とある脇役達の物語   作:waiwai

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という現状に泣いたので書いてみました。批判は大歓迎です。作者が消して書き直したくなるまでフルボッコにしていただいても構いません。


無印編
第1話


 人々が星々の海を行き来するようになり、しかし“時空震(クロノ・クェイク)”と呼ばれる未曾有の大災害により分断されるようになってから数百年。

 小国であった惑星国家“トランスバール皇国”は、“白き月”と名付けられた巨大人工天体の持つロストテクノロジーによって版図を広げ、一大強国となっていた。

 そして、トランスバール皇国歴412年。本星からさほど離れていない宙域に存在する、センパール士官学校に、一つの船団が入港していた──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 センパール士官学校。それは、トランスバール皇国の中でも最も格の高い士官学校の名である。軍中央や近衛艦隊といったエリートコースの代表的な部署に配属される新米士官の過半数が、ここの卒業生で占められていると言えば、その凄さが分かるだろうか。

 

「アルベルト教官、お客様がお見えです。例の……」

「ああ、通してくれ」

 

 センパール士官学校教官、クリストフ・アルベルト中佐は教官補佐の中尉の取り次ぎに鷹揚な返事をする。それと並行して、今までやっていた士官候補生の考課表を机に放り込む。

 引き出しに鍵を掛けるのと同時に、教官室のドアが開かれ、中尉と二人の男が姿を現した。片方の男は黒髪を無造作にあちこちはねさせ、茶の瞳を持った平凡な顔立ち。もう一人は金髪碧眼の美形で、生真面目といった言葉が似合う男だ。中尉は僅かに険を含んだ視線で二人を一瞥すると、クリストフに一礼して退室した。

 彼女がドアを閉めてから数秒して、黒髪の方がきっちりした敬礼をクリストフに送りながら口を開く。

 

「民間護衛企業“コマース・ガード”所属、第2護衛隊司令のアーウィン・フレーザー二等宙佐です。ご要望の品をお届けに上がりました。確認をお願いいたします」

 

 クリストフは黙ったまま頷き、もう片方から手渡された納品書に目を通した。

 

「“スペクター”航宙攻撃機が6機。及び補修用機材が12セット。訓練用の中型対艦ミサイルが24発。そしてマニュアル一式……」

「……確認した。品は?」

「宇宙港で搬入を始めています。後1時間もすれば終わるでしょう」

「ご苦労だった。ところで……」

 

 淡々と事務的な口調で話していたクリストフは、そこでニヤリと口の端を吊り上げた。

 

「そろそろ芝居は止めにしたらどうだ? 貴様の堅苦しい口調など、聞き苦しいだけだぞ、フレーザー候補生」

「……もう卒業してんですから、生徒扱いは止めていただきたいもんですね、アルベルト教官殿。あと一応真面目に仕事してるんで、芝居とか言われると腹立つんですが」

「在学中の自分の行動を振り返ってみるんだな。ヴィルケ候補生、貴様も大変だろう? こんな馬鹿の下で働くのは」

 

 言葉に詰まり、露骨に視線を泳がせたアーウィンから視線を外し、クリストフは彼の傍らに立つ男に声をかけた。男は感情を感じさせない声で返す。

 

「……私は与えられた役職に全力で取り組むだけです。それと、今の私は候補生ではありません。第2護衛隊副司令、エーベルハルト・ヴィルケ三等宙佐です」

「ああ、それは済まなかった、ヴィルケ三等宙佐……言い辛いな」

「我が社では、階級は頭の数字と末尾の位で省略するのが常となっています。私の場合は三佐、フレーザー司令は二佐で略せばよろしいかと」

「ふむ、なるほどな」

「……俺と扱い違いすぎませんかね……?」

 

 二人の会話に、アーウィンが不満を口にするが、クリストフは鼻を鳴らして応じる。

 

「ふん。いかなる時も礼を失しない副司令と、猫かぶりを早々に止める程度に堪え性の無い司令、どちらを評価するかは自明の理だろう?」

「お言葉ですが、『状況に応じて対応を変えられるようになって半人前を卒業できる』とおっしゃったのは、他でもないアルベルト教官閣下だと記憶しておりますが? そちらから一線を越えた以上、応じるのは当然かと愚考いたしますが」

