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理事長から呼び出しを受けた俺、絵里さん、高坂の3人。どうやらμ'sに対して何かしらのオファーがあったらしく、理事長室で理事長から話を聞いていた。
「幼稚園でボランティアですか?」
「そうなの。知り合いが勤めている幼稚園なんだけど、レクリエーションの時間に演劇をしたいらしくて。でも職員の人数が少なくて困ってるらしいのよ」
絵里さんの疑問に対して理事長が事の経緯を話す。どうやら理事長の知り合いを助けて欲しいそうだ。しかし演劇となると何をやるんだ?
「演劇の内容ですが、μ'sの皆で決めても構わないそうよ。大変かも知れないけど引き受けてくれるかしら?」
「はいっ!喜んで引き受けます!」
高坂が即答する。近い内にイベントやライブが無いから良いものの、即答するとは流石は高坂だ。
「ツカサ君はどう?マネージャー兼プロデューサーの立場からして引き受けて大丈夫だと思うかしら?」
理事長が俺に判断を仰いできた。まぁ断る理由は無いのだが、一応考えてみよう。
「そうですね…演劇の本番はいつですか?」
「丁度2週間後ね。場所は音ノ木坂幼稚園の多目的室よ。それなりに広いから動きがある演目でも大丈夫。ミュージカル風に歌って踊っても大丈夫なくらいには広いわ」
成る程、歌や踊りが大丈夫ならμ'sの持ち味も生かせるし、動画を残せば宣伝にもなる訳だな。しかし2週間か…短いな。内容もこちらで考えるとなると、既存の昔話とかをアレンジした話にするか?まぁクオリティーが高くなければ出来るか?
「そこまでクオリティーが高い物では無くても良いのなら引き受けましょう」
「ありがとう。それじゃあ演劇の内容が決まったら教えて下さいね」
「よーっし!頑張るぞっ!」
とりあえず、内容を決めないとな…
☆☆☆☆
「演劇?ウチらが?」
「そうなのよ。理事長に呼び出された理由はソレよ。μ'sの皆で演劇をして欲しいって。だから皆はどんな感じの演劇にしたいかなって」
絵里さんがμ'sのメンバーに説明をする。どんな内容にするか。それを皆で決める為だ。
「成る程、演劇ですか。やはり王道の昔話等が良いのでは?」
「にこは“ロミオとジュリエット”がやりたいな~!」
「子供には分かりにくいから却下よ。そうね、ここは“白雪姫”なんてどう?」
「わ、私は“シンデレラ”が良いと思います…!」
「ことりは“三国志”が…」
「ウチは“かぐや姫”を提案するで!」
話を聞いて分かった。全然纏まりが無い。上から園田、矢澤先輩、西木野、小泉、南、希さんの提案だ。そして南よ、三国志は無理だろう。
「凛は楽しければ何でも良いにゃ!」
「そうね。子供達が楽しめる内容ならそれが一番ね」
「私は“桃太郎”が良いと思うな!人数的にもベストだと思うんだけど!何なら全部混ぜちゃうとか!」
高坂の提案に考えが止まる。昔話を混ぜる?…コイツ、携帯電話のCMでも見たか?だが悪くない提案だな。幼稚園側の人を何人か借りればそれなりには形になりそうだな。後はヒフミ3人組辺りにも協力してもらおう。
「具体的にはどんな風に混ぜるつもりだ?」
「うん!それはね…」
☆☆☆☆
演劇当日になった。台本を見て思う。
「うん。カオスだ」
因みに物語のナレーションはヒフミ3人組の内の1人であるミカに頼んだ。快く承諾してくれた。すげえよミカは。
「今日は皆の為にμ'sのお姉ちゃん達が劇をしてくれるよ!皆楽しんでね!」
幼稚園の園長さんが子供達に前説をしている。さて、本番だな。先ずはミカのナレーションから始まった。
《あるところに、ロミオお爺さんとジュリエットお婆さんが居ました。お爺さんとお婆さんは昔、両親に結婚を反対され、海を越えてこの国まで駆け落ちした夫婦でした》
