミに問いかける。

 

「……で、いつにする?結婚式」

「あ、それは、試験に受かってから、だよね?」

 

 ナオミはガイの足を蹴り、手筈通りに喋るように指示する。一瞬顔を歪めたガイだったが、左手の掌に書かれたカンニング用のメモをチラチラと見ながら片言に話し出す。

 

「あ、はい。あの、ベン……ゴシ?あれ……弁護士?弁護士……弁護士を目指してまして……。あの……その……司法試験の勉強をしています」

 

 普段から聞き慣れない言葉の羅列に悪戦苦闘しながら、ガイは笑顔を交えて圭子に説明した。

 圭子はガイの言葉を頷きながら聞き、ふと思い出したことを問いかける。

 

「あ、そうなの~……。でも弁護士って、悪い人の味方なんでしょう?」

「ママ、それって偏見だよ……。ねぇ?」

「は、はい。僕は正義の味方です」

 

 にこやかに答えたガイに理解を示したのか、圭子も自然と笑顔で返した。

 しかし、圭子の後ろから突然やって来た男によって、その空気は一変した。

 

「ハッハッハ……。本当にこんな男で良いんですか?」

 

 そう言って、ガイの表情を覗き込むように腰を曲げていたのは、ガイの宿敵のジャグラスジャグラーだった。

 先日の戦いで、てっきり死んだと思っていた相手が目の前に現れ、ガイは驚いて思わず立ち上がる。

 

「お前……!生きてたのk……?」

「あら素敵~!私この子の方がタイプかも~!ナオミ、ママに紹介して?」

 

 ガイの事情など知ったことではない圭子は、ジャグラーのことが気に入ってしまったようだ。

 ナオミは先日のことを一応知っていたため、ジャグラーを終始警戒する。

 

「私ですか?私はこういう……」

「こっち来い……!」

「へぇ?」

 

 自ら名乗りだそうとしたジャグラーだったが、ガイに強引に腕を掴まれ、間の抜けた声を上げながら人気のない店内の隅まで連れて行かれた。

……その際一瞬だけ、魔人態の幻影がジャグラーから幽体離脱のようにはみ出していた。

 

 

 

 ジャグラーを壁に押し付け、いつもの調子で対立するガイ。しかしジャグラーは、なぜか上機嫌気味に答える。

 

「お前……!死んだとばかり……!」

「だからお前はダメなんだ!目に見えることしか見ようとしない、その影で何かが起こってるなんて想像もしてないんだろ?愚かだな……」

「影で……?お前何を企んでるんだ?」

「お前を利用すること♪」

「何……?」

「お前は、魔王獣を倒したと良い気になってるかも知れないが、実はそr」

 

 緊迫した雰囲気がその空間に漂っていたが、それをカメラのシャッター音が台無しにする。

 

「2人共!はい、バター♪ぃやったぁ!面白くない?バターってねぇ!そうだ、お友達にお写真送っちゃお!」

「もうママ……!」

 

 突然やって来た圭子が、中々に古いかけ声でガイとジャグラーと一緒に写真を撮ってはしゃぎ、慌てて駆け付けたナオミが圭子を連れ去る。

 まるで台風が過ぎ去ったような静寂の後、ガイが気を取り直してジャグラーに訪ねる。

 

「……何だっけ?」

「あ、あぁ……。お前は魔王獣を倒したと良い気になってるかも知れないが……。それは実は全て、俺のためだったんだよ」

「どういうことだ……?」

「つまり、ありがとうってことだ。俺のために魔王獣を倒してくれたんだからな……」

「お前……!」

「何だ……、やる気か?」

「あぁ……!決着を着けてやる……!」

 

 ジャグラーの胸ぐらを掴んだガイは、必死の形相でジャグラーを睨み付ける。それに応じるようにジャグラーもその気になる。

 今度こそ、この2人に決着が着くか……そう思われた時。

 

「喧嘩は止めて!私のために争わないで!……って、私じゃないか~」

「ママ……!この人達のとこに来ちゃダメだって……!」

 

