『三日月夜空』視点。
――もう彼は、そこにはいない。
あれから二日が経った。
私の愚かな行いが、一つの悲劇を招いた。
そして私自身には、何一つの罰を負っていない。
全ての代償が、あの男に降りかかった。言ってしまうなら、そのことが私が負うべき代償というべきか。
何もかもを取り戻そうとして、この結末は……なんだろうか。
足掻いて足掻いて、その結果が……さらなる物を失うというのは。
もう二日間、私は自室にこもっていた。
小鷹と討論を繰り広げた私の母親も、何の変化一つ見せずにそのまま。
全てがマイナスに傾いただけの、ただのくだらない茶番劇。
充てが無くなった私は、滑稽にもあの教師に相談を持ちかけてみる。
――記憶喪失……ねぇ。
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『なるほど。またどうして彼は、やることなすことが極端なんだか』
つい昨日、私の連絡を受けて全てを知った高山ケイトは、呆れた口調で私の電話を受け取っていた。
小鷹がいつのまにか私の正体に気づいていたこと、そして遠回しに受けた圧力によって焦りを抱いたこと。
それによって私を救うことに駆られたこと。その結果、私を庇って事故にあったこと。
――ソラとタカの記憶を、失ったことを。
「……」
『っておいおい元気がないな。元気があればなんでもできるって、偉い人が言ってるんだから元気を出そうよ』
「……出るわけがないだろう。大切な物を失ったんだから」
『まぁそうだよね。しかしそれも、一体全体誰のせいで、人の忠告一つ聞かなかったどなたさんのせいで、こんなことになってしまったんだろうねぇ』
そう、意地の悪そうに言うケイト。
まるで、今まで言いたくて我慢してきた。私に対して言い放ってやりたくて仕方なかったといったようなセリフだった。
人の不幸を笑うような悪逆な台詞のようにも聞こえるが、それは私の被害妄想がそう導くだけで。
実際は、愚かしい私に対して躾けるような、注意を暴言に乗せた言葉だった。
「……全て、私の責任だ」
『おいおいしおらしくなったねぇ。今更そんな素直になられても、わたくしゃあ困るわけだよ。よーぞらくん』
「……」
『もう私には"救いきれない"。助けてもあげられないし、力を貸すこともできやしない。他人を救おうなんて考えはな、んなもん正義でも正道でもない、おこがましい聖者ごっこだ。気付かせるだけが精いっぱいだったが、もういやだよ。私まで被害をこうむりたくはないんでねぇ』
ずいぶんな言いようだった。言いたい放題だった。
本来なら私はキレてもいいのだ。だが、言い返す元気も、そんな資格もない。
それでも通話を切るとさみしくなりそうで、一人にはなりたくない哀れな子猫みたいな私は。
ただ、ケイトの暴言を聞き続けた。そうしないと、誰かに何かを言ってもらわないと、潰れてしまいそうで怖かった。
『……もしもって、やつか』
「?」
『"IF"、今の小鷹くんの状態を現わすならそれだ。"もしも三日月夜空と友達になっていなかったら"……。そんな可能性の彼が、今の羽瀬川小鷹だな』
「……IF、もしもの羽瀬川小鷹」
『君と親友になったことで得た物も大きかった。彼の不器用ながらもどこか真っ直ぐなところは、君に出会ったことで生まれたものなのかもしれない』
そんな可能性の話を、ケイトは私に聞かせる。
『最も。そんな小さな要素よりかは、君に出会わなかった方が幸せだったって可能性の方が、大きいのは事実だろうね』
「……」
『……なんで私が、そんな意地クソ悪いこと言うか……わかる?』
「……」
『きっと、ピンポイントで君との思い出を忘れたのは……。彼にとって"無くしてしまいたい記憶"だったからじゃないのかな』
その言葉は、私にトドメを刺すのには重すぎる一言だった。
それを聞いて、悔しさと悲しさのあまり、こらえていた涙を流す。
