「「あっ」」
見られてしまった。希に図星を突かれて、逆上して逃げて行き着いた教室。そこで泣いているのを見られてしまった。私と同じで不器用な、それでいて私よりも芯が確りとしている生意気な後輩に。
「絵里さん?な、何で泣いてるんですか?お腹痛いんですか?」
「前から思ってたけど、ツカサって私の事バカにしてるわよね?」
「いきなり何を言い出すんですか!?どこか痛かったり辛かったら我慢しないで言って下さいよ!?」
こう言う弄りには本当に弱いわね。でもやっぱり私の事は心配してくれてる。こう言う時って私が大丈夫って言っても退いてくれないのよね。
「あっ、眼は擦ったらダメですよ。ハンカチ使って下さい」
そう言って彼はハンカチを貸してくれた。私はハンカチを借りて涙を拭うと彼に質問した。
「何で彼女達はやりたい事が出来るのかしらね?」
「彼女達…μ'sですか?」
「えぇ。やりたい事をやるって思ったよりも難しくてこっちは苦労してるのに…」
私がそう言うと彼は少し考える仕草をしてから答えてくれた。『分かりません』と。
「分からないの?」
「はい。分かりませんよ?大体俺もやりたい事って分かんないですもん。今はこうやってμ'sの手伝いしてますけど、ツバサに一泡吹かせる為にやってるだけで“廃校阻止できてツバサにも嫌がらせ出来るなら良いか”みたいな感覚ですし。あ、勿論高坂達が本気でやってたから手伝ったんですよ?」
私は彼の話を聞いて唖然としたわ。だって私は彼女達と同じモチベーションで彼が活動していると思っていたもの。
「そ、そうなの?」
「はい。あ、隣座って良いですか?」
「え、えぇ」
私に断りを入れて隣の席に座る彼。そして彼は欠伸をして眠そうにしていた。
「夜に寝てないの?」
「いや、窓からの日差しが気持ち良くて…」
「生徒会長の隣で居眠りなんて授業中の教室だったら良い度胸よ?」
「固いこと言わないで下さいよ…でも、絵里さんと俺が同い年で隣同士の席だったら確かに居眠りは出来そうに無いですかねぇ」
彼はまだ眠そうにしながらも話をしてくれる。普段はこんなにゆったりとした空気の子じゃ無いのに…私を気遣ってくれているのが分かる。
「もしもがあるなら…俺が3年生だったらどうなってたんでしょうね?高坂に誘われる事も無いでしょうし、絵里さんとクラスメイトだったら。あ、でもその前にツバサとは双子になるのか。それは何か嫌だな」
苦笑いする彼。私は彼に言われた事を考えてしまう。彼と同い年で…私と希と何時も3人で…
「そうね…もしもがあるなら、そんな日常も楽しいかも知れないわね?」
「でしょうね。何時も希さんと俺に悪戯される絵里さんの画が目に浮かびます」
「ちょっと、私と希が貴方に悪戯するのよ?」
「フッ、まぁそう言う事にしておきましょう。だが希さんが悪戯されてる状況が想像できない」
「奇遇ね、私もよ」
少し間を置いてお互いに笑いだす。自然に笑いが出たのは久しぶりな気がする。
「どうですか?少しは気が晴れましたか?」
「そうね、生意気な後輩のお陰でね」
「それは良かった。これ以上生意気な後輩のお節介は必要ですか?」
「………そうね。“もしもがあるなら私がスクールアイドルをやる事もあったかも”なんて思うのは止めたわ」
私は私の決意を彼に伝えた。
「私はスクールアイドルをやるわ!それが私のやりたい事だから!」
彼は私の決意を確りと聞いてくれた。
「期待してます!」
そして彼は私の手を握ってくれた。
☆☆☆☆
で、絵里さんと希さんが加わって、希さんの命名通りに9人の女神になったし、オープンキャンパスのライブも好評で廃校は一時的に持ち越しにもなったが…
「私、μ's辞めるから」
西木野がμ'sからの脱退を宣言した。一難去ってまた一難かよ!?
まぁμ'sの皆さんは、もしもは欲しくないんですよね。