IS 〜バイクと名人とSchoolLife〜   作:無限の槍製

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ええ、ええ、お待たせしました。もしかしたら今年最後の更新です。

あ、なんだかんだ5年目になりました。桐也たちとも随分長い付き合いになりました……


第78話 落涙 〜嘘つき2人のLOVE STORY〜

11月21日(月)AM09時24分

 

温泉宿で一夜を過ごし今日は各々自由に動くことになっている。いやまあ昨日も自由っちゃあ自由だったけど。

 

「世間一般は平日で俺らも本当なら学校あるんだよな。観光客が少ねえ気がする」

 

「そこら辺は木綿季さんが手を回したとかなんとか聞いてるけど」

 

「ま、どの道あんなドンパチがあったんだ。辺りの学校はしばらく休校だろうな」

 

現在温泉宿のロビーで俺とキリヤんがマッサージチェアに座っている。他のみんなはまだ準備とかしているらしい。

 

「休校ってなったら勉強大変だよなー」

 

「俺らはまだマシだろ。これが一年前とか二年後だったら結構面倒だぞ」

 

「あー、受験かー」

 

いたって真面目な話をしているのだがマッサージチェアの振動で声が震える。脳も震える。

 

「そういやキリヤんは将来の進路決めてるのか?」

 

「あ?あー……決めてねぇ」

 

「まだパッと思い浮かばないよな」

 

「いや候補は幾つかある」

 

「え"?」

 

思わず汚い声が出た。キリヤんは割とその場の空気とかそういうのに身を任せるタイプだと勝手に思っていた。だから適当に大学に行ってそこで決めるとかいうのかと思ったけど。

 

「とりあえず適当に大学に行くってのが候補一だ」

 

「……」

 

「なんだよその目」

 

「あ、いや…まあ、その……お前らしいなって」

 

予想的中。いやこんなところで予想的中しても困るな。

 

「あとは……お、本音来た」

 

「おまたせ〜」

 

「え、話終わり!?嘘だろ言ってけよ!」

 

「秘密の一つや二つあった方が面白いだろ?じゃーなー」

 

キリヤんはマッサージチェアから離れるとのほほんさんと一緒に温泉宿を出て行った。1人マッサージチェアで揺れる俺はキリヤんの進路が気になり、箒に頬をペチペチされるまで考え込んでいた。

 

◇ーーーーー◇

 

「さーて、とりあえず何処行くかな」

 

「キリヤんと一緒なら何処でも楽しめるよ〜」

 

「そう言ってもらえるのが嬉しい反面、考える側としては悩みどころなんだぞー」

 

本音のほっぺを突く。えへへと笑う本音は今日も天使でございます。

 

「とりあえず走るか。しっかり掴まれよ」

 

俺はレーザーレベル2になり本音を乗せて走り出す。もう少し時間が経てば本音と2ケツ出来るんだけどな。免許取って時間が経ってないからそういうことが出来ない。

 

「わぁぁ〜風が気持ちぃ〜」

 

「あんまり大口開いて舌噛むなよー」

 

「は〜い」

 

本音を乗せたまま、とりあえず俺は清水寺へと向かった。

 

 

人目を避けて清水寺の裏手で変身を解除した……んだけど、人が少ない。

平日なのもあるんだろうし、ここは裏手だから少ないのは普通なのかもしれないが……

 

「これ間違えて変な所入ったか?」

 

「誰もいないね〜」

 

そう言いながら敷地を少し歩いてみる。確かにここは清水寺だ。間違えたわけじゃない。でもこの人の少なさはちょっとなぁ。

そう思いながらズカズカ歩いていくと、1人の女性が血相を変えてこっちにやってきた。

 

「ちょっとあなたたち!?何処から入ってきたのよ、今は映画の撮影中よ!?」

 

「あ?あー、そーなんだー。ハハーすんません。そんじゃお邪魔しまし…」

 

「ちょっとま!!貴方……よく見るといい顔してるじゃない!いいわ、丁度エキストラ役がもう少し欲しかったの。貴方映画撮影に参加してちょうだい」

 

いかにも私仕事出来ますーな感じの女性。歳は20くらいか?木綿季さんより若く見えるぜ。

 

「さ!行くわよ行くわよ!」

 

「あぇ!?いやちょままはこっちの台詞なんだけど!?」

 

まさかここに来てこんなに引っ張られるとは。しかもこの人冷え症かよ手冷た!!

そんでもって本音は面白そうに笑ってるし。いやこれ笑い事じゃないって!

