『羽瀬川小鷹』視点。
友情破壊ゲーム
夏も近づくこの季節、来週には七月に入る。
次第に気温も熱くなり始め、生徒達は夏服で登校する日が増えてきた。
俺がこの学校にやって来てから約二ヶ月。そしてあの女と出会い部活を作ってから約一ヶ月。
中学から高校一年まで友達もろくにおらず時の流れなど意識してはいなかったが、この学校に来てからはとても速く感じる。
それだけ、自身に訪れた変化が大きかったということか。
俺の所属している部活は、隣人部という。
その部活が掲げる理念は、友達作りだ。
友達作り。そんなもん勝手に作ればええやんとか思う人は多々いるだろうが、俺からすればかなり難しい課題なんだ。
なんせ俺の顔は自他共に認める凶悪面。性格は聖人にも等しいくらいできた人間だと自負しているが、人というのは外見から入って全てを決めるものらしい。
ので、俺は外見でまず近寄りたくないと思われた。関わったら命に関わると思われた。よって友達作りたくても動くに動けなかった。
動けなかったが、そこで動かなければ変化など起きないから必死に動いた。だが結果は実らなかった。
そんな時、俺と同じく友達が少ない黒髪の美少女、三日月夜空と結託してこの部活を作ったわけだ。
最も、俺とその夜空は大した仲良くない。むしろ互いに嫌悪しあっている仲だ。
外見が悪くて中身が良い俺と、外見が良くて中身が悪いあいつ。己の理想や考えが全く合ったことがない。
相性でいえば最悪に近い。きっと俺と夜空は一生かけても友達にはなれないだろうな。
だがそれでも共通する想いを果たすために、互いに手を取り合っている。
この先、本当に信じられる友達を見つけるために……。
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そんな本日、ようやく隣人部にとって部活らしい部活が行われそうな雰囲気だった。
今までは部員をそろえるため、部員の勧誘や部活の方針を決めてばかりいた。
小さな努力の積み重ねだったが、ようやく部員が揃ってきたのだ。
俺、羽瀬川小鷹と部長である三日月夜空。そして、最近知ったんだが、この学園が誇る超VIP待遇の天才少女、"志熊理科"。
最初は保健室登校などの話で可哀そうな子かと思ったが、そんなことはなくむしろ恵まれた環境を置かれたなんか羨ましい少女だった。
そんな恵まれた彼女がどうしてこの部活に入ったかはわからない。夜空に騙されたという可能性を考慮することはできるが、頭のいい理科が夜空の言葉だけでこんな部活に入るとは思えない。
もう一人、貴重な男子部員である楠幸村。
中性的な美少年であり、俺みたいな凶悪面とは打って変って愛されるプリティフェイスだ。
だが本人自体が気弱で女の子扱いされるのを拒み、友達が少ないというのが現状とのこと。
こいつもこいつなりに、きちんとした理由があるようだ。
中等部からは、俺の実の妹である羽瀬川小鳩。
俺とは似ても似つかない程の超絶美少女だが、痛々しいキャラが祟って友達は少ない。
せっかくなんだし、お前もこの部活で学ぶことを学び友達を作ってもらいたいところだ。兄としては。
後はなんかケイト先生の妹がこの部室でお昼寝をしているとのことだが、今日は来ていない。
そんなこんなで五人とおまけ一人の合計六人。
その内の五人で、今日行う活動が部長から発表される。
「それでは諸君、せっかくなので部活を始めようと思う」
最初からせっかくなのではおかしいと思うが、何か言うと睨まれるので俺は黙っていた。
「それでな、友達を作るためにはどうすればいいか……。考えた結果、やっぱりゲームだと思うのだ」
そう唐突に夜空が提案した。
いたって単純な思考だった。一緒にゲームをして仲良くなろうということだ。
「夜空先輩。そんな小学生のレクの授業みたいなことをわざわざ大げさにやるんですかぁ? なんかむず痒いんですが」
理科はそう批判するような言い方をする。
それに乗っかるように、俺も一言。
「理科の言い方はあれだが、ゲームで釣れるのは子供くらいだ。わざわざ部活動でやることのものじゃないだろう」
部員の悪い反応を一身に受ける夜空。
そんな彼女は、多少気に食わなそうに顔をゆがめた後、きちんと自分の考えを口にする。
「あまいな貴様ら。ゲームをするのは子供という凡人な発想は今から十何年前にすでに終わっている事だ。スー○ァミやメ○ドラのような大げさな名前が付いていた時代だけの話だ。プレ○テに移行した辺りからそれはもう子供だけのコミュニケーションツールでは無くなったのだ」
と、長ったらしく自分の考えを述べる夜空。
確かに言われてみればそうだな。今じゃどちらかというと大人の方がゲームやってるよな。
