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最近やたらと妙な視線を感じる。昼休み等に特に強い視線を感じるのだ。
ツバサ目当てのストーカー紛いの可能性もあるが、学校内のみであり下校中には視線を感じない為、家まで着いて来ていると言う事は無いみたいだ。つまり、ターゲットは俺であり、ツバサが目的の可能性は低い。
となると、完全に心当たりが無い。しかも犯人は中々に機敏に動けるらしく、視線に気が付いて振り向くと、直ぐに居なくなる。やり手だな。
「ツカサ君?どうしたの?」
「ん?ああ、南か。今日はあの2人は一緒じゃないのか?」
「別にいつも一緒って訳じゃあ…あれ?いつも一緒だね?うん。穂乃果ちゃんは花陽ちゃんの勧誘で、海未ちゃんは弓道部に行ってるよ。それよりもツカサ君はどうしたの?難しい顔をしてたけど?」
「難しい顔…まぁ、そう大した事は無いんだが、一応は話しておくか。無関係かは分からんし…」
μ's絡みのストーカーの可能性もあるしな。
「最近昼休みとかに視線を感じるんだよ。視線を感じた先を見てみるんだが、直ぐに逃げられるんだよ。南は妙な視線は感じないか?」
「う~ん…別に視線とかは無いかなぁ?あっ!もしかしてツカサ君に恋い焦がれる女の子とか!」
「無いな」
「え~!即答!?甘いラブロマンスな展開を期待してたんだけどなぁ…」
机にへたり込む南。そう言えば南と2人で話す機会はあまり無かったな。この機会に少し話してみるか。生徒会にはまだ時間もあるし、あの3人の中では一番普通の会話が出来そうだ。
「お前とあんまり話す機会が無かったな。何か世間話でもしないか?」
「うん!良いよ~!でも意外だなぁ…ツカサ君からそうやって話を振ってくれるなんて」
「そうか?」
「うん。何かツカサ君って“コミュ障”って感じだったから!」
……今コイツは何て言った?いや、南の屈託の無い笑顔を見ると悪気が無いのは分かるが…まさか…
「あれ?ツカサ君?どうしたの?おーい?」
「…俺のどの辺りがコミュ障だと思った?」
「えっ?…“わざと”人と関わろうとしない所とか…後は…“他人との接し方が分かって無い”所とかかな?」
「…そうか」
今、“南ことり”の認識が変わった。俺は心の何処かで南は、園田や高坂に合わせるタイプだと認識していた。確かにその認識で間違いはない。だが、他人に合わせる事が出来ると言う事は“相手の思考を理解できる”と言う事だ。相手を理解して、どう動けば良いのかが分かっている。そして更に南は必要ならば自分の意見を強く言える人間だ。
いや、これに関しては天然で意見を言っている可能性もあるが、“意見を言えて更には相手の思考を理解できる”そんなのが敵になったら勝ち目は無い。会長、南が高坂に任せている状態の今の内に折れて下さい。
「ツカサ君?顔色悪いよ?大丈夫?」
南が心配そうに見つめてくる。普段の南はほんわかしているし、無害に感じる。いや、実際は無害なんだが…
「…大丈夫だ。ファ◯通の攻略本だから…」
「いきなりどうしたの?本当に大丈夫!?」
本当に無害だからこそ恐ろしい。無害な奴がキレたらどうなるのか…
「大丈夫だ。それよりも、好きな食べ物とかは無いのか?」
「い、いきなりだね…えっと、チーズケーキだよ!」
「チーズケーキか…アメリカでは主食の所もあるんだよな」
「うん!だからアメリカに行ったら、まるごと食べるって決めてるんだ~!」
幸せそうな笑顔を見せる南。想像しただけでもこの笑顔とは。余程好きらしい。
「ツカサ君の好きな食べ物は?」
「………柚子アイス」
「ピンポイントだね…」
「あの後味の良さは芸術だろう」
「あはは…」
時計を見ると、そろそろ生徒会へ行く頃合いだった。
「そろそろ生徒会へ行くとしようか…話に付き合ってくれてありがとうな」
「どういたしまして!夕方には練習来れそう?」
「ああ。また後でな」
南に別れを告げて教室を出た。
☆☆☆☆
「他人との接し方が分かって無い…か」
生徒会室へ向かいながら一人で呟く。南の言葉は的を射ていた。俺は他人に興味を持たないと思われているが、正確には“他人に興味を持てない”のだ。正直に言って、どうして自分が高坂に興味を持ったのか未だに分からない。興味を持てないのが、興味を持てる様になったのか、それすらも分からない。確かに高坂以外にも園田や南、会長や副会長。西木野と小泉。気になる奴が増えたのも事実なんだが…
「俺が本心で話せている人間なんて、この世に居るのか…?」
他人となんてどうやって話せば良い?不用意な言葉で傷付き、意外な言葉で喜ぶ。訳の分からない“ナニか”でしかないんだ。
そして生徒会室までもう少しと言う所で、再び視線を感じた。
今回の話を要約すると、ことりさんマジ最強って事ですね。