IS 〜バイクと名人とSchoolLife〜 作:無限の槍製
今回は戦闘までは行かないんだ。本当にすまない。
7月7日(金)PM05時40分
軍用ISの暴走、未確認生命体の襲撃。これらが重なり臨海学校は中止となった。負傷した代表候補生と桐也、箒は最寄りの病院へと緊急搬送された。
雨の降る中、IS学園の屋上に私は立っていた。唯一、一夏だけはこのIS学園にいた。もっとも彼の体は動かない。箒を守るために敵の攻撃を受けてしまった。その為彼を死なせてしまった。
『私の力が及ばないばかりに……ゴメンね一夏』
でも、彼は帰ってくる。彼の中の霊石が彼を助けてくれる。ならば私は待とう。
もう一度、彼と空を翔けるために。
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「げ」
「げ、とはなんですか。げ、とは」
「いや、起きたのあたしが最後っぽいから」
病室で目を覚ましたら既にみんなは起きていた。セシリアは少し元気がなくて、シャルロットは俯いたまま。ラウラにいたっては如何にも『私は不機嫌です』と言わんばかりの顔をしている。
「強かったな……あの未確認生命体」
「うん、全然歯が立たなかった」
「しかも専用機まで壊されてしまいましたわ」
「打つ手なしか……」
自然とネガティヴオーラが病室に立ち込める。実際あいつは強かった。仮面ライダーであるクジョキリも敵わなかった相手だ。そんなの、勝てるわけがなかった。
「でもさ、あたしたちがやらないと……誰がやんのよ」
「そう……ですわね」
「うん、専用機は壊れちゃたけど」
「まだ出来ることはあるはずだ」
でもそこは代表候補生、いや元から諦めの悪かったあたしたちの意地がその場の空気を変える。まあこの程度で凹んでたら、あたしはきっと無人機戦の時にこの学園を去っている。
「でも実際出来ることって……何があるのかな?」
「それならば、君たちに頼みたいことがある」
病室に聞こえた声は男の声だった。全員が入り口を見る。そこにはスーツ姿の男性が立っていた。その男性はテレビを見ている人なら誰もが知っている有名人、檀黎斗その人だった。
「まさか、幻夢コーポレーションの社長がこんなところに来るとはな」
「私でも病室ぐらい来るさ。それにこの病院には九条君も入院してるからね」
「桐也は無事なんですか!?」
「私が来る1時間前には意識を取り戻したみたいだね。もっとも戦える状態ではないけどね」
「箒さんは、どうなのでしょうか」
「ああ、篠ノ之君なら面白いよ。意識を取り戻した瞬間に病室を抜け出そうとしたからね」
病室を抜け出そうとした!?あいつどんだけタフなのよ……でも、なんか安心したかも。箒が無事で。
「しかし彼女も負けず嫌いだね。私が必ずあいつを倒す!と意気込んでいたよ。私もその気迫に押されてね。つい『回復』のエナジーアイテムを与えてしまったよ」
「「「「はあ!?」」」」
今コイツはなんて言った?回復のエナジーアイテムを与えた?そんなことしたら猪突猛進な箒ならすぐに戦いに向かってしまう。しかもそんな便利アイテムを知ったら必ず無茶をする。だって回復出来るのだから。
「安心してくれ。まだ彼女は平静を保っていた。だから私は『絶対に勝ちたいならここに来てくれ』と彼女を先に送り出したよ」
「先に送り出した、というのは……」
「つまり、君たちもそこへ連れて行くからだ。さあ行こうか、戦って勝ちたいのなら」
迷っている暇はない。箒がそこに行ったのならあたしたちもそこに行く。当然だ。あいつ1人に抜け駆けさせてたまるかっての。
どうやら他のみんなも考えは一緒のようだ。
「そうか、ならばまずは回復しないとね」
そう言うと社長は黒いガシャットを起動させる。そして展開されるゲームエリアとエナジーアイテムのボックス。それを割ると中から回復のエナジーアイテムが現れた。
因みに、黒いガシャットの起動音は『マイティアクションX』だった。
◇
「ここって……」
社長の車で向かった先は幻夢コーポレーションだった。ここいらでも有名なゲーム会社。タドルシリーズやドレミファビートなど人気商品が多数販売されている。
「さあ、コッチだ」
エレベーターに乗せられ、地下へと下りて行く。その階数は地下5階。こんな高いビルは地下にも続いていた。どんだけよ、まったく。
地下5階はまるで秘密基地のような作りになっていた。これもゲーム会社に必要なのだろうか?いいや必要ない。第一ここは普通のゲーム会社じゃない。仮面ライダーを作っているのだ。そりゃあ地下があってもおかしくなかったか。
「さあ、これで全員揃ったな」
「あ、箒さん!………ってええ!?」
そこにいたのは箒、だけではなかった。千冬さんにタイガ先生、木綿季先生もいた。一夏とクジョキリはいなかった。