カードゲームしかり、ゲーセンしかり。特に最近主流のオンラインゲームやソーシャルゲームは完全に大人向けを意識して作っている。
家庭用ハードが出始めた当時の子供たちは今では大人になっている。それらをターゲットにゲームは進化し続けている。
そう考えると、ゲームは子供を釣るものというのは否定せざるを得ない。大人だって釣っている。
「なるほど。一理あるな」
「わかってくれれば幸いだ」
俺がそう肯定すると、夜空は満足そうな顔をしてそう答えた。
「それで、げーむとはなにをなさるのです?」
「そうだな。幸村は何をしたいのだ?」
ゲームについて質問をする幸村に、夜空はその意見を聞くことに。
「わたくしとしては、か○こんのげーむをりすぺくとしておりまして、できれば戦国RANSEやもんかりをしょもうしたくおもいます」
と、意外なことに幸村は丁寧にそう自分の意見を申し出た。
本当に意外だな。ゲームが好きなのか? やっぱりなんやかんやで男なんだな幸村。
その両方のゲームは俺も聞いたことがある。どちらも某会社の看板作品だ。
「なるほど。モンスター狩人か。みんなで一緒にモンスターを倒す……それもありだな」
夜空は幸村の意見を取り入れ、頭を悩ませる。
次に、理科が意見を述べた。
「理科としてはモンスター狩人も捨てがたいですが、まずは個人的に……この部活の身内で勝負事をやってみたいなと思うわけですよ」
「ほう、強気だな。よほど自分に自信があると見える。私という人間は、貴様のような自分に自信を持っている奴を叩きのめすのは大好きなんだ」
夜空はそう言ってあくどい笑みを浮かべた。
思っていても口にしなくていいだろうに、そうプライドが高いから友達できないんだって。
ちなみに個人的には、理科の意見もありだと思う。
最近のゲームはみんなで協力して目的を果たすゲームが多いが、ゲームの醍醐味はなんといっても対戦だ。
協力プレイと対戦、悩むところだな。
「そこで理科がお勧めするのは、若干懐かしいのですがこの"トモポン"です」
理科はそう言って、プレ○テ2版のトモポンを机に置いた。
わざわざ自分の所から持ってきたのか、それとも買ってきたのかは分からないが。
確かボードゲームだよな。パーティとかじゃ盛り上がるが、なんせそのゲームは……。
「ほほう、貴様面白いゲーム持ってきたなぁ」
それを見て夜空がまたも不吉な笑みを浮かべた。
あぁ、なんか様子がおかしくなってきたぞ。
俺は取り返しのつかなくなる前に、二人の間に割って入った。
「待て待て、ちょっと俺の意見聞いて」
「どうした小鷹? お前も遊びたいゲームがあるのか?」
「いやいやそういうわけじゃなくて、今の俺たちがトモポンやって楽しかったで済みそうなのか?」
「何が言いたい?」
俺がそう質問をすると、夜空はなんだか意図がわかっていそうな口ぶりで俺にそう返してきた。
その答えはな、夜空と理科が発しているなんだか怖いオーラが物語ってんだよ。
俺は答えるだけ無駄だと思ったが、一応答えた。
「とどのつまり、そのゲームやったら喧嘩になるかもしれないだろ」
「喧嘩ってなぁ小鷹。私たちは友達を作るためにゲームをやるのだ。喧嘩なんてしてたら友達できないだろうが」
いや……だから言ってんだよこのクソ女が!!
少しは自分のキャラ考えて発言しやがれ!!
「お前らわかって言ってるんだろうけど。こういうボードゲームはパーティゲームとしての意味合いが強いが、別名『友情破壊ゲーム』と呼ばれることがある。特にそのトモポンは他のやつに比べてプレイヤーへの妨害要素が多い。俺たちにしてみればまだ手をつけるには早すぎるゲームだろ」
意味がないとわかっていながら、俺は丁寧にそう説明した。
が、そう言われてやっぱりやめるかと、納得するこいつらではなく。
「だから……殺りがいがあるのだろ?」
なんか文字の表記がおかしくありませんかね夜空さん。
理科もなんかやるつもりだし、小鳩は意味を良くわかっていなさそうだし。
幸村と小鳩をこちらの手駒にして、多数決であいつらを負かそう。
「幸村、小鳩。このゲームはやったら最後、わだかまりしか起きない。だからもう少し優しいゲームにするために多数決で俺の方に上げてくれ」
「クックック。まかせろ下僕よ」
「かしこまりました、せんぱい」
小鳩と幸村は了承した。
よかった。話のわかるやつだっているんだよ、この世は残酷なんかじゃない。
と、思ったのもつかの間。
「幸村、小鳩。ちょっと私の話を聞いてほしい」
俺が安心してすぐ、悪魔のささやきが二人を誘った。
だめだ。そっちに行くな。そっちに行ったら心が悪に染まる!!