 

で、連れてこられた場所は緊張感漂う映画撮影現場だった。

 

「エキストラ連れてきましたー!」

 

映画監督らしき人の元へ連れて行かれる。正直帰りたい。俺は映画撮影に来たんじゃなくてデートしに来たってのに。

ここは適当に切り返してここから出ていくしかないか。

 

「あー、ども。なんか連れてこられました」

 

「……ウーム…」

 

「なんか唸ってますけど…」

 

「監督!」

 

「よし!主役変更!君に決めた!ヒロインはそっちの君ね!」

 

「は?」「ほえ?」

 

この青いメッシュの監督は頭がおかしいのだろうか。いやいや普通の高校生カップルをいきなり映画撮影現場に連れてきて主役とヒロインにするかね普通!?

 

しかも監督の一声でその場のスタッフ達も色めきに立つ。なんで?ねぇなんで?

 

「君!8月に@クルーズで強盗を撃退した子だよね!やっぱり!その頃から撮影は少しずつしてたんだけどさ!君のカッコ良さが忘れなくてね!是非君に主役をやってもらいたい!さあ、映画撮影を楽しみな!」

 

「頭おかしいんか?」

 

「脚本、30分で直す!スタイリスト、準備!ライト、控えめで!音響、マイクの調整!あとは各自即対応出来るようにしろ!」

 

「頭おかしいんかぁ!?」

 

叫ぶ俺とポカーンとしている本音はあっという間にロケバスへと連れて行かれた。日本の芸能界の行く末が心配である。

 

「それじゃあ服装決めちゃいましょうか!なんだかアロハは様になってるから髪型の方を変えましょう♪」

 

「あ、結構です…結構ですって!!ちょっと!?」

 

「あらぁ、いい肌してるじゃなぁい。そっちの子は彼女さん?あの子もいい体してるじゃなぁい。私の方がおっぱい大きいけど……私の方が!おっぱい大きいけど!!」

 

「うるせぇ!!」

 

耳元で叫ばないで欲しい。いやほんとに。

 

「貴女も素材がいいんだからオシャレしなさいよぉ?こんなダボダボな服着てもぉ!」

 

「えぇ〜?動きやすいんだけどなぁ〜」

 

「そぉ?なら似たような服探すけどぉ。彼氏さんの前くらいもっとオシャレな服着てあげなさいよぉ?」

 

プリプリクネクネ動くこのオネエ。正直仮面ライダーになっても勝てる気がしなかった。

 

 

「さあ、これでゲームオーバーだ」

 

「諦めて俺たちの元に来るんだな!」

 

場所は清水の舞台。オシャレにメイクされた本音は黒スーツのライフル持ちと上半身裸のムキムキ男に追い詰められていた。

 

「待ちな」

 

「何もんだテメェ!!」

 

ここでいい感じのBGMが流れる。そして結局スーツに着替えた俺が姿を現す。

 

「女に手を出すなんて…男としてどうなんだい?」

 

「うるせぇ!なんならテメェからぶっ飛ばしてやるぜ!」

 

「ゲームスタート」

 

ライフルを発砲する。勿論弾なんて出てないが俺はいかにも回避しているように横へと跳ぶ。

 

「はっ、いい風が吹いてきたぜ!」

 

ライフル持ちに急接近しライフルを蹴り上げる。男はすぐにライフルを手放しナイフ(勿論切れない)で攻撃してくる。それを避けながら回し蹴り(当たるギリギリ)で男を撃退する。

 

「やるじゃねぇか小僧……コァァァァッ!」

 

「アアァン?…ホオァァァ!……いくぜ、マッチョメェン」

 

マッチョメンが鉄の棒を振り回す。それを受け止めるが吹っ飛ばされて柱にぶつかってしまう。続け様に棒を突き出してくるのを避け、蹴りでマッチョメンを吹っ飛ばす。

 

「勝負だ」

 

「いいぜ……オラァ!!」

 

「うおっりゃあぁぁ!!!」

 

俺とマッチョメンの拳が繰り出されたのは同時。つまりクロスカウンターだ。そして俺の拳は見事マッチョメンに炸裂、マッチョメンはその場に倒れた。

 

俺は本音に駆け寄る。

 

「お待たせ、愛しの君よ」

 

「ああ、私の愛しい人。風となって迎えに来てくれたのね…」

 

「少しばかり強い風になっちまったが……飛ばされないように気をつけな」

 

俺は本音を抱えて清水の舞台から飛び降りた。そしてすぐにホルダーのステージセレクトを発動させこの場所からワーフする。

 

