IS 〜バイクと名人とSchoolLife〜   作:無限の槍製

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第2の波乱!


第27話 紅椿 〜Genius〜

7月5日(水)PM07時30分

 

時間はあっという間に過ぎていき、現在大広間3つを繋げた大宴会場にて夕食タイムに浸っていた。

 

「うん、美味い!昼も夜も刺身がでるなんて豪勢な旅館だなぁ」

 

「そうだね。ほんと豪勢だよ」

 

そう言って頷いたのは俺の右側に座るシャル。今は全員がそうなのだが、シャルの姿は浴衣姿だ。外国の人に浴衣を着せてみると結構似合うというのは本当らしい。

ちなみにメニューは刺身と小鍋、それに山菜の和え物が二種類。それから赤だし味噌汁とお新香。ははっ、ザ・和食!不味いわけがなかった。

 

「あー、美味い。しかもこのわさび、本わさじゃないか。高校生のメシで本わさを出してくるとは……恐ろしい」

 

「ほんわさ?」

 

「ああ、シャルは知らないのか。本物のわさびをおろしたやつを本わさって言うんだ」

 

「じゃあ、学園の刺身定食のわさびって……偽わさ!?」

 

「いやいやなんだよ偽わさって。あれは練りわさ。着色したり、合成したりして見た目と色を似せてあるやつ」

 

「ふぅん。じゃあこれが本当のわさびなんだ?タイガ先生知ってた?」

 

俺の左側に座るタイガ先生に聞くシャル。因みにタイガ先生の隣は木綿季先生、山田先生、織斑先生だ。

 

「当然だろ。まあ大概のやつはその違いが分からずに食ってる奴がほとんどだ」

 

「そうなんだ。はむ」

 

「「!!??」」

 

え?今この子わさびの山食べなかった?タイガ先生も目見開いてるよ!?

 

「っ〜〜!?」

 

「だ、大丈夫か?」

 

「ら、らいひょうふ……」

 

「バカが」

 

鼻声で返事しながらも笑顔で応えようとするシャル。まあ涙目に崩されてイマイチ決まってないけどな。

 

「風味を味わえて美味いだろ」

 

「ひょ……ひょうでひゅね……」

 

意地悪なタイガ先生は悪戯な笑みを浮かべてシャルに質問する。これは後で痴話喧嘩になりそうだ。

 

それはそうと、箒とキリヤんはどこだろうか。セシリアに鈴、ラウラは隣のテーブル席に移動して食べている。というのも座敷だから食事中はみんな正座しているのだ。多国籍なIS学園というのを考慮して、正座が出来ない生徒は隣の部屋のテーブル席を利用している。

 

セシリアはキツそうだけど、ラウラは難なく正座をし続けそうだ。鈴はメンドくさいの一言ですませる奴だ。

 

(お、いたいた。隣の空席は……キリヤんか)

 

隣のテーブル席にキリヤんは行っていない。ならあそこがキリヤんの席だろう。食べるの早いな。

箒はというと、流石剣道道場の娘と言うべきか、綺麗な正座で食事をしている。浴衣姿も様になっていてまさに大和撫子だ。

 

「あ、織斑君。やっほー」

 

ふと隣の女子が俺に気づいて手を振ってくる。すると箒もこちらを一瞬見て、すぐに目をそらす。ちょっと酷くない?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

(い、いかん!今一夏を直視できる状況ではない!)

 

1人心の中で葛藤する箒。と言うのも遡ること数時間前。鈴との出来事が原因だった。

 

『一夏に告白するから』

 

『………は?』

 

『もうそろそろ、決着つけようよ。私はさっさと決着をつけたい』

 

『ちょ、ちょっと待ってくれ。いきなりそんなこと言って』

 

『あんたはどうなのよ。一夏のこと好きなんでしょ』

 

『そ、それは……』

 

『ふーん……自信ないんだ。フラれるのが怖いの?』

 

『ば、そんなわけあるか!告白ぐらいやってやるさ!』

 

『ハハッ。そうよ、箒はそうでなくっちゃ。じゃあいっそのこと同時にコクッちゃう?』

 

『ど、同時だと?』

 

『相手が知らない間に告白してオッケーもらってたら悔しいじゃない?なら同時に告白してどちらか選んでもらった方があたしは気持ちの整理もつく』

 

『そ、それもそうか。つまり恨みっこなしだな』

 

『そうよ。ま、怖かったら逃げていいけどね』

 

『ふっ、それはコッチの台詞だ』

 

など勢いで約束してしまったのだ。よくよく考えてみれば同時に告白してどちらか選ばせるのも酷い話だ。優しすぎる一夏はきっと選べないかもしれない。困らせるだろう。

 

(しかし、いずれは告白するつもりだったのだ。それが早まっただけのこと……そういえばいつ告白するのか聞いてなかった)

 

言っていたような気がするが思い出せない。仕方なく箒は食事に集中することにした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「…………」

 

