ウルトラマンオーブ ─Another world─ 作:シロウ【特撮愛好者】
ウルトラマンジード、始まりましたね!
(ジード第1話放映までには、投稿間に合わせたかったです……)
ちょこっとアレンジを加えた結果、少々長めになっております。
それでは、どうぞ。
天候にも恵まれた、平穏無事な今日。
緑豊かな山間の道路に、オープンデッキの黄色い自動車が停められていた。
その車の周囲には数名の男女がおり、何かしらの撮影を行っていた。
探検隊の一員を連想させるベージュの服装の女性は、目の前でビデオカメラを構えるジャケットの青年に振り向き、やや芝居がかった口調で声を発した。
「ネバー・セイ・ネバー。出来ないなんて言わないで?
何もしない内から、出来ない、なんて言いたくないです。そう思う私達、SSP『Something Search People』は、いつだって不可能に挑戦します。いつだって、好奇心が新しい世界のドアを開くんだって、そう信じています。
そんな私達の合い言葉、それが『ネバー・セイ・ネバー』。怪獣、UFO、幽霊等、どんな不可解な出来事も、私達にお任せ下さい!今なら、出張無料で……」
「はい、カットォーッ!ガイさん、もっとちゃんとカメラで追っかけてくれないと……!」
何もかもが順調に思われたその撮影は、映画監督の様な出で立ちの早見ジェッタの怒号により中断された。
それに異論を唱えたのは、カメラマンを担当した風来坊、クレナイ・ガイ。
ガイは、自分がちゃんと撮影していた事を証明する為に、ビデオカメラの液晶モニターで先程録画した映像をジェッタやナオミに見せ付ける。
ガイの言う通り、撮影はきちんと行われていたのだが、一度だけ被写体のナオミが画面の中心から僅かにズレてしまっていた。
……実はこの時ガイは、片手に持っていた瓶ラムネを一口口に含んでおり、映像はその際にズレてしまったものと思われる。
そんな些細なミスを指摘したジェッタは、本日何度目かの撮影のやり直しを通告した。
それにうんざりする態度を取ったナオミに、水分補給のドリンクを片手にシンヤが歩み寄り、激励の言葉を投げ掛ける。
「お疲れ様です、ナオミさん……」
「もぉ~!シン君がいてくれたら、こんな苦労しないのに~……!」
「あはは……。ところで、シンさんは今日、どちらにお出かけになったんですか?」
「小学生の頃から知り合いの人の職場。シン君、時々お手伝いに行ってるの」
ナオミ達がいる山間部から場所は変わり、町のとあるバネ工場。
今日も今日とて精密機械が稼働し、大小さまざまなバネを製作。そのバネに、社員達の厳密なチェックが入る。
ここはコフネ製作所。「常に向上心」を社のモットーと掲げる、バネ一筋の町工場である。
今日はその社員以外にも、SSPの松戸シンが工場の手伝いに、ビートル隊の渋川一徹が納品回収にこの場を訪れていた。
自身もまた作業を行っていたこの工場の社長、
すると、検査を終えたバネの入った青いケースを抱えたシンがやって来た。
「全品、検査終わります!」
「おう、手伝ってくれてありがとよ!助かったよ!」
惣一がシンに答えると、他の社員も検査を終えると報告し、惣一は彼を労う。
バネの袋詰めを始めたシンに渋川が近付き、やや声を抑えてシンに話し掛ける。
「……おい、相変わらずチェックが厳しいねぇ」
「安全第一です。それに小舟さんは、単なる部品とは思ってませんから」
「バネは人間と同じだ。どんな苦難に押し潰されようとも、それを跳ね除ける力がある!」
シンのその言葉が聞こえたのか、惣一は嬉しそうに答える。惣一のその言葉に、社員全員が拍手喝采を上げた。
それを盛り上げようと思ったのか、渋川は指笛を鳴らすが、掠れた音しか出なかった。