「あんしんしてくださいせんぱい。わたくしはせんぱいのみかたです」
「何を焦るか眷属よ。我は貴様の主ぞ」
と、心強い言葉を俺に送る後輩と妹。
ありがとう、俺にも立派な味方がいるんだね。
そしてなにやら夜空に耳打ちされる二人。ははは、何を言おうがその二人の心は揺るがないさ!!
その後、俺は協力プレイゲームを、夜空はトモポンを選び多数決に入った。
「じゃあ多数決を取ります。トモポンが良い人~」
夜空が多数決を始め、そういうと。
結果は、俺以外の連中がみんな手を上げた。
「何があったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
なんということか、このたった一瞬のうちに信頼していた後輩と妹が悪魔の夜空に寝返りやがった!!
俺は納得いかずに、二人に問いただす。
「てめぇら! 俺との約束はどこへいったぁぁぁ!?」
「ひぃ!」
「うっ……」
俺がそう問いただすと、二人はガチでびびった。
あ、やっべ。多分今の俺めちゃくちゃ凶悪面だろうな。大切な妹と後輩のガチな反応を見て思い知らざるを得ないや。
じゃなくて、どうしてこの二人が夜空側に寝返ったかの話だ。
「よ……よぞらせんぱいに、「真の男を目指すなら、勝負と聞いて投げ出すなど豪語同断。これじゃいつまでたっても小鷹のような武人にはなれないぞ。ふはっはっはっは!!」といわれまして」
「う……うちは、「この戦に勝つことができたら闇の世界すら支配できるエネルギーが手に入るだろう。貴様は私が見込んだ闇の女王、何を迷うことがある? ゆけい!!」と言われて……」
と、二人ともそれぞれの人間性を突かれて説得されたわけですな。
どうしてこうなった。俺の押しが足りなかったのか?
もういっそ凶悪面で脅すくらいのことやんないとあの女には勝てないのか?
「決定だな。では……殺ろうか、皆の衆」
「もういいやしらね」
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ということで、ゲーム内容はプレ○テ2版のトモポンで決定した。
俺自身はやったことがないが、噂はかねがね耳にする。
その一番多くお金を手に入れたら勝利するという簡単なルールの裏に隠された。容赦ない妨害行為の数々、容赦ないアイテムとスキルの効果を。
それによってついたキャッチフレーズが、『友情破壊ゲーム』。
あのさぁ。今一度確認すっけど俺らなんていう部活に入ってんだっけ? 確か隣人部とかいう友達作りの部活だよねぇ?
それがどうして友情破壊ゲームなんていうぶっそうなゲームをやる流れになってるわけ? 偉い人教えてくれ~。
「全員、取説を読んでおけ。まぁ悪名高いゲームだが今回は交流会みたいなものだ。本気でやらず気楽に行こうではないか」
そう夜空は笑顔で部長らしいことを口にするのだが、裏ありまくりで説得力のかけらもない。
続けて理科も同意するが、こいつらどうにも仲悪そうだからなぁ。
と、俺に取説が周ってきた。きちんとルールを覚えて俺が主導権握らないとこいつら放っておいたら下手したらリアルファイトだからな。
えぇと、具体的なルールは。
・0~6と書かれたルーレットを回し、止まった目だけ進める。普通のコマでモンスターとバトル、アイテムや魔法のコマでそれぞれ対応したアイテムや魔法が手に入る。
・モンスターとのバトルがこのゲームの特徴。倒せばレベルアップして自身を強化できる。負けたら待つのは死あるのみ。
・勝利条件はゲーム終了時に一番お金を持っている物。金さえあればなんでもできる。金が全てだ覚えておけ。
・相手が普通のコマに止まっている時に同じコマに止まるとそのプレイヤー同士でバトルを行う。負けた方はペナルティが課せられる。殺るか殺られるか、覚悟しておけ。
・アイテムと魔法は1ターンにどちらか一つを使用できる。ただキャラによっては一度に二度使用出来たり、アイテムと魔法を両方使用出来たりする。自分に見合ったキャラを選んで相手を蹴落とせ。
・金さえあれば友達が買える。友達を持っておくと負けた時の身代わりに出来たり金をあげて特定の行動を取らせることができる。友達はけして自分を見ていない、金を見ているのだ。
・ライフが0になったら二ターン行動不能。その間に他のプレイヤーと接触された場合なんでも好きなことをされるので注意しよう。ん? 今なんでもされるって言ったよね?
