IS 〜バイクと名人とSchoolLife〜 作:無限の槍製
いや長いわ!
早く元の部屋に戻らないかな〜……って何回思ったのか。多分両手両足じゃ数えきれない。
俺がこう思い始めたのは、楯無さんと過ごし始めてからだ。
9月9日(土)PM09時57分
波乱、その1
「一夏くーん、ちょっと来てー」
「なんでふか……!?」
寝る前の歯磨きをしていた俺は楯無さんに呼ばれて部屋に戻った。正直嫌な予感しかしなかった。あと、歯磨きしながら歩くのは危険だぞ。転んだら死んじゃうかもしれないからな!箒にも怒られた!
部屋に戻った俺が目にしたのは、ベッドに寝転んだ楯無さんだった。いやそれはいいんだよ。いいんだけどさ……下着姿にワイシャツっておい!
「楯無さん……パンツ見えてますよ」
「あら、一夏くんならもっと面白い反応するかと思ったのに。でも逆に新鮮かも」
「箒のほぼ毎日見てたんで………んで、どうしたんですか?」
「一夏くんマッサージ上手なんですって?私にもマッサージしてして〜」
どこで情報を手に入れたのか気になるところだ。この学校に来てからマッサージは全然してない。箒とシャルにはしたような気がする。キリヤんにもしようと思ったけど『お前にベタベタ触られるなんて絶対嫌だね!』と断られた。
「まあ、構いませんよ。けど…………」
「けど?」
ハッキリって楯無さんはスタイルがいい。服の上からでもわかる胸!腰のくびれ!形のいいお尻!
これは男性特攻宝具!世の男どもを殺してきた兵器だ!俺は今からこれに挑まなくてはいけない!
なんかヤバイ気がする。具体的には俺が。その理性とかその他諸々。
せめて下に何か穿いてください」
「下?ちゃんとパンツ穿いてるじゃない」
「ズボン的な何かを穿いてください!じゃないとマッサージしませんよ!」
「も〜分かったわよ………!パンツじゃないから恥ずかしくないわよ!」
「じゃあそれで買い物に行けるんで・す・か!?」
「…………ごめんなさい」
名称が何であれ俺がパンツに見えるものはすべてパンツです。大臣がなんと言おうとそれはパンツだ。神が言おうとそれはパンツだ。
「これならいいかしら?」
そう言ってシャツをめくって見せてきたのは、お尻のラインがくっきりと出たとてもエロいスパッツだ。当然、下着のラインも浮いている…………今度、箒に穿いてもらおう。
「あ、エロい顔」
「悪いですか!?そんなにスタイルいい楯無さんにも責任があるんですよ!」
「謎の逆ギレ!?まあ、いいわ。とりあえずマッサージよろしくね」
ベッドに寝転ぶ楯無さん。もはややるしかあるまい。覚悟を決めろ男織斑一夏!たかがマッサージだ!そんなに苦戦することも……あ、なんかいい匂いがする。箒とも他の女子とも違う、甘いのにどこか涼しげな香りが部屋を満たしていく………くそっ!第4の男性特攻宝具だと!?
「じゃあ、始めます」
早速脚から始める。ていうか脚の段階でこの柔らかさ。脂肪の柔らかさではなく、中にしっかりと筋肉を感じられる………とにかく手触りがいい。この時点で理性を保つのに必死だった。
「ねー、早くお尻〜。座ってばかりでこってるのよ〜」
大丈夫なのか俺?今お尻を触って理性を保てるのか!?