スタートからおかしい。子供達もポカンとしてる。所々から『かけおちってなに~?』って聞いてる子供が居た。おいそこの職員、真顔で子供に教えるなよ。
舞台の幕が上がり、お婆さん役の矢澤先輩と、お爺さん役の希さんが現れる。
「全く…婆さんが全く以て成長しないせいで子宝にも恵まれず…婆さんは婆さんになっても幼児体型のまま…どうすれば…」
「………ちょっと洗濯に行ってくるわ。アンタは芝刈りでもしてきなさい」
《この様に夫婦関係は冷えきり、離婚は寸前でしたが、奇跡が起こりました。お婆さんが自分の胸の様に平たい…失礼、洗濯板を使って洗濯をしていると、川から大きな桃がドンブラコ…ドンブラコっ!と流れて来ました》
「ミカ、アンタ後で覚えときなさいよ(小声)……大きな桃ね!持って帰って食べましょう。川の水で冷えていて美味しそうだわ!」
希さんのセリフとミカのナレーションに若干の悪意を感じながらも劇は進行して行く。桃太郎が登場するシーンだ。
「婆さん、山でシヴァを狩って来たぞ…って、何じゃこの桃は!」
「桃に驚くよりもアンタが狩って来た物に驚くわよ!」
《お爺さんが狩って来た物を見て驚くお婆さんでしたが、お爺さん曰く“空腹で弱っていたから簡単に生け捕りに出来た”そうで、ならばと2人は流れてきた巨大な桃を分け与える事にしました》
息も絶え絶えなシヴァを演じているのは園田だ。シヴァが空腹とかあり得ないが、突っ込んではいけない。
「桃を食べて元気になったから桃太郎と名付けよう!」
「お爺さん…神に桃太郎はどうかと思うわよ…」
「フム、相手が人間風情とは言え、私は貴様等に助けられた身…この命は貴様等が好きに使うが良い」
《桃を食べて元気になったシヴァは桃太郎と名付けられ、お爺さんとお婆さんの息子として暮らす様になりました。桃太郎は神様で、ちょっぴり傲慢でしたが義理人情はしっかりしており、お爺さんとお婆さんには優しいのでした。そして仲良く暮らしていたある日、桃太郎はある噂を耳にしました》
「何?世界中で鬼が娘を拐っている?最近話題のかぐや姫もか。ほう、西洋の方ではシンデレラや白雪姫もか…」
《噂を聞いた桃太郎は鬼を倒す事にしました。鬼を倒しに行く事にした桃太郎はお婆さんとお爺さんに話をしました》
桃太郎の話を聞いて顔面蒼白になる2人。何故にそんなに演技が上手いのか。
「本当に行くのかい?…なら仕方無い。この“吉備団子”を持っていきなさい。私のラブリーな魅力が詰まった団子だから食べれば洗脳効果があるわよ!」
あれ?吉備団子ってそんなんだっけ?
「つまりこれを食べた奴は団子1つで命を賭ける愚か者に出来ると言う事か」
「言い方は悪いが…そう言う事だ」
《桃太郎は怪しい吉備団子を貰い、旅に出ました。そして最初に犬に会いました》
次に犬が現れた。犬役は高坂だ。何かしっくり来るな。
「うー…最近ダイエットでパンが食べれて無いなぁ…そこの海未…じゃなかった!桃太郎さん!パン持ってない?」
「パンは無いが、吉備団子なら…」
「あんこ入って無いやつなら欲しいな!」
「お婆さんのラブリーな魅力が詰まったやつなら」
「あ、いらない」
《吉備団子を受け取らなかった犬でしたが、桃太郎のお弁当を半分貰い、桃太郎に着いていく事にしました。桃太郎は“穂乃果と間接キス”と訳の分からない事を言っていましたが、無事に犬を仲間に加えました。次に現れたのは鳥でした》
鳥の格好をした南が現れた。まんまやん。
「ちゅんちゅん!桃太郎さん!そのお弁当をことりに寄越すちゅん!」
「は?ダメに決まってます。さぁ穂乃果…じゃなくて、犬。行きますよ」
園田さん。素が出てますよ?つーか台本と違いますよ?
「は?何でくれないの?海未ちゃんは穂乃果ちゃんを独り占めにするつもりなの?」
南さん?素が出るよりもヤバイのが出てますよ?台本と違うってレベルじゃありませんよ?