・その他細かいルールは自分たちでプレイして覚えろ。-以上-。
なんちゅう説明書だ。まともなこと最初くらいしか書かれてねぇぞ。
金が全てだとか殺るか殺られるかだとか相手を蹴落とせだとか、人間の欲しか書かれてねぇ。
挙句の果てにはこれ。金さえあれば友達が買える。頼むからこの部活でそんな一文見せつけないでくれ、もう掲げる理念もへったくれもねぇし。
そして色々丸投げだし。あぁもうツッコミが追いつかない!!
「ってことなので、最初はキャラ選択だな」
夜空はコントローラーを操作しながらそう言った。
乗り気な他の連中は、さっそくゲームを始めている。
ちなみに部員は五人いるが、俺と小鳩が二人で一チーム。計四チームで行われる。
それぞれが特徴溢れるキャラを選ぶ。
夜空は一番最初に表示されていた剣士の男の子キャラを選択。
レベルアップすると攻撃パラメーターが自動で上がっていく攻撃タイプのキャラクターだ。
そして特殊能力は、一ターンにアイテムを二度まで使えること。
弱点は魔法を使う時にたまに失敗するというもの。
理科は魔法使いを選択。
レベルアップすると魔力パラメーターが自動で上がっていく魔法タイプのキャラクター。
特殊能力は、一ターンに魔法を二度まで使えること。
弱点はたまに回避不能になるというもの。
俺は小鳩に言われるがまま小悪魔っぽいのを選択。
レベルアップするとすばやさパラメーターが自動で上がっていく高速タイプのキャラクター。
特殊能力は、たまに相手プレイヤーの友達を奪えるというもの……。
「……小鳩、ちょっとこのキャラはやめよう」
俺はこの特殊能力欄を見て、小鳩にそう提案した。
これさ、相手の友達を奪うってなんか表現が危ないっていうか。
俺はそういうのじゃないけど、俺の見た目を反映させてるっていうか。
「クックック。悪魔の魔王こそ真の王者よ」
俺の提案を無視して。小鳩はその小悪魔っぽいキャラにボタンを押してしまった。
まぁ仕方ないか。もう一度言うけど俺は他人の友達を恐怖で支配したりはしないからね。絶対にしないからね。信じて。
ちなみに弱点は、『たまに友達を手に入れる時、「顔が怖い」「見た目がヤンキーっぽい」と断られ失敗することがある』。
あれ? おかしいな、なんか涙が……。
最後に幸村は、奴隷というのを選択。
レベルアップしても特にパラメーターが上がらず、なんの特徴もないキャラ。
特殊能力は、"ある条件"を満たすとその効果が更に上がる。というシークレットなもの。
弱点は、他者からのダメージが受けやすい。何ターンかに一度ランダムで誰かに所持しているものをあげなければならない。手に入る友達の能力が半減している。
「幸村。なんかそのキャラ初心者向けじゃないような……大丈夫か?」
「はい。ごしんぱいをかけてもうしわけありませぬ。ですがわたくしはこれでいかせていただきます」
そう、幸村は迷わず奴隷を選択。
こいつに限って裏は無さそうだが、もしかして弄られてネタを徹するのか、負けること前提に俺たちを接待するのか。
なんというか、優しすぎるぜ楠幸村。
こうして、隣人部によるトモポン大会が始まった。
ルーレットで順番を決めた結果。一番手は俺と小鳩、二番に夜空、三番に理科、四番に幸村となった。
順番が決まり終えて、ゲームの画面はオープニングへと移る。
オープニングでは、最初に王様らしき人がなにやら言っていた。
『この世は金が全てじゃ。金さえあれば友達百人夢じゃないわい』
王様、俺たちのような奴らにそんな途方もないこと初っ端から言わないでくれや。
どうすんだよ、俺らには金も名声もないから友達少ないのか? 違うだろ? 気持ち一つで友達できるよね? そう言ってよ王様!!
「この王様。よほど学生時代は辛い目にあっていたと見える」
同情するところじゃねぇだろうが夜空、なにちょっとウルっと来てんだよやめてくんない!?