「コフネ製作所のスプリングは、軽くて丈夫。そりゃあ、うちのメカニックも、一目置く訳ですね!」
ビートル隊としての意見を述べる渋川に、惣一は表情を緩めた。
やがて、バネの箱詰めを終えて「検品済」の赤いシールが貼られたダンボールを積み重ねた台車を、シンと渋川、製作所に勤める小太りの社員、田丸が運び出す。
ビートル隊への納品作業を終えて、もう一度社員と向かい合った惣一は、この先の作業内容を指示する。
「さぁ!明日から、改良品の開発だな!」
「またゼットビートル用のスプリングに、改良加えるんですか?それより、ロケットモーターの開発……」
その宣言に、社員である芝尾が難色を示すが、惣一は芝尾の元に歩み寄り、彼の肩に手を乗せて言い聞かせる。
「他と同じじゃあ、退屈じゃないか。それにうちは今まで、バネ一筋でやって来てるんだ。これからも、バネで勝負してくんだよ!」
惣一の言葉に納得したのか、芝尾も不承不承ではあるものの、それを承知する。
すると先程の運び出しが終わったのか、シンが惣一に近寄り、親しげに話し掛ける。
「その精神、大好きです!この先もすごいスプリングを作り続けて下さい!」
「うん。……シン君がいつか作るって豪語している、今までに無い災害救助用ロボットの部品も、最っ高のバネを用意してやるからよ!ハッハッハッハッハッハ!!」
シンに対する惣一も、和気藹々と言った様子でシンの肩を掴み、豪快に笑って見せた。
そこには年齢の壁を越えた、ある一種の強い繋がりがあった。
「さぁ、みんな!納品も終わったし、『いつもの』やるとするか!」
この言葉に、コフネ製作所の全社員が一気に沸き立つ。その一方で惣一は、シンにも誘いの言葉を投げ掛けた。
「シン君、ナオミちゃん達も呼んでも構わねぇぞ!」
「良いんですか!?」
「どうせやるなら、大勢いれば楽しいもんなぁ、おい!」
ナオミ達がシンから連絡を貰い、コフネ製作所に向かったのは、撮影時の衣装等の着替えが済んだ後だった。到着した時、製作所の外には社員が数名集っていて、何かの準備に取り掛かっている最中のようだった。
ナオミ達の到着に気が付いたのか、その中からシンが飛び出して来る。
「キャップ、遅いですよ!何してたんですか?」
「ゴメン、シン君。思いの外、撮影が長引いちゃって……」
「まぁとにかく、小舟さんも待ってますから、早く来て下さいよ!」
そう言ってシンはナオミの手を掴んでズルズルと引っ張って行く。それに連られてジェッタとシンヤ、ガイもその後を追う。
そこにいたのは60代程度の男性。その男性──小舟惣一は、ナオミ達が来た事を確かめると、一度作業の手を止めて、ナオミ達の元に近付いた。
「よぉ、ナオミちゃん!待ってたぜ!……ん?そっちのお若いお2人さんは、初めましてだな?」
「どうも、クレナイ・ガイd……」
ガイが自己紹介をしようとした時、それを遮るようにシンヤが驚いた様子で飛び出した。
「ヒビキ隊長!?どうしてここに……いや、総監?んー……。でも、隊長の方が僕的には馴染み深いと言うか……」
シンヤが驚いたのも、無理は無い。
なぜなら小舟惣一は、かつてウルトラマンダイナと共に戦った防衛組織「スーパーGUTS」の隊長である「ヒビキ・ゴウスケ」に瓜二つの人だったからだ。
だがヒビキ隊長は、ウルトラマンダイナ最終話後の時間軸では、「国際平和維持組織 TPC」の総監となった。その為、シンヤは彼を隊長と呼ぶか総監と呼ぶかの二択に迫られていた。
──そもそも、小舟惣一=ヒビキ・ゴウスケでは無いのだが……。
シンヤの様子を不審がった惣一は、腕組みをしてシンヤの前に立ち、自己紹介を始めた。
「……?なぁ兄ちゃん、俺をどっかの誰かと勘違いしてるみてぇだが、俺は小舟惣一ってんだ。悪ぃが、人違いだぜ?」