「全く……相変わらず屁理屈だけは一人前だな。それだから貴様は、いや貴様らはあんな措置を……」

 

 思わず口に出しかけてしまうクリストフだったが、不意にアーウィンが右手を挙げてそれを遮る。

 

「あー、その話は今はしないでおきましょうよ。俺らは気にしてませんが、思い出して愉快な記憶じゃないでしょう、アレ」

「……そうだったな。済まん」

 

 いえいえ、と返したアーウィンは、再度自分の持つ明細書に目を通して呟く。

 

「しかし、珍しいですね。パイロット科に実戦機を導入するなんて。センパール(うち)は参謀やら艦長職やらが人気なはずですが」

 

 彼の発言に間違いは無かった。センパールにもパイロット養成科はあるが、どちらかといえば優秀な指揮官や参謀を数多く輩出させているために、パイロット科の肩身は狭い部分があった。トランスバール皇国の広大な領土を維持するには、戦闘機や攻撃機よりも艦隊の方が向いているため、艦隊勤務士官の配属が前線から熱望されていたこともある。アーウィンが在学していた頃も、それは変わっていなかった。

 

「教育方針の転換か何かですか? 尤も、それにしては中途半端な感じが拭えませんが」

「いや。それはパイロット科の生徒達からの陳情でな。どうも、貴様の代以上に熱意のあるのが多いようだぞ、今期のパイロット科は」

 

 そう言いながら、クリストフは二人に応接セットのソファに座るよう促す。彼自身は反対側に座り、端末で補佐の中尉にコーヒーを持ってくるよう言いつけた。

 

「パイロット科が自主的にってことですか。それなら納得できますね」

 

 学校側の方針ならば、より多くの機材が導入されるはず。特に実戦機まで入れるとなれば、かなりの大事だ。反対に、ただの消耗機材の補充にしては大掛かりすぎる。中途半端な理由が分かり、アーウィンも疑問が解けたらしい。エーベルハルトも、黙ったままではあるが感心しているようだ。

 

「そうだな。まあ、貴様ら程ではないが、異端児扱いされてるんで適度にフォローしてやらんといかん面もあるんでやや面倒だが」

「……教官、その発言は問題だと捉えられる恐れがありますが」

「そう言うなって。貴様ら相手でも無いと言えん愚痴だ。有難く聞いておけ」

 

 クリストフの教官としては許されざる発言を聞き、アーウィンは苦笑し、エーベルハルトは軽く溜息を吐いた。尤も、彼の発言の真意が生徒同士の対立を憂慮したものであることぐらい、二人にも分かっている。クリストフもそう受け取られるからこそ、二人に本音を吐けるのだ。

 丁度そのタイミングで、中尉がトレーにコーヒーカップを載せて入室してきた。相変わらずの態度でカップをテーブルに置くと、最低限の礼で出て行ってしまう。

 

「……嫌われてますねー、俺達」

 

 ややあってから、アーウィンがドアの方に首だけ向けのんびりした口調で呟く。クリストフも肩をすくめながら答える。

 

「貴様らの所属のせいだろうな。世にも名高いセンパールの卒業生が、民間護衛企業なんて職に就けば、大抵の一般軍人は軽蔑するだろうさ」

「そういうもんですかねえ……」

 

 ──民間護衛企業という組織の起こりは先代の皇王の時代まで遡る。当時、既に版図の拡大よりも維持に重きを置いていた先王は、あまりにも広くなりすぎた領土の安全確保に苦慮していた。

 領土を守るだけならば、各惑星国家に駐留艦隊を編成して配備しておけばいい。トランスバール程の大国に反旗を翻す国家はまずおらず、治安維持だけに主眼を置くとすればそれも小規模で済む。

 問題となったのは、領土間の通商航路の保護だった。巨大国家故に海賊行為も頻発したが、当時のトランスバール宇宙軍には、主要な航路を警備する以上の戦力の余裕が無かったのである。全ての航路に充てる戦力を用意しようとすれば、その維持費だけで国家経済を自壊させてしまう。かといって、放置しておけば商船の持ち主達は被害を恐れて出航しないか船賃の吊り上げを始めるだろう。それは最終的には、『海賊にすら対処できない無能』のレッテルを皇国軍に貼ることに繋がる。