と、隣の夜空にツッコミを入れていると、物語は進んでいた。
突如悪者がやってきて、国の金を全部奪ったというではないか。
金も全部無くなった。あとは気持ちの問題だぜ王様。
そんな王様の元に、俺たち四人が招集され、国を救ってくれと言われた。
一番最初に応対したのは、俺のキャラだった。
『なに? 国を救ってくれ? よしまかせろ! 俺が全てを救ってやるから謝礼の方たっぷり用意しておけよな!!』
あぁ、前半はなんかかっこよかったのに後半で台無しだよ。結局は損得の関係じゃねぇかよ。
『国を救えば、ごほうびいっぱいもらえるかな!』
そう口にしたのは夜空のキャラ。
子供っぽくて元気あふれる感じはいいが、ごほうび目当てなのがバレバレで正義感もくそもありはしない。
『ほうびがガッポリ貰えると聞いて』
次に言ったのは理科のキャラ。ガッポリとか言うなよ、口が悪いぞ。
『どうせ僕は皆に使い古される奴隷。死ぬ前に最後に……英雄になってみるのも悪くはないかな』
奴隷ぃぃぃ!! 元気出せ! このクソみたいな連中の中で正義感にあふれているのはお前だけだ!!
だから自信を持つんだ! 俺はお前を応援する! って俺は違うキャラだけど。
といった具合になんだか気分が悪くなるようなオープニングが流れた後、ゲームは静かにスタートした。
とりあえず操作は小鳩に任せて、俺は助言に回ることに。
「ククク。まわれ闇のダイスよ!!」
小鳩は初っ端から飛ばしていた。呪文を唱えるようにボタンをぽちっと押した。
ちなみに補足をしておくとダイスじゃなくてルーレットだ。
ルーレットがランダムに止まり、表示されたのは『4』という数字。
小鳩は4つ前に進むと、そこにはアイテムコマがあった。
アイテムルーレットを回すと。まじかるバナナというアイテムが手に入った。
「まじかるバナナ☆ バナナと言ったら……先輩のバ・ナ・ナ♪」
「え? なんだって?」
「いやっはははそんな冗談ですよ羽瀬川先輩。それとも理科が先輩のバナナをあちゃこちゃしている想像でもしちゃいましたぁ?」
「してないから、ご心配なく~」
理科の咄嗟の下ネタに対して、俺は冷めた口調で返す。
その後夜空が強くせき込み、その会話を強制終了させる。
次は夜空の番だな。夜空はルーレットを回す。
出た目は6だ。なんだか幸先がいいな。そのまま進み普通のコマでモンスターとバトル。
単純に攻撃を選んで、夜空はモンスターを倒してレベルをアップさせる。
「最初は、こんなところか」
そう夜空は納得して、次は理科の番に移る。
理科も4を出してアイテムコマへ。出たアイテムは5ススーム。ルーレットを回す代わりに5個進めるアイテムだ。
次に幸村が操作する。出た数字は……0。
進むことなく、何も起きることなく。一週目が終了。
「ま、まぁ幸村。最初だしまだ大丈夫だ」
「せんぱい。おやさしきおことばありがとうございます」
俺は幸村に感謝されて、少し嬉しくなってしまった。
そんなこんなで数ターン。序盤のステージなので特に大きなことは起こらず進んで行く。
だが、ボスのコマに差し掛かる寸前。夜空がバトルでダメージを負って理科の番に移る。
「くそ、ここでダメージは辛いな」
「さてと、ここで理科の番ですねぇ」
理科はそう言って、カーソルをアイテムの方に。
ここでアイテムを使うのか。でも、ボスまでは6以上あるし。
マップを見てみると。理科の"5つ先"に夜空がいた。
5つ……先に。そういえば理科のやつ、さっき5つ進むアイテムを手に入れていたような……。
「……まさか」
「その、まさかですよ羽瀬川先輩」
俺の小言を拾って、理科がほくそ笑んでアイテムを使用した。
使用したのは5ススーム。それで夜空の普通コマに重なるよう移動した。
「き、貴様!?」
「さて問題です夜空先輩。先輩のレベルは3で理科は2です。が、先輩のHPは残り12に対して理科のHPは35。もしここで理科が先攻を取ってあなたに攻撃を加えた場合どうなることでしょうか」
「ぐっ……」
理科は意地悪そうに言って、夜空とのバトルに突入する。
先攻と後攻は宝箱を選択して決める。もしここで夜空が先攻を決めれば逆転できる可能性はあるが。
「頼む、神よ私に先攻を……!!」
そう願う夜空の運も尽きたか、先攻は理科に渡った。
全部で三択。攻撃、必殺、魔法。
それらに対して有効なコマンドを選べればダメージは軽減できるが、夜空のHPは風前のともしび。
必殺に対してカウンターを決められれば夜空は勝てるが、そんな無茶をする必要はなく、理科は普通に魔法で攻撃した。
理科の場合魔法使いのため魔法での攻撃は有効。それをわかっていたかのように夜空は魔法防御を選択するが、ダメージが半減されても夜空のHPは燃え尽きた。
そして、せっかく奥まで進んだ意味を否定するかのように、入口にて棺桶に入り二ターン休みとなった夜空。
「あ、こんな中途半端な所で急ぎのルール追加希望なんですがみなさん。友好を深めるために今からキャラ名で呼びあいませんか?」
ずいぶんと咄嗟な提案だった。
ちなみにキャラ名は個人個人の名前でやっている。俺の場合は小鳩を手動にしているためこばととなっている。
