IS 〜バイクと名人とSchoolLife〜   作:無限の槍製

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夏休み編ラスト!


第51話 さようなら夏休み

8月29日(火)AM11時20分

 

雨。

 

雨が降ってる。

 

そう、雨が降ってるのだ。

 

つまりだよ?

 

「お家デート確定コースッ!!!」

 

家で1人ガッツポーズする俺。こんなの千冬姉に見られたらビルの屋上から紐なしバンジーするところだ。

 

本当なら今日、俺は箒とデートする予定だった。しかし今現在の天気は雨。こんな日は外に出る気力がわかない。仕方なくデートを中止にしようかと、箒に連絡をいれようとしたとき、

 

『雨が弱いうちにそっちに行く』

 

と箒から連絡があった。本来のデート開始の時間が午前10時半。箒の家から俺の家まで約一時間。歩いてくるなら更に時間がかかる。俺が迎えに行こうとしたが、

 

『全力で走ってる。タオルを用意して待っててくれ』

 

と連絡がきた。いやだから迎えに行くっての!

しかし箒は頑固な性格だ。最近は柔らかくなってきたがそれでもだ。こうなっては俺はタオルを用意して待つしかできない。一応風呂も用意している。そこで俺は気づく。

 

ビショビショの箒=透けて見える下着

風呂を提供=俺への好感度アップ+風呂上がりの箒

なんやかんやでいい感じになる。

イタダキマス。

 

この結論に至るまで約3秒。そして冒頭に至る。

 

人生の勝ち組になりつつある俺。しかし、そんな俺の最高の計画を邪魔するものが現れる。

 

 

「よお、名人……ぶえっくしょん!!?」

 

「キリヤんに全力で走ってもらったんだ。なんとか濡れずにすんだ。キリヤんを風呂にでも入れてやってくれ」

 

「オウ、マイ、ガッ!?」

 

最大の敵は最強の友だったか。

 

 

「いや助かったぜ名人。風呂まで用意してるなんて。しかも入浴剤まで」

 

「た、たまたまだよ。それにしてもキリヤんはどうしたんだよ?偶々箒と会ったのか?」

 

「箒が雨の中歩いてるからな。声をかけたらお前の家に行くって言うから、ついでにお前に色々伝えようと思ってな」

 

?それはデートが終わったあとでもいいんじゃないんですかねぇ?俺は心の中で呟いた。今箒は風呂に入っている。カッパ着ていたとはいえ体は冷えてるはずだと、俺が無理矢理入れたのだ。勿論お湯を入れ替えて。

 

「箒が席を外してる今のうちに言っとくぞ」

 

「もしかして、戦いの方か?」

 

「以外に何があるんだ?くだらない用事なら携帯に連絡するし、本当は新学期が始まってからでも間に合うと思ってたぐらいだぞ」

 

「間に合う?急ぎなのか?」

 

「単刀直入に言って、お前正体を知ってる奴らがいる」

 

!?声が出なかった。でも表情には出てるはずだ。俺がいつ正体がバレるようなヘマをしたんだ?いっつも周りに人がいないことを確認してから変身してるし、変身解除している。

 

「まあ心配しなくても自分たちの味方だ。今のとこは」

 

「今のとこは?」

 

「お前が人類に害をなす存在だと分かれば、どんな手を使ってもお前を殺すってさ」

 

「マジかよ…………」

 

「少なくとも暫くは大丈夫じゃないか?お前がそんなことをする奴じゃないってことを、少なくともお前の周りの人は知ってる」

 

キリヤんが机に並べられたお菓子を食べる。煎餅の噛み砕く音だけが響いている。

俺が人類に害をなす存在。そうはならない、と言い切れないのがクウガの力だ。俺にもわかる。クウガの力は日に日に強くなっている。

士さんたちと一緒に戦ったあの日。初めて金色の力を使った。そして先週、ペガサスフォームで金色の力を使った。

 