浴衣からいつものアロハシャツに着替えて桐也は浜辺を歩いていた。その歩く先には2人の青年。1人は笑顔でコッチに手招きをし、もう1人は不機嫌面で桐也を見る。

 

「お前が仮面ライダーか」

 

「そういうおたくらは未確認生命体だろ?ちょくちょく視界に入ってたんだわ」

 

「なら声ぐらいかけてくれよ。俺たちと遊ぼうぜ?」

 

「そんな殺人ゲーム楽しめるかよ」

 

ゲーマドライバーを装着する桐也。それを見て1人が呟く。

 

「そうだな、ソレ欲しいな」

 

「幻夢コーポレーションに行けばもらえるんじゃない?もっとも行かせないけど」

 

「待てって。俺は仮面ライダーとは戦わない。戦うのは隣のガドルだ」

 

ガドルと呼ばれた男はその姿をカブトムシの未確認生命体に変える。それを見た桐也は本能的に後ずさりしてしまう。コイツはヤバイ。戦ったら負ける、いや殺されると。

 

「俺は未確認生命体という名ではない。ゴ・ガドル・バだ。そしてコイツが」

 

「名乗りが遅れたな。ゴ・ダグバ・バだ。よろしく」

 

「生憎あんたらと握手することは一生ない」

 

「そうか、それは残念だ。よし帰るぞガドル。今日のとこはな」

 

ダグバはその場を離れていく。ガドルもそれについて行く。桐也はただ助かったという安心感に包まれていた。流石にアレに戦いを挑むほどバカじゃない。戦闘になったら、まずは他の奴らを逃すとこからしないと。

 

桐也は緊張で汗まみれになった体を洗うべく温泉へと向かった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

7月6日(木)AM09時05分

 

合宿2日目。今日は午前中から夜まで丸一日使ってISの各装備試験運用とデータ取りに追われる。特に専用機持ちは大量の装備を持っているのだからまあ大変。

 

「ようやく集まったか。おい遅刻者」

 

「は、はい!」

 

千冬姉に呼ばれて身をすくませたのは、意外にもラウラだった。珍しいなあいつが寝坊なんて。

そして今、千冬姉にISの『コア・ネットワーク』について説明しろと問われる。まあそこはラウラ。スラスラと説明できる。俺はあと40年勉強したら覚えられると思う。

 

「流石に優秀だな。遅刻はこれで許してやろう。さて、それでは各班ごとに振り分けられた装備の試験を行うように。専用機持ちは専用パーツのテストだ」

 

はーい、と一同が返事する。因みにISのないキリヤんは先生側の手伝いだ。それにしても、昨日部屋に戻ってから一言も喋らずに布団に入ったけど……遊びに来てたみんなが心配していた。今日も今日とてあたりをキョロキョロと。

 

「ああ、篠ノ之。お前はこっちだ」

 

「?はい」

 

打鉄用の装備を運んでいた箒は千冬姉に呼ばれてそっちに向かう。

 

「お前には今日から専用「ちーーーーーちゃーーーーーん!!!」

 

ものすごい砂煙を上げながら人影が走ってくる。無茶苦茶早いな。もしアレが黒くて虫でカサカサ動く感じだったら専用機持ちが一斉に攻撃を開始しただろう。

攻撃しないのは勿論それが虫ではなく人であり、なおかつその人が、

 

「束……」

 

だということ。篠ノ之束。多分昨日のウサミミとか全部この人の仕業ナンダローナー。ウンウンゼンゼンワカラナカッタヨ。

 

「やあやあ!会いたかったよちーちゃん!さあキスしよう!愛を確かめぶへっ!?」

 

「黙れ束」

 

「相変わらず容赦ないアイアンクローだねっ!」

 

飛びかかる束さんに千冬姉のアイアンクローが炸裂。効果はいまひとつ、いや逆効果だな。しかも簡単にそれを抜け出すあの人もおかしい。

 

「やあ!」

 

「どうも……」

 

「アハハ!久しぶりだね。こうして会うのは何年ぶりかな?大っきくなったね!おっぱい!」

 

「殴りますよ?」

 

「いやーん、暴力はんたーい」

 

スキップしながら箒の攻撃をかわす束さん。あたりの女子一同は驚いている。キリヤんにいたっては物凄く嫌そうな顔をしている。なんか意外だな。束さんも美人だからキリヤんは興味あると思ったんだけど。

 

「おい束。自己紹介ぐらいしろ。生徒が困っている」

 

「えー、めんどくさいなぁ。天才の束さんだよー、はろー。はい終わり」

 

雑な挨拶だがこれが素だから何も言えない。あの人は俺と箒、千冬姉以外にはこんな雑な態度だ。いやこれは千冬姉がいるからだ。多分千冬姉がいなかったら顔すら向けないだろう。

 

「それで、何故ここに」

 

「あれ?ちーちゃんから聞いてない?ちーちゃん言ってない?」

 

「話しているときにお前が来たんだ」

 