それを聞いたシンヤは、自分の間違いにようやく気が付き、頭を掻きながら改めて自分も自己紹介をした。
「あ……。も、申し遅れました、草薙眞哉って言います。……すいません。知っている方に、とてもそっくりだったものですから……」
「何、俺のそっくりさんだって!?不思議な事もあるもんだなぁ!っハッハッハ!」
シンヤの話を聞いた惣一は、先刻まで抱いていた不審感などそっちのけで豪快に笑って見せる。
惣一のその笑い方に、シンヤはヒビキ・ゴウスケ氏の面影を見て、少し微笑んだ。
すると製作所の社員が、惣一を呼びにやって来る。
「社長~、準備が整いました!」
「おぉ!そうかそうか!そんじゃあ、いっちょやるかぁ!!」
惣一の雄叫びが響き、それが伝染ったかのようにナオミ達を除いた全員も声を上げた。
これから一体、何が始まるのか。シンヤには想像が付かなかった。
熱々の鉄板の上で焼かれる豚バラ肉と、刻まれたキャベツや人参、モヤシ等の野菜達。
料理人が駆使する2本の銀のコテによって良く解れた中華麺が、彼らと良く混ざり合う。
最後に、味の決め手となる秘伝のソースが全体と交わった事により、遂にこの料理は完成した。
「さぁー!!食え食え~!!」
ナオミ達全員に振る舞われたのは、小舟惣一特製の絶品焼きそば。
皿に山盛りで盛られた焼きそばを、各々が美味しそうに頬張る。これには社員達だけでは無く、ナオミ達も舌鼓を打つ。
その様子を優しげな面持ちで見つめる惣一の耳に、誰よりも大きな声が届く。
「うん、美味いッ!お代わりッ!」
いの一番に完食したガイは右腕をぴんと伸ばし、お代わりを貰いに席を立つ。
惣一はガイの、こちらの気持ちが良くなるような食べ方を賞賛した。
「よぉ、兄ちゃん!良い食いっぷりだなぁ!!」
「地球の焼きそばで、一番美味い!」
「いやぁ、気に入った!よし!この焼きそばの作り方を伝授してやろう!!」
「ホントか!?」
「このコテを上手~く使って、素早く丁寧に麺を解す!そして、秘伝のタレッ!!……やってみろ!」
「はいッ!」
そう言って惣一は、ガイにコテを授ける。
それを受け取ったガイは、コテを十字に組んで精神を統一させる。決心の固まったガイは、鉄板にコテを突き立て、熱い掛け声を言い放った。
「……熱いヤツ、頼みます!ホワチョオオオッ!!」
往年の武闘家を思い起こす叫び声を放つガイの素早いコテ捌きが、中華麺と野菜、そしてタレを混ぜ合わせる。そんなガイの背後には、熱く滾る真っ赤な炎が見え始めていた。その様子に、惣一は思わず呆気に取られてしまった。
それを眺めていたシンは、一緒に食事をしていた芝尾や田丸と談話を始める。
「小舟さんの特製焼きそばを食べると、仕事に一区切りが付いたって実感が湧いて来ますね~」
シンの言葉に同意するように、田丸は何度も頷く。それに続けて芝尾も、現在に至るまでのあれこれを思い出すように、しみじみと語り出す。
「景気の悪化でうちも大変だったけど、本っ当に良かったよ。あの時、ビートル隊のコンペが無かったら、どうなってたか……」
「あぁ……でも、そのコンペ、良くOKしましたよね?ゼットビートルって、戦闘機じゃないですか?小舟さん、そう言うの嫌うって言うか……」
芝尾の声を聞き、シンは改めて疑問を抱き、そのままの言葉で問い掛けた。
彼が言っているのは、かつてのコフネ製作所が倒産すら危ぶまれた頃の話だ。
当時は経営難の影響で、会社を畳む事すら念頭に入っていた。
そんな中、ビートル隊が運用するゼットビートルの緊急脱出装置用のスプリングの競技会で、コフネ製作所のバネが採用されたのだ。
しかし、コフネ製作所の長である小舟惣一は、争い事を好まぬ人物。この話は見送られるかと思われた。ところが惣一は、これを承諾。