 2人の間に、再びやって来た圭子が割って入り、切迫した雰囲気を掻き回す。

 また慌てて駆け付けたナオミが圭子を連れ去ろうとするが、圭子はナオミを説き伏せる。

 

「良いわねぇ、女の夢じゃないの~。良い男が、自分を取り合ってくれるなんて~……」

 

 その隙にジャグラーは、その場を離れる。

 ガイもその後に続こうとするが、圭子に捕まってしまう。

 

「あなたもぼんやりしてちゃダメよ?もう、日取り決めちゃいましょう!決めましょう!」

 

 一方的にまくし立てる圭子を連れて、ナオミはその場を後にする。

 圭子のペースに翻弄され続けたガイは少々呆れながらも、自分達のテーブルに戻った。

 

 

 ガイ達のテーブルには元々空きの席があり、ガイが戻ると我が物顔でそこに座るジャグラーの姿があった。

 ジャグラーは人目も気にせず、机上にこれまで入手してきた魔王獣のカードを並べ出す。

 そのカードを初めて見たガイは、驚きを露にする。

 

「おい……!それは……!」

「お前のおかげで手に入ったんだ♪」

「何?」

「……お前の魔王獣退治は、すb」

「お待たせ致しました」

 

 ジャグラーが重要な説明を始めようとした時、まるでそれに合わせたように、ウェイター達が色鮮やかなソースのかかった肉料理を運んで来た。

 その料理が人数分並んだ後、ガイはウェイターに軽く会釈し、改めて椅子に腰かける。

 

「……っておい聞いてるのか」

「あぁ……。悪い」

「いいか?お前の魔王獣退治は、このカードを手に入れるために、全て俺が仕組んだこと。お前は、俺の掌の上で踊らされてただけだ……」

 

 魔王獣のカードを全て並べたジャグラーは、左手に持っていた最後の1枚───先日、ノストラから奪取したカードを、にこやかにガイに見せびらかす。

 

「それは……!べリアル……!?」

 

 ウルトラマンベリアルのフュージョンカードを凝視するガイに、ジャグラーは何かを預言するように、意味深な一言を語る。

 

「楽しめ……!これから大きな災i」

「わぁ~美味しそ~う!」

 

 本日何度目かの圭子からの妨害が入り、これまで散々彼女に振り回されて来たジャグラーも、ついに苛立ちを見せる。

 

「おいぃ……!!」

「やだぁ~、そんな怖い顔しな~いの。あ、お腹空いたんだ?食べて食べて~?」

 

 そんなジャグラーのことなど、どこ吹く風と言った様子で、圭子はジャグラーにも食事を勧める。

 だがジャグラーは、戸惑いながらも断ろうとする。

 

「いや、俺は……!」

「そうよママ、無理に勧めない方が……」

 

 これにはナオミも賛同しているようで、圭子に異論を述べた。

 しかし圭子は全く気にしていないようで、ナオミに答える。

 

「大丈夫、この方の分もちゃ~んと追加したから……。さ、食べましょ!お肉切ってあげましょうか~?ほら、ガイ君も食べて?」

「えぇ……」

 

 圭子の勧めもあって、ガイとナオミも料理をいただこうとした時。ジャグラーが食べやすいようにナイフで肉をカットしていた圭子の手が止まり、窓の外に視線が向かう。

 

「──やっぱり、東京は物騒ねぇ……」

 

 その圭子の呟きを疑問に思ったナオミ達は、窓の外に顔を向けた。

 

「……?ああっ……!」

 

 そこには、円らな瞳でこちらを見つめる、巨大な女性が出現していた。

 まるで、古来の姫君を連想させる衣装を纏った女性の出現に、町中の人々は見上げることしか出来なかった。

 そしてその女性は、ある高層ビルの窓を覗き込む。そのフロアは、ちょうどガイ達が食事を取っていたレストランがあった。

 

『光の者よ……』

 

