九尾事件から三年。
木の葉隠れは二代目火影が雲の金銀兄弟に殺されてから長年敵対してきた雲隠れと同盟条約を結んだ。
ある日、白眼を有する日向一族の娘が誘拐されかけ、その父親によって犯人が殺害されるという事件が起きた。
そしてその犯人は同盟締結にやってきた雲隠れの
雲隠れは誘拐事件について否定し、自国の忍が殺されたことをいい事にあろうことかその父親、日向一族の頭首である日向ヒアシの死体を求めてきた。
あまりに理不尽な要求に雲と木の葉の関係は悪化し、もはや戦争寸前だった。
そんな中、過激派の代表格 志村ダンゾウは全く動きを見せず、それが逆に恐ろしく感じた三代目火影は先代頭首と相談し、影武者を送ることで穏便に済ませようとした。
「お…お前には…ネジだっている。
…何故、宗家の為に……死を選ぶ」
「それは違います」
「「「!」」」
「私は…宗家を恨んできました。正直、今でも憎い。
だからこそ…アナタを宗家としてではなく、私の兄として守って死にたいのです。
……そうする事が私にとって初めての、選ぶ事が出来る自由なのです」
周りの者たちすら日向ヒザシの悲しすぎる独白に息を飲む。
そうして日向ヒザシがクナイで自刃しようとしたその時、
「それは少し待ってもらおうか」
「ダンゾウ!何故ここに!?」
ドアの前に包帯で左眼を隠した男、志村ダンゾウがキツネの面を付けた暗部と共に現れる。
三代目火影の質問を無視し、ダンゾウは周囲の者たちに語りかける。
「二代目を殺され、日向の姫を攫われかけ、その上日向の頭首まで売り渡す。
諸君らに問いたい。
そのままで良いのか?他里の者が同じ手を使った時、友や親、兄弟を犠牲にできるのか?
私は今、木の葉の結束が試されているのだと思う。たしかに影武者を送れば一時は凌げるだろう。だが、雲以外の里には木の葉は戦争を恐れて仲間、そして機密を売ったと思われる事になる。さらに日向の一部の者の信を失う事にもなるであろう。
故に問う。それで良いのか?」
木の葉の者たちは一様に顔を伏せる。
そんな中、三代目火影は苦々しげに問う。
「……どうしろと言うのじゃ?」
「ひとまず死んだ忍頭の死体を送り返す。
ワシに任せろ。全て上手くいく」
意を唱える者はいなかった。
そうして忍頭の死体は雲隠れに送還された。
「ん?なんだこの穴は……」
「はぁ?気のせいだろ?」
「えっ、そうかな?」
そう言って再び死体を調べ始める男。
男に尋ねられたそいつは波紋の紋様の眼を紫に光らせながらその背中に向けて黒い棒を突き刺す。
ザシュッ
「ガァッ!」
「二尾。女、二位ユギト。
八尾。男、キラービー、牛の角の刺青とサングラス。
……情報が少ないな。おい、起きろ」
そいつがそう言うと黒い棒を刺され、息絶えたはずの男は瞳を紫に光らせながら起き上がる。
「これで人間道と地獄道が揃った」
「雷影様ですか?
私は木の葉からの使者の志村シンスケと申します。
忍頭の件なのですが……少々反対をする者が多くてですね。何とか賠償で済ませられないかと交渉に参りました。
今お話よろしいですか?」
木の葉の使者と名乗ったその男は、慇懃無礼にそう言ってお辞儀した。
「賠償だと〜ッ!命が金で買えるなどと言うつもりか!