以来コフネ製作所は、ビートル隊に自分達のバネを提供し続けている……と言う訳だ。
シンが抱いた疑問に答えたのは、焼きそばの調理をガイに一任した惣一だった。
「俺は……生命を救う為に、技術を提供したんだ。戦う為だけの用途だったら、ココが闇に染まっちまうってもんだろ?ハッハッハ……」
「ココ」と称して、握り締めた拳で己の胸を叩いた惣一は、相も変わらずにはにかんで見せた。
そんな時突然、何かの音が鳴り渡った。
ここにいた全員が反射的に空を見上げると、上空に何らかの紋様が刻み込まれた紅い円形の魔法陣が出現する。最初は1つだけだった魔法陣から、6つの小さな魔法陣が分裂。初めの魔法陣を取り囲む。
一体何事かと一同が目を見張る中、魔法陣達は降下し始め、そこから巨大なロボットが召喚された。
巨大ロボットは、コフネ製作所の目の前の大きな畑に落下、その衝撃が全員に伝わる。
正体が全く不明なそれを見つめて、惣一は口を開く。それに続いて、シンはボソッと呟いた。
「何だこりゃあ……?」
「空の、贈り物……」
微動だにしないそのロボットに、全員が呆然としている中、その沈黙を破ったのはシンだった。
「これはスゴいです……!見た事無い巨大ロボットですよ!」
「何なの、これ……?」
ナオミがそう言うと、そのロボットの登場に興奮したシンが、蹲る形で停止しているロボットの懐に入り込み、細部をまじまじと観察する。
そのロボットは、長髪を1つに束ねた竜人のような出で立ちで、至る所に施された金と銀の装飾が真っ白なボディに映えて、その神秘性を際立たせていた。
「この高貴な色……!竜人って感じが最高です!はあっ……!」
ロボットの外観にすっかり見惚れてしまったシンを追って、カメラを構えたジェッタがこれの呼び名を提案する。
「じゃあさ、ギャラクシードラゴンって名前にしようよ!」
「ギャラクシー?宇宙から来たとは限らないのにですか?彼の名前は、サルヴァトロンです!ちなみに、イタリア語の『救世主』からの発想です!」
ジェッタの考えた名前に納得のいかなかったシンは、自分が考案した名前を公表する。
しかしこれが原因で、言い争いになってしまう。
「その『ヴァ』の発音が如何にもオシャレでしょ~?みたいな感じで、全然気に入らない!」
「見当違いのネーミングよりマシです!」
取っ組み合いのケンカにまで発展してしまったジェッタとシンの仲裁をしようと、ナオミが2人の元まで駆け出す。
「ちょっと……!ちょっと、どうでも良い事でケンカなんかしないでよ……!」
何とか2人を落ち着かせようと奮闘するナオミだったが、ロボットが起こした変化に目を奪われる。
ロボットの中心部に埋め込まれていた赤い球体から溢れ出た温かな光が3人を包み込むと、優しいメロディが流れ出す。
『♪~……♪~……』
それはまるで歌っているようで、そのメロディに全員が耳を傾ける。
これのおかげで冷静さを取り戻したのか、ジェッタとシンは次第にケンカを収める。
この隙にナオミは2人を引き離し、仲直りをするよう申し入れた。
「ほら、ロボットもケンカするなって言ってるよ?」
「……言い過ぎました。ごめんなさい。」
「俺も……ムキになってゴメンな」
ジェッタとシンが仲直りをしたのを察知したのか、ロボットは光とメロディを止ませた。
これを受けてシンは、1つの仮説を立てた。
「僕達のケンカを止めてくれた……?」
「こいつ、良いヤツじゃん!」
ジェッタがこのロボットの行いを賞賛した直後、ナオミが突然声を上げた。
「ギャラクトロン!」
「「え……?」」
「ギャラクシードラゴンと、サルヴァトロンが合体した時、新たな勇者が誕生する!その名はギャラクトロン!
