IS 〜バイクと名人とSchoolLife〜 作:無限の槍製
今回はIS学園で教師が頑張るお話です。
8月10日(木)PM02時14分
IS学園、食堂
「はーい、またあたしの勝ち!」
「これで箒さんの連敗記録が更新されましたわね」
「ぐぬぬっ……も、もう一回だ!もう一回勝負しろ!」
食堂でババ抜きをして遊ぶ箒、セシリア、鈴の3人。先ほどの戦いで箒の連敗記録が7になった。鈴は内心『7連敗してなお勝負を挑むとは……負けず嫌いにもほどがある』と思っていた。
「にしてもセシリアも強いわね。何かコツでもあるのかしら?」
「そんなことはありませんわ。ただの直感です」
「一夏みたいなことを言うなセシリアは……」
「そういえば一夏の奴、朝から見てないけど」
鈴の疑問に2人もそういえばと思う。朝早起きの箒でさえ一夏の姿を見ていない。箒が朝から出会った人といえば、ラウラに引っ張られながら連れていかれる桐也。寝不足で顔色が悪い織斑先生と山田先生。そしてこの2人。それはこの2人も同じだった。
「ひょっとして家にでも帰ってんじゃない?」
「それなら連絡の一つぐらいは寄越すはずだ。となると」
「内緒のお出かけか、それとも偶々出会わなかっただけか、ですわね」
「ま、あいつのことだから忘れた頃にひょっこり出てくるわよ」
「それもそうですわね。さあもう一度始めますわよ」
しかし箒は安心できなかった。何かと厄介ごとに巻き込まれる体質の一夏のことだ。何かトラブルに巻き込まれているのではと考えてしまう。
(やはり連絡した方が……ん?一夏からメール?)
連絡しようと携帯を開いた瞬間、一夏からメールが届く。内容は短く、簡単なものだった。
一夏『学園から離れろ。危険だ』
「学園を離れろだと?アイツは何を言っているんだ?」
「何?一夏から連絡あったの?」
「ああ、なにか変でな。学園から離れろとかなんとか」
「IS学園から離れろ、と言うことは学園に何かがあると言うことでしょうか?」
「もしくは、学園に迫っているか、ね」
(学園に何かが迫って来ている。それなら教師陣が早急に対応してくれるはずだ。しかし今のところ連絡は一つもない。つまり一夏のイタズラなのか?)
しかし鈴の予想は的中してしまう。
突如として響き渡る悲鳴。それは食堂の入り口付近から聞こえてきた。食堂に押し入る一般生徒たち。何事かと目を見開く3人。
そして最後に入ってきた生徒が急に倒れる。遠目からでも分かる。白いIS学園の制服が真っ赤に染まっていた。背中には斬られた跡。
「な、何がどうなっている!?」
「もしかして一夏の逃げろって」
「このことですの!?」
コツコツとヒールで歩く音が聞こえる。やがて音の主が現れる。白い服で身を包んだ女性。その女性の右手には血のついた刀。誰が見ても分かる。コイツが犯人だと。
女性は箒に刀を向ける。
「見つけた、紅椿」
「狙いは私か……」
紅椿を部分展開で腕アーマーと武器を装備する。鈴とセシリアも同じように装備する。
この時3人は気づいていなかった。彼女以外にもこの学園に攻め入っている奴がいることに。
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IS学園 保健室
「外が騒がしいねタイガ先生」
「どうせバカが騒いでるだけだろ」
パソコンの画面を見ながら呟くタイガ。その隣で椅子でグルグル回転するシャルロット。時々タイガが足で回転を止めながら2人の日常は進んでいく。
「バカって、一夏?それとも桐也?」
「両方だ……いや、2人とも朝早くに出て行ったな」
「確か桐也はラウラと約束があるから朝早くに出て行ったけど。一夏は見てないよ」
「異様に走るの早かったなアイツ」
「一夏って急に早くなる時があるから……って、さっきから何を見てるの?」
シャルロットがパソコンを覗き込もうとするも、タイガにデコピンされ見ることは叶わなかった。おでこを押さえるシャルロットを見てタイガは鼻で笑いながら、
「ガキが出しゃばってくんな」
と一言。少しトゲのある言い方だが、シャルロットを思っての一言だった。
(これ以上、シャルや他の生徒を巻き込むわけにはいかねぇよな)
「もぉ〜タイガ先生!少し痛かったよ」
「悪い悪い…………そうだな、気分転換に少し出かけるか」
「いいの!?やった!」
シャルロットのご機嫌取りは得意中の得意なタイガ。タイガ自身、シャルロットを怒らせた時の面倒さはよく知っているつもりだ。その影響か、シャルロットが喜ぶことが少しわかったのだ。
「さっさと準備してこい」
「はーい!」