 そこで考え出されたのが、商船護衛をビジネスにしてしまう、ということだった。つまり、護衛戦専門の傭兵企業を作り、商船の守りは彼らに任せる。一方の皇国軍は、航路のパトロールや大規模な海賊の討伐を担当するということだ。

 軍としての存在意義を問われかねない決断だったが、結果から言えばこれは上手くいっていた。皇国軍としてはモラルの下がりがちな護衛戦を行わずに済み、商船側としても勝手の分からない軍よりも同じ民間企業の方がやりやすいというものだ。また、予備役軍人や退役軍人の受け皿ともなり、軍出身の失業者減少にも役立っていた。現皇王ジェラール・トランスバールもこの方針を維持し、民間護衛企業は数多く存在している。

 しかし、正規軍人の間では評判が悪いこともまた事実であった。彼らからすれば、民間護衛企業は自分達の仕事を横取りしていることになる。正規軍人という立場にプライドを持つ者は、民間出身者や不正規軍人を見下す態度を取っている。

 そんな背景があるのだから、中尉の態度も理解できるというものだ。尤も、クリストフ個人としては納得していないが。

 

「それよりも、貴様らの会社、あのネーミングセンスはどうにかならんのか。通商護衛(コマース・ガード)そのままとは思わんかったぞ」

 

 話を変えるように告げられた言葉に、アーウィンが苦虫を噛み潰したような表情となり、エーベルハルトは僅かに表情を動かして仏頂面といっていい顔になる。

 

「俺らに言わんで下さい。ありゃ社長の命名です」

「……一目見て業種が理解できる社名を選んだ、というのが社長の言い分でしたが」

「そうは言ってもなあ」

 

 そんな他愛もない雑談を続けていた彼らの話を遮るように、クリストフの端末が鳴り、中尉の声が流れた。

 

「アルベルト教官、パイロット科の生徒が来ていますが……いかがいたしますか?」

 

 暗に、この二人と会わせたくないという感情が見え隠れする声音にやれやれといった表情を浮かべ、クリストフは答える。

 

「通してくれ。折角一応は現役の卒業生が来ているんだ。生徒にも何かしらの刺激になるだろう」

「……分かりました」

 

 通信が切れ、彼が視線を二人の教え子に戻すと、アーウィンは腰を浮かしかけた格好で動揺を表に出し、エーベルハルトは目の動きだけで同意を示していた。対象的な二人の様子に思わず笑みが漏れてしまう。

 

「……フレーザー。何をビビっているんだ。戦争処女でもあるまいし」

「いやいやいや。だってですね……俺みたいな人間が刺激与えたらどうなるか分かったもんじゃないでしょう。俺の代みたいにぶっ飛んだ連中じゃないんでしょ?」

「そうだな。貴様らとは正反対だな。だが、そうであるからこそ得られるものもあるだろう」

「いやいや。悪影響及ぼすだけですよ。そう思うだろ、ハルト?」

 

 アーウィンが脂汗を滲ませながら隣のエーベルハルトに話を振るが、振られた側は平然としていた。

 

「……別にいいじゃないか。教官が許可を出したということは、問題が無いと判断されたのだろう。問題発言があれば、教官自身が止めてくれるさ」

「いや、そういうことじゃなくてさ……」

 

 アーウィンがそう言った瞬間、ドアが開けられ、中尉と一緒に三人の生徒が部屋に入ってきた。四人は敬礼し、中尉はそのまま退室した。残った三人の内の一人、黒縁眼鏡を掛けた銀のショートカットの少女が携帯端末を見ながら口を開く。

 

「アルベルト教官、訓練用機材が届いたとのことですが」

「ああ、つい今しがたな。後20分もすれば搬入が終わるだろう」

「ありがとうございます。それで、自主訓練の計画表を持ってきたのです……が?」

 

 少女の語尾が疑問形になる。どうやら彼女はアーウィンとエーベルハルトの存在に気付いていなかったようだ。他の二人も、そこで来客を見つけたらしい。

 どうも、中尉は来客があったことを三人に伝えていなかったらしい、とクリストフは他人事のように考えた。ささやかな嫌がらせと言うべきか。彼からすれば大したことではないので軽く叱責するに留めようと思っていたが、哀れなのは、とばっちりを食らった生徒と卒業生だった。