あなたの名前は『ギャラクトロン』!だからね~?」
そう言ってナオミは、何の警戒もせずにロボット──ギャラクトロンの爪先をぺたぺたと触る。
するとナオミが触れた箇所から、赤い波紋が広がる。それを見たシンは、驚いた様子でナオミを咎めた。
「あぁ、キャップ!素手で触っちゃダメですよ!未知の物なんですから……!」
「あ……。ごめんごめん」
シンのその指摘に反省の色を示したナオミだったが、再びギャラクトロンに動きがあった。
赤い球体から放たれた不思議な赤い光がナオミを包み込むと、彼女の身体のあちこちを読み込み始める。その感覚にナオミは、ある種のこそばゆさを感じた。
「何か、くすぐったいんだけど……」
しばらくするとスキャンを終えたのか、赤い光はまた球体に戻って行く。
その現象が止んだと同時に、これまで見ているだけだったシンヤとガイが、ナオミの元に駆け付けた。
「ナオミさん!」
「大丈夫か?」
自分を心配するシンヤとガイに答えた後、ナオミはこれまでに感じた事を述べ出す。
「うん、ちょっとびっくりしただけだから……。気のせいかもだけど、強い意志を感じたの。この世界の平和を守るって……」
「じゃあもしかしたら、ギャラクトロンとオーブが仲間になって、怪獣と戦って、町を守るとかって言うのも有りうるって事!?」
ナオミの言葉を聞いたジェッタは、もしもの可能性を掲げ、シンは惣一の元に急いだ。
「小舟さん!あのロボット、僕達で調べませんか!?」
「それは良い考えだな!……俺の所に来たからには、覚悟しろよ!!」
シンの提案に乗った惣一は、身動ぎしないギャラクトロンを指差してそう宣言したのであった。
シンと惣一が話し合っている間に、シンヤは密かにギャラクトロンと命名されたロボットに近付く。自分の中の好奇心がそうさせているのか、一歩また一歩と近付き、シンヤは恐る恐る手を伸ばし、指先、そして掌と言った具合でギャラクトロンに触れた。
すると突如シンヤの脳内に、何かの映像が流れ込む。
廃墟となった、どこかの町並み。
辺り一面の、焼け野原。
無造作に転がる、死屍累々。
何度も場面は移り変わったがそのどれにも、かつて栄えたであろう文明が辿った最期がそこにはあった。
シンヤが最後に見たのは、燃え盛る街に1人取り残された少年のイメージ。
少年が空を見上げれば、宙に浮かぶ純白の竜人が。
無数の炎のようなエネルギーを充填し、こちらに狙いを定めていた──。
「ううっ……!何だ、これ……!」
そのビジョンを境に、シンヤを激しい頭痛が襲う。今すぐにでも頭が粉々に砕けそうな感覚がしたシンヤは、それを防ごうと無我夢中に頭を押さえるが、耐え切れずに膝を突いた。
シンヤの急変を感じ取ったのか、すかさずガイが馳せ参じた。
「どうしたシンヤ!?大丈夫か!?」
「ガイさん……。急に、頭が……!」
「もういい、喋るな……!ジェッタ、来てくれ!」
ガイに呼ばれたジェッタが駆け付け、2人でシンヤに肩を貸す。
それを見兼ねた惣一のご厚意で、製作所の一室を借りたガイは、シンヤを部屋のソファに横たわらせる。
するとシンヤを心配した社員達が、氷のうを持って来てくれた。それを額に乗せたシンヤは、傍らにいたガイに謝った。
「ううっ……すみません、ガイさん……」
「心配すんな、俺もいつも世話になってるからな。……ところで、一体何があった?」
そう訪ねられたシンヤは、ナオミと同様に自分もギャラクトロンに触れた事、直後に見覚えの無い映像が頭の中を駆け巡った事、その映像についての詳細、それから激しい頭痛に襲われた事を、朦朧とする意識の中で包み隠さずに伝えた。