認めんッ!同盟国の使者を殺したのだ!下手人くらいは差し出すのが筋であろうがッッ!!!」
グッシャァッ
四代目雷影が机を破壊しながら怒鳴りつける。
彼は苛立っていた。
部下の独断専行によって同盟した木の葉との間に亀裂が入り、こちらの非を認めれば雲隠れは内部分裂を起こす可能性すらあり、忍頭を殺した事で木の葉を責めれば今度は戦争寸前。
もはや引くに引けぬ彼は、相手に妥協されても尚引くわけにはいかなかった。
しかし、木の葉からの使者は笑っている。
まるでこちらの腹の内などお見通しだと言わんばかりに。
「ですよねー。あ、ところで雷影様」
「……なんだ?」
「もちろんそちらの人間が木の葉の者を殺したら下手人は差し出すんですよね?」
「なッッ!!?」
(こいつ、それを狙って!?
だから護衛がいなかったのか……!)
「ダルイ!こいつを見張っておけ!
シー、サムイ、アツイはワシに続け!」
ドガァッ
雷影が壁を破壊して飛び降り、三人の側近がそれに続く。
それを横目に見て
「いやー、良いソファーですね。
お宅もいかがです?」
「……あんた、こんな事やってタダで済むと思ってんのか?」
「えっ、私何かしましたか!失礼があったのなら謝りますが!」
「テメェ……!」
志村シンスケのおちょくるような態度に雷影ほど短気ではないダルイも怒りを露わにする。
突然、シンスケは真面目な顔になる。
「まぁ、それは置いといて。
兄弟を失う痛みを味わわせようと思うのはおかしな事か?」
「っ!」
(狙いはビーか!襲撃者とビー、どちらが死んでもビーは道連れ。……八尾狙いの報復か、二代目火影並みの合理的な策略だ。……クソッ!)
吐き捨てながらダルイは部屋を出て一人の女を呼び止める。
「そこのお前!連絡班の忍だな?雷影様に伝えろ。
狙いはビー、どっちも死なせるな!と」
「!?……了解です」
見張りがいなくなり、ソファーの上で印を組むシンスケ。
「まだ若いな。
まぁ、絶対にオレほどではないだろうが」
ーー象転の術!
雲隠れの保有する八尾。
牛の見た目とタコのような尻尾を持つ尾獣であり、九尾の次に強いと言われている。
そしてその人柱力であるキラービーは八尾を手懐け、完全に制御出来る事から最強の人柱力と名高い。
「だからこそ試したくもある、か。我ながら随分感情豊かになった者だ」
湖のほとりで踊っていたキラービーの前に現れるハフリ。
(俺が気づかなかった。このガキ何者?)
「お前の力、見せてくれ。あまり時間はない」
キンッ
眼を輪廻眼に変えるハフリ。
(気をつけろビー!ありゃ、輪廻眼。六道の爺と同じ眼だ!)
「リンネガン?キモい眼だな」
「はは、失礼なヤツだ」
ーー万象天引
強い引力でハフリの元に引き寄せられるキラービー。
即座に背中の八本の刀の一つを抜いて斬りかかる。
「修羅道」
ハフリは腕を機械化し、左手で刀を掴み、右手で顔に向けてレーザーを撃とうとする。
(八つぁん、コイツはヤベェ!)
(そうだな)
「てなわけでバージョン2!フュージョンミー!
ウイイイイッッ!!!」
キラービーの身体が八尾の濃いチャクラで覆われていく。
(野原リンのチャクラの衣の進化系か?)
「オラッ!」
「クッ」
右腕を殴りつけられ、レーザーはあらぬ方向へ飛んでいく。
ーー鳳遁チャクラモード
ドロッ
圧倒的な熱で掴んでいた刀は融解し、キラービーの身体を焦がしていく。
「あっつゥウウウウ!!!」
ーー
ーー神羅天征
キラービーの頭突きとハフリの斥力が激突する。
そして、
ガッ
「オッシャ!」
「グッ、神羅天征を貫通するとは……。
まだ甘く見ていたようだが、その分のチャクラは頂いた」
言われて見てみるとキラービーの纏っていたチャクラは薄まり、野原リンの纏っていたチャクラの衣と同じになっていた。
(……アレ?)