完全に言い負かされたかのように、けして見せたくない一面をケイトに見せてしまう私。
「うっ……うぅぅ」
『……泣いてどうなる? 今更弱くなりやがって。クソムカつくな、腹が立ってしかたがないよ。三日月夜空』
「ぐっ。もう私には、何もできないんだ!!」
『……そっか。だがこのままじゃ困った子羊一匹を相手にする教師としてはあまりにもひどすぎる絵面なので、これが最後だ。私が君に贈れる最後の助言だ』
そういうと、ケイトはいつも私に見せるような態度に切り替える。
今まで私が散々聞き流してきた。彼女の助言の数々。
もう何一つ覚えていない。そんな私だからこそ、聞かなければならないと思った。
「……なんだ?」
『――無くしてしまいたいものってのは、人にとって絶対に無くしちゃいけないもの』
「……?」
『きっと羽瀬川小鷹には、君との出会いと思い出の数々が、欠けてはならないもののはずだ。無くしてしまいたいほど付きまとう何かでもあり、それほどに思えるほど、自分にとってずっと忘れられなかった何かでもある』
「……私との、思い出が」
『君の取り戻すべきものを、取り戻すべきは今何だと思うよ。全てを失ったから何もできないんじゃなく、あえて全てが無となったからこそ、復元の可能性が生まれたのさ』
そんな哲学めいたことを言って、ケイトは一呼吸置き。
本当に最後に一瞬だけ、優しい声で私にこう言った。
『……もう、諦めることはやめることさ。それじゃあわたくしは朝早いので、失礼するわさ』
そう言って、一方的に電話を切るケイト。
しばしの沈黙が、空間に流れた。
この沈黙が、今ほど怖いと思ったことはなかった。
だから今この時は、私は部屋に逃げた。
そして、闇に籠る。それが今の私が選べる選択肢だった。
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夏休みももうすぐ終わる。
あと一週間でもしないうちに、学校が始まってしまう。
学校が始まれば、あいつらと顔を合わせなくてはならない。
もう合わせる顔なんてない。合わせるのが怖い。
小鷹は私の知っている小鷹じゃない、隣人部の連中は私が一方的に捨ててしまった。
ケイトはもう私に何も言ってはくれない。結論的に、私は一人という孤独に逆戻りだ。
ひそかだが嬉しかった。あんな偽りの空間でも、一人じゃないという結果だけは、実の所笑みすらこぼれそうだったんだ。
だが、もうその嘘さえ存在しない。小鷹は言った、事実は一つだけだと。
そこにあるのは、私が全てを破壊したという事実だ。そしてそれが、現実なんだ。
……。
………。
…………。
……かすかだが、外から何かが聞こえる。
何かに導かれるように、私は窓の外を見た。
外をのぞくと、祭りのみこしが道を歩いていた。
そうか、もうそんな時期なのか。
ここ遠夜市の祭りは、この時期になると三日間開催する。
今はお祭りの季節。お祭りといえば、友達同士やカップルと一緒に楽しむ場所。
こんな落ちぶれた私には、無縁の場所だ。
「……お祭り、無縁の場所か」
……そう呟いて、思った。
あながち、無縁ではないかもしれないと。
憎きお祭りを、私は一度だけだが楽しんだことがあるのを思い出した。
それは、失われた十年前。大好きだった親友と、一度だけ行った。
小鷹と、タカと一緒に。
「……お祭り」
そう一言つぶやくと、私は部屋から出た。
部屋から出て何をするというのか、どうせ母親とも一切口を聞かないのだ。
母親は何も変わらない。小鷹はあれほどまで変貌したというのに、その原因の一つとなった母親は、心一つ動くことはない。
……そう、思われていたのだが。
私は気付いてしまった。テーブルの上に、何かが置いてあることに。
それは、見慣れない浴衣だった。
私はゆっくりと、その浴衣に近づいた。そしてそれに手を取ると。
「……ようやく引きこもりやめたか」