 レストランを訪れていた客人達は、突然の出来事に驚き逃げ惑う。

 もちろんそれにはナオミと圭子も混じっていたが、そんな中ガイは眼鏡を外し、窓際に歩み寄る。

 

玉響姫(たまゆらひめ)……!」

 

 彼女は玉響姫。

 以前ナオミ達が「入らずの森」の調査に立ち入った際、宇宙人の罠に嵌まったナオミ達の脱出に、一役買った人物である。玉響姫は既にこの世には存在せず、彼女の残留思念が幽霊として森に潜んでいたのだ。

 そして今、彼女がガイ達の前に姿を見せたのには理由があり、ガイにある警告を与えた。

 

『大きな災いが……、起きようとしています』

「大きな災い……」

 

 ガイは玉響姫の警告を復唱するが、その後ろでは不貞腐れたジャグラーが、先程の肉料理をやけ食いしていた。

 

「だぁから、それを、俺が言おうと思ってたんだよっ!」

 

 伝えたかったことを伝え終えた玉響姫は、満足げに微笑んで町から姿を消した……。

 

 

 

 

 玉響姫が町中に現れた後ナオミさんとガイさん、そしてその騒動を受けてレストランの営業が終了してしまった僕は、SSPのオフィスに帰って来ていた。

 ちなみに圭子さんは、レストランを出てから渋川さんを呼び出してどこかへと向かって行ったきりだった。

 玉響姫が出現したことはジェッタさん達の耳にも届いていたようで、シンさんがあの森の一件以降、玉響姫について詳しく調べていたらしい。

 シンさんは、箱いっぱいに詰め込まれた書類の山を、全て小上がりの畳の上にぶちまける。その書類から玉響姫に関わるデータを探すシンさんの傍らで、ジェッタさんとナオミさんは互いに疑問を投げかける。

 

「でもさぁ、玉響姫って、前は霊体で現れただろ?それが今度は実体で現れるって、よっぽどのことなんじゃないの?」

「大きな災いって何なんだろ……?」

「あっ、あった……!」

 

 玉響姫について書かれた書類を探し当てたシンさんが、その文章を読み上げる。

 曰く、玉響姫は太古の霊能力者で、絶世の美女だったが、その美貌に魅せられたオロチに拐われてしまった。

 すると、1人の勇者がオロチを封印し、玉響姫を助けた。助けられた玉響姫はオロチが復活しないよう、勇者の力を借りて結界を張り、入らずの森を守り続けている……。

 

「災いは、オロチの復活なのかな……?」

「悪魔は再び……」

 

 シンさんの話を頷きながら聞いていたナオミさんとジェッタさんがそう呟いた後、シンさんが突然息を飲む。

 

「玉響姫の結界が、崩壊する恐れがあるかも知れません!」

 

 それを僕らと少し離れた場所で聞いていたガイさんは、急に立ち上がると扉を開けたまま、どこかへ向かって飛び出して行った。

 

「ガイさん!」

「俺達も行こう!」

「うん、Something Search People、出動!」

「「「おう!」」」

「何なのー?その変な英語!」

 

 僕らもガイさんの後に続こうとして、いつもの号令がかかった時、開いたままの扉の向こうから呆れるような声が聞こえた。

 扉の方を見ると、入り口に吊るされた珠暖簾を掻き分けて、圭子さんとたくさんの荷物を持った渋川さんがやって来ていた。

 圭子さんは流暢な発音で、ナオミさんの号令を訂正する。

 

「the search of something…….使うなら正しく使いなさいよね~、何のために大学出したんだか?」

「もう……!今それどころじゃないの!」

 

 事態が事態のため、居ても立ってもいられないナオミさんは、圭子さんの側を横切ろうとするけど、圭子さんの呼びかけに足を止める。

 

「待ちなさい!ホントは結婚とか、跡継ぎとかどうでも良いのよ。あなたに危ないことしてほしくないの。こんな危険なところに、1人でいてほしくないの……!