そんな時、俺の目の前に天使(の格好の俺)が現れる。
『大丈夫だ。今のお前には箒がいるだろ。箒のことを思い出せ。お前には愛する彼女がいることを!』
そんな時、俺の目の前に悪魔(の格好の俺)が現れる。
『理性?そんなもん捨てちまえ。目の前にいい尻があるんだ。触らずして男かよ!箒だって許してくれるさ』
そうだよな。大丈夫だよ。俺は天使をぶっ飛ばして、お尻に手を伸ばす。
触ってみて………とても柔らかい。そしてかなりのボリューム。
「一夏くん」
「はい」
「鼻血でてる」
「…………はい」
◇
9月11日(月)AM11時50分
波乱、その二
「それでは皆さん、中間テストはもうすぐですから頑張ってくださいね」
4時間目、一般科目が終わり、教室内はいつもと同じく騒々しくなる。この授業に関しては言語園に依存するため、クラス内には日本人しかいない。いざ黒髪ばっかりだと普通の高校みたいだ。
「今日も死んだように寝てたなキリヤん」
「やっぱ箒も気になってたか?二学期になってからずっとだぜ」
最近キリヤんは授業中寝ていることが多くなってきた。まあ一学期の頃から寝てたけど、千冬姉に怒られたら素直に起きてたのに、ここ最近は叩かれても起きなくなった。しまいには昼飯も食べずに夕方まで寝ていることもある。
「虚ちゃんとの特訓が厳しくなってきたみたいね」
「当然の如く教室に現れますね楯無さん。メニューの変更でもあったんですかね」
「うーん、多分だけどメニューの量は変わってないはずよ。変えたのは質ね。いわゆる難易度変更。虚ちゃんもそうやってレベルアップしてきたし」
レベルアップ?仮面ライダーとして戦うためのレベルアップだろうか。キリヤんもそれが重要とか言ってたな。
「まあ、彼にも休息は必要なのよ。それにこの匂いを嗅げば起きてくるわ」
そう言って俺の机に何かをドンと置いた。それは弁当……いや重箱五段だった。さらにテキパキとイスを用意する。
「楯無さんが弁当作ったんですか?」
「普段は作らないんだけどね。今日は気分がいいから作ってみたの」
気分がいいから作ったって……じゃあ気分が悪かったらどうなるんだろう。そんなことを考えている間にも楯無さんは弁当を広げていく。
「さあ、召し上がれ!」
「………………あの、楯無さん?」
「どうしたの一夏くん?」
「すいません、俺の見間違いならいいんですけど……この弁当、おにぎりと唐揚げしか入ってないんですけど?」
「………………私、得意料理が唐揚げなの。テヘ♪」
楯無さん、それは得意料理じゃなくて作れる料理と言うんです。でもまあ、いい匂いはするし美味しそうなのには変わりない。集まってきた女子達もパクパク食べている。
「……ん、なんか美味そうな匂いすんじゃん」
「お、やっとお目覚めかキリヤん。楯無さんが作ったんだってさ」
「へえ〜会長さんがねぇ。それじゃあお言葉に甘えて………お、美味いじゃん。もう一個もーらい」
キリヤんは唐揚げをひょいと口に放り込むとそのまま教室を出て行った。
「うんうん、男子2人のお墨付きの唐揚げ、これからもっと腕を上げないとね」
楯無さんは楽しそうな笑みを浮かべながらおにぎりを食べている。味はとても美味しい。更に美人生徒会長が作ったとなるとそれなりに場の空気も賑やかになる。
でも楯無さん、重箱五段全部おにぎりと唐揚げは女の子にはキツイと思うんですよ。
結局俺が一番食べました。お腹痛い。
◇
波乱、その三
シャワー中に背中を洗いに入ってくる楯無さん
波乱、その四
いつのまにか俺の布団の中で下着姿で寝ている楯無さん
波乱、その五
特訓が早く終わったと思ったら、教師のコスプレで勉強会を開始する楯無さん。そして何故かそれに巻き込まれるタイガ先生。
その他諸々………多分その九まで続くと思う…のでカット!!