(間抜け!頭突きした時にチャクラ吸われたんだよ!ヤツには直接触んねー方がいい)
「そして時間切れだ、お前のな」
ガシッ
「グッ」
背後からやって来た男に羽交い締めにされるキラービー。
「よくやった地獄道。
やれ、人間道。オレが止めてやる」
ーー幻術 無限回廊
突如キラービーの身体から力が抜ける。
そして人間道と呼ばれた男がキラービーの腹に触れる。
八尾の人柱力、キラービー。
彼は現在、古びた洋館の無限に続く廊下を走っていた。
「何処だここはよう♪
八つぁん、こっから出せ早う♪」
(……!ヤベェ、すぐ攻撃しろビー)
「よし、これで八尾は」
ーー
ドッッ
「ゴッハァアアッッ!!?」
突如意識を取り戻したキラービーはハフリの胸部にラリアットをくらわせる。
それによってハフリは胸部の肉、骨、内臓が弾け飛び、そのまま木に叩きつけられる。
(そうか、尾獣による幻術無効を忘れていたな。
ーーだが、計画通りだ)
内臓を失い、骨を粉砕されて尚ハフリは笑う。
同時に人間道、地獄道と呼ばれた者たちは煙を立てて消える。
「今のは……?」
(逆口寄せだ。負けも織り込み済みとは周到な野郎だぜ。
ん?誰か来るぞ)
「ビー、無事か!心配したぞ!」
やって来たのは雷影と側近三人。
皆キラービーの姿にホッとしたようであり、雷影に至っては涙すら流している。
「何かあったか、ブラザー?オレは楽勝だったぜ♪」
(嘘つけ。俺がいなかったらヤバかったろ)
(それも含めてオレの実力♪)
「そうだ!ビー、相手はどうした!?」
「あっち」
指差した方向には胸部が血まみれの男。
しかし、
「誰だコイツ?」
その姿はハフリではなかった。
「コイツは……!」
「知ってるのかサムイ?」
「この頰の刺青、間違いありません。
大蛇丸と共にダンゾウの両腕と呼ばれた油女一族の秘伝忍術の使い手、油女シクロです!」
「……なるほど、ダンゾウか。ヤツならやりかねんな」
「しかし……大蛇丸がいない今、最も信用しているシクロをこんな風に使い捨てにするでしょうか?」
「ふん、最も信用しているからこの任務を任せたかもしれん。失敗したがな」
「いえ、成功したようです」
シーが雷影の言葉を否定する。
「どういう事だシー?」
「生きていれば治療は無理でも延命して木の葉を責めれますが、すでに死んでます」
「何ッ!?」
「「「!」」」
雷影、ビー、サムイ、アツイが驚愕する。
シクロの方を見ると、叩きつけられた木の尖った部分に血が付いている。
どうやら
「……不味いな」
「すまねえブラザー」
雷影の執務室のソファーで寝たフリをしていたオレは目を開ける。
よし、計画通り。
これで雲に責任を負わせられる。
全くもって上出来だ。
伯父上に心酔していたシクロを消し、その罪を雲に擦りつけ、八尾の魂を手に入れ、
ーー雲にスパイを仕込めた。
その後、雲隠れは多額の賠償金と日向ヒアシの身柄を引き換えにキラービーの引き渡しを拒否した。
結果、雲隠れの者たちの不満はキラービーにぶつけられる事になり、同じ人柱力である二位ユギトの扱いも雑になった。
「ガァアアアア!!!」
「ガハッ!」
かつて地獄道と呼ばれていた男が尾を二本持つ怪物に引き裂かれる。
彼の近くには大勢の忍が倒れていて、その中には人間道と呼ばれていた男も倒れていた。
「ふ…ふふ、こ…こ…まで」
「ーー上手くいくとはな」
志村ハフリは笑う。
困惑する二尾と八尾の前で。
時系列が同じ物を一つにまとめました。
驚いた方はすいません。