……だからね?一緒に帰ろ?お願い……」

 

 圭子さんは、真剣な表情でナオミさんに語りかける。

 でもナオミさんは、圭子さんと向き合いながら反論する。

 

「……1人じゃないもん。仲間と一緒だから」

「仲間……?この男の子達が、あなたを守ってくれるって言うの?」

「おじさんもいるし……!ガイさんも、シンヤ君もいるもん……!」

 

 ナオミさんは、渋川さんを前に押し出して、愛想笑いを浮かべる。けど、渋川さんが頼りない様子を見せると渋川さんを押し退けて、今度は僕の手を取り引っ張る。

 これには圭子さんも我慢の限界を迎えたようで、母親としてナオミさんを叱る。

 

「いい加減にしなさい!……あなたの小芝居に付き合ってたけど……。あなたホントは、あの人のこと良く知らないんじゃないの……?」

 

 ナオミさんの作戦は、圭子さんには始めからお見通しだったようだ。

 その叱責を受けたナオミさんが、黙りこくってしまったと同時に、雷音と凄まじいフラッシュが部屋中を照らし出す。

 

「何だ……!?」

 

 それに反応したジェッタさんが、すかさず窓を開けて外を見る。

 ジェッタさんに続いた僕達がそこから見たのは、遠くの空で蠢く悪雲と、その中心に開いた巨大な穴。禍々しく渦を巻いて、所々紅い稲妻が走っていた。

 

「あの穴は……!?」

「入らずの森の方角です……!」

 

 シンさんがタブレットで起動した地図とその方角を見比べて、その場所がどの辺りなのかを突き止める。

 この常軌を逸した現象を目の当たりにした圭子さんは、何かを恐れる様子を見せた。

 そんな圭子さんに、ナオミさんは語り出す。

 

「ママ、ごめん……。色んなこと、ホントごめん……。

 でも、これが私の仕事なの。……行こう」

 

 そしてナオミさん達が駆け出して行ったけど、僕は圭子さんと少しだけ話をすることにした。

 

「あの……。圭子さん」

「えっと、君は……」

 

 圭子さんは、僕のことは存じ上げないと言った表情になる。それもそうだ。こうして面と向かって圭子さんと話をするのは、これが最初なのだから。

 そう思った僕は自己紹介も兼ねて、圭子さんに思いの丈をぶつけようと試みた。

 

「……草薙眞哉って言います。……こんなこと言うの、変かも知れませんけど。僕は、ナオミさんのおかげで、ここに居場所が出来たんです。ナオミさんがSSPを立ち上げなきゃ、僕らはきっと出会うこともなかった。……ナオミさんは、僕らにとって大切な、仲間なんです。だから……、その……」

 

 伝えたいことがたくさんあるのに、どう言葉にするべきなのか、さっぱり見当もつかない僕が口ごもりながら俯いていると、僕の両肩にずしっとした重み。

 ハッとして顔を上げると、圭子さんが僕の肩に手を置いていた。

 

「……もう十分伝わったわ。……あんな娘だけど、娘のこと、よろしくね?」

 

 そう言って、圭子さんは微笑む。

 その優しさに満ちた微笑みを受けて、僕もナオミさん達の後を追った。

 

 

 SSPのオフィスに残されたのは、圭子と渋川のみ。渋川が歯痒い表情を浮かべているのを見た圭子は、その背中を一押しする。

 

「……行ってちょうだい?あぁ言う無鉄砲な子を守るのも、あなた方ビートル隊のお仕事なんでしょ?」

「……はい!」

 

 軽くお辞儀をして、自分の仕事をしに向かった渋川を、圭子は見送った。

 そして不穏な空気を察知したのか、遠くの空に開いた穴を見つめながら、先程聞いた青年の名前を思い出していた。

 

(草薙……。まさか、ね。)




この回のジャグジャグさんがとにかく面白くて、録画したTV本編を何度も見返しました。
まだTV本編を見たことのない方、必見ですよ。

後編に続きます。
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