はっきり言って威力が桁違いに上がっている。根拠は爆発の範囲だ。マイティフォームの時はそれこそ工場が一つ吹っ飛んだぐらいで終わったらしい。

だがペガサスフォームの時は道路は勿論、周辺のビルの窓ガラスを全て粉々に粉砕したし、一部のビルは倒壊してるらしい。

 

勿論状況が違うから、と考えることもできる。敵がグロンギじゃないかどうか。フォームの違い。その時のキリヤんのレベル。

でも俺には、クウガの力が強大になってるとしか思えなかった。

 

「まあ、変に心配すんなよ名人」

 

「え?」

 

「さっきも言ったけど、お前は1人じゃない。自分や箒がいる。他にも頼れる奴がいる。些細なことでも相談してくれよ。少しぐらいなら力になれるかもだぜ」

 

「…………そうだな。俺にはみんながいるもんな……って、相談してくれって、それキリヤんにも言えることだぞ?」

 

「さて、なんのことかな」

 

そのままキリヤんは立ち上がり部屋を出て行こうとする。

 

「邪魔したな名人。まあ、あとは箒とイチャイチャしてな」

 

「お、おい!………ったく、また学校でな」

 

「おう、またな」

 

 

キリヤんが帰り、箒が風呂から出てきてから約一時間が経過した。ソファに2人で座って約一時間だぞ?その間何をしていたかって?風呂上がりの彼女が隣にいるんだ、緊張してお喋りどころじゃない。

 

(ヤバイ、寮にいる時はここまで緊張することなんてなかったのに!なんたってこんなに緊張するんだ!?)

 

「い、一夏!」

 

「は、はい!?」

 

「そ、その…………これからどうする?」

 

「これから…………そうだな。この雨だし、家の中で出来ることがいいけど……箒はゲームあんまりしないよな?」

 

「そうだな。最近はドラゴナイトハンターもログインしかしてない」

 

「ああ〜そういや皆んなでやったな。あれから続けてたんだな」

 

8月7日にみんなと遊んだ『ドラゴナイトハンター・ワールド』。あの日以降も続けており、最近レベルが100を超えた。でもキリヤんは200になったらしいけど。

 

「続けられるのは皆で遊べるからだ。きっと私だけならこんなに長続きしない」

 

「誰かのおかげで続けられる………そうだよな。俺も前みたいに箒と剣道が出来るのか嬉しくて、もう一度竹刀を握ったんだ」

 

まあタイタンフォームになってから本腰を入れ始めたんだけど……。

 

「そういえば一夏、お前最近竹刀は握っているのか?」

 

「握れる時は握ってるよ。あの感覚を忘れたくないからな」

 

「そうか、それならいいんだ。となれば学校が始まったらまた稽古をつけてやるぞ」

 

「頼むぜ、箒」

 

箒の頭を撫でる。触り心地のいい髪。ずっと撫でていたいでござる。

にしてもなんだかんだで会話が続いていたな。これも箒のおかげなのかな。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

8月29日(火)PM03時09分

 

IS学園

 

「何も夏休みが終わってないのに学校に来ることないだろ」

 

「だってタイガ先生に会いたかったんだもん」

 

タイガの腕に抱きついてくるシャルロット。タイガはそれを引き剥がそうとするが、シャルロットのパワーは凄まじかった。

 

先日までセキュリティー面の強化で封鎖されていたIS学園。その封鎖も新学期の始まりに合わせて昨日から解除されている。それを知ったシャルロットは急いで荷物をまとめて学校に戻ってきたのだ。

 

「あのな、俺はこれから人に会いに行くんだ。さっさと離れろ」

 

「もしかして……女の人?」

 

「違う。ただの後輩だ」

 

「後輩?学生時代の?」

 

「前の職場のな」

 

なんとかシャルロットを引き剥がし保健室を出て行くタイガ。その足はIS学園の玄関ロビーに向けられていた。

 

 

「まさかお前から来るとはなブレイブ」

 

「お前が顔を見せないからだろう無免許医」

 

玄関ロビーでタイガを待っていたのは、タイガと同じように白衣を身につけた男=鏡ヒイロだった。

 

「昔はそんな先輩に噛みつくような口調じゃなかったのにな」

 