 

「……ッ! も、申し訳ありませんでした! お客様がお見えになっているとは思わず……ッ」

 

 数秒の間をおいて、少女が裏返った声で叫び、途中で不自然に言葉が途切れる。その後ろから、茶化すような少年の声が来る。

 

「おいおい。慌てて舌噛むとかそんなベタな反応する奴、いまどき珍しいぞ」

「う、うるさいわね! ちょっと黙ってなさいよ!」

「ははは、そう怒るなよ天然記念物」

「こ、このッ……!」

 

 怒髪天を衝くといった言葉が似合う表情を見せる少女に対し、茶髪の背が高い少年はからかうような発言を止めない。少女の怒り様を見かねたのか、最後の一人、長い黒髪を赤いリボンで結わえた少女がオロオロしながら間に入った。

 

「お、オリヴィエさん。少し落ち着いて……」

「烏丸さんは黙ってて!」

 

 しかし当人から怒声と共に退けられてしまう。そのまま口論を始める男女二人と止めに入れずうろたえる少女というカオスな状況に、アーウィンとエーベルハルトは唖然としていた。

 

「どうだ。貴様らの後輩は」

「……個性的ですね」

「俺らとはベクトルが違いますが、まあ、何ですか。いい感じに異端児ですね」

 

 クリストフの問いかけに、再起動を果たした二人はそれぞれの感想を口にする。それだけでなく、アーウィンが眼光を鋭くしているのを見て、クリストフは生徒達に呼びかけた。

 

「その辺りにしておいたらどうだ。ここにいるのは、一応貴様らの先輩だぞ」

 

 その一言に、口論を繰り広げていた男女は何事も無かったかのように、黒髪の少女は飛び上がるように姿勢を正した。この辺りは、流石にエリート校の生徒というところだろうか。三人とも整った敬礼を送り、銀髪眼鏡の少女が真っ先に口を開く。

 

「……見苦しいところをお見せいたしました。私は、センパール士官学校パイロット養成科のアンヌ・オリヴィエ候補生です」

「同じくパイロット科のエミリオ・ファーゴ候補生です」

「ぱ、パイロット科の烏丸ちとせ候補生です。先程は失礼いたしました!」

 

 銀髪の少女は生真面目そうな、茶髪の少年は気の抜けた、そして黒髪の少女は緊張か羞恥に顔を真っ赤にしながら自己紹介をする。アンヌがエミリオを睨むが、睨まれた側はどこ吹く風といった様子だ。

 アーウィンらも挨拶を返す。民間護衛企業所属という点については、生徒達は特に問題としていないらしい。最初から偏見が無いのか、それとも彼らがどう見られているのか理解していないだけなのかは分からない。

 

「しかしまあ、面白いな、君ら」

 

 アーウィンのその一言に、アンヌが憤慨するような表情で返す。

 

「……お言葉ですが、ファーゴ候補生のような軽い人間とひとくくりにされるのは納得がいきません」

「おいおい、似た者同士じゃん、俺ら」

「一緒にしないで!」

 

 再び諍いが始まり、クリストフは苦笑いを浮かべた。アーウィンにチラリと視線を走らせれば、彼は立ち尽くしていたちとせに話しかけていた。

 

「烏丸候補生、だったっけ。あの二人、いつもあんな感じか?」

「え、あ、はい……」

 

 緊張でガチガチになっているちとせを横目に、アーウィンは何度も頷いて見せる。

 

「なるほど……確かに似た者同士だな、うん」

「心外です! 私はこんな人と……」

 

 言い争いの中でも、アンヌは周囲の状況を把握していたらしい。その勢いに、ちとせがビクリと身を竦ませる。だが、アーウィンは堪えた様子も見せず、笑みを浮かべて応じた。

 

「別にいいじゃないか。俺は少しはっちゃけた方が面白いと思うがね」

「な……」

 