元気よく保健室を出て行くシャルロット。ISや未確認生命体などがいなかったら、彼女はあんな辛い思いをせずに今みたいに笑って生きてこれたかもしれない。
そう考えると、フツフツとタイガの中に怒りが湧いてくる。シャルロットの母親を殺したクラゲの未確認生命体。いや未確認生命体と言うが、実際はこの前学園を襲ったアマゾンと同じ類だろう。
(山田の見解では、アマゾンは人工的に作られた細胞で形成されているらしい。そしてアマゾン細胞を研究していたのは幻夢コーポレーションの天条タカアキ。しかも今朝幻夢コーポレーションを襲撃したテロリストのボスもそいつの可能性が高い。ついてるのかついてないのか分からないな)
さっきまで見ていたパソコンの画面には黎斗から送られてきたテロリストの情報であった。何人かで対処しているが、もしかしたらタイガも呼ばれる可能性はある。その時はシャルロットになんて言い訳をすればいいのだろうか。自分から誘っておいて断るなんてタイガには難しいことだった。
「いざとなりゃ篠ノ之やオルコットを呼べばいいか…」
タイガが安心してコーヒーに手を伸ばそうとしたその時だった。タイガの戦う時が来たのは。
「きゃあああっ!!」
「!?……シャル?」
シャルロットの悲鳴が廊下から聞こえてくる。急いで廊下に出るとそこには白い服を着た男が立っていた。身長はタイガよりも少し大きい。そして足元で倒れているのはシャルロットだった。
「リヴァイヴ確保」
「テメェ……ミサキって野郎だな。幻夢コーポレーションを襲撃したテロリストの1人」
「だったらどうする?」
『ドレミファビート!』
ミサキはプロトドレミファビートを起動させる。しかし体に突き刺すよりも早く、タイガの飛び蹴りがミサキを吹っ飛ばした。その勢いでプロトドレミファビートはミサキの手から離れた。
「俺の患者に手を出したんだ……どうなるかわかってんだろうな?」
「……やれやれ」
先に動いたのはミサキ。長い足を使った蹴り技でタイガに迫る。同じように蹴り技で対抗するタイガ。しかしどちらかといえばミサキが優勢だった。
確かにタイガは戦闘なれしているが、ミサキは格闘特化の人間だった。数をこなしたタイガよりも一を極めたミサキの方が有利だったのだ。
そしてタイガの背後にはシャルロットが倒れている。いつも後ろを気にせず戦うタイガにとって、彼女を守りながらの戦いは難しいものだった。
「動きが鈍いぞ?」
「黙ってろ。こっからテメェをぶっ潰す!」
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IS学園 食堂
「くっ、パワーなら勝っているというのに」
「完全に技量の差ね……」
「悔しいですわね……」
一方食堂では、タカイに対して3人で挑んでいた。訓練をしてきた専用機持ちのセシリアと鈴に戦闘経験を積んできた箒の3人がかりでもタカイに対して有効的なダメージを与えることができていなかった。
だがそれは相手が悪かった。タカイは剣術に加え、八極拳までも極めている。それこそタイガと戦っているミサキよりも強敵なのだ。
「これが力の差よ。大人しく専用機を渡しなさい」
「だとしても!」
「アンタなんかに!」
「負けるものですか!!」
それでも立ち上がる3人。そんな彼女達を見ながらタカイはプロトガシャットを起動させる。担当していたゲーム『ギリギリチャンバラ』。そのプロトタイプ。自らを怪物に変貌させるタカイ。
「かかってきなさい。まずは紅椿をもらう」
「やってみr「食堂で暴れるな馬鹿者」
3人とタカイの間に割って入る1人の女性。黒いスーツに身を包んだ黒髪の女性。頼れる先生ナンバーワンの織斑千冬だ。
「よく考えたものだ。まさか生徒の中にスパイを送り込み、警備システムをダウンさせる。そして自分は堂々と真っ正面から入り、仕事が終わったスパイを斬り殺す。良くも悪くも仕事人だな。だが詰めが甘かったな」
「織斑先生!応急手当て終わりました!」
「悪いが軽傷で済むと思うなよ。骨の6本は覚悟してもらおう」
「戯言を!」
タカイの刀をISの装備で受け止める千冬。不敵な笑みを浮かべながらタカイを蹴り飛ばした。
「お前が相手しているのは世界最強だ。簡単に倒せると思うな!」
刀を突きつける千冬の姿は、まるで仮面ライダーと同じぐらいの頼もしさがあった。
サブタイの『A』は『アマゾン』。つまり次回やってくる。みんな何手で詰むのかな?
次回はキリヤん、ラウラ、ハルナvs?
一夏、士、ハルカvsゲンム
千冬、タイガvsタカイ、ミサキ、アマゾン
でお送りすると思われ。次回は来年です!
ではSee you Next game!