「ほうほう、なるほどね!んじゃ箒ちゃんはまだ知らないんだ。それじゃあサプラーイズ!」

 

びしっと直上を指さす束さん。それにつられてみんなが空を見上げる。

 

「名人!避けろ!」

 

「え?……のわっ!?」

 

いきなり、いきなりである。なにやら金属の塊が砂浜に落下して来た。てか危なかったぞ!もう少しで下敷きになるとこだった。

銀色をしたそれは、次の瞬間壁がばたりと倒れてその中身を俺たちに見せる。そこにあったのは、

 

「じゃじゃーん!これぞ箒ちゃんの専用機こと『紅椿』!全スペックが現行ISを上回る束さんお手製ISだよ!」

 

真紅の装甲に身を包んだその機体。新品だからだろうか、太陽の光を反射する赤い装甲がとても眩しい。

それにしても全スペックが現行ISを上回るって言ったな。つまり最強のIS。

 

「これは、いったい?」

 

「束さんから箒ちゃんへの誕生日プレゼントだよ!まあ1日早いけど」

 

箒の誕生日は7月7日。つまり明日だ。勿論俺もプレゼントを渡すつもりなんだが……これの後ってなるとちょっと渡しづらいな。

 

「さあ!今からフィッテングとパーソナライズを始めようか。私が補佐するからすぐに終わるよ!」

 

紅椿に乗り込む箒。それを確認した束さんはコンソールを開いて指を滑らせる束さん。さらに6枚のディスプレイとキーボードを呼び出し、目配りをしていく。それと同時にキーボードも叩いて……天才か!いや天災だわ。

 

「おい名人。あの変人が箒の姉ちゃんなのか」

 

「ああ、ああ見えて箒のこと思ってるお姉さんだよ」

 

「どうだか。本当に箒のこと考えてるなら専用機なんてあげないだろ」

 

「君が箒ちゃんの何を知ってるのかな?」

 

俺たちの会話を聞いていたのか束さんが聞いてくる。その間もキーボードを叩く手を休めない。

 

「知ってるぜ?少なくともあんたが知らない箒の気持ちとかな」

 

「どういう意味?」

 

「本人に聞けば?」

 

「………ふーん。そういえば君が仮面ライダーか。どうだい?仮面で顔を隠して正義の味方になるのは?」

 

「何が言いたい」

 

「コソコソ隠れて嘘ついて、それで人生楽しい?」

 

キリヤんと束さん。一触即発だ。混ぜるな危険すぎる。なんでこの2人仲悪いんだよ。初対面だろ。

 

「はーい全行程終了!んじゃあ試運転もかねて飛んでみようか。ついでにそこの仮面ライダー君と速度勝負でもしてみたら?」

 

「………」

 

束さんの挑発にキリヤんは……あれ、ノらない?いつもなら後先考えずにノッてくるのに。今日はやけに冷静だ。

 

「あっそ。んじゃ箒ちゃん。イメージ通りに動くと思うから行ってみよー!」

 

「分かりました」

 

瞼を閉じて意識を集中させる箒。次の瞬間に紅椿はもの凄い速度で飛翔した。

 

「どう?思った以上のスピードでしょ?束さんもビックリだね!んじゃあ刀使ってみよー。右が『雨月』で左が『空裂』ね。武器特性のデータ送るよん」

 

武器データを受け取った箒は二本の刀を抜き取る。一通り理解したのかその場で色々試している。

俺の見た感じ、雨月は打突に合わせてエネルギー刃で貫く。空裂は斬撃に合わせてエネルギー刃が切り裂く。今を生きる侍の箒にピッタリの攻撃方法だ。

 

「たっ、大変です織斑先生!」

 

いきなりの山田先生の声に千冬姉は見上げるのをやめ向き直る。なんかただ事じゃない感じだな。しかも手話で会話している。

 

「なあ、分かるかラウラ?」

 

「だいたいな。そして状況が最悪なのも分かった」

 

「全員注目!現時刻よりIS学園教員は特殊任務行動へと移る。今日のテスト稼働は中止だ。各班ISを片付けて旅館に戻れ。連絡があるまで各自室内で待機すること。守れないものは身柄を拘束する!いいな!急げ!!」

 

『はっ、はい!』

 

「それと専用機持ちは全員集合しろ!織斑、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、凰!それと篠ノ之もだ」

 

箒も?確かに今さっきだが専用機持ちになった。俺がいうのもなんだが大丈夫なのか?

 

妙な胸騒ぎがする。頼むから何事もなく終わってくれよ。




鈴と箒の告白対決!?ガドルとダグバがキリヤんに接触!?そして緊急事態に専用機をもらった箒が参戦!?

千冬が酔っ払った話はまた別の機会にやりたいと思います。

それとガドルとダグバの人間体はエグゼイドのあの2人の姿をイメージしていただけたら。だから原作とは違うガドルなのだよ。

次回、一夏、キリヤん絶体絶命!?

ではSee you Next game!

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