俺と幸村はなんとなく了承したが、いったいその提案にどういう意味があるんだろうか。
そして、勝者は敗者に罰を与えられるということで、コマンドが表示された。そのコマンドの内容はこちら。
相手の金を全て奪い取れる。
アイテムを5個まで選んで奪い取れる。
相手の装備をなんでも一つ奪い取れる。
名前を変えられる。←
呪いをかける。
という五択。
そして理科が嫌味ったらしく矢印を指している『名前を変えられる』という選択肢。
夜空はどうにもいえないゆがんだ顔で理科を見つめ。
「理科……やめろ……。合理的に考えて行動しろ。金かアイテム奪った方が後のためだろ……」
「あはっ。よぞらにしては(※名前で呼ぶというルールのためそう呼んでいる)理科のことをわかってらっしゃる。どうしようかな、やっぱり金を奪うことに」
「あ、あぁそうしろ。そうしてくれ!!」
「そうですね。そうしたほうがいいですよねぇ」
「あぁ! そうすべきだ!!」
「……だが断る」
そう冷徹に吐き捨てて、理科は夜空のニックネームを変える選択をした。
そして考えた末に10文字の制限を生かし、『かわいいよぞらちゃん』とぴったり10文字で入力。
それを見た夜空は。かーっと顔を赤くして。
「よかったですねぇ。金品もアイテムも奪われないでぇ、理科は優しいですからね。感謝してくださいよ『かわいいよぞらちゃん』」
「うぐっ!!」
そうわざとらしく言って理科はヒヒヒと耳に付くような笑いをした。
う~んなるほど。相手の精神にダメージを与えるのもこのゲームの醍醐味か……マジで友情破壊ゲームだなこれ。
「ま、でも痛手にならなくてよかったな。かわいいよぞらちゃん」
「こ、小鷹までっ!!」
「まだしょうきはあります。かわいいよぞらちゃん」
「クックック。これも運命よ。か……かわいいよぞらちゃん」
「や~め~て~!! お願いだからやめてくださいーーー!!」
俺たちにかわいいを連呼され、顔を真っ赤にして恥じる夜空。
ごめんな夜空。今の瞬間はガチで可愛かった。やっぱり素直だと可愛いんだなお前。
だが、そんな俺の褒めたことも。一瞬で覆すように。
「……志熊理科……滅ぼす」
殺すの一段階上を使用して、理科に敵意を向ける夜空。
やっぱりね。最初に思っていたけど、どんどん空気悪くなってくるなこの感じ。
どうなるんだろうなぁ。なんか復讐に囚われる亡者の集まりになりつつあるような……。
そんな心配をよそに、次々とゲームは進んで行く。
進むにつれて皆のステータスは高くなり、手に入るアイテムやフィールド魔法も強力になり、当初説明であった友達もお金で買えるようになっていく。
「ぐっ。ここにも罠が!!」
「ヒヒヒ。あったまってきたねぇかわいいよぞらちゃんよぉ。理科を追い詰めようとして足元が見えてねぇじゃねぇか……ヒヒ、ヒャッハハハハハハハーーーーーー!!」
「志熊……志熊理科ぁぁぁ!!」
後半になるにつれて、夜空と理科の一騎打ち状態になり俺と小鳩と幸村は置いて行かれる。
現在なんやかんやで理科が一位、俺と小鳩が二位で夜空が三位、そして幸村は最初から目立つことなく四位。
どうして幸村が表に出てこないかというと、幸村のキャラの弱点が発動したり、どうにも俺に対して無償で負けてくれたりアイテムを分けたりとご奉仕三昧で、まったく前に躍り出ようとしないからだ。
俺は申し訳なさそうに振舞うが、小鳩がどんどん幸村から絞り取っていくものだから、すっかり裸の王様状態の幸村。
「あ、パペット引いた」
俺たちの番。
引いたフィールド魔法はパペット、相手を操って好き放題なんでもできるすごい魔法だ。
「あぁ~んこだかぁ~。これで理科をなんでも好き放題操るんですねぇ~?」
「んっんー。やりませんけどぉ~?」
「んもう、ノリが悪いですねぇ。んで誰に使うんですか?」
「使ったら恨まれそうだからお前にやるわ」
「わぁ~いありがとうこだかぁ~。したら……かわいいよぞらちゃんいじめるかぁ~? ヒャハハハハハハハ!!」
そう俺から魔法を受け取って次のターンに夜空に対して使い、夜空を蹴落とす理科。
それに対して夜空も負けじと、頭を駆使して理科を攻撃。
金で友達を買い、それを投げ捨てるように進める二人。
最下位になれば幸村を使って理科に食らいつく夜空。なんというか……なんというか……。
「こいつら……自分の事しか考えられないのか……」
次第に、俺はなんだかつまらなくなっていた。
何が楽しくゲームをしようだ。ゲームしながら喧嘩してんじゃねぇよ。
「幸村。なんかつまんねぇよなぁ?」
「……そろそろ、あれがくるやもです」
「ん?」
俺が幸村に声をかけると。
幸村はまるで、何かを待っていたかのようにそう呟いた。
そして次の幸村のターン。ずっと四位だった幸村のターンの始まりに、空が黒く染まった。
その空から、なにやら強大な悪魔が降り注ぐ。
「な、なんだ!?」
俺、そして他の連中も驚いた。
そして強大な悪魔が、幸村に契約を申し出る。
『ずっと皆の下で耐え忍んできた奴隷ゆきむらよ。貴様にこのデビルーマンの力を与えよう』
デビルーマン? なんだそりゃ?
