ウルトラマンオーブ ─Another world─ 作:シロウ【特撮愛好者】
時間がかかりました…。
この作品にも歴代ウルトラ作品のサブタイトルが隠れています。空いた時間にでも探してみて下さい。
それでは、どうぞ。
突如町に現れた怪獣騒動の後。僕は、ナオミさん達SSPが使っているオフィスの大家さんの家へと帰って来た。
この世界で寝泊まりできる場所がここで、今の僕はいわゆる居候なのだ。
「ただいま戻りました」
「お帰りなさい、草薙君。……あら、そちらの方は?」
大家さんが言っているのは、僕の後ろにいる人のことだ。黒いジャケットを着て、帽子を被っているため怪しさが十分伝わってくる。
僕はその人の紹介を始めた。
「えっと僕の先輩で、今日偶然町で会ったんです。それで家で少し話でもしないかって……」
その人は被っていた帽子を外して大家さんに軽く会釈をした。ぶっきらぼうに見えるけど、案外しっかりしているようだ。
「急な話なんですけど……良いですか?」
「えぇ、大丈夫ですよ。これから晩ご飯だけど、そちらの方もいかが?」
急な来客にも決して嫌な顔をしない大家さんは、本当に良い人だなと思う。しかも食事に誘うとは、こういった人は、このご時世にはとても貴重かつ希少な存在だろう。
この人を紹介して貰えて、本当に良かったと思う。そして、現在滞納しまくっているオフィスの家賃を少しでも早く返済出来るように頑張ろうと思った。
「は、はい。是非」
食事の誘いをすぐに受けたその人は、とても嬉しそうな反応を示した。
余程空腹だったのか、それとも──
「……んで、アンタは何者なんだ?」
「じゃあ改めてご挨拶を。草薙眞哉です」
「俺はガイ。クレナイ・ガイ」
食事を終えた僕達は、僕が自分の部屋として利用させてもらっている部屋にやって来た。
まずお互いの自己紹介を済ませ、向かい合う形で座った僕は今日何度目かの質問をした。
「えっとガイさん。何度も確認しますけど……あなたがウルトラマンオーブで間違いないんですよね?」
「……あぁ」
ガイさんは、またこの質問かと呆れた様子で答えた。
実際、子どもの頃から憧れていたウルトラマンが目の前にいるのだ。興奮を隠せなかった。
「はぁ~!本物のウルトラマンとこうして話せるなんて、夢にも思いませんでしたよ!人生、何が起こるか分かりませんね!」
「本物……?どういうことだ?」
僕の一言に気がかりなところがあったのか、ガイさんはそう聞き直した。
「僕がいた世界では、ウルトラマンはテレビの中にしか存在しないんです。小さい頃、初めてウルトラマンを見た時はとても興奮しました……。って今も本物のウルトラマンが目の前にいて、興奮しっぱなしですけど」
苦笑いをしながら思ったままをガイさんに伝える。そして、疑問に思っていたことを聞いてみた。
「でも、どうしてか『ウルトラマンオーブ』って作品は放送してなかったんですよ。だからガイさん……オーブを見た時は、全然心当たりがなかったんです。……何でなんでしょうか?」
「そんなの、俺が知る訳ないだろ……」
そんな答えが帰って来たが、当然だ。そんなことまで知っているはずがない。我ながら馬鹿なことを聞いたものだ。
「それより俺が聞きたいのは、アンタがそれをどこで手に入れたのかだ」
ガイさんが指を指したのは、僕の持つカードホルダーだった。
「そうですね、では早速説明させていただきます……」
僕はカードホルダーを膝の上に置いてこれまでの経緯を話し始めた。
「なるほどなぁ……。そんなことがあって、この世界にやって来たのか」
「えぇ。……あの、教えて下さい。今日現れたあの怪獣は、一体何なんです?」
「───あれは魔王獣だ」
「魔王獣……?」
「あぁ。遥か太古の地球で暴れていた怪獣達で、それぞれ6つの属性を持っている。今日現れたのは『風ノ魔王獣 マガバッサー』だ」
「太古の地球……?あっ、『太平風土記』!」
それを聞いた僕は、昨日シンさんが言っていた『太平風土記』を思い出した。この世界の歴史を記した古文書のことだ。あの時はただの古文書と思ったけど、こんなところで重要になってくるとは思わなかった。
「そのどれもが強大な力を持ち、放っておけば世界を滅ぼしかねない危険な存在だ」
「そんな……。それじゃあ、あんな怪獣がまだ5体いるってことですか!?」
「いや、残りは3体。光と闇、風は既に倒されている。その証拠が……、これだ」
ガイさんは腰にぶら下げたカードホルダーを開けて、中身を取り出して僕の前に出した。
「ウルトラマンとウルトラマンティガ……ウルトラマンメビウスのカード!?」
そこにあったのは、なぜか僕のカードホルダーに抜けていたウルトラマン達のカードだった。
(そうか、ガイさんが持っていたのか……。)
「この先輩達が、魔王獣達を封印してくれていた……。俺は今、先輩達の力を借りて戦っているんだ」
「そうだったんですか……」
これで全て納得がいった。あの時変身した時にウルトラマンとティガの名前を呼んでいたのはそう言うことだったのか。
そして僕が授かったこのカードの意味も。このカードでオーブに新しい力を与えるためだったのだと。
(そう言えば……あの森で戦っていたのは、ガイさんだったのかな……?)
