IS 〜バイクと名人とSchoolLife〜 作:無限の槍製
あ、関係ないけどエミヤの絆レベルが10になりました。うん関係ないね!
私がこの中学校に転校してきたのは中学2年の春。とある理由で転校を繰り返してきた私にとって大した意味はない。でもこの時期を覚えているのは彼との出会いがあったからか。
「篠ノ之箒です。よろしくお願いします」
ありきたりな挨拶を済ませクラス全体を見渡す。このクラスのみんなと一緒に居られるのは何ヶ月だろう、そんな考えをしているとき、
「すいませーん。遅れましたー」
「九条くん!遅刻ですよ」
彼=九条桐也ことキリヤんと出会ったのだ。
◇
「自分、九条桐也。まあ好きに呼んでよ篠ノ之さん」
「……分かった九条」
席は偶々キリヤんの隣だった。この中学校は私服登校であり、この頃からアロハシャツに革ジャン、サングラスは定番だった。
この頃の私はキリヤんの様なチャラチャラした男が苦手、いいや嫌いだった。どうしても一夏と比べてしまう。一夏はチャラチャラなどしていなかったから。
(こんな男が隣とは……運がないな)
だがまあ、この学校での生活もどうせ長くはない。そう思って割り切った。
「篠ノ之さんって結構美人だよね」
「……なんだ、いきなり」
「いや、事実を言ったまでだよ」
「………」
この時は本気で殴ってやろうかと考えた。大抵の女子は美人だの可愛いだのと言われれば嬉しいと思うだろうが、この時は嬉しくなかった。度重なる転校でストレスが溜まり、神経質になっていた。
そう、神経質になってしまっていたのだ。
◇
それから3日後。早くも問題を起こしてしまった。体験入部という名目で剣道部に所属していた私だが、その日先輩とちょっとした試合をおこなったのだ。結果は私が勝った。しかし勝ち方がダメだった。
ストレスが溜まり、神経質になっていた私は必要以上に打ち込んでしまった。それによって先輩が怪我をしてしまった。
更にその先輩は所謂お金持ちのお坊っちゃんであり、やれ訴えてやる、やれ親が黙ってないぞ、やれ僕は裏の世界とも繋がってるから、秘密裏にお前を消せるのだ、などと。
私のせいで彼は怪我をしたのだからこれぐらい言われても文句は言えないと、ずっと我慢していた。だがその数日後、またしても事件がおきる。
『篠ノ之箒はテロリストの妹』
こんな見出しの紙が学校中に貼られていた。私は怖くなった。この学校でも、姉さんをテロリスト扱いしている人がいる。そして私のことを犯罪者の妹だと言う人がいる、と。
こればかりは流石に我慢の限界だった。直接殴り込みに行ってやるとも考えた。
でも、実際私はその場で泣き崩れる事しか出来なかった。
「おい見ろ!テロリストの妹だぞ!」
そんな言葉が聞こえる。その声の主は私が怪我をさせてしまった先輩だった。彼は見下しながらこう続けた。
「おいみんな!早く逃げろ!こいつに殺されるぞ!」
それも大きな声で。多分近隣の家の人にも聞こえているだろう。
「やめて……やめ、てよ」
またみんなに怖がられる。またみんなに拒絶される。またみんなに、
そんな考えが頭をよぎる私の横を、見たことのある革ジャンの男が通り過ぎる。
「よいしょ、っと!!」
そいつは先輩の頭を回し蹴りで蹴り飛ばす。綺麗に吹っ飛んでいく先輩を見て呆然とする私とその他大勢。そして蹴り飛ばした張本人はこう言った。
「あれぇ?もしかしてみんな、この嘘の情報にノせられちゃってる?ダメだよ〜あの人嘘で有名だから」
そうキリヤんは不敵な笑みを浮かべて言い放った。
◇
キリヤんは先輩を蹴り飛ばしたことで停学処分となってしまった。私もその日は早退することにした。そしてキリヤんはこう言ったのだ。
「もし早退するならさ、ちょっと遊んでいかない?」
いつもの私なら断っているだろう。でもこの時は心に余裕がなく、1人で帰れる気がしなかった。私は柄にもなくこのチャラ男の遊びにノってしまった。いいや、ノせられたのだ。
