百足女郎奮闘記   作:nenenene

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犬夜叉との遭遇

 

 

 百足女郎が亀裂から出た先、そこは井戸の底のようだった。ただし、底に水はない。枯れ井戸のようだ。百足女郎はそう考察し、井戸から這い出る。

 

 井戸から出ると、どうやら森の中のようだった。井戸の周囲は広場のようになっていて、木が存在しない。いや、広場には一本だけ木が立っている。その一本は周囲の木々よりひときわ大きくて、目立つ。

 

 何の気なしにその巨木の根元付近を見た百足女郎は、その根元付近に一人の少年がいることに気付く。少年の心臓付近には矢が突き立てられている。その矢に宿る妖力から考えて、どうやら封印されている模様。

 少年は白髪、赤い袴を着ている。頭には犬ミミ。妖怪か? 一瞬そう思うが、すぐに間違いに気づく。少年からは妖怪の匂いに加えて、人間の匂いもしているからだ。

 

「半妖か……」

 

 半妖。それは出来そこないの代名詞だ。百足女郎は軽蔑の視線を少年へと向ける。人間でも、妖怪でもない。中途半端な存在。

 

 グウウ!

 

 またも腹が鳴る。

 

「まあ……半妖でも腹の足しにはなるか」

 

百足女郎はそう呟くと、空腹に促されるまま、半妖の元へと向かおうとする。

 

だが、途中で足を止める。

 

「何だ?」

 

 無数の糸。森の奥から、何千本という量の糸が飛来。少年の周囲に、無数の糸が張り巡らされる。否。少年の周囲だけではない。糸は、縦横に移動。井戸と大木の周りにある、広場のような空間。その広場全体に張り巡らされた。

 勿論、百足女郎の周りにもだ。

 

「これは……髪か?」

 

 百足女郎がいぶかしげな呟きを漏らす。なぜこんなところに髪が? いや、この髪。妖力を感じる。となると、どこかにこの髪を操る妖怪がいるな。百足女郎はそう推測する。

 

 それは的中した。

 

「あら、あんた見えるんだ? あたしの髪」

 

 頭上から、少女の声が降ってきたのだ。その声を聞いた百足女郎は、声の方へと視線を向ける。

 

 視線の先。そこにいたのは女の子。空中に張られた髪の一本。その上に、器用に立っている。

 見かけは人間だが、少女からは妖力を感じる。どうやら、妖怪のようだ。この妖気には覚えがある。確か……鬼か? 随分と可愛らしい鬼もいたものだ。黒髪、紅眼。おかっぱ頭に、赤い布を巻いていて、髪飾りにしているようだ。

 

 少女が着ているのは、黒い着物。その着物は、おへそが見えるほどに大きく胸元が開かれ、着物から零れ落ちそうなほど大きな二つの果実を見せつけてくる。また、その着物には袖がなく脇下も大きくえぐれているため、正面の谷間だけでなく横乳もその存在感を主張している。

 

 その上、女の子の着物は、あまりに丈が短く太ももがほとんど露出。下から見上げているせいで、百足女郎からは少女の穿いている朱色の大胆な下着が丸見えだった。

 

 桃のような胸に、雪のように白い肌、そしてくりっとした紅い大きな瞳。そんな美少女が、己の肉体を見せつけるような露出の高い服装をしている。

 

「そなた、何者だ?」

 

 百足女郎は少女へと問いかける。

 

「あたし? あたしは、逆髪の結羅。覚えなくていいよ。あんた、どうせすぐ死ぬんだから」

 

 答えなど期待していなかったが、意外とあっさり、少女は名を名乗った。どうせすぐ死ぬなどというのは余計だが。

 

「あの半妖は、あたしの獲物。あのタップリした銀髪を操って遊ぶんだから、邪魔しないで」

 

 そう言って少女は、半妖の少年をちらりと見る。

 なるほど。百足女郎は一人で納得する。この少女が周囲の髪を操っている犯人と考えて間違いなさそうだ。少女の言うように、少年の髪は銀色。普通、たいていの人間や妖怪は黒髪。銀髪など珍しいから、コレクションにでもする気なのだろう。

 

「それにしても、そなた、かわいいのう。男どもの欲望を具現化したかのようだ」

 

 百足女郎は結羅へと話しかける。その瞳は嗜虐心から歪んでいた。この少女はかなり可愛い。身体を大きく露出した服装をしているのは、背伸びしたい年頃だからなのだろう。そんな少女を蹂躙して、強姦して、喰い殺す。何と楽しそうなことか!

 

「うふふ、勿論よ。あたしは鬼族一の美少女なんだから」

 

 そう言って、自慢げに胸を張る結羅。自慢するだけあって、少女の胸はかなり大きい。桃サイズはある。だが、

 

「胸の大きさでは妾が勝っているようだがな」

 

 百足女郎とて負けてはいない。というか、圧勝だ。四魂の玉の力で強化された結果、百足女郎の胸は西瓜や南瓜のように巨大になっているのだから。少女の持つ桃サイズの胸など、百足女郎からすれば雑魚同然だ。百足女郎も胸を張り、その巨乳を見せつける。

 

「胸は大きいけど、でも、おばさんは醜いわ。顔は不細工だし、第一、何その身体? ムカデみたいで気持ち悪いわね」

 

「おば、さん?」

 

 意味が理解できない。何を言っているのだ? この少女は?