そんな時ふと、あの空間で見たビジョンを思い出した。
光り輝く巨人がどこかの森で戦うあの光景。その巨人はどこかオーブに似ていた。だからこそ、ガイさんに関係してるんじゃないかと思ったのだ。
「ところでさっきのアンタの話だが……」
「……信じてくれるんですか?」
「信じるも何も、アンタは俺と一緒に戦うために来たんだろ?」
「はい!是非……」
これから一緒に戦いたいと、そう言おうとした。ガイさんもそう言ってくれると思った。
でも、ガイさんの返事は違った。
「だが、その話を受ける訳にはいかない」
「そんな!?どうしてです!?」
「あいにく、俺は1人でもやっていける。足手まといはゴメンだ」
突き放すような、キツい一言だった。そう言ってガイさんは立ち去ろうとした。そんな時にも僕は、あの時のビジョンの一部を思い出し、さらにガイさんを問い詰める。
「……また、誰かを巻き込みたくないからですか?」
「……何?」
「あの時の女の子みたいに、僕が巻き込まれないようにするためですか?」
僕が言っているのは、あの森の戦いのことだ。それと一緒に、あの巨人がガイさんなのかどうかも確かめるための問いだった。
その時ガイは、あの日々を思い出していた。
あの少女と共に過ごしたのは短い間。だが今でも鮮明に思い出せるキラキラした記憶だった。
いや────忘れてはいけないのだ。自らの強大な力が招いた、あの悲劇を。
どうしてこの青年が知っているのかは知らないが、ガイは拳を強く握り締めて、背中越しに言った。
「……そうだって言ったら、どうする?」
その背中から滲み出る雰囲気から、僕はしまったと思った。ガイさんの踏み込まれたくないところまで、踏み込んでしまった。
「それは……」
僕はその罪悪感から、何も言うことが出来なかった。
「そう言うことだ。……邪魔したな、飯美味かったって、よろしく伝えといてくれ」
電気の消えた廊下を、ガイさんは歩いて行く。何も出来ない僕は、ただその背中を見つめることしか出来なかった……。
「ガイさん……」
翌日。僕はSSPのオフィスにやって来た。既に3人は来ていて、それぞれが何かしらの作業を行っていた。
「おはようございます……」
「おはよー、シンヤ君」
「おはよー」
「おはようございます、シンヤ君。……おや、随分お疲れのようですが、昨夜は眠れませんでしたか?」
僕を心配してくれたのか、シンさんはそう言ってくれた。昨夜のガイさんとの会話をずっと思い出していて、気付いたら朝になっていたのだ。
「シンさん……。えぇまぁ……。ずっと考え事してて」
「なるほど、なら眠る前にコーヒーを飲むことをオススメします」
「えぇ?シンさん、そういう時はホットミルクなんじゃないの?」
「いえいえ、コーヒーのカフェインにはリラックス効果が……」
ジェッタさんとシンさんの、いつも通りの会話が始まった。ジェッタさんが質問をして、シンさんが答える。
時々言い争いに発展するけど、何だかんだ仲の良いコンビなんだろう。
そんな2人を眺めながら、うとうとし始めた時。SSPのオフィスの扉が開いた。
「よぉ、お前ら!今日も元気か?」
「おじさん!どうしたの?」
「ちょうど休憩時間でな、近くまで来たもんだからさ」
やって来たのは、青い制服に身を包んだ男性だった。確かこの人は昨日の怪獣騒動の時、避難誘導をしていたっけ。
「えっと、ナオミさん。こちらの方は?」
「私のおじさんの、渋川一徹さん。防衛チームのビートル隊の隊員なの」
「ビートル隊の渋川だ。よろしく」
「はぁ……」
僕が聞くとナオミさんが紹介をして、改めてその人は僕に笑顔で自己紹介をした。
とても笑顔の似合う人で、手を差し出していたから僕は渋川さんに握手を返した。
「にしてもナオミちゃん、昨日みたいにあんま無茶しないでくれよ。ナオミちゃんに何かあったら、義姉さんにどんな顔して会えば良いんだよ?」
「今ママは関係ないでしょ。おじさんいっつもそればっかり」