「!?」
後ろの声に驚き、振り返る。
そこには母がいた。相変わらず私を見る目は、ゴミを見るようなそれだった。
だが、何か様子がおかしかった。
「こ、この浴衣は……」
「……夜空、あなた十年前。あの小鷹って子がいなくなる先日、らしくなく女の子っぽい格好をしたことがあったわよね」
何を言い出すのか、私のあの失態を口にし始めた母。
そう、あれは私がタカにした約束だった。
私も大切なことを打ち明けると。だが恥ずかしくて自身が女であることを打ち明けられなかった。あの出来事は忘れられない。
あの時私に勇気がなかったから、結果今ここまで彼とすれ違いを起こしてしまったのだ。
そんな出来事を、ほじくり返すように口にする母親。
「……それがどうしたんですか?」
「はぁ。もう無駄かもしんないけど、時効かもしんないけど。せめて、やり遂げなかったこと一つやりとげてみなさい」
「……は?」
「それ着て、小鷹って子と祭りに行って来なさい」
またまた何を言い出すのか、母親が風邪でも引いてしまったのかとも思った。
どうしてあの母が、私にこんなことをするのだろうか。
私は怖くて仕方がなかった。やめてほしいと思った。
もっと私に嫌われるようなことをしてほしいとさえ思った。じゃないと、私は平常心を保てないとも思った。
「……今更、何を」
「……仕方ないわよね。気持ち悪いでしょうね、薄気味悪いでしょうね。何か裏があるのだと、そんなことを思ってもしかたないね」
「……母さん?」
「でもね、母さんにも意地ってのがあるのよ。車の免許も取れない年頃の子どもに、あんなこと言われて、無関心じゃいられなくなったのよ」
そんな、らしくないことを言い出す母親。私は呆気に取られていた。
「夜空。あんたはやっぱり似てる。諦めやすいくせに、捨てきれない。強くないのに、強がってみせる。本当に、どうしてそこまでそっくりに育っちゃったんだか」
「……ふっ。あなたの育て方が悪かったからだ。もう少し女らしく、おしとやかにでも育ってもらいたかったか?」
「……」
「今更優しくなんてされても、私はどれだけあなたの言葉が欲しかったかわかるか。小鷹との拗れにしても、あなたの言葉一つあればもしかすれば多少は曲がらなくてすんだかも知れなかったんだ」
そう、私は母親に対し、隠し続けていた物を吐き出すかのように、口からどんどん言葉を出した。
今じゃないと、言えない気がした。
「中学の時、喧嘩騒ぎを起こした時も、私を見捨てるのではなく叱ってほしかった。風邪を引いた時くらい、仕事を休んで看病してほしかった。授業参観なんて一度も来てくれないし、進路相談もただ横で座って相槌打っているだけで!!」
「……」
「父さんと喧嘩した時だってそうだ。あなたは私に頼ってくれない、一方的な都合ばかり押し付けて!! 私も姉さんも、本当なら今こうしてあなたと父さんと一緒に一緒のテーブルでご飯を食べられているはずなのに!! 一人で食べるご飯がどれだけ不味く感じるか、あなたに理解できるのか!!」
「……」
「料理が大好きだった。幼少期、あなたと台所で晩御飯を一緒に作るのが大好きだった。いつかおいしいご飯を作って、あなたに召しあがってほしかった。大切な人達に食べてほしかった! 包丁は猫の手で持って優しく食材を切るんだって、あの優しい声で教えてくれたことを今でも忘れたことはない!! その包丁一つ、もう私は持てなくなった。あなたが私を包丁で刺そうとしたことを、いつだって忘れられずにいた!! こんな思いをするなら、あのままひと思いに刺してくれればよかったのに!!」
私は抱え込んでいた思いを、寂しさを、弱さを、これでもかというくらい叫びに乗せた。
いつもなら、こんな思いなんて受け止めてくれはしないだろう。正直今でさえ、思いが空回りしていそうで怖い。
そんな私の泣き叫ぶ声にも、母は顔色一つ変えずに傍観している。