9月15日(金)PM07時30分
「あ〜………」
食堂のテーブルに突っ伏している俺を、いつものメンツが苦笑いで眺めている。
今日も疲れた。主に楯無さん絡みで。普段は茶目っ気満載の人だけど、放課後の訓練はかなり厳しい。今日はISではなく、生身での特訓。普段どれだけ白式に助けられてるかよく分かった。
「一夏、お疲れ様。お茶飲む?食欲なくてもせめてこれだけでも」
「おー……サンキューシャル………」
みんな夕食を食べている。美味しそうなんだけど今の状態ではまたお皿に戻ってしまう。しかもモザイク付きで。
「あの女はまだ部屋に居座っているのか」
そう言ってきたのはラウラだった。ラウラもなんだかんだで楯無さんを警戒している。昨日はラウラと楯無さんの模擬戦を見てたんだけど、自身の専用機の槍だけであのラウラのジョーカーと互角なんてヤバすぎる。
「なんでも文化祭終わるまでいるんだってさ。まあ今日は生徒会の仕事があるから自分の部屋で寝るって言ってたけど」
「そーそー。書類がちょ〜溜まってるんだよ〜」
間延びした声が聞こえる。まあのほほんさんなんだけど。てか生徒会書記。会長手伝いなさいよ。
「私はね〜、いると仕事が増えるからね〜、邪魔にならないようにしてるのだよ〜」
「だから自分と同好会作ったんだよな〜」
そう言って俺の目の前にお茶漬けを持ってきたのはキリヤんだった。そういえばキリヤんとのほほんさんの同好会ってなんだ?聞いたことないし、活動してるってのも聞かない。
「食欲なくてもちゃんと食っとけよ。明後日は学園祭なんだからな。名人には執事としてキチンと働いてもらわないとな」
「そう言うキリヤんさんも執事では?」
「自分はホラ、列の最後尾で看板持つ係だから」
サボる気満々ですね、とセシリアが呟く。でもキリヤんのことだから看板持ちながら色んな女子に声をかけそうだ。
「あんた、ちょっと包帯の量多くなってきたんじゃないの?変に無理して体壊したらみんなからなんて言われるか分からないわよ」
「甘いなリンリン。コイツはな……」
ふと鈴がキリヤんの包帯を見て心配してきた。しかしキリヤんは怪しげな笑みを浮かべながら右腕の包帯を外していく。まさか……。
「ジャジャーン、フェイクでーす。いやまあ包帯の量が多くなるにつれて特訓も少しずつ楽になってさ、もしかしたらって包帯を余計に巻いてみたら今日は楽だったわけよ。お姉様を出し抜くにはこれくらいしないとな!」
「ほう、フェイクですか」
「そうそう、フェイクフェイク…………ふぇ?」
笑い飛ばすキリヤんの背後に虚さんが立っていた。手には缶コーヒーが握られているが、次の瞬間缶はベッコベコに潰れ、中身が溢れ出した。
「ハハハ…………もしかして、ノせられちゃった?」
「…………貴方にはコンテニューする暇すら与えない」
「あばよ、名人!」
全力で逃げ出すキリヤん。それを早歩きで追いかける虚さん。なーんか後で『廊下を走るな!』って声が聞こえてきそうだ。
「んで、なんの話してたっけ」
「一夏、疲れているなら無理に私たちに付き合わなくてもいいぞ。部屋に戻って少しでも寝ておけ」
「箒が隣で寝たら、もっと回復するんじゃない?」
「な!?こら、鈴!」
「冗談よ。でも部屋ぐらいには送って行きなさいよ。途中で倒れたら大変だもの」
「それもそうだな。一夏立てるか?」
箒に支えられながらなんとか部屋まで歩いていく。なんかみんなに心配させちまったかな…………肉体だけでも早く元気にならないとな。
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9月15日(金)PM08時10分
一夏を寝かしつけ、みんなが集まっているというシャルロット部屋へ向かう。
その途中だった。
「!?キリヤん、大丈夫か!」
廊下で倒れているキリヤんを見つけたのは。
「ん………ああ、箒か」
「もしかして虚さんにやられたのか?だとしても廊下に放置とは」
「あ………ああ、そうか。そうだったな………俺追いかけられてたな」
何やらキリヤんの様子がおかしい。よく見ると包帯の部分が赤く染まっている。もしかして傷口が開いたのか?何はともあれ早く保健室に連れて行かないと。
「立てれるかキリヤん」
「ああ、心配ご無用ってね。さあ、振り切らないとな」
「待て!フラフラじゃないか!そんな状態で走れるわけないだろう!それにお前包帯が………」
包帯の事を指摘しようとした瞬間、私は壁に叩きつけられた。キリヤんが私の胸ぐらを掴んで壁に押し付けたのだ。
「心配すんな!!……って言ってんの………自分は大丈夫だから……さ」
「キリヤん………」
「……………ごめん」
キリヤんは手を離すとフラフラした足取りで歩いていく。彼のあまりの迫力に、私はただ見ていることしかできなかった。
一夏もキリヤんもお疲れ気味。そんな時は飯食って風呂入って寝る。それでだいたい回復するはずです。僕は全然回復しないですけど。
次回はちょっと早い気がしますが学園祭です。それと別サイドの話も書けたらなって思ってます。
ではSee you Next game!