「でもよ……っと。はい、こちら渋川……」
ナオミさんと何か話をしていたけど、腰の無線から連絡が入る。様子を伺っているとどんどん表情が険しくなっていった。
「悪ぃ、緊急事態だ。また市街地に怪獣が出やがった!」
「えぇ!?」
僕は驚かずにはいられなかった。昨日現れたばっかりなのに、また怪獣が出るとは思わなかったからだ。
「避難誘導に当たらなきゃならねぇ。そんじゃあナオミちゃん、あばよ!」
そう言って、渋川さんはオフィスを出ていった。
振り返ると、ジェッタさん達は出かける準備をしていた。
SSPのオフィスで、渋川隊員が連絡を受け取る数分前。
ビルの屋上から眼下の景色を眺める男がいた。その瞳に写るのは、笑顔で町を行き来する人々だった。
「……平和な町ですね。先日あんなことがあったのに、何事もなかったかのように過ごしている。全く人間というのは愚かな存在ですね。いつまでもこの平和が続くと錯覚している。またこれから、その平和が脅かされることにも気付かずに……」
邪悪な笑みを浮かべるヨミが、左手にダークリングを握った時だった。
『♪~』
どこからか、ハーモニカの音が聞こえた。その音色を聞いたヨミは、頭を押さえ始めた。
「うっ……。何て酷いメロディだ……」
ヨミが後ろを振り向くと、帽子を被ったジャケットの男─ガイがいた。
「お前は……?」
ガイにとってヨミとの出会いは意外だった。てっきりあいつ─ジャグラーが何か始めるつもりなのかと思っていたからだ。だが、そこにいたのは見知らぬ相手だった。
「……初めまして、クレナイ・ガイ様。私はヨミ。ジャグラー様に仕える従者です」
ヨミは丁寧な口調で、己が主の仇敵に自己紹介をした。その不敵な笑みに、ガイは警戒心を向けた。
ガイとヨミは互いに、本能的に目の前の男が敵であることを察した。
「ヨミだが何だか知らねぇが、お前が平和を脅かすなら容赦はしねぇ!」
「フン……。人間の少女1人も救えないウルトラマンが、何を言っているのやら」
「何……?」
「その挙げ句、本来の力も失ったのでしょう?そんなあなたがよくもまぁ……」
少女一人も救えない──。
本来の力も失った──。
その発言が、ガイの怒りを誘った。ガイの素早い拳が、ヨミの顔に向かって放たれた。
「黙れ……!」
「おぉ、怖い怖い。ですが……」
しかし、顔に直撃する寸前でヨミはガイの拳を片手で受け止める。
ガイは更に追撃の手を緩めず攻めるが、ヨミはその一手一手を的確に捌く。
「そんな攻撃をかわせない私ではありませんよ?」
「くっ!ちょこまかと!」
ガイは一撃を放つがヨミはその威力を利用し、後ろに下がる力と変えて距離を取る。
「ハハッ。今から楽しいゲームを始めましょう?プレイヤーはあなた。見事障害を乗り越え、ゲームクリアを目指して下さい」
「ゲームだと!?ふざけんな!」
「……残念ですがあなたに拒否権はありませんよ。さぁ、怪獣ゲームの始まりです。出でよ、レッドキング……!」
【レッドキング!】
ヨミは懐から取り出した1枚のカードを、ダークリングに読み込ませる。闇を纏ったカードは町の中心部へ飛んで行き、巨大な怪獣として実体化する。
レッドキングは町中を暴れ始め、平和に過ごしていた人々は突如現れたレッドキングに恐怖し、混乱に陥った。
「ジャグラー様からお借りしたレッドキングです。平和を脅かすなら容赦はしない……でしたっけ?……早く倒さないと、町が大変なことになりますよ?」
「お前……!」
ヨミの隠す気のない挑発に、ガイは怒りを露にする。今はこの相手よりも、町で暴れるレッドキングの撃破が最優先だ。
ガイは両腕を体の前で交差させ、左手に持っていたオーブリングを正面に突き出す。その途端、リングの中央から光が溢れ出た。
「ウルトラマンさん!」
【ウルトラマン!】
「ティガさん!」
【ウルトラマンティガ!】
「光の力、お借りします!」
【フュージョンアップ!ウルトラマンオーブ!