逃げられたぁ!なんて言葉も少しだけ聞こえたけど、まあ、勝手に参加させられたんだ。勝手に帰ってもいいだろ。

 

 

◇ーーーーー◇

 

 

「ったく、散々な目にあったぜ」

 

「私は楽しかったよ〜?」

 

「もう夜だぜ?まったく……」

 

ここは街を見下ろせる丘の上。時刻は既に夜7時をまわっていた。

ベンチに腰を下ろす私と桐也。桐也はとても疲れた顔をしている。確かに撮影は大変だったけど私は楽しかった。

 

「……綺麗だな…」

 

「そうだね……」

 

少しの沈黙が流れる。とても静かで優しい時間。桐也が隣にいてくれるだけで私は嬉しかった。

 

「本音」

 

「なぁに?」

 

「本音はさ、いっぱいいっぱい頑張ってるんだよな。でもさ、もっと俺たちに頼っていいんだぞ」

 

完全な不意打ち。そして桐也は私を抱きしめて頭を撫でてくれた。

 

「辛いときは、みんなに任せればいい。みんな、みんな、本音の味方なんだ」

 

その言葉を聞いて、不意に涙が溢れてしまった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私、布仏本音は名前に似合わず嘘つきだ。

 

私が私を偽り出したのは中学の頃から。この頃から私は更織家の従者として仕え、暗部の一員としても動いていた。そして必然的に本当の布仏本音を隠していた。偽っていた。

 

それは高校に入っても変わることはないだろうと思った。おっちょこちょいな本音を演じるのが普通になる。これからもそれを続けるのだと思った。

 

そしてあの日、私は桐也と出会った。

 

「同室の九条桐也、よろぴ」

 

彼と同室なのと最初にこんな挨拶された時は正直戸惑った。でも彼が仮面ライダーに変身したと知らされて、なるほどと思った。私は監視役なのだと。

 

いつも毎日を楽しそうに過ごす桐也と一緒にいて、私は徐々に楽しくなっていった。監視役として同室になったはずなのに、いつの間にか彼と離れたくないと感じていた。そう感じるのは初めてだった。

嘘つきなのに正直者な彼と一緒にいて、私は私を偽るのがバカみたいだと思い始めた。彼の前ぐらい素直になろう。甘えよう。そばにいようと。

 

そんな時、私は忘れていた記憶を取り戻した。その記憶自体は些細なことだった。でもこうして記憶を取り戻したということは、ゲーマドライバーを使用する条件は揃ったということ。

 

私はプロトマイティアクションを使い黒いエグゼイドになった。お姉ちゃんと同じエグゼイドになれたのは嬉しかった。でも桐也には教えれなかった。絶対反対すると思ったから。私はまた嘘をついた。

 

それでも彼を助けたかった。だから桐也の為に新しいガシャットを作ったし、ドクターマイティだって本当はヒイロさんに渡す予定だったのを桐也に渡した……こればっかりは結果オーライってやつなのかな。

 

そして戦いは今最終局面へ突入した。もう終わろうとしている。ここまで来たら最後まで嘘を貫こう、彼に知られることなく終わらせよう、そう思っていた。そう思っていたのに……

 

 

「ううっ……ああっ………っ…」

 

涙が止まらなかった。溢れ出したものはどうやっても止められなかった。

 

久しぶりだった。こんなに涙を流したのは。今も桐也は優しく頭を撫でてくれる。

 

撫でてくれている間は、右手の怪我も痛くなかった。

 

◇ーーーーー◇

 

本音は目を擦りながら顔を上げた。目の周りは少し赤くなってるし涙の跡も残っている。それでも彼女の笑顔はとても綺麗だった。

 

「そろそろ帰ろっか。今日は久しぶりに遊べたから楽しかったよ桐也。それに久しぶりに泣いた気がする。ありがとね」

 

「そっか………お嬢様のご期待に添えて光栄ですよ。じゃあ戻る前に一つだけ」

 

俺は私の前に立ち手を差し伸べた。このデートの最後、俺はこうすることを決めていた。

 

「布仏本音さん。俺と付き合ってくれませんか」

 

実のところ、俺は本音に告白したことはない。ぶっちゃけ最初の頃なんて俺と本音は付き合ってすらいなかった。ただの仲のいい友達。だけどいつの間にか付き合ってるって噂が流れ始めて。

 

でも、それもお互いに満更じゃなかった。そんな関係もいいなって思ってた。

 

そして今、俺の気持ちは『それもいいな』じゃなくて『それじゃないと嫌だ』になっていた。

 