「──そうか、良く分かった」
「あのロボット……きっと、皆さんが考えているような代物じゃないです。……ガイさん。気を付けて、下さい……」
自分が抱いた不安を、ガイに警告する形で言葉にしたシンヤは、ゆっくりと瞼を閉じる。それからすぐに寝息を立て始めたシンヤを見て、ガイは安堵したのだった。
ガイが外に出たのは「VTL」のロゴの入ったワゴン車が、丁度コフネ製作所前に停まった時だった。
その車からは、毎度お馴染みの渋川と、戦闘服に身を包んだビートル隊の隊員が数名降りる。
それに気付いたナオミは、渋川に声を掛けた。
「あ、おじさん!」
「……!おい!お前達、何やってんだ!降りろ!降りろって!」
渋川が、突然声を荒らげたのには訳がある。
なぜなら、惣一を含めたコフネ製作所の社員数名とシンが命綱も無しに、自分達にとって正体不明のロボットの上に登っていたからだ。
自作の解析装置を持ち、ロボットを調査していたシンは一度作業の手を止めて、社員達と一緒に渋川の元に集合した。
その傍らで、ビートル隊の隊員が立ち入り禁止を示す黄色いテープを貼り始めた。
「解析結果のデータは、ビートル隊に提供しますから!僕達に、最後まで解析をやらせてもらえませんか?」
「渋川さん!俺からも……お願いします!この通りです!」
シンの説得に続いて、惣一が頭を下げると、社員達とナオミまでもが一緒に頭を下げた。
それを見た渋川は露骨に焦り、惣一に頭を上げるよう申し出た。
「いやいやいやいやいやいや!……あの、社長にそこまでされたら、許可しない訳には……!」
「……ありがとうございます!」
それを聞いた惣一は、してやったりと言った表情を浮かべた後に、渋川と硬い握手をした。
その直後に渋川は、彼らにある条件を付与したのだった。
「でもねでもね、でもね?最大限の、安全対策はさせてもらいます」
その後ビートル隊の手配で、強固なワイヤーとそれを括りつけて地面に固定する為のミサイルが届けられた。
ビートル隊の協力の下、ワイヤーでギャラクトロンを拘束する。これによって、シン達はより安全にギャラクトロンの解析に専念する事が出来た。
ギャラクトロンの解析はそれからも続き、辺りはオレンジ色に染まっていた。
これまでの調査で判明した事はあるにはあるのだが、それ以上に不明な事が山ほどあった。
そんな中で惣一は、解析したギャラクトロンの内部構造を見て唸ってしまう。
「全て未知の物質か……。物理法則を無視したパーツがあちこちにあるぞ……。こんなすげぇもん、どっから来たんだ?」
「どっから来たって……。おい、宇宙からじゃねぇのか?」
惣一のその言葉に、渋川はシンに解答を求める。
シンは惣一の喋り方を真似たような口調で、渋川に説明を始めた。
「解析結果を見ても、大気圏を突入した形跡は一切ありません。とても宇宙から来たとは、考え難いです……」
シンが言うように、大気圏に突入した形跡が無いと言う事は、ジェッタの「ギャラクシードラゴン」は的外れなネーミングだった事が証明されてしまった。
説明の最中、その名前を付けようとした当の本人の顔をチラリと見たシンだったが、彼に若干の怒りの色が見えた為、忍び声になった。
また分からない事が1つ増えたと落ち込む面々に、離れた場所にいたガイがぽつりと呟いた。
「別次元の文明が造った物かもな……」
ガイ自身、始めからそうではないかと目星は付けていたのだが、シンヤとの語らいでそれが決定的な物に変わった為、今の発言に繋げたのだ。