俺は急いで取説を読むと、中間のページにこう書かれていた。
・デビルーマンは最下位のプレイヤーがごくまれになれる形態のこと。これになると全ての能力が三倍に、金は全て失われるが、暴虐を駆使して今まで自分を虐げてきた連中に報復できる。ちなみにわざとこの形態になり勝利をもぎ取るテクニックも存在するということ。
と書かれていた。
最下位のプレイヤーだけがなれるデビルーマン。一発逆転要素もある最強の形態。
それを見て、幸村が珍しく本気の笑みを浮かべた。
『おや、しかもお主は奴隷。だったら更に三倍、能力を上げられる』
そしてその言葉、奴隷ならデビルーマンの能力をさらに倍に。
まさか……俺は疑った。
大人しい顔をして、ずっと良い人を演じ続け。
その果てに幸村は、これを狙っていたんじゃ。
『ということで、僕と契約してデビルーマンになってよ』
「がってんしょうち」
と、そういう口上で契約を申し出られ、幸村は迷わずデビルーマンになった。
そして、最強の能力を手にした幸村。そのたくさんある能力を駆使して、夜空と理科を狙う。
そんな狩人の目となった幸村に対して、夜空が追求する。
「ゆ……幸村。きさまこのゲームやり込んでいるなッ!」
「そんなことはありませぬ」
慈悲もなくそう無下に答え、幸村は夜空に向かっていく。
この状態になれば相手は勝負を放棄できない。勝てなければ死、あるのみ。
そして幸村は夜空を引き割き、金と友達をすべて消滅させる。
「ああああああああああああ!! トモちゃん一号! トモちゃん二号ぅぅぅ!!」
その他たくさんのトモちゃんを奪われ、泣きだした夜空。
金は幸村には入らないが、夜空の金も全て無くなる。
そして大量の経験値で幸村は更に強くなり、次のターンで理科を襲う。
「オーマイゴッド!! 侮っていた……こんなところに……伏兵がっ!!」
理科も悔しそうに涙した。
あっという間に俺と小鳩が一位に。幸村は俺らを狙うことが無かったため放置という形になった。
そして幸村の報復が終了し、またも一触触発状態に。
「上等だ……。残りの数ターンで……貴様ら全員皆殺しだ!!」
「やってみせてくださいよ夜空ちゃん! 勝つのは……この理科です!!」
「わたくしも、ここまできたらはせがわせんぱいを一位にするまで……」
と、それぞれがそれぞれの意思に従い、ゲームという喧嘩を始めた。
あぁ知ってました。こうなることは知っていた。
だが、俺には止めることができなかった。友達を作るために集まったこいつらの暴走を、俺は見ることしかできなかった。
やっぱりか。俺はなんとなく察していた。この隣人部、友達を作る部活の連中は……。
――全員が自分勝手で、敵同士の集まりだってことを。
「……俺、帰るわ」
「こ、小鷹?」
俺が冷めたような態度でそう言い席を立つと、夜空が俺の名を呼んだ。
「悪いな。ゲームの続きはまた後日。小鳩も遊び終わったらちゃんと帰って来いよ~」
「ふえぇ!? う、うちも帰る~」
ということで、小鳩と俺はいち早く帰ることに。
正直、居続けられなかった。認めたくなかったからだ。
こいつらだって、けして悪い奴らではないと思う。だけど、やっぱりどこかが歪んでいる。
そして、俺も歪んでいる。だから、こいつらに共鳴することを避けてしまった。
最低だ。俺はこの時……逃げるって選択しかできなかったから。
「悪い小鳩。先に帰っててくれ」
「え? あんちゃん?」
「心配すんな。ちょっとやり残したことがあってさ。早々と終わらせて帰るから。今日ハンバーグ作ってやるからな」
「……うんっ!」
学校の広場で。
俺はそう言って小鳩を早く帰らせた。
そう、ちょっと考えたい事があった。一人で、たそがれたかった。
俺は広場のベンチに座り、そして考える。
あいつらとの日常……隣人部のこれからをどうすればいいか。
正直そういうのは夜空が考えることなのだろうが、あいつではだめだ。
俺がなんとかしないといけない。あの暗くてジメジメした部活を……変えないと先に進めない。