もう無理なのか、母さんの心を動かすことは……敵わないのか。
「……たった一人でも、大切な人がいさえすれば。たった一人……でも」
「……いつまで、その言葉を引きずっているのよ」
「引きずりもするさ。だってその言葉が……私の存在の証なんだから。あなたの、"娘"だということの……」
そう顔を下に向いて、うなだれ口にする。
もう届くはずもない、諦めるしかない事実の一つ。
そんな落ち込む私に、母親は浴衣を押しつける。
「……いったい、なんのあてつけなんだ……これは」
そう崩れるように私が言うと。
冷徹な母親が、遠回りな親ごころでこう言った。
「だからこそ、お母さんを見返してみなさい。あなたにとって最も大切と決めた一人を、取り戻しに行って来なさいよ」
「……今更無茶だ」
「ならやらなくていい。無茶だと諦めるならそれでもいい。そう、私はそうやって"取り戻せなかった"」
「……あ」
「……もう母さんの背中を追うのはやめなさい。あの言葉、夜空にあげるわ」
あの言葉、それは母さんが私に与えてくれた一番大切な言葉。
「だから、その言葉を本物にするのも、その言葉に価値をつけるのも、今日からあなたなのよ。その一歩だと思って、行ってらっしゃいな」
そう浴衣を投げつけ、母親は背を見せてソファーに座る。
そしていつものように、テレビをつけてワイドショーを見始めた。
その背中はどこか、恥ずかしさを隠すようにも見えた。
未だに認められない。母親の優しさを受け入れることはできないけれど。
だが、私は授かった。与えられたのではない、押し付けられたわけでもない。
あの言葉を、母親より授けられたのだ。もう、全てが私にかかっている。
『全てを投げ出すな。言っただろ、お前にはまだやるべきことがたくさんあるんだ。隣人部はどうなる? お前を信じたものを見捨てるな。あの場所がお前の嘘で塗り固めて生まれた空間だというなら、お前が全て本物にすればいい』
急に、小鷹に言われた言葉を思い出した。
そして感じた。あの言葉は、今はもういないであろう親友としての彼が、私に残した言葉であると。
『……もう、諦めることはやめることさ』
そしてケイトに贈られたこの言葉
母親から言葉を授かり、親友から言葉を残され、教師から言葉を贈られ。
私の背中には、重たい想いがたくさん乗っかっている。
そしてそれを、捨てるも投げ出すもが私にかかっている。
これはもう、強がりじゃない。それを守るために、強がるだけではいけない。
私は気付かなければならない。諦めたことに対して、取り戻さなければならない。
仮に取り戻せない程に、壊れてしまったのならば。
「――新たに、作ればいい」
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数分後。
三回ほど、電話をかけた。
そしてようやく、あいつが電話に出る。
『……どうした?』
その重たい声色が、私に乗っかる。
相手は小鷹だ。だが私の知っている男の態度ではない。
私を完全に敵視している男の声だった。
「あぁ、こんな時で悪いんだが。隣人部の活動をしようと思ってな」
『……はっ。ケイトに聞いたぜ、お前結局部活を投げ出したそうだな』
私がそう言うと、小鷹は鼻で笑ってそう返した。
その口調も、どこか小鷹であって小鷹ではない。
私や他のやつも感じていた、彼の中に眠る不器用ながらも熱い思い。
それがもう、微塵も感じない。それが、"私に出会わなかったかもしれない"、羽瀬川小鷹の言葉だった。
『それが今更何だ。都合が悪くなったらそれか、部活という名の"友達ごっこ"。隣人部はお前の都合のいいように動く人形かよ。エア友達じゃ飽き足らず、人の孤独に付け込んで仮友達ってわけか?』
「……」
『まぁ、友達一人作ったことの無い俺が偉そうに言える立場じゃないけどよ。俺も隣人部に毒された側の人間だしな、だが……てめぇに従うってのは気にくわねぇな』