「その可能性も、否定は出来ねぇな。ここをよーく見てれ」
ガイの言葉を受けた惣一は、自分の使うパソコンの画面に表示させた映像を全員に見せる。そこには、波打つような波形のパーツが幾つも映し出されていた。
「成分は解らねぇが、これはゲル状のバネだ。こんなとんでもねぇもん、世界中探したって誰にも造れやしねぇ!」
自身もバネを造る事を生業としている惣一にとって、この発見は驚くべきものであると同時に、自分達との技術とは天と地の差がある事を見せ付けられる結果となった。
全員の視線が惣一のパソコンに向けられる中、別の解析を進めていた田丸の機器がある反応を感知した。
「社長!この音なんですけど……」
田丸に呼ばれた惣一は、彼の元に駆け寄る。ナオミ達もまた、その後に続いた。
様々なコードが接続されたスピーカーからは、特殊な音が一定のリズムで刻まれていた。それに連動する形で、デスクに置かれた赤い警光灯が回転していた。
どうやらその音は、ギャラクトロンが発している物のようだ。その証拠に田丸が駆使するパソコンには、蹲るギャラクトロンが地面に向けて何かを広範囲に照射するイメージ図が映っていた。
「特殊なソナーを使って、地球の様子でも探ってるんじゃねぇのか?」
「きっと、この星の環境を調べてるんじゃないでしょうか?何とか、コミュニケーションを取る方法を見つけ出さないといけませんね~!」
惣一の推測を聞いたシンが続けてそう仮定すると、近くにいたガイと急に肩を組む。
ギャラクトロンはやはり蹲ったままで、だんまりを貫き通していた。
次第に辺りも暗くなって行くが、彼らの調査はまだまだ終わらない。数台の照明機器を組み終えたガイは、惣一を呼ぶ。
「っし……!師匠!準備出来たぜ!」
今日の焼きそばパーティーでお世話になった事もあってか、ガイは惣一の事を「師匠」と崇めるようになった。
その師匠である惣一がガイの元にやって来るのに、1分と掛からなかった。
惣一は更に田丸と芝尾を呼び寄せて、照明機器をそれぞれの場所に設置するよう指示。
ギャラクトロンを囲むように設置された照明が、同時にライトアップ。その光景に、ガイは感嘆の声を上げた。
照明に照らされたギャラクトロンにシンは近付いて、巨大なそれを見上げて独り言ちた。
「僕の名前は、松戸シン!……って言ったみたものの、言語学習機能は備わっているんでしょうか?
どこから来て、何を、目的としてるんでしょうね……。これ程のロボットなら、災害救助でも大活躍出来そうです。でも……悔しいですが、今の僕の技術じゃ、これは造れませんね……!」
コーヒーを片手に、椅子に腰掛けてシンを見守るガイに、惣一は歩み寄る。
それに気付いたガイは、急いで立ち上がろうとするが、惣一はそれを止めてガイの隣に座り、数十年前シンと出会った日の事を語り出した。
「……俺が初めて会ったのは、小学生ロボットコンテストの、審査員をやった時だったかな……。あいつが1年生の時、変梃なロボット造って参加してよ。もちろん、入選なんか出来なくてよ……。悔しがって、泣きじゃくりながら、一生懸命俺に質問して来やがったよ。で……1年後、入選したよ。いつかきっと、人の役に立つ究極のロボットを造るんだって、豪語してたっけなぁ……」
ギャラクトロンをただじっと見つめるシンは、彼に自身の夢である、究極のロボットの姿を重ね合わせたのだった。
何気に、シンヤ君の新しい能力(?)が覚醒しました。
ジーッとしてても、ドーにもならないので、後編の投稿を早めに出来るよう、頑張ります。
なので、しばらくお待ち下さいませ……。