《桃太郎と鳥が激突しようかと言うその時!天から大天使ハナヨエルが降臨しました》
「えぇっ!?ここで私の出番!?だ、台本と違うよぉ…誰か助けてー…」
ナレーションにより天から強制的に召喚された大天使ハナヨエルこと、天使の格好をした小泉。この状況で小泉を出すとか…やっぱすげえよミカは。
「え、えっと…喧嘩はやめよう?お話なら後で出来るから…今は鬼さんをやっつけよう?ね?」
「………そうですね。ことりとは“後で”決着を着けましょう」
「うん。ことりも花陽ちゃんに免じてここは退いてあげるね?でも…後でゆっくりと“お話”しようね?海未ちゃん?」
何とか事態を抑えたハナヨエル。そして元凶の犬は『こんなの台本にあったっけ?』程度にしか思ってないだろうな。
☆☆☆☆
《遂に桃太郎達は鬼ヶ島に上陸した!最初の敵はヒデコとフミコの鬼2人だ!どうする桃太郎!》
鬼のお面を着けたヒデコとフミコが現れた。だがお面の下の顔は怯えているだろう。だって仲間の小泉ですら怯えてるもん。園田と南の無言の笑顔が怖いもん。
「ちょっと…何でこんなに怖いのよ!?小さい子が見てる劇なのに…!」
「ちょっとミカ!アンタは安全そうで良いわね!」
ジリジリと後退りする2人。このまま軽く殺られるのが楽で良いだろう。少なくともそれを選んでも俺はあの2人を責めない。しかし現実は非情であった。
《鬼2人は先手必勝と言わんばかりに“桃太郎と鳥”に襲い掛かった!どうする桃太郎!鳥!》
ナレーションが一番の鬼だった。ナレーションされた以上はやるしか無い。子供達もこれから始まる戦いに期待して目を輝かせている。いや、君達さっきの話に着いて来られたのか?
「「ミカの鬼ィ!」」
2人は半ば自棄になって桃太郎と鳥に襲い掛かった。つーか鳥って。雉ですら無いんだよな。
☆☆☆☆
《敵を次々と倒していく桃太郎達は遂に鬼の頭領である“呂布”と対峙した!》
呂布役は俺だ。いや、無理に三国志要素は入れなくても良かったんじゃないかな?しかも小泉と星空から聞いたかは知らないが、衣装が完璧に呂布トールギスなんだけど。なにこれ動きにくい。
「貴方が呂布ですね?さっさと終わらせましょうか。この後私は大事な話がありますので」
「もう役作りするつもりも無いのか。ほのキチ共め。せめて俺だけでもマトモに進行してやる」
マトモにやっても、もう取り返しはつかないとは思うけど、気休めでもやるしか無いよな。
《さぁ!始まった呂布と桃太郎の一騎討ち!桃太郎の仲間達も固唾を呑んで見守っているぞ!》
お互いに睨み合う俺と園田。普通なら少しやって終わりなんだけどな…このまま単調に終わらせたら子供達もガッカリするだろうな。こんなカオスな物を見せたんだ、最後ぐらい盛り上げて終わらせてやりたい。
「ハッ!」
「フンッ!」
園田が踏み込み、俺との距離を詰めて刀(おもちゃ)を振り下ろす。それを俺は戟(おもちゃ)で受け止めた。
「なっ!?さっさと殺られて下さい!私には大事な話があると言ったではないですか!」
「最後ぐらい盛り上げてやれよ…つーか冷静になれよ。子供達を楽しませる為に劇をやってるんだから、劇に集中しろって」
「…そうですね。私とした事が失念していました。……呂布!この桃太郎が引導を渡してくれる!」
どうやら園田は思い出した様だ。なら俺もしっかりとやってやろう。決してノリノリな訳では無い。決してな。
「ハッハッハ!桃太郎!俺の魂を奮わせてみせろッ!」
☆☆☆☆
《無事に呂布を倒した桃太郎達は姫達が囚われている部屋へと向かった!》
物語も終盤。後は姫達との邂逅だけだ。
「お疲れ様…すごかったやん。子供達も大喜びやったね!」
「そうね。アンタも途中から応援されてたじゃない『ぼーしょーもがんばれー!』って。ぼーしょーってアンタの事よね?その衣装の元ネタ?」
「盛り上がったなら万々歳です。まぁこの衣装に関しては自分で調べて下さい」
希さんと矢澤先輩が舞台袖に下がった俺に労いの言葉をかけてくれた。2人ともステージ衣装に着替えている。劇が終わった後、1曲歌う事になっているからな。
ふとステージを見ると、かぐや姫役の星空、シンデレラ役の絵里さん、白雪姫役の西木野が子供達にお礼を言っていた。そうか、もう終わりか。子供達も喜んでいるみたいだし、一応劇は成功なのか?あんなにカオスな内容だったのに、上手く行ったのは奇跡だな。
「さて、ツカサ君。ウチらは歌いに行くけど、ツカサ君はしっかり休んどいてな?」
「……今や園田よりも体力が無いとは、情けないな」
「アイドルはステージに居る時は疲れないのよ。分かったらアンタは休みなさい」
そう言って希さんと矢澤先輩はステージへ上がって行った。それを見て俺は思わず声に出した。
「やっぱりスクールアイドルは俺の憧れだな」
数日後、子供達の間で俺の渾名が“ぼーしょー”になった。
姫達「完全にセリフが無い!」