スペシウムゼペリオン!】
紫色の輝きを放つ光の戦士─ウルトラマンオーブが町に降り立つ。その姿を見た人々は、歓喜や安堵の様子を見せた。
『闇を照らして、悪を撃つ!』
渋川さんの忠告を無視して市街地にやって来た僕らが初めに見たのは、中心部で対峙するオーブと怪獣の姿だった。
(あれはどくろ怪獣 レッドキング!手強い相手ですよ、ガイさん……!)
レッドキングは、好戦的で凶暴な怪獣だ。ウルトラ戦士達と何度も戦った怪獣で、そのどれもが強敵だった。
『オリャア!』
僕がそう思って見守る中、戦いを有利に運ぶオーブ。硬い体表に攻撃が中々通らず苦戦もしていたが、確実に追い込んでいく。
「よぉし、そのまま決めちゃえ、オーブ!」
自前のビデオカメラで戦闘を撮影しながら、ジェッタさんは興奮気味に言う。
でも僕は違った。何でか順調に事が進み過ぎている気がした。
(何でだ……?どうしてこんなに嫌な予感がする?)
対してオーブもトドメを刺すべく、必殺光線の構えを取った!
『スペリオン光線!』
スペリオン光線はレッドキングに直撃。レッドキングはそのエネルギーに耐えきれずに爆発した!
……その寸前僕は、レッドキングの瞳が一瞬赤く光ったのを見た。
『どうだ?大したことなかったな!』
オーブは、とあるビルの屋上にいる誰かに向けて話しているようだった。
オーブに話しかけられたヨミは悔しがる様子も見せず、オーブを褒め称える。だが……。
「お見事です……第2ラウンドと参りましょう」
『!? ウォァ!?』
レッドキングに勝利したはずのオーブだったが、砂煙の向こう側から自分に向かってくる巨大な拳の一撃をまともに喰らってしまう。
「あれは……!」
その砂煙が晴れた時、そこにいたのはレッドキングであってレッドキングにあらず。
その名はEXレッドキング。白かった全身はマグマのように赤黒く、膨張していた。瞳も赤くなり、何より注目するべきはその両腕。あまりにも巨大化した拳はまるで塊のようだ。
「EXレッドキング……。どう攻略致しますか?」
黒い巨獣は咆哮、オーブに襲いかかる。カラータイマーを点滅させるオーブは迎撃の構えを取り攻撃を喰らわせるが、硬い体表に覆われた皮膚にその一撃は大したダメージにはならない。
逆に敵から放たれた重い一撃が、オーブを襲う!
『「くそっ……。何てパワーだっ……!」』
この状況はあまりに不利だとガイは察知した。この姿はバランスの取れた形態だ。だが、攻撃に特化している訳ではない。ティガさんのパワータイプの能力を使えたとしても、残された時間ではそう長くは戦えない。
手持ちのカードもウルトラマンさんとティガさん、メビウスさんの3枚。EXレッドキングに対抗出来るほどのカードが現在ここにはないのだ。
まさしく絶対絶命。
反撃が来ないこの瞬間を、EXレッドキングは見逃さない。肥大化した両腕を大地に叩き付ける。するとオーブ目掛けて一直線に火柱が上がる。EXレッドキングの得意技「フレイムロード」だ!
『グワァァ!』
進化前のレッドキング戦で体力を消耗した上に、更に体を酷使したオーブにフレイムロードを回避するだけの力は残っておらず、オーブは為す術なくその一撃を喰らった。
最早立ち上がる気力も尽きたオーブは、荒い呼吸をしながら姿を消した……。
「オーブッ!!」
勝利の雄叫びを上げたEXレッドキングも時間が切れたのか、次第にその姿を消し始める。そして再びカードに戻ったレッドキングは、自らを召喚した者の元へ飛んで行った。
──本来、怪獣カードは一度使えばまたカードに戻ることはない。だが、ヨミのダークリングで実体化を行った場合はその条件は当てはまらないようだ。
「ゲームクリア、失敗です。またの挑戦をお待ちしております」
EXレッドキングが消滅した後、渋川さんと合流した僕らはこっぴどく叱られ、そのお詫びとして渋川さん達のお手伝いをすることになった。まぁ自業自得だよねと思いながらみんなと離れて作業をしていた時だった。
「……ガイさん!しっかりして下さい、ガイさん!」
向こうからガイさんがフラフラとやって来た。全身ボロボロで、歩くことさえやっとのようだった。
さっきの戦いで傷付いたことが原因だろうか、僕を見るなり力なく倒れる。すかさず支えたけど、ガイさんの全体重がどっと僕にかかる。
何度か呼びかけたけど、それに応える様子はない。どうやら気を失っているようだ。
それでもガイさんは小声で「ナターシャ……」と呟いていた……。
EXレッドキング強くし過ぎましたかね…?
後編はしばらくお待ち下さい…。