だが、やっぱり"何かが足りないんだ"。あの隣人部には何かが足りない。
あのバラバラの集まりを先導するべき……何かが……。
「……どうすっかな」
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ベンチでうとうとしていたら、何やら寝てしまったようだ。
俺は夢を見る。何かの夢を。
今よりずっと遡る。遡って、かつて見た景色を写す。
写ったのは……公園。今も遠夜市にある公園。
そこにいるのは……十年前の幼い俺。
――この夢、先日も見た気がする。
俺はこの夢を見たのは最初ではない。
二度目……いや、もっと頻繁に見ている。
俺がこの街に戻ってきてから、いや……つい最近になってよく見るようになった。
その公園に、俺がいる。
そして、もう一人……かつて親友と呼んだ"少年"がいる。
少年の名は……"ソラ"。十年前、この街で俺が出会ったたった一人の親友。
そいつは俺に大切な言葉を教えてくれた。俺に生きる上での大切なことを贈ってくれた。
今でも大切にしているその言葉。
『友達百人なんてできなくてもいいから、百人分大切にできるような本当に大切な友達を作りなさい……』
その言葉は、そいつの母親の言葉だ。
そいつが母からもらった大切な言葉。それを俺にも分け与えてくれた。
とても優しくて、勇敢で……勇気に満ち溢れていて、負けず嫌いで、弱い者いじめが嫌いで。
俺は、どこかでそいつに憧れていた。そいつみたいになりたいと、思っていた。
そんなそいつが大好きだった。ずっと一緒にいたいって思っていた。
だが、ある日俺は転校することになった。
そのことを、そいつに言えずに俺はその街を離れた。
わだかまりを残して、俺は友情を断ち切ってしまった。
十年の時を得てこの街に帰ってきたわけだが、その影響なのか……ソラの夢を良く見るようになった。
どうして、今なのか? 転校した当初はあっさりと忘れていたはずなのに。
最近だ。隣人部なんていう、友達を作る部活に入ってから、まるでそのことをぶり返すかのようにその夢が俺に映し出す。
その夢の中で、ソラは思い出を映すかのように笑う。俺の名を呼び、俺に輝かしい笑顔を見せる。
だけど、時より悲しい顔をすることもある。俺に、憎しみを抱くかのような目で睨みつけることもある。
一緒に遊んで笑った後、ソラは最後に悲しい顔をするんだ。
そして今、夢の中で俺の身体にまたがり。
泣きそうな顔で、俺の首を絞めようとする。
まるで、街に置いて行った俺に対して怒りを向けるかのように。
泣きながら……俺を絞め殺そうとしてくる。
――この光景……俺は最近実際に見た気がする。
なんだった……? 確か……あの女が……。
俺と共に、隣人部を作ったあの女が……。
――あの女が……"ソラと同じ目"で……俺……を。
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「うっ……うぅ……くっ……。やめろ……やめて……くれ……」
ソラ……。
俺はうなされ、苦しい顔をしながらゆっくりと目を開けようとする。
徐々に感覚が戻ってくる。そして感じる。なんか、頭に柔らかい感触が。
ベンチで寝ているはずなのに、木の固さを感じない。
柔らかい枕のような感覚。そして、とてもいい匂いが漂ってくる。
俺は徐々に目を見開いた。見開くと、目に映ったのは薄暗い夜空……。
――ではなく、それは光り輝く星のような。
「……え?」
俺は、それを見て目を見開いた。
今、俺の目に映ったのは少女だった。青い目をした、とても綺麗な美少女。
その金髪は美しく靡き、頭に付いている蝶のアクセサリーが、まるで金色の光を自由に舞っているような。
俺は知らず知らずのうちに、そんな少女に膝枕されて、寝ていたのだ。
そして少女は言う。目覚めた俺に対して……その響くような歌声で。
――あんたが……"羽瀬川小鷹"ね。
俺はこの瞬間、"柏崎星奈"と出会った。
NEXT-ライバル出現編。