もうそれは、私の知っている男の言葉ではない。
今話している羽瀬川小鷹を、私は"知らない"。
そして、小鷹も私を知らない。覚えていない。
だから、私と出会ったことで知るはずだった、友情の大切さを知らない羽瀬川小鷹。
もはやこれは、かつての私の亜種とでも言うべき存在だった。
『まぁ、こんな顔つきも凶悪な俺と違って、あなた様はさぞ美人のようだから。いつでも友達なんてできるんだろうけどな』
「……」
『この、リア充がよっ!』
なんというか、この時の私は、変わり果てた小鷹に対して失望なんてものは抱いていない。
むしろ、笑いすらこみ上げてきた。なぜか、私が……私を相手にしているような気分だったからだ。
「……ふっ」
『……なにがおかしい?』
「今日は、ずいぶんしゃべるんだな」
『……んだと?』
そう、私に苛立ちをぶつける小鷹。
そんな彼に、私は"いつもの"――"いつも通り"の強気な口調で返した。
「そんな友達一人も作ったことの無い可哀そうな小鷹くんのために、部長である私が一肌脱ごうかと思ったんだがな」
『……ぷっ。あははははははは!! お前どうした? 頭でも打ったのか!? 他人なんて興味ありません的な、友達いりません的ないつものお前はどうしたんだよ?』
「何を、私だって他人に優しくすることもある」
『なんだ気持ち悪い! 散々付き合わせたから礼の一つでもしてやろうってか。上から目線が好きな女だなお前は』
小鷹も小鷹なら、私も私で全力で言い合う。
そう……。例えるならこれは、口喧嘩だな。
嫌いな者同士が行うように見えて、実は違うもの。
これは、互いを認めているからこそ言い合える茶番だ。
「……今日、一緒に遠夜市の祭りにでも行こう。これからの隣人部の方向性について話し合う」
『アホか。俺はお前のせいで怪我してんだぞ。だるいしなんでお前なんかと祭りに行かなきゃいけないんだよ』
そう全力で嫌がる小鷹に、私は一歩も引くことはしなかった。
……本当は、深い傷を抉られるかのように、心に響く言葉の数々だった。
また泣き崩れてもいいくらいの小鷹の心ない言葉の数々。だが、ここだけはくじけたくなかった。
だから私は、そんな言葉に……十年前のあの約束を、口にしようと決めた。
「――祭りに来てほしい、小鷹」
『……なんでだ。なんでお前は俺ばかりを』
「――今日私は、お前との大切な約束を果たす」
そう私が言い放つと、小鷹は押し黙った。
『つっ!』
「やり残したことがある。だから……否が応でも付き合ってもらう」
『な、なんで……なんでだ』
「……?」
『俺はお前なんて知らない。お前みたいな性悪女なんかと関わるなんてごめんだ! だが、なんか不気味だ。お前と話をするとイラついて仕方ないのに、どこかで安らぎを感じてる。意味わかんねぇ、なんなんだよお前は!!』
「……」
『お前はなんだ! 何様のつもりだ!! 俺になんか恨みでもあんのか!! 俺はいつまで、お前に付き合わされなきゃいけないんだよ!! もううっぜぇんだよ! 隣人部とかわけわかんないんだよ!! お前のことを考えるだけでも胸糞悪くてしかたねぇんだよ!! 俺は! お前なんてな!!』
『俺は……お前なんて大嫌いなんだよ!!』
そう、真っ向から言い放つ小鷹。
だが、私は絶対に引きさがろうとはしなかった。
迎え撃つ。背を向けない、諦めることになるから。
お前から大切なことを奪ったことを、押し付けてしまった代償を、捨てることになるから。
だから、私はお前から逃げるわけにはいかない。いかないんだ!!
「……安心しろ、お前の損にはならないさ」
『何を、都合のいいことばかり』
「祭りに来い。私と二人きりだ。そうすれば、私が貴様をリア充にしてやる」
『……意味が……わからないんだけど』
「……だから小鷹――タカ。お前は」
――お前は、私をリア充にしてくれ。