 彼の言葉に、エミリオが我が意を得たりと右親指を挙げて見せる。アーウィンも口元を歪めながら同様のポーズを取る。そして、アンヌの裏切られたと言いたげな表情を素早く見てとると、宥めるような口調で続けた。

 

「俺の経験則から言わせてもらえば、ぶれない自分の意見を持つのはいいことだが、それで仲間や部下の個性を潰すようじゃ、人を上手く扱うことは出来ないぞ」

「う……」

 

 アンヌは悔しげに押し黙る。自身でも弱点を自覚していたらしい。アーウィンはそのまま他の二人に向き直る。

 

「ファーゴ候補生は、その陽気な性格を大事にしろ。戦場だと悲観的になる奴が多すぎるからな。ただ、TPOは弁えろよ?」

「りょーかいです」

「烏丸候補生は、この二人の仲裁をしようという心意気は立派だ。ただ、オリヴィエ候補生と似てるんだが、やや考えややり方が直接的だな。遠回しに入る、或いは誰か宥められる味方を呼んでくる等、柔軟な対応を覚えよう。そこの教官殿なら、相談に乗ってくれるさ」

「は、はい! ありがとうございます!」

 

 二人に言いたいことを言い終え、アーウィンはスッキリした表情でクリストフの方に振り向いた。

 

「……こんな感じでどうでしょう?」

「ふん。なかなかよく出来るじゃないか」

「いやいや、俺なんかはとてもじゃないですが……」

 

 不意に言葉を断ち切るように、アーウィンの懐からブザーが鳴る。彼はその瞬間、すっと真顔に戻ると、通信機を取りだした。

 

「俺だ。どうした?」

 

 それに応じたのは、若い女性の声だった。

 

『──今より10分前、センパール校周辺に放っていた当隊の無人哨戒機(UAV)が1機、連絡を絶ちました』

「事故か故障じゃないのか? わざわざ緊急(エマージェンシー)コール鳴らす程じゃ……」

 

 怪訝な顔をしたアーウィンだったが、次の言葉を聞いた瞬間、表情を険しいものへと変えた。

 

『こちらでもその可能性を疑い、別のUAVを飛ばしたのですが、こちらも消息不明です。しかも、最初と二番目はほぼ同じポイントです。事故にしては偶然が過ぎます』

「そうだな……よし、第2護衛隊全艦、第2戦闘配備発令。出港準備急げ」

『既に進めています。それと、私の独断で《ウィザード》中隊より1個小隊を現場に先行させました』

「分かった。俺達もすぐ向かう」

 

 通信を切り、アーウィンとエーベルハルトは慌ただしく立ち上がった。

 

「というわけですので、我々はこれで退散しますよ」

「……次にお会いできる日を望みますよ」

「おう、二人とも、武運を祈る」

 

 三人は見事な敬礼を交わす。アーウィンとエーベルハルトは腕を下ろすと同時に脱兎の如く駆け出した。

 後に残された生徒達は、状況の急変についていけず、ただ呆然としていた。

 

「……何だか、忙しい人達だったな……」

 

 エミリオが最初に我を取り戻し、間の抜けた呟きを漏らす。それに触発されたわけではないだろうが、アンヌが眉根に皺を寄せて口を開く。

 

「……私としては、あんな人が卒業生にいるということが意外でした」

「ま、アレは異端児の極端なパターンだからな。そうそうお目にかかることは無いさ」

 

 クリストフは苦笑しながら応じた。あんな軍人が世に溢れていては、その軍隊の能力が疑われるというものだ。

 

「あの方達……大丈夫でしょうか」

 

 ちとせはと言えば、二人の安否を気遣っているようだった。クリストフは、安心させるように笑みを浮かべる。

 

「大丈夫だろう。あれでも、海賊相手ならそれなりに場数を踏んでいるはずだからな。内乱か何かなら駐留艦隊が動いているだろうが、そうでないならただの賊か本当に事故なのだろう」

 

 そうであってほしい、と考えるのは、元生徒に思い入れが強すぎるだろうか。笑みの裏側で、彼はそんなことを思っていた。




……書き終わった後に思ったんですが、これ本当にGAの二次なんでしょうか。いや、書いた本人が何言ってんだっていう話ですけど。
つーか原作キャラほとんど出てない……いいのか、これで。
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