 

「あら、気に障ったの? ごめんなさいね? でも、どう見てもブスだし」

 

 少女が嘲りの表情を浮かべながら、そんなことを言う。

 

「ブス?」

 

 百足女郎は自覚した。頭の中の血管。それがブチブチと破裂しているということを。

 

「くすくすくす。どうしたの? 顔が真っ赤よ、お・ば・さ・ん」

 

 

「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

 余りの屈辱。余りの恥辱。百足女郎は咆哮を上げる。同時に、疾走。ムカデの身体大きく伸ばして、空中に浮かぶ少女へと向かう。

 

 だが、肝心の少女はひらりと身を翻して、さらなる高みへ。空中に張られた別の髪、その上へと華麗に着地した少女は余裕綽々と言ったようだ。

 

「どこ見てるの? あたしはここよ? お・ば・さ・ん!」

 

 そう言って少女は、百足女郎を挑発。同時に少女は、両手に巻き浮いた髪でアヤトリを始める。

 

 なんだ? 百足女郎は一瞬、怪訝に思う。だが、少女が何をするつもりなのかが分からなかったのだ。だが、答えはすぐに明らかになる。周囲の森に張り巡らされていた髪が動き出し、自分へと向かってきたからだ。

 

 百足女郎は、慌てて髪を回避する。だが、何百本という量の髪。そのすべてを回避することは出来ない。たちまちの内に、全身を髪で拘束されることとなる。

 

 しまっった! と、百足女郎は焦る。これでは身動きが……あれ? 違和感がある。この髪はもしかして? 百足女郎は疑問に思う。試しに、足の一本に力を入れてみる。少女に気付かれないよう、ほんの少しだけ。ほんの少しだけ動かす。

 

 ブツリ。

 

 髪の切れる音。予想通りだ。この髪は大した強度がない。それも当然か。一人、百足女郎は納得する。妾は四魂の玉を取り込んでおるのだ。こんな髪程度で、どうこうできるものではない。

 

 だが……このまま簡単に脱出してしまうのでは面白くない。この生意気な小娘にはタップリと恐怖を味合わせてやるのが良い。そう考えた百足女郎は、自分が拘束された振りをする。

 

「くすくすくす。これで身動きできないわね。一応回収しておこうかしら。ムカデ女の髪なんて欲しくもないけど」

 

 一方で、結羅の台詞。どうやら少女は、百足女郎を拘束できたと信じ込んでいるようだ。腰の刀を抜いて、無防備に百足女郎へと近づく。

 

「これは紅霞」

 

 そう言って、少女はうっとりと刀をめでる。

 

「髪を切らずに、肉と骨を断つ鬼の宝刀。要するにね、髪で縛ったままオバサンを切り刻めるってわけ」

 

 そう言うや、少女は刀を構えて、百足女郎の首を切り落とそうとする。

 

 だが、

 

「誰がオバサンじゃ!! 小娘!!!」

 

 百足女郎の咆哮。四魂の玉の力によって大幅に強化された彼女は、容易く少女の髪を引き千切ると、少女の心臓に腕を突き立てる!!

 

「っ!?」

 

 少女が驚愕の表情を浮かべる。少女の胸。そこには拘束していた筈の百足女郎の腕が突っ込まれ、反対側にまで貫通している。

 

 ずばっ!

 

 百足女郎は乱暴に右腕を引き抜く。勿論、少女の心臓を抉り出すのも忘れない。

 

「おーほほほほほ。ざまーないの? 小娘よ」

 

 百足女郎は、取り出したばかりの鬼の心臓を一飲み。ろくに咀嚼することも無く、嚥下する。

 

「おお! さすがは鬼の心臓! 中々美味ではないか!」

 

 百足女郎は満足げだ。

 

 だが、そんな百足女郎の脇では、心臓を失い、死んだはずの少女が動く。憤怒の表情を浮かべながら。

 

「死ね! 鬼火櫛!」

 

 少女は櫛を振るい、髪を梳く。すると、不可思議な現象が生じた。結羅が髪を梳いたところから炎が発生。髪を伝って、その炎は百足女郎を直撃。

 

 爆発!

 爆炎が百足女郎の全身を覆い、その姿を覆い隠す。

 

「ムカデ女風情が! 骨の髄まで焼かれて死になさい!」

 

紅霞と同様、鬼火櫛もまた鬼の宝具だ。鬼火櫛で髪を梳くと、そこから鬼火を生み出し、敵を攻撃することが出来る。その威力たるや、宝具だけあって絶大。

特に先程のは、ごく至近距離からの渾身の一撃。これで生きている筈がなかった。

 

 少女は自身の胸を見下ろす。オッパイとオッパイの間。そこには大穴が開き、血が出ていた。

 

「あって間もない女の懐に腕を突っ込むなんて……なんて図々しいオバサン何だか」

 

 結羅の独白。焼け死んだムカデ女になど、少女は興味がなかった。彼女は踵を返す。

 

 少女の向かう先。それは木に封印された半妖だ。元もと結羅は、半妖の銀髪を集めにやって来ていたのだから。

 

 

 

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