「………急にどうしたの?」

 

「ちゃんと言葉にして伝えたかったんだ。こういうのも大事だって思ったわけよ」

 

「フフッ……いつもはめんどくさがり屋で頑張るのが嫌いだーって言ってるのに、頑張り屋さんで努力家で………嘘つきだよね本当に」

 

「ま、嘘つきなのはお互い様じゃない?」

 

「そうかもね」

 

「それで、返事貰えるかな?」

 

「そんなの、決まってるよ」

 

本音は俺の手を握り、そのまま唇を重ねた。

 

「よろしくお願いします、九条桐也さん」

 

彼女が見せた笑顔は嘘偽りのない、今までの中で1番のとびっきりの笑顔だった。

 

 

 

 

 

◇ーーーーー◇

 

 

 

 

 

 

11月22日(火)AM09時16分

 

「忘れ物ないか確認しろよー」

 

桐也がみんなに声をかける。俺も荷物は確認したし大丈夫だ。

今日で俺たちは東京に戻る。息抜きはコレで終わり。今度こそ決着をつける。

 

「キリヤん、電話が鳴っているぞ?」

 

「え?うわぁー先輩からだ……あい桐也ですよー………は?マジで言ってんの?」

 

桐也の声色が変わる。付き合いが長いからなんとなく分かる。コレは悪い知らせだ。

 

「分かったすぐに戻る……」

 

「どうしたキリヤん」

 

「………篠ノ之束が動き出した」

 

◇ーーーーー◇

 

「そーらーをじゆうにーとーびたーいなー。はい、何が必要かな?」

 

束が呼びかけるが応答はない。当然だ。ここにあるのは燃え盛る護送車と肉塊ばかり。人間だったもの。人の原型を留めているものは何一つなかった。

 

「うーん、こんな役に立たないならもっと早くゴミに出しちゃえばよかった。亡国企業、なんでこんなのと契約しちゃったんだろ」

 

オータムだったものを踏みつけながら束は首を傾げる。最早人の所業ではなく、怪物の気まぐれに過ぎなかった。

 

「まーいいや!みんなそろそろコッチに帰ってくるだろうし、始めちゃお!」

 

『仮面ライダークロニクル』

 

束はクロノスに変身する。しかしその姿は緑色のクロノスではなく、ゲンムを彷彿とさせる色をしていた。

 

「やっと見つけたぞ束」

 

「おお?これはこれは珍しいねちーちゃん」

 

クロノスの前に立ち塞がったのは織斑千冬。腰にはゲーマドライバーを装着していた。

 

「お前のことだろうからそろそろ動くとは思っていた。誰もいない時を狙うんじゃない。少しでもギャラリーが多い時、お前はそういう時を狙う」

 

「ありゃりゃ〜流石ちーちゃんだね。篠ノ之束のことをよく理解している」

 

「いつもドキドキハラハラする展開が好きだろう束。白騎士の時ももっと他に手はあっただろうに、デモンストレーションでミサイルを飛ばすなんて考えるか普通?普通考えないことをやるのがお前なんだよ」

 

千冬はポケットから2つのガシャットを取り出す。1つはドレミファビート。もう1つはピンク色のガシャット、ときめきクライシスだ。

 

「どうせお前のことだ。宝生エムもお前が変装してたんだろう?敵の懐でウロチョロして引っ掻き回して、笑いを堪える気持ちはどうだった?」

 

「ああ、最高だったね。よもやここまで気づかないものなのかーってね。でも彼処にいたから今の私がある……神に戻れたんだよ」

 

「神?ハッ、どの口が言う。細菌如きが神を名乗るなんて二万年以上早いぞ」

 

『ときめきクライシス!』『ドレミファビート!』

 

千冬はゲーマドライバーにときめきクライシスとドレミファビートを装填しレバーを開く。

 

『背伸びしたいけど〜♪ちょっぴり照れるわ♪ときめきクライシ〜ス♪』

『アガッチャ!ド・ド・ドレミファ・ソ・ラ・シ・ド!OKドレミファビート!』

 

千冬の姿は仮面ライダーポッピー ビートクライシスゲーマーへと変わった。そしてガシャコンソードを突きつけ束に言い放つ。

 

「私の親友を返してもらうぞ病原菌」

 

「面白い、さぁ最後のゲームの始まりだよ」

 

束….否、ゲンムの仕掛ける最後のゲームが幕を上げた。

 




始まる最後のゲーム。それぞれのライダーと代表候補生がラスボスの野望を砕くため動き出す。

see you next game!
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