その日はキリヤんと夜遅くまで遊んで、話した。実はキリヤんはレースゲームでもトップクラスの腕だとか、一夏との思い出とか、駅前のケーキが美味しいとか。
その途中もしかしたらこのまま破廉恥な展開になるのではと焦ったが、キリヤんは本当にただ遊びたかっただけらしい。それを聞いて少し安心した。
「それにしても、まさか回し蹴りをするなんて思わなかったぞ」
「自分も、まさかあそこまでキレイに決まるなんて思ってなかったよ」
今日のことをもう笑い話にしている私たち。これを他の生徒が聞いたらなんと言われるか。実際私自身もどうなのかと考えた。
「でもまあ、女の子が泣いてて、それを笑う奴がいたら自分がぶっ飛ばしてやるよ。それだけは曲げない主義なんで」
「変わった奴だなお前」
「転校3日であの悪名高き先輩をボコったお前もだよ」
「そ、それは……その…」
「ハハッ。まあ元気になってよかったよ箒」
「お前、今」
「こうして遊んで話すようになったんだ。別に呼び方ぐらい構わないでしょ?それはそうと、そろそろ桐也とかお前以外の呼び方で呼んで欲しいんだけど?」
「勝手な奴だな。そうだな……キリヤ……ん。キリヤ、ん。キリヤん!!」
「なにその頭が悪そうな奴が考えそうな安直なあだ名は」
「好きに呼べと言ったのはキリヤんだろう?なら決定だ」
「いやダメだ!キリヤん以外にしてくれ!」
「いいや!これは決定事項だ!」
きっと、この日は今までの人生で2番目に大泣きした日で、2番目に大笑いした日だろう。そして、中学時代キリヤんと話した最後の日でもあった。
◇
「突然ですが、九条くんが今日付で転校することになりました」
それはキリヤんが停学になって4日後のことだった。なんでも親の都合で転校することになったそうだ。私は急いで電話をかけた。しかしキリヤんは電話に出ることはなかった。ならばと今度はメールを送った。
『箒:このメールを見たら折り返し電話をかけてくれ。話がしたい』
それから返信が来るまで私は忙しなく携帯を確認した。そして10分後、
『キリヤん:悪い、大人の事情で話せない。ごめん。元気でな』
私はいつの間にか泣いていた。もしかしたら私のせいで転校したのではないか。ならばなんと言っていいのか、返事の言葉が思いつかず、遂には返事を返すことはなかった……
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5月20日(土)PM08時50分
「……き……ほ……き…ほう……ほうき……箒、起きろよ」
「……一、夏?」
いつの間にか寝てしまったらしい。一夏とキリヤんが帰ってきて、セシリアと鈴は今日は無理だと言うので4人で勉強会を始めたのが15時前。それから30分で本音が寝て、キリヤんが寝て、一夏が寝て、そして恐らく私が寝た。
「どうする箒?今日泊まってくか?」
「え、ええ!?と、泊まっ、泊まる!?」
「キリヤんものほほんさんも泊まってくって。なら箒も泊まるかなって」
「ばばば馬鹿なことを言うな一夏!第一千冬さんが許すはずが」
「千冬姉なら二つ返事だったぞ」
………それでいいのですか千冬さん!!と耳をすませば二階から、やれ布団が柔らかい、エロ本ねえな、本音お菓子ポロポロ落としすぎだ、などなど聞こえて来る。
「全く……エロ本ならないって言ってるのに…で、どうする?」
「……お前さえ良ければ」
「決まりだな。布団用意して来る」
そう言って一夏は二階へと駆け上がっていった。そしてすぐに二階から叫び声が聞こえてくる。
中学時代は散々な思い出ばかりだったが、今は違う。大切な友達がたくさんできた。そして高校生活はまだ始まったばかりだ。きっとこれからも大事な友達が増えていくだろう。
そういう出会いは、大切にしていきたいものだな。
裏設定で箒はあの後もう一回転校する、というものがあります。そしてそこで卒業まで過ごすという。ええオリジナル設定です!
???「みんなも友達は大切にするんだぞ!じゃないと君は絶版だ……」
次回は続きです。クウガ、スナイプvsメビオ!
ではSee you Next game!