「尊敬できない先輩だけだ」

 

「尊敬してねぇのか?」

 

「お前に対する言葉と態度がその答えだ」

 

両者一歩も譲らず、平行線をたどっていた。そして訪れる沈黙。雨が地面に叩きつけられる音だけが響く。

 

「黙ってても仕方ねぇだろ。何の用で来た」

 

「なら単刀直入に言わせてもらう。お前の体は限界だ。ガシャットを寄越せ」

 

「…………そんなことか。俺のことを長い間見てきたお前なら分かるだろ。俺がそう簡単に渡さないってことぐらい」

 

「お前が死ねば、悲しむ人がいるだろう!!助けられる人も助けられないんだぞ!」

 

「仮面ライダーの力がなかったら!!それこそ、助けられる奴を助けられない……………それに俺は、まだアイツの主治医だ。アイツが完全に俺の元を離れたら……ガシャットを返してやる」

 

これ以上は無駄と判断したのかその場を去るタイガ。その背中にヒイロはかける言葉が見つからなかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

8月29日(火)PM07時00分

 

「ハッピーバースデー!箒!!」

 

「あ、ありがとう。あれから日にちが経ってるがな」

 

「遅れてごめんな。色々バタバタしてたし………いや、言い訳は男らしくないな。すまん」

 

「謝らないでくれ。むしろ嬉しいんだ。遅れても祝ってくれる人がいることが」

 

箒にプレゼントを渡す。正直誕生日当日に紅椿をプレゼントした束さんには負けるかもしれない。

俺がプレゼントしたのはリボンだ。前使っていた奴は福音との戦いの時に燃えてしまっていたからだ。前のやつと同じなのはどうかと思ったが、どうにも他のやつを付けていると違和感が残った。やっぱり箒はこっちの方が似合う。

 

「ありがとう一夏。大事に使わせてもらう………それで、大方このリボンをつけたところを独り占めしたかった。それが夏祭りの時に渡せなかった理由か?」

 

「ええっ!?な、なんのことかなー………って、まあそれもあるけど、本命は違う」

 

「えっ、独り占めしたかったのは本当なのか…………それで本命とは?」

 

やっぱ聞いてくるよな。まあ俺がそんな風に誘導したんだ。なら覚悟を決めろ男織斑一夏!渡すなら今しかないぞ!

 

「も、もう一つ、渡すやつがあってな」

 

「う、うむ」

 

「……………………やっぱなし」

 

「はあ!?」

 

「無理無理!今の俺には無理ですー!!」

 

「あ、コラ逃げるな一夏!」

 

逃げようとする俺の服を掴む箒。しかしそれは不味かった。バランスを崩した俺たちはそのまま床に倒れこんだ。箒が俺を押し倒す形で。

 

「…………あのー、箒さん?普通逆だと思うんだけど」

 

「こ、こうなったのはお前のせいだろ…………バカ」

 

「可愛い」

 

そのまま俺と箒は一夜を過ごしたのでした。めでたしめでたし。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

9月1日(金)AM00時00分

 

しかしこの物語はまだ終わらない。

 

超古代の戦士は、己の闇と戦い、

最速のゲーマーは、自分の過去と向き合うこととなる。

 

そして紅き侍、蒼き狙撃手、赤紫の龍、橙の疾風、黒の切り札の少女たちも、史上最悪のゲームに身を投じることになる。

 

眼帯の狙撃手は守るべきものを守る為、

魔王の力を宿し勇者は全ての命を救う為、

無敵のゲーマーもまた、愛する妹を守る為、戦場に足を踏み込む。

 

 

戦いは新たなステージ『仮面ライダークロニクル』へ、続いていく。




これにて夏休み編終了なり!長かったね。無駄な話が多かった気がするけど気にしない。

さて活動報告にもちょこっと書きましたが、ちょっとの間バイク名人はお休みです。もしかしたら予定変更して書くかもしれないけど。その時はまた活動報告にてお知らせします。

次回から二学期編です。みんな大好き生徒会長の登場だよ!

ではSee you Next game!

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