「まったく………結局全員来たのか。分かってるのか?これがどれだけの重罪なのか」
「重罪って……何をするんですか?」
「黎斗から聞いてないのか?紅椿をお前たちの専用機のデータを使って違法改造するんだ」
違法改造。ISはそれこそ国一つをぶっ潰すのに充分すぎる戦力だ。よって勝手な自己改造、つまりパッケージなどの公式の装備ではなく、まったくの別物(例えば仮面ライダーの装備など)を使っての改造は違法改造にあたる。
簡単に言えば、ラウラが国からの許可を取らずに仮面装者ジョーカーの変身能力をレーゲンに付け加える、といったものだ。
「それって、大丈夫……じゃないですよね!?」
「大丈夫さ。バレなきゃ犯罪じゃないって木綿季君も言っていたしね」
「そうそう、ってそれはアニメの台詞です!!」
「それに改造と言っても一時的なものだ。すぐに元に戻せばいい。そうしたらバレることもないだろう?」
「この犯罪者が……っても、協力する俺たちも人のことを言えないか」
なんだか凄くヤバイことに足を突っ込もうとしているあたしたち。しかしここでラウラが口を開いた。
「紅椿を改造するのは分かったが……まさか箒1人で戦わせるのか?」
それもそうだ。合体ロボみたいにISは分離とかしない。専用機は基本1人しか乗れないのだから、これでは箒が1人で戦うしかない。流石に紅椿を改造するとは言え戦闘経験が皆無な箒1人では危なすぎる。
「言うと思ったよラウラ君。でも君はそこの専用機持ち全員が戦うことを可能にする力を持っているだろう?」
「コイツらに……ガイアメモリを使わせると?」
「君のベルトなら出来るはずだが?」
ラウラは少し黙った後、部屋を出て行った。多分1人で考える時間が欲しいのだろう。ガイアメモリ……ラウラがいつも使ってるメモリのことだ。アレをあたしたちも使える?あれだけ強力な力を使えるなんて凄いわね。
「それと花家先生。貴方のゲーマドライバーを返します」
「……10年ぶり…か」
「それとこのガシャットも。まだ半分のゲームしか入っていませんが」
「あんたは相変わらず俺にプロト版を渡してくるな」
社長はタイガ先生にゲーマドライバーと普通のガシャットとは形の違う赤紫のガシャットを渡す。10年ぶりってことは10年前に仮面ライダーに変身している?
そんなタイガ先生の意外な過去が分かったところで、ようやく本題に入った。
「それではこれより紅椿の改造を始める。もう一度聞くが君たちは戦って勝ちたいかい?」
「当たり前ですわ!」
「当然じゃない!」
「もう負けたくないんだ!」
「私は……あの時何も出来なかった。もう、そんな想いはしたくない」
「どうやら、全員気持ちは揃ったみたいだね。では始めよう」
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「失礼します。キリヤん……起きてる?」
「よお本音。今日は普通に学校があるって社長さんから聞いたけど?」
病室に来たのは本音だった。何やら元気がない。どうしたのだろうか。
「ゴメンねキリヤん」
「…?突然どうしたんだよ」
「だって……あの時私がキリヤんを止めていれば……キリヤんはこんな怪我をしなかったのに」
突然の本音の謝罪に言葉がでなかった。それは本音が謝ることじゃない。ビビってたのに、心のどこかで『なんとかなる』なんて考えていた自分の甘さがこの事態を招いたんだ。本音は悪くない。
「私って……何をするにも遅くて、力がなくて。だからあの時も見送ることしかできなくて。先生に助けを求めることしかできなくて。私って……本当に役立たずで…」
「……違うだろ本音」
「……え、」
「確かに、本音はのほほんとしてる。いつも平和そうな顔をして楽しそうに過ごしてる。だからこそ自分は……俺は戦えた。本音が笑顔で待っててくれたから俺は戦えた」
そうだ、俺は本音の笑顔があったから戦えた。待っててくれたから戦えた。ベタだけど……誰かがいてくれるから戦える。
誰かが待っててくれるってこんなにも嬉しいことなんだ。
「だから本音はいつもみたいに笑顔で待っててくれ。必ず帰ってくるから」
「キリヤん………うん、待ってるよ」
本音の表情に笑顔が戻る。そうそう、女の子は笑顔じゃないと。ああ、そうだ。この際だから聞いてみよう。
「んじゃあ、一つ聞くけど、本音はレーザーとスナイプ。どっちが好き?」
「うんとね………レーザー!だってキリヤんが私とお揃いでツインテールにしてるみたいで、嬉しいから」
ああ、確かにレーザーのレベル1の頭にはハンドルが付いてる。確かにそこは本音とソックリだ。そうか、本音はレーザーが好きなのか。そうかそうか。
「それじゃあ、レーザーで頑張らないとな」
本音に『睡眠』のエナジーアイテムを投げる。すると次第にウトウトしだす本音。それから1分もしないうちに寝てしまった。相変わらず可愛い寝顔してるな。
「まったく、絶対自分が戦いに行くって分かってるだろ社長さん」
密かに机の上にエナジーアイテムを数個置いていった社長さん。確信犯だわアレ。
「さーて、ノッてくか」
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7月7日(金)PM07時50分
「調子はどう、箒?」
「悪くない……その、みんなありが「ありがとう、は戦いが終わった時までとっときなさいよ」……ああ!」
幻夢コーポレーション屋上。そこに紅椿をまとった箒とあたしたちはいた。改造された紅椿は見た目こそ変わっていないが、そのスペックは本来の紅椿を遥かに凌駕する。ほんとバケモノスペックになったわ。
「では作戦を改めて説明する。銀の福音に対して、主力は篠ノ之、そのサポートにボーデヴィッヒと凰で当たる。花家先生は浜辺で未確認生命体を抑える。これだけ聞けば簡単に聞こえるが、危険な任務だ。心して当たるように」
「「「はい!」」」
「それでは作戦、開始!」
作戦が始まった。狙いは銀の福音。可能ならあの未確認生命体もぶっ飛ばす。その為にあたしたちはもう一度海へと飛んで行く。
「行くわよ!セシリア!」『ファング!』
「行きますわよ鈴さん!」『トリガー!』
「派手に行くぞシャルロット!」『ジョーカー!』
「派手に行こう!ラウラ!」『サイクロン!』
腰につけたベルトにメモリを装填する。ラウラの部隊が開発したガイアメモリの力を引き出すベルト。名前は知らない。
『ファング!トリガー!』『サイクロン!ジョーカー!』
あたしとラウラにISとは違うアーマーが装着される。あたしには白と青色のアーマーが。ラウラには緑と黒色のアーマーがそれぞれ装着される。
それと同時にセシリアとシャルロットは意識をあたしたちに移し、地面に倒れる。あたしの中にセシリアの意識が入ってくる。まるで一つになっているみたいだ。
これこそが専用機を壊された私たち唯一の反撃の一手。
「『メモリギア・ダブルFT!』」
「『メモリギア・ダブルCJ、出るぞ!』」
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「行ったか……」
「では、貴方も行くんですね」
「その為にコイツを渡したんだろうが……ったく」
「期待していますよ」
「勝手にしてろ……第伍十戦術!」
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『ねえ、そろそろ起きて』
目を覚ますとそこは青空が広がっていた。そういや俺どうなったんだ?箒を福音の攻撃から庇って……それから記憶がない。なんかビリビリきたんだよな。
そんな青空の広がる世界に白いワンピースを着た女の子が立っている。
『貴方の友達が……それぞれ、戦いに行ってるわ』
「そうか……でもさ、俺の体動かないんだけど」
『それもそうよ。貴方は死んだのだから』
そうか死んだのか。そうかそうか……ん?俺死んだの?
『でも貴方はまだ戦える。貴方に宿った力はまだ死んでいないから』
「俺に宿った力……クウガか」
『その力は世界を滅ぼせるし、世界を救える力を持っている。それほどの力を持っているのだから、死者を復活させることも可能なのよ』
「なんか凄いな……てかそれって、俺ゾンビになるんじゃ」
『ああ、もう!めんどくさいわね!クウガの時点でバケモノになってるんだからゾンビになったって変わらないわよ!』
うわ、なんか逆ギレしてきたぞこの子。しかし考えてみればそうかもしれない。うん、理解したら理解したでなんか悲しくなってきた。
「でもまあ、決めたからな。例えみんなに嫌われても、俺はみんなを守り続けるって」
『嘘つき。ほんとは嫌われるのが怖いくせに……でもまあ、貴方の守り続けるって気持ちは、私も分かってる』
「そうか。ありがとうな。ところで君はいった『さあさあ!さっさと行くわよ!今すぐ蘇りなさい!ザ・ゾンビよ!』
「………分かったよ……変身!」
◇
やがて赤き戦士は目覚める。そして、夜空に白き流星が翔ける。
みんな負けちゃて。でも諦めが悪くて。強敵相手に再び戦いを挑む。
メモリギアは簡単に言えば仮面ライダーWです。ラウラの仮面装者みたいに『シンフォギア』の『ガングニール』をイメージしています。
次回からは、
箒、鈴(セシリア入り)、ラウラ(シャル入り)vs銀の福音。
タイガ先生、キリヤん、復活した赤き戦士vs鬼強ガドル。
こんな感じで最終決